ソードアート・オンライン ~剣の世界で弾を放て~ 作:レゾナ
キリトとヒースクリフの決闘から一日が経った。
レンはキリトのいるであろうエギルの店に来ていた。
「エギル」
「おっ。何だ、レンじゃねぇか。どうした?」
「キリト、来てるだろ?」
「ああ、二階にいるぞ」
「すまないな」
そう言ってレンは二階へと進みキリトがいるであろう部屋へと入る。
「キリト、入るぞ……」
「あ、レン……」
「レン君っ」
そこにいたのはキリトの他にもう一人、アスナがいたのである。
しかしレンが驚いたのはそこにではない。
それは……キリトの服装である。
キリトの異名は《黒の剣士》。その異名からもわかる通り、全身黒ずくめの姿でいる事から名づけられた異名である。
そんなキリトが……白と赤で統一されたKoB仕様になっていた。
レンはそれに驚いていたのだ。
「お前……とうとう、黒ずくめを卒業したんだな」
「違うっ!」
「まあ、わかっていたが。それが血盟騎士団でのお前の服装か」
「ああ、殆ど無理やり着せられた……」
そんな事出来るわけないだろ……とレンは嘆息する。
「はぁ……それで?これから何かあんのか?」
「うん、これからキリト君、ゴドフリーさんと出かけるんだ。あ、そうそう。シオンも同行するんだよ……それとクラディールも同行するんだけど……」
「ふぅん……俺には関係ないな」
レンは興味なさげにそう言う。
(レン君は……シオンがあんなに好き好きオーラ出してるのにどうして気づかないんだろ……)
アスナは胸中でそんな事を思っていたがすぐに自分のすぐ近くにも同じような存在がいた事を思いだし、ため息をつく。
「?いきなりどうした、アスナ?ため息なんかついて……」
「なんでもありませんっ」
そう言って頬を膨らませるアスナと訳がわからん…と諦めたキリト。
「それじゃあ、俺は帰るぞ。ちょっと調べないといけない事もあるし」
そう言ってレンは部屋を出て行く。
「何だったんだ、レンの奴……」
「さぁ……」
そうレンの行動に疑問を持つ二人。
この時、二人は知らなかった。レンの真意を……。
キリトSIDE
俺がいるのは五十五層の迷宮区前の渓谷。
「よぅし。ここで一時休憩!」
そう言ってゴドフリーが全員に言う。そして俺を含む全員が近くにある岩に腰を落ち着ける。
「では、食料を配布する」
そう言ってゴドフリーは食料をオブジェクト化して皆に投げ渡す。俺にもだ。
そして袋の中を見る。
もちろんそこには普通の黒パンと飲み物。
俺はため息をついて飲み物に口をつける。
しかし、俺と一緒に来ていたクラディールは飲み物に口をつけていなかった。
「……?……っ!」
俺は最初疑問に思っただけだったがすぐに俺は飲み物を投げ捨てる。
しかし時既に遅く、麻痺状態になってしまった。
(麻痺、毒……!?)
い、一体誰が……!?
見てみると、ゴドフリーもシオンも動かなくなっていた。
ただ、一人……クラディールを除いては。
「くくく……はーっはっはっは!はーはひゃひゃひゃはひゃ!!」
クラディールは気持ち悪い笑い声を出すだけだ。
「ど、どういう事だ……?この水を用意したのは……クラディール、お前ぇ……」
「ゴドフリーさん、早く解毒結晶を!」
そうだ、驚くよりこの毒を解毒する事が先決だ!
「早く、解毒結晶を!早く!」
そう言われてゴドフリーも急いで解毒結晶を取り出すが、麻痺毒であるため、動きが遅く、ようやく手に出てきた解毒結晶もクラディールに弾き飛ばされる。
「ゴドフリーさんよぅ……バカだバカだとは思っていたが、あんた筋金入りの脳筋だな!」
クラディールはそう言うと腰に差している剣を抜く。
「な、何をする……?」
「ひゃひゃひゃ!」
嘲笑うように……クラディールは剣をゴドフリーに振り下ろした。
狂ってる……!
そして俺とシオンがその光景を何も出来ないままに……ゴドフリーは殺されてしまった。
「よォ」
無様に這いつくばる俺の傍らにしゃがみこみ、ささやくように言う。
「おめぇみてえなガキ1人のためによぉ、関係ない奴を殺しちまったじゃねぇかよ……」
「その割りには随分と嬉しそうだったじゃないか」
なんとか会話を繋げながら打開案をひねり出そうとする。
「お前みたいな奴がなんでKoBに入った。犯罪者ギルドのほうがよっぽど似合いだぜ」
頼む……早く解けてくれ……毒……!
シオンの命も掛かってんだぞ……!
「それによ。おめぇさっきおもしれー事言ったよな。犯罪者ギルドが似合うとかなんとか」
「……事実だろう」
「褒めてるんだぜぇ?いい眼してるってよ」
左のガントレットを外し、インナーの袖をめくったその前腕の内側には………。
――殺人ギルド
その時、俺が言葉を失っているとその場にいないはずの、だが聞き覚えのある声が聞こえた。
「やはりな」
「あぁん?」
声が聞こえた方をかろうじて見てみると……そこには腰に剣を差したままの無防備なレンがいた。
「れ、レン……!?」
「な、なんでてめぇがこんな所にいやがる……!?」
「キリトとシオンの位置をマップで確認してたらここから動いてなかった。少し休憩にしては少々長すぎる……それに貴様の事もあったし、やってきたら案の定というわけだ」
レン……お前はやっぱりすごいぜ……。
「はん。お前が来た所でどうする?こっちには人質が「残念だけど無意味よ」なっ!?」
と、クラディールが刺そうとしたシオンは見知らぬ女性に助け出されていた。
「ごめんな、フィリア。こんな事頼んじまって……」
「いいよ、レンの為だし」
…………何だかこんなときに言うのもなんだが……甘い雰囲気出してねぇか?
「は、はんっ!だが、こっちには《黒の剣士》が「ああ、そっちに関してもモーマンタイだから」はっ?」
レンがそう言った瞬間……クラディールは吹っ飛ばされた。
「間に合った……間に合ったよ、神様……」
そこにいたのは……アスナだった。
「あ…す……な……?」
「キリト君……よかった、よかったよ……」
アスナはそう呟いて、俺の存在を確かめるように抱きしめた。
「アスナ……」
「アスナ。お前はシオンとキリトを守ってろ。フィリア、行くぞ」
「ええ」
そう言ってレンとフィリアと呼ばれた女性は剣を抜く。
「レン!」
「大丈夫だ……こんな奴、俺とフィリアが戦ってきた化け物クラスのモンスターに比べれば雑魚だ」
「そうね。ちゃっちゃとやっちゃいましょう」
「はぁ……はぁ……てめぇらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
クラディールは叫びながら剣を構えて突撃系ソードスキル『アバランシュ』を発動させて二人に急接近する。
「レン!」
しかしレン達は冷静だった。
まず、レンが真正面からソードスキルを当てて威力を相殺させる。そしてフィリアという女性が側面に回りこみ、クラディールの剣を破壊する。
あの剣は以前レンが破壊した物と同じ感じなので破壊する事は容易なのだろう。
問題はその後だ。レンとフィリアという女性はほぼ同時にクラディールの首筋に剣を沿わせていた。しかもゆっくりと。
ちなみにここまでほぼ一瞬の出来事だ。
「な…………なんだ、これは……?」
「お前の負けって事だよ、クラディール」
「負けってなんだよ……俺が負けるなんて……ありえねぇんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」
しかしそれでもクラディールは諦めていなかったのかフィリアという女性に殴りかかろうとする。
(まずい、女性に人を傷つける事なんて出来るわけがないっ!!)
俺はそう思い声に出そうとするが……フィリアという女性は
「は……?ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、俺の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!???」
「残念だったわね……私はこういうの、躊躇とかしないから。だから……さよなら」
そう言ってフィリアという女性は片手剣ソードスキル『ヴォーパル・ストライク』でクラディールの体を突き刺す。
「が……っ!?この人殺し……野郎が……」
「残念だったわね、私は元々人殺し……それも自分を殺してオレンジプレイヤーになったから……貴方みたいな外道を殺しても罪悪感も何も感じないの」
そうクラディールに宣告して……クラディールはポリゴン片へと変わった。
「キリト……済まなかった……あの時はまだ確証がなかったんだ……」
「あの時」とは……この前のエギルの店での出来事だろう。
「フィリアも……」
「いいよ、オレンジでいる事には慣れてるし……」
慣れてるって事は……彼女は元々オレンジプレイヤーなのだろう。
どうしてレンと出会ったのかはまた後で聞くとして……
「………………」
今の問題はシオンだ。
目の前で起こった出来事が理解できないのかまだ放心状態だ。
「シオン、とりあえず帰ろう……話はそこでするから……」
「…………うん」
そう言ってシオンとレン、そしてフィリアという女性は転移結晶で帰っていった。
「アスナ……」
「……ごめんね……わたしの……わたしのせいだね……」
それよりも問題はアスナだ。
悲痛な表情で、震える声を絞り出した。大きな目から涙があふれ、次々と滴り落ちた。
全身に不快な痺れが残っているが、かまうものか。
「ごめんね……。わたし……も……キリト君には……あ……会わな……」
だから、お願いだ。そんな顔をしないでくれ。
力の入らない両腕でアスナをそっと抱き寄せる。そのまま、彼女の桜色の美しい唇を自分の唇で塞いだ。顔を離すと首筋に顔を埋め、呟く。
「俺の命は君のものだ、アスナ。だから君のために使う。最後の瞬間まで一緒にいる」
そう言っていっそう強く抱きしめると、アスナも震える吐息を漏らし、ささやきを返した。
「……わたしも。わたしも、絶対に君を守る。これから永遠に守り続けるから。だから……」
その先は言葉にならなかったが、俺は固く抱き合ったまま、いつまでもアスナの嗚咽を聞き続けていた……。
SIDE OUT
そして所変わって……ここはフィリアのホーム。
「さて、どこから話そうか……」
「全部、話して……レン君の事がわからなくなってきた……」
「シオン……」
ちなみにフィリアは速攻でオレンジをグリーンに戻すクエストを終わらせて戻ってきた。
レンとシオンは驚いてなぜこんなに早いのかと聞いたが
「乙女の秘密よ」
そう言って一向に話してくれないのが現状である。
しかしシオンにとってはどうでもよかった。
「それで……どういう事なの?化け物クラスのモンスターと戦ったって……」
「ああ、説明するよ……正直言って俺の《銃》スキルもそこで手に入れた訳だし」
「えっ?そうなの?」
「ああ、それとこれから話す事は全て本当にあった事だ」
そしてレンは語り出した……自身が迷い込み、そしてそこでフィリアと出会い……そして、自分達が知らぬ内にこのアインクラッドの危機を防いだ事を……。
「最初はここはどこだって思った……だって気づいたら森の中にいたんだぜ?」
「そしてそこで私はレンに襲いかかったの……」
「えっ?じゃ、じゃああの時言ってたフィリアさんとの出会いって本当だったんだ……」
シオンは今でも信じられないらしい。
「そしてフィリアと出会ったときに……その階層ではありえない位のステータスを持つモンスターと出くわした……その時はフィリアと共闘する事によって事なきを得たんだが……その後、ある場所に俺たちは転移された。その場所の名前は……《ホロウ・エリア管理区》」
「ホロウ・エリア……?」
「ああ、まあ簡単に言えばシミュレーション用に作られたもう一つの空間と思えばいい。そこでは毎日のようにシミュレーションが行われている。もちろんそれには俺たちのAIが使われている」
「え、でも……AIって……」
「ああ、もちろんコピーだ。そしてそのホロウ・エリアに同じAIが存在する事はありえない事らしく……本物のAIデータがやってくればその複製のAIは消える手筈だったらしい……でも、フィリアのAIは消える前にフィリアと出会ってしまい……フィリアは錯乱し、ホロウ・エリアのフィリアのAI……まあ、ここでは仮にホロウフィリアと名づけよう。そいつを攻撃した事でオレンジ認定されたんだ」
「オレンジ……」
オレンジというのは簡単に言えば犯罪者である。
シオンにはフィリアがそんな人には見えてなかったがそれなら仕方ないと思った。
「そして俺たちはそのホロウ・エリアで冒険を繰り返し……俺は《銃》スキルを手に入れたって訳」
「でもそれだけじゃ終わらなかった。あいつが……現れたの」
「あいつ?」
シオンは二人が指すあいつが誰かを気になり聞く。
「あいつ……PoHが現れたんだ……」
「っ!?」
シオンは驚きで声が出せない。
それもそうだろう。PoHの名前は全プレイヤーに知れ渡っている。
PoH……そのユーモラスな名前からは信じられない程の男で、殺人ギルド『
それほどに恐ろしい男なのである。
「まあ、ホロウデータのあいつだったんだが……あいつはとんでもない事を企んでた……ホロウデータをアインクラッドにアップデートしようとしたんだ」
「?アップデート?それをしたらどうなっていたの?」
「……簡単な事さ。同じAIは存在しない。そしてアップデートされるって事はアップデートされた方が優先される……つまりはプレイヤーがいなくなるって事だよ」
「え!?」
「俺たちはその計画を阻止し……今に至るって訳」
「すごい……そんな事してたんだね……」
「ああ、正直言って何度もHPがレッドゾーンに突入した」
「でもレンは諦めなかった。諦めずに頑張った」
「ああ、頑張って頑張って頑張り尽くして……何とか計画を阻止したって訳」
「そんな事があったんだ……」
ああ、そんな事があったんだよ…とレンはソファに深く座り一息つく。
「私と関わらなくてもいいのよ?私、オレンジプレイヤーだったし……」
フィリアは申し訳なさそうに言う。
「そんな事ないよ。だってフィリアさん、助けてくれたじゃん!」
「シオン……ありがとう……」
そう言って静かに泣くフィリア。
(俺はお邪魔虫かな……)
女性同士の友情に男である自分がいてはだめだろと思ったのだろう、レンは家を出た。
外はもう既に暗くなっており、空には満点の星空が出ていた。
「星か……」
レンはその中の一つに狙いを定めると手で簡単な銃の形を取ると
「バンッ」
そう言って撃ち抜くフリをした。
「……なんて、な…………」
レンは嘆息しながら夜の街中を歩いた……。