相羽ういはの憂鬱   作:鯖太郎

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相羽ういはの憂鬱Ⅰ ①

どーも。

さて、突然だけど君たちはクリスマスやサンタといった類をいつまで信じていた?

幼稚園?小学生?まだ信じてる、というような人はピュアなのかバカなのかこちらとしては判断に困るんだけど、少なくとも俺は最初から信じていなかった。

 

いや、多少は信じていた時期もあるのかもしれないけど、サンタという存在を認識したのとほぼ同時に師匠に現実を突きつけられた。

「かいくん、サンタさんってまだ信じてる?」

当時2歳だった俺にクリスマスプレゼントと称してパソコンをプレゼントした師匠は確かこんなことを言っていた気がする。

そもそも2歳児にこんな質問をする師匠はちょっとおかしいような気もするが、まあ、師匠はこんな人だ。

 

そもそも施設暮らしの俺にサンタの存在を信じろという方が無理があるんじゃないかな。基本的にはプレゼントって施設の人からの手渡しだし、だいたいみんな貰うもの一緒だから。いや、別に哀れんで欲しくてこの話をした訳じゃない。

 

話を変えよう。

君たちはいくつになるまでテレビでやる心霊番組や超常現象といった類を信じていた?

これもまた、師匠に吹き込まれたせいで小学生になる頃にはあの手の番組が全部嘘だと教えられた。

 

さっきから師匠、子供の頃の俺に何を吹き込んでたんだろうか。

まあ、それはいいんだけど、少なくとも俺は小学生に上がる頃には非日常的で非現実的なものは大概存在していないって風に認識していた。

 

けど、俺も男の子だ。そういった類の存在がいたら、なんて考えることもある。とは言っても有り得ないとわかっているし、想像の中で留めている。

 

そうして俺は、この世界の普通さと師匠から貰ったパソコンにかなり慣れてきた中、普通の高校生になり、ソイツと出会った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

そもそも俺は出不精だ。

必要のない外出はしたくないし、高校は通信制のとこにしようと思っていたが、師匠や施設の人達にせっかくだから近くの公立高校に通った方がいいと言われ渋々1番施設から近い高校を選んだ。

何がせっかくなのか分からなかったが、師匠の言うことだし合わなかったらその時はその時だ。じわじわ不登校になってそのまま通信制に転校すればいい。

 

しかし、それにしても下見もしなかったから位置情報アプリで1番近い公立高校と言うだけで選んだせいで、この坂の存在は知らなかった。

もし知っていたら絶対に北高に行こうなんて思わなかったと思うし、すぐ近くの私学にしておけばよかった。

そもそも私学に通うお金はないからそんなことはできないし通わせて貰っているだけありがたいんだけどね。

夏や冬この坂道を登ることを考えると今のうちからフェードアウトの準備を始めた方がいいかもしれない。

 

そんなことを1人で考えながらなんとかたどり着いた教室で大概最後の方になる自己紹介の自分の番が来るのを待ちながら退屈な時間を過ごすことになるだろうと思っていた矢先だった。

 

背筋をピンと伸ばしたやけにハキハキとした動きで彼女は高らかに宣言した。

 

「ういはろー!東中出身の相葉ういはです!面白い事が大好きなので非現実的な体験をしたり、非現実的な存在の人は私のところに来てくださいね!」

 

やけにアイドルじみた所作と顔立ちから発された言葉はあまりにも衝撃的過ぎた。少なくとも俺は普通に過ごしたいしなんなら目立たずにフェードアウトしていく予定だったから関わらないだろう。そうタカをくくって忘れることに努めた。

 

「アウスアウマウです……えぇ……」

あんな挨拶するからほら、次の子困ってるじゃん…やけに頭の大きなシルエットの銀髪の子。

 

「アルスさん顔大きいですね!面白いですー!」

 

「はぁ??何言ってんだおめぇ!」モッチーン

 

どうやらあの銀髪の子はアルスと言うらしい。そしてういははアルスをターゲットにしたらしい。こうなったらういはのターゲットがわざわざ席の遠い俺に向くことはないだろうし一安心だろう。

 

ようやく俺の順番が回ってきたが施設のことや両親のことには触れずとにかく無難に、どこにでもいるモブのような挨拶を済ませた。

 

自己紹介が済んだら即席替えが始まった。うちの担任はなかなかせっかちなのかもしれない。せっかくういはから離れた席だったが、こればかりは仕方がない。少しでも静かなとこになるよう祈りながらくじを引いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

知ってた。俺の運のなさは。

少しでも静かなところにと願った結果がこれである。隣にはおもちゃを目の前にした犬のように目を輝かせたういはがこちらをじっと見つめてくる。

 

黙ってればアイドル並みの容姿をもったういはがこちらを見つめてくるのはどうも落ち着かない。ただ、口を開けば何を言い出すか分からない時限爆弾的な怖さがある。このまま黙っていてくれたらありがたいんだけ…

 

「黛さん!」

 

ダメだった。

 

「何?」

 

「黛さんってめちゃくちゃ細いですね!ポキッと折れちゃいそうですー」

 

彼女の第一声がこれだ。サイコパスかなにかだろうか。

 

「出不精だからね」

 

「黛さん!」

 

「何?」

 

「一緒に部活やりましょう!」

 

何がどうなってこうなるのか全く分からない。この流れだと俺の骨をポキッと折る部活になりそうなんだけど。

 

「ほら、アルスさんもいますし、楽しい部活になりそうじゃないですか!」

 

「うぇっ、わ、私?なんで私は入る前提になってるのさ…しかもなんの部活だよ…」

 

どうやらういはにはもうアルスが一緒に入部するのは決定事項らしい。

 

「それは今から考えるので大丈夫です!なんなら私、部活作る予定なので!」

 

「ますます不安だよぅ…」

 

「ほら、アルスも困ってるみたいだし1回ういはさ、順序だてて詳しく説明してよ。あ、アルスって呼んで大丈夫だった?ういはも呼び捨てで大丈夫?」

 

「うん、いいよー。私もまゆくんって呼ぶね」

 

「大丈夫です!」

 

「で、ういはは部活を作って何をしたいの?」

 

「楽しいことです!」

 

「抽象的すぎるでしょ」

 

「具体的な内容はないんですかね…」

 

「それは活動しながら見つけていけばいいんじゃないんですか?」

 

「まゆくんどうする?もう不安しかないんだけど」

 

「いや、逆にこの状況で不安を感じない人がいたらその方がおかしいよ」

 

「ほんとだよ…」

 

これだけ言われてもういははニコニコしてるし何考えてるのかほんとわかんない。アルスと何度も顔を見合わせては怪訝な表情をうかべているがういはには何処吹く風と言った感じだ。

 

「そもそもういはさ、部活作るには部員が5人必要なのと活動内容を先生に承認してもらわないとダメなの分かってる?」

 

「え、そんなのあるんですか?」

 

「知らなかったんだぁ…」

 

「部活作ろうとか言うからちゃんと調べてきてるのかと思ってた…」

 

どうやらういはは1度決めたらとりあえずやってみるタイプらしい。計画性とか根回しといった言葉は彼女とは無縁だろう。

 

「んー…じゃあ1人ずつ新入部員候補呼んでこよう!それなら何とかなるでしょ?」

 

「いや、でも活動内容も分からない部活にホイホイ来る方がおかしいって…」

 

「あ、黛さん友達少なさそうですし5人いれば大丈夫なので黛さんは頑張らなくても大丈夫ですよ?」

 

めちゃくちゃ煽られた。

 

「いや、俺だって2人くらい簡単に部活に連れてこれるけど?」

 

「じゃあお手並み拝見といきましょうか!」

 

「まゆくんもしかしてちょろい…」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

どうしよう。

施設暮らし長いから小さい子との接し方は分かるけど同年代ってどうやって話しかければいいんだろうか。

数分後、俺は中学校の先輩2人に声をかけることにした。

 

「桜さん、久しぶり」

 

「おぉーまゆ!通信制のとこ行くって言っとったからもう会えんと思ってたわー!」

 

久しぶりに会った桜さんはピアスが空いており、当然だが大人びた雰囲気が出ていた。

 

「まあ、色々あってこっちに来ることになった」

 

「そうなんや!また一緒にマ○クラしよや!」

 

桜さんとは中学の頃はよく同級生の明那と3人でマイクラをして遊んでいた関係だ。明那は別の高校に進学したため離れてしまったが、また今度通話しながらマイクラを遊ぶのもいいかもしれない。

 

「是非。ところで桜さん今部活とか入ってる?」

 

「いや、入ってないけどどうしたの?」

 

「話せば長くなるんだけどさ、簡単に言うとクラスの人が部活作るから人を集めてくれって頼まれてて」

 

「へぇー面白そうやん!で、なんの部活なん?」

 

「それが…まだ決まってないらしくて」

 

「それはなかなか面白そうな子やね…あわよくばサンプルに…」

 

「何か言った?」

 

「いや、面白そうやし入ってみようかなって!」

 

「入るんだ…了解。伝えておくね」

 

思ったよりすんなり桜さんが了承してくれた。本当にいいのか心配になってきたけど、これでとりあえずういはに煽られる筋合いはなくなったんじゃないかな…そう信じたい。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

2人目だが、できるならば極力声をかけたくなかった。

というかよっぽどの事がない限りは誘いたくない。

1つ目の理由として、所属している教室が遠い。そんな理由で、と言われても困るが、そもそも出不精の俺が学校に来ていること自体がなかなか頑張っていることだと思う。それなのに自分のため以外、なんなら初対面のやつのためにわざわざそこまで言ってなにかするという行為がめんどくさいのだ。

2つ目。確実にめんどくさい事になるのが目に見えてるからである。俺と彼女は腐れ縁というかなんというか、常にお互いに煽っていないと気が済まない間柄で、このようにわざわざ教室まで出向いてなにかお願いをするとなると確実にめんどくさい事になる。ただでさえ肉体的に疲れているのに精神的にも疲れる作業をしに行かねばないというのは非常に嫌なものがある。

 

こうやって言い訳をグチグチあげている間に着いた。着いてしまった。

 

「リリさん」

 

「どうしたんですか?黛さん」

 

「部活に入って欲しい」

 

「へぇー?ほぉー?はぁーん?」

 

やっぱり。

 

「黛は、わざわざ遠くの教室までやってきて、それまでして私と一緒に部活したいんですかぁ?」

 

非常にうざい。

 

「いや、そういう訳じゃないんだけど」

 

「ん?じゃあなんで黛はこんなとこまで来たのかな?ん?優しい優しいリリ先輩が聞いてあげようか?」

 

グーで殴りてぇなぁ…

ただこうなることはわかっていたのでこちらも無策で来た訳では無い。

 

「この前剣持さんと伏見さんと3人でなんかトリg…」

 

「ごめん。ほんとごめん。黛、私が悪かった。条件を聞こうじゃないか?な?わざわざここまで来てくれた可愛い後輩の願いを無下にするほどみr…私は薄情者じゃないですから。ね?」

 

この前なんか近くの公園で3人でやってたのを偶然見かけたので脅し、もとい説得に使わないわけがなかった。珍しく出かけた日にこういうのを目撃するとどうも気分がいい。

 

「助かる。まあ、こういう事情があって…」

 

簡単にういはと出会ったこと、部活を作ろうとしていること、活動内容はまだ決まっていないことを簡潔に話した。

 

「へぇー、なんか面白そうじゃないですか。いいですよ。私もそれ参加します」

 

リリさんはこうやって普通に話している分には優しくって気さくな、やけに同性に人気の高い先輩なのだが、どうも俺と話す時には急にクソガキになる。俺としてはこの距離感は嫌いではないし、むしろ好ましいと思っているのだが、めんどくさい時もある。今日みたいな時がまさにそれだ。

 

それはともかく2人集めて何とか5人揃えたのであとはういはに2人を紹介して部活をたちあげる書類を提出するのみだ。

 

 

 




はじめまして、鯖太郎と申します。

文章を書いた経験が少ないため稚拙極まりない文章で申し訳ありませんが、言い出しっぺの法則を遂行すべく地力を育ててる段階でございます。

思いつきで適当に書き始めたのでいつまで続くか分かりませんが感想などいただけたら嬉しいです。
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