相羽ういはの憂鬱   作:鯖太郎

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エンドレスサマーⅠ ①

 そんなこんなで始まったういはによる夏満喫計画、という程の計画性を持ったものではなく、ただがむしゃらに書き連ねられたリストを消費すべく集められてから数日。未だ俺のスマホが相羽ういはからの着信を示すことはなく、もしややりたいこと集めるだけ集めて1人で、もしくは俺をハブって消化し始めてるのではないか、なんて考え始めた気だるいが至ってごく正常なお盆手前の夏の盛りの日の事。

 施設の子供たちと一緒にテレビで甲子園を観戦していた。俺に全く縁もゆかりも無い県同士の戦いだけど、施設の子達につられて負けている方を何となく応援していると、俺のスマホが着信音を高らかに叫んだ。

 

 ……ういはだ。

 

「黛さーん! お暇してますかー? してますよね! なので2時に駅前集合でお願いします! ではまた後で!」

 

 一方的に自分の要件だけを話すだけ話したら即切られた。

 と思ったらすぐにまた着信音。これもういはからだ。

 

「すみません、言い忘れてましたが水着一式とお金持ってきておいて下さいね! ではまた!」

 

 行きたくない。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「黛さんおそいですよー! やる気が見えないですよ! わたしを待たせるとはどういうおつもりなんですか!」

 

 ちゃんと15分前に来たと言うのにどうして毎回俺は最後になるんだろうか。というかアルスが俺より早いのは本当に解せない。

 

「は? やんのか? ボクのことなんだと思ってんだぁ?」

 

「つるつる饅頭」

 

「はぁー!? お前っ!ぬぅおおおおお!」

 

 どうどう。

 

「それじゃ出発しましょ! もう5分後に電車来ますから急いで行きますよ!」

 

「一応聞いておくけど……どこに?」

 

「決まってるじゃないですか、市民プールですよ!」

 

「なんでプールなのさ?」

 

「いいですか? 黛さん、夏には夏らしいことをしなきゃ行けないんですよ! 高校1年生の夏休みは人生で1度きり! このチャンスを逃してしまったらもう二度と戻ってこないんですからね? だから今やるんですよ!」

 

 1度きりね……あとなんか今のういはの言い回しどことなく剣持さんぽかったな。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 さて、そんなこんなで俺たち一行は市民プールに着いたわけだけど……遠くない? いや、まあ俺たちの交通手段と財政状況で行けるプールはここしかないけど。

 一応南の方に複合スパリゾート的な施設はあるんだけど1700円という大金は高校生の俺たちにはかなり辛い。

 それに東西の移動は電車が通っているから結構便利なんだけど、南北の移動が結構不便なんだよね。

 そこに行くにはバス乗り継ぐか電車とバスで向かうしかないから、ただでさえ高校生には高い施設利用料に加えて交通費も重なると自ずと選択肢からは除外される。

 

 その点この市民プール、と言うべきかもはや庶民プールという方が似つかわしいような、50mプールと浅い幼児用プールがあるだけのここは500円で利用出来るからね。

 さっき言った施設のようなウォータースライダーも温泉も屋内プールも売店もデッキチェアは何も無いけど、ういはの言う「高校1年生の夏休み」らしいプールはこの庶民プールじゃないかな。

 

 そんなことを考えながらういはの誘いを断り、先客の合間を縫って数少ない日陰争奪戦に勝利した俺と到着後ういはに物理的に振り回されてダウンしたアルスの所へういはが幼い女の子を連れてやってきた。

 迷子……かと思ったけど隣にいるリリさんと桜さんが申し訳ないような恥ずかしいような、困惑方面の様々な感情を煮詰めた顔をしてるから多分違うな。

 

「この方たちが私のお友達です! 黛さんに言ったらなんでもやってくれますからなんでも言ってくださいね!」

 

「「はーい!」」

 

 どうやらその辺にいた子たちを手懐けて連れてきたらしい。多分だけど一般的に友達ってそんな扱き使う使われるみたいな関係性じゃないと思うし、このことをエピソードトークとして配信に乗ろうものならなんか怖いことになりそうな気がする。剣持さんとか。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「さて、というわけで前回少し話しましたけど夏休みの行動計画を立てていきましょう!」

 

「あれ、前回何するかとか決めんかったっけ?」

 

「あの時は何するかしか決めてないので、今日は具体的な日程を決めていこうかと思いまして」

 

「あー、確かに。お祭りとか気が向いた時にできるものじゃないものもありますしね?」

 

「そうだね。この辺だったらお寺か神社の夏祭りになると思うけど」

 

「たしかぁ……うんどうこうえんの☆#○×+%¥$÷~……」

 

「待ってアルスほんとにわかんないんだけど」

 

 プールの疲れも相まってついにアルス言語野が消失してしまったのだろうか。

 

「あー、そういえばそっちだと盆踊りもありますもんね……アルスさんナイスです!」

 

「ういはもういはでなんで聞き取れんのさ……」

 

 やだ、私の同期テレパシー使えちゃう? 

 

「テレパシーじゃないですよぉ黛さんの耳が悪いんじゃないんですか?」

 

 あ、テレパシーじゃないわ。ただの思考盗聴だな。

 

「いや俺じゃないでしょ。現に桜さんもリリさんもアルスの言葉聞き取れてないでしょ?」

 

「あはは……ちょっとモチモチしてて聞き取れへんかったかなぁー……」

 

「黛さん大丈夫です。あのアイドルがおかしいだけですから」

 

 良かった、これからアルスの発言一生聞き取れないかと思った……まあ今も聞き取れないこと結構あるけど。

 

「まあ、アルスさんは置いといて日程決めていきましょう! 皆さん習い事とかってありましたっけ?」

 

「俺はないね。みんなは?」

 

 3人も口を揃えてないと告げる。

 

「あ、でも夏休みですし最低週2回、出来れば3~4回は配信したいなって思うんですけど……どうすかね?」

 

「まあでも夕方に解散したら夜の配信できるじゃないですか?」

 

「いやぁ……私外出て活動した後にまた配信する体力あるかなぁ……あはは……」

 

「多分だけど俺とアルスはこのまま帰ったら明日の夜まで寝るくらいは疲れてるからね?」

 

「えぇー、じゃあ予定は最大週に4回までにしておきますね……」

 

 お預けを食らった大型犬のように分かりやすくしょぼんとなるういは。ブンブン振っていたしっぽが悲しげに垂れていく様が見えたまである。というか毎日外に出ようものなら始業式を待たずに人生の幕が降りかねない。体力的な問題で。

 

「いやぁ……それでも十分多いと思うんすけどね……黛、しんどかったらいつでも言うんだぞ? 優しいお姉さんが嘲笑ってやるからな?」

 

「最悪じゃん。この前スマブラで俺に舐めプされた上に負けて萎え落ちしたからってそんなヤケにならなくていいんだからね?」

 

「はぁ? 今それ関係ねぇだろうがよぉ!」

 

「ちなみにですけど黛さんこの前、おふたりのスマブラの動画を部活全体のディスコに貼ってましたよ?」

 

「はぁ!? 黛ッ!? お前ッ……黛ィ!」

 

「フン」

 

「フンじゃねぇよ! ドヤ顔してんじゃねぇよぉ! 黛お前覚えとけよ!」

 

 よし。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「辞めます? いいっすよ辞めても」

 

 はぁぁぁぁぁぁ…………どうしてこうなった? 

 

 

 

 事の発端は先日のスマブラ事件まで遡る。

 経緯としてはTwitter上でのやり取りの中でかかってこいよ、などとリリさんが煽るもんだからスマブラで決着を付けようと言うことになったんだけど、まあ、結論から言うと……めちゃくちゃリリさんが弱かった。

 具体的には舐めプをしようとして最後の切り札をリリさんのいないところに打ったらそこに飛び込んできた。途中からは煽るのも申し訳なくなり、今のいいじゃん、などと言っていたらリリさんのプライドを粉々にしてしまったらしく復讐としてホラゲーを押し付けられたのである。

 まあ、先輩もいるディスコに貼ったのもあるけど。というかそれが5割くらいある。

 

 そんなこんなで半ば無理やり配信枠を取らされ、プレイさせられてるんだけど……正直なところ俺はホラーゲームがあまり得意では無い。

 そしてこのゲームはリリさんが既プレイということもあり定期的に煽ってくる。ちなみにリリさんもホラーゲームそのものは苦手である。そのくせ煽ってくるのだから非常にタチが悪い。夕陽リリを許すな。

 

 そんなこんなで罰ゲーム的な感じでホラゲー配信をさせられているのだが、そもそも昨日は前から言っていたバイトをやってて割と疲れているのは疲れている。やりたいことリストのバイトをやるついでに、盆踊りに着る浴衣を買うためのお金を稼ぎましょう、とういはが言い出したこともあって単発のバイトをしていたのだが、その内容はスーパーで着ぐるみを着てひたすら子供に風船を渡す、というものだった。当然この炎天下俺(とアルス)が耐えられるはずもなく、開始30分で2人揃ってダウン。

 俺とアルス2人で店長さんに話して、代わりに店舗のホームページと運用マニュアルを作成、これで風船配りのバイトの埋め合わせという形にしてもらった。アルスに案を出してもらいながら俺がページを作成していくという形でやったのだが、完成したホームページを見せるといたく感動した様子で喜んでくださり作った側としても冥利に尽きる。

 いやー、パソコン詳しくてよかったー。

 

「黛さん? 進んでませんよ?」

 

「いやー、パソコン詳しくて良かったなって」

 

「何の話ですか。現実逃避しないでください。ほら、続きやりましょ?」

 

 ほんっとにやりたくない。

 今ゲームはというと第二夜が進行中なんだけど、昨日居た先輩キャラがレジに居ない。軽く探してみたんだけどトイレにも店内にも居ない様子だし、あとはバックヤードだけだけど……

 

「こっち行くの怖い……とりあえずタイムカード切るか」

 

「怖いってぇ……「言ってない」……言いましたよねぇ? あれれぇ?」

 

 こいつ揚げ足ばっかり取りやがって……自分が安全なポジションにいるからって……

 

 

 

 

 バァン!! 

 

 

 

 

 探していた先輩はロッカーの中に隠れていたらしく、突然大きな音を立てて脅かしてきた。

 

「……………やめ……よ?」

 

「辞めますぅ? いいっすよ辞めても」

 

「いいっすよ? 第二夜、なんも起こらずこんな中途半端なところで。もったいないっすけどねぇ、いいゲームですけど。まあしょうがないっすねぇ黛さんが辞めたいって言うなら……しょうがないっすよねぇ! ゲーム的に何も始まってないのに……起すら起きてないのに……黛さん辞め……」

 

「じゃあやる。やる。やるから」

 

「おうおうおう、あ、やるんですかぁ?」

 

「1度やったゲームだからね」

 

「さっすが黛さん! ははっ」

 

「あぁマジ……」

 

 絶対泣かす。こいつ。覚えとけよ。

 

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