相羽ういはの憂鬱   作:鯖太郎

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エンドレスサマーⅠ②

 リリさんとホラゲー配信をした(させられた)翌朝、体力的にはともかく精神的に疲弊しまくっていた俺がMPを回復させるべく惰眠を貪っていると例のごとくういはからの着信によってたたき起こされた。

 

「おはようございます、黛さん! 健康的な生活には朝から自然と触れ合うことがかんじんなんですよ? 黛さんほっといたら部屋の中に根っこ生やしてきのこになっちゃいそうじゃないですか」

 

「誰が陰気でじめじめした男なのさ」

 

「まだそんなこといってないじゃないですかー。黛さんったら卑屈ですねー。そんなんじゃモテませんよ? それはともかく今から2時間後に森林公園集合で! 動ける服装で……あ! でも長袖長ズボンで来てくださいね! それじゃ!」

 

 ……まだって言った? 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「全員集合しましたね! 遅刻者0とは大変喜ばしいことです!」

 

 というわけで森林公園に来たんだけど……熱い。暑い超えて熱い。それもそのはず、こんな夏真っ盛りの日に長袖長ズボンで直射日光の下に晒されようものならこもりまくった熱と容赦なく照りつける太陽のダブルパンチで呼吸はおろか生きてるだけでHPがゴリゴリに削られてる気分がする。というか実際に削られてる。まだ8時半だというのにこの暑さだと昼には体が干からびていそうまである。

 ういはがなぜあんなに元気なのかほんとに度し難い……。

 

「まずは皆さん一人1セットこれ持ってってください」

 

「虫取り網とかご……ういはちゃん? これ、何すると? もしや……」

 

「やりたくないよボク!?」

 

「君たちのような察しのいいガキは好きだぜ、虫取り大会です!」

 

 虫取りか……いや、虫に対してそこまで嫌悪感があるわけじゃないけど好き好んで触れ合いたいわけじゃないし……あと捕まえるみたいな俊敏な動きできないし。

 

「今回の様子は後々私のチャンネルに動画としてアップするつもりなのでみなさん気合入れてくださいね!」

 

「ちょ、え? そんなこと聞いてないんやけど?」

 

「あれ、言ってませんでしたっけ? まあいいですよね! カメラは順番こに回していきますからねー」

 

「何も良くないよぉ……」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「第1回!」

 

「「「「「北高U-tu部虫取り大会!」」」」」

 

「はい! ということで始まりました第1回北高U-tu部虫取り大会に参加してくれたメンバーはこちらの方々ですー」

 

「はーい、未来人の夕陽リリです」

 

「こんりつきーん、桜凛月ですー」

 

「どーも、黛灰、どうぞよろしく」

 

「アルスァルマルデウ」

 

「せーのっ! ういはろー! アイドルライバーの相羽~ういは~ですー!」

 

「一人挨拶聞き取れませんでしたが、今日は何するんですか?」

 

「今日は皆さんには虫取りをしてもらいます! ルールは簡単、セミ、カブトムシ、クワガタであれば種類は問わないので、今から5時間で一番多く集めた人の勝ちです!」

 

「「「「5時間!?」」」」

 

「あれ、足りませんでした? 皆さんがそう言うなら日没まででもいいですよ?」

 

「違う違う、一時間でも俺たち死ぬから」

 

「え~、一時間じゃ見つからないかもじゃないですか」

 

 見つからなくてもいいんだよ……まあ、5時間あるとはいっても間の2,3時間は適当に休んでおけばいいしね。お互いに見張るわけじゃないし……

 

「ちなみにさぼる人がいそうなので、ある程度同じような場所を探してもらいますし、念のためお互いの場所や移動速度などはアプリを使って監視できるようになってます! 黛さん、アルスさんの考えそうなことはお見通しですからね?」

 

「「う、うわぁ……」」

 

 俺……生きて帰れるかな……

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「はい、とりあえずオープニングはこんな感じでいいですかねー」

 

「ういはちゃん、5時間って本当ぅ? ボク、死ぬよ?」

 

「大丈夫ですよ! 人間そんなに脆くないですから! ぎゅってしたらパンってなるかもですけど疲れるくらいじゃ死にませんから~」

 

 ぎゅってしたらパン……? 普通人間ってそんなことにはならないでしょ……

 

「ういはちゃん例えが怖いよぅ……」

 

 定期的に人間を辞めますがお使いの相羽ういはは正常です……ってとこか。何言ってんだ俺。

 

「ういはさん、ちょっと質問なんですけど」

 

「はいなんでしょう?」

 

「カメラ交代でやるーって仰ってましたけどどういう順番とか決めてます? いや、決めてないならないで全然いいですけど」

 

「あー、決めてなかったですね……LINEのくじ引きでいいですか?」

 

「そうですねー、悪くないんじゃないですか?」

 

「そやねー、すぐできるしね」

 

「ボクも……賛成……」

 

「ういは、早くやろう。アルスがそろそろ溶ける。……俺も」

 

 アルスが著しく体力削られてるせいでバレてないかもだけどそろそろ俺もやばい。なんでずっと日差しの下でやんの? 早く日陰入ろうよ……

 

「確かにせっかく集まったのに最後まで楽しめないのは可愛そうですもんね!」

 

「いや、そうじゃないんだけど……いやもうそれでいいや。早くやろう」

 

「黛さんが説明諦めて適当になってる……はは、逆にやる気ある人みたいになってますよ?」

 

「1秒でも早く終わるならやる気あるフリでも何でもするよ……」

 

「大分重症っすね黛さん……普段から外でないからですよ? 夏休みは外出増やしたらどうっすか?」

 

「そもそも今の環境下で外出る体力がないから引きこもるしかないんだってば。夏場歩き回る俺見たことないでしょ」

 

「そりゃ黛さんと知り合ったの最近ですからねー」

 

「あぁ、そうだった……ややこしいね、それ」

 

 俺とリリさんは幼なじみとまでは行かないが俺が施設に入ってしばらくしたくらいの時の唯一施設外の遊び相手……という存在しない記憶を俺に植え付けることでういはに接触しようとしていたらしい。

 正直俺としてはリリさんと遊んでた記憶思いっきりあるからそんなこと言われてもあんまり実感は無いから言われるまで普通に忘れてたんだけどね。

 

「ルーレット出来ましたよ! じゃあ早速回しますねー」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「中間発表〜!」

 

「いえーい(低音)」

 

「どんどんぱふぱふー」

 

「やんややんやー」

 

「わぁー」

 

「皆さんテンション低いです! やり直しさせますよ!」

 

「いえーい!!!」

 

「どぉんどぉんぱぅふぱぅふぅー!!」

 

「やんややんやー!!!」

 

「わぁー!!」

 

「やれば出来るじゃないですか! というわけで中間発表行きましょー!」

 

「ま、待って……息が……もたない……から……」

 

 虫かごがそろそろいっぱいになるかもしれないということで、2時間強が経ったところで中間発表を行うことになった……のだが、ういはからの要求につい答えてしまった結果酸欠になった。ちょっ、誰か酸素缶持ってない……? 

 

「はい、黛さんが落ち着いたところで捕まえた虫の数を発表して逃がしていきましょう! まずはアルスさんお願いしまーす」

 

「あい、ボクは3匹とれたぉ」

 

 ……だいたいみんな3~5匹程度捕まえたみたい。まあ、そんな簡単に捕まえられるものでもないし、全員ちょっとビビってた節があるので(ういはを除く)少し数は控えめとなった。そしてラスボスういはだが……既に虫かごがすごいことになってるんだよなぁ……

 

「はい! 最後私ですね! ちょっと多いので逃がしながら数えますねー」

 

「いや、ういはさん多すぎません!?」

 

「うわぁ……あっこまでいくとちょっと気持ち悪いなー……アルスちゃん?」

 

「ひぃぃ……おかしいって……」

 

 アルスが正しい。

 

「いーち、にーい……はい! 全部で14匹です!」

 

「つえぇぇ……もうお前の優勝でいいよ相羽ういは……」

 

「いかれてんだるぉ……」

 

「はい、ということで引き続き後半戦も頑張っていきましょう!」

 

「「「「おぉー……」」」」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「まゆー」

 

 後半戦も残り30分を切った頃、桜さんがウキウキしながら呼びかけてきた。嫌な予感がなーんとなくする。

 

「どうしたの?」

 

「いやー、この子他のカブトムシとかと全然形違うからなんなんかなぁって思って……」

 

 そう言って桜さんが渡してきた虫かごの中には上下に大きな2本のツノを持ち、手のひらを優に超えるサイズ感のある、ムシキングでつよさ200の世界最大最強の奴がいた。……あれ、でもヘラクレスってこんなんだっけ? 

 

「やばっ、ヘラクレスじゃんこれ」

 

「ヘラクレス?」

 

「これ外来種っていうか、そもそも日本には自然で生息してない種類で飼育されてる個体しか居ないはずなんだけど……」

 

「はぇー、見つかっちゃ不味いやつ?」

 

「不味いね。ういはに言うと新しい問題増えそうだし……あ、あそこの金髪のお兄さんに聞いてみる?」

 

「そやねー、あの人も虫取りに来てるみたいやし相談してみるかぁ」

 

 さすがに野生環境に生息していないだろうからリリースは不味いだろうしどうしたらいいか分からないので近くにいた人に助言を求むことにした。

 

「すみません、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

 

「はい、どうされ……あ、りつきんじゃん! それと黛くん……だっけ?」

 

「はい、そうですけど……あ、成瀬さん?」

 

 声をかけてみたお兄さんは部活の先輩である成瀬鳴だった。こんな偶然があるんだな……って思ったけどういはと知り合ってから偶然と思いたい色んな出来事があったし今更感はあるな。

 

「そうだよー、黛くんとりつきんも虫取りに来たの?」

 

「そうなんよぉー、ういはちゃんに誘われて来たんやけどさぁー、ちょっとこれ見てくれん?」

 

「んー、どしたん……っ!? ヘラクレスリッキーブルー!!?? うっそだろおい!? え!? なんでここに!!?」

 

 アイエエエ! ナンデ!? ニンジャナンデ!? 

 

「いやー、なんかその辺におったっていうか……」

 

「いやいやいやいやいや……あー、でも飼い主さんが捨てたとかそんな感じかもしれないし……」

 

「どうしたらいいとかはある?」

 

「基本的に日本の生態系で外国のカブトムシは生きていけないはずだから一旦俺んとこで預かった方がいいかな? 別にりつきんたちで飼うって言うなら全然良いしなんなら色々設備貸したげるけど……どうする?」

 

「んー、俺は施設だし勝手に生き物飼えないからパスかな」

 

「私も世話する余裕そんな無いかもしれんしなぁ……ういはちゃん達は?」

 

「アルスとリリさんは基本的にそこまで虫好きじゃないしういはに話したら学校で飼おうとかまた色々言い出しかねないから成瀬さんに飼っといて貰うのが一番いいと思うかな」

 

 どうせ可愛いじゃないですか! 部のマスコットにしましょうよ! って言い出して俺たちが世話をするオチが見える。もはや聞いたことある。

 

「おっけ、んじゃ俺貰ってくね? ……ひひひリッキーブルーだぁ」

 

「ありがと、こっちとしても助かる」

 

「いやいや! まさかこんな形でリッキーブルー手に入ると思わんかったからラッキーでしかないよ……ほんとに貰っていいんだよね?」

 

「うん。お願いするね」

 

「了解! 大切に育ててやるからなー」

 

 そう言いながら成瀬さんは自分のカゴに入れて帰って行った。背中から喜びが滲み出てるんだけど大丈夫かな? 注意散漫とかで車に轢かれそうな勢いだもん。

 

 ……そういや今ってカメラマン役リリさんのはずなんだけど変わってからほとんど見かけないな。どこに行っt……

 

 

 

「喰らえぇっ!」

 

「うわっ!!??」

 

「わっ!?」

 

「撮れ高ありがとうございます! 黛さぁん?」

 

 あいつ……姿を現さないと思ったら突然目の前の茂みから俺に向かってセミをぶん投げて来た……いや、ほんとにびっくりしたしなんなら隣にいた桜さんも驚いてたし……。俺の目の前で腹抱えて笑ってやがる。あのクソガキ絶対許さねぇ……

 

「おい、夕陽」

 

「な……ふふっ……なんですか、黛さん? なはははは!」

 

「さっきそこにカエルいたんだけど……俺も投げていいよね?」

 

「誠に申し訳ございませんでした」

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