相羽ういはの憂鬱   作:鯖太郎

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相羽ういはの憂鬱Ⅰ ②

「とまあ、俺が連れてきたのはこの2人だね。」

 

翌日、放課後に集合と言われていた俺は呼んできた2人の先輩の前に立ってういはに得意げに言い放った。

 

「黛さん、ほんとに友達いたんだ…」

 

「ごめん、まゆくん、私も無理だと思ってた…」

 

アルーマル、お前もか。ちょっと無理があったかもしれない。

 

「頭でっかちなのはアルスだけだよ。」

 

「はぁぁぁあああ?お前ぇ、言っていいこととよぉ、悪いことがあるだろぉがよぉぉぉ」ドコドコドコドコ

 

よし。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「で、ういは。一応これで5人集まったから正式に部活動として申請できるようにはなったんだけど、これからどうするかって言うのは考えて…」

 

「どうしましょうか黛さん!」

 

「ないんだね。」

 

「とりあえず部長は私でしょ?で、アルスさんが副部長、黛さんは…なんかパソコン得意らしいので雑務でお願いします♪」

 

俺が雑務なのと、ういはが部長をやるのはともかく、アルスが副部長なのは何故だろうか。あいつにできるのはういはに引っ張り回されるくらいなのに。あと既にういは、俺が連れてきた2人のこと忘れてるんじゃないかな。

 

「え、なんで私が副部長なの?」

 

「ほら、アルスさんって顔が広いじゃないですか。あはは!」

 

「ねぇ、ういはちゃん私になんか当たり強くない?ねぇ?」

 

ういはがアルスをいじり、アルスはそれに元々でかい顔をさらに膨らませて怒る。それを見てういはが笑う。

これがここ数日で出来上がった鉄板の流れらしい。

 

そんな小競り合いをする暇があるなら早く部員の紹介をしたいんだけど…アルスはともかくういはは新入部員候補のことは完全に忘れてるような気がする。

 

「あのぉー、黛さん、私たちこれ何待ちですかね…」

 

「あぁー…ういは、この2人の紹介まだなんだけど。」

 

「あ!忘れてました!すみません、自己紹介をお願いします♪」

 

「私たちやっぱり忘れられてたんやね…桜凛月です!よろしくぅ!」

 

「どうも、夕陽リリです。黛とはなんというか、腐れ縁ってやつですかね。よろしくお願いします。」

 

「はじめまして!相羽ういはです!桜先輩と夕陽先輩ですね!」

 

「アウスアウマウデス…」

 

ういはは初対面のふたりに物怖じせずガンガン行く姿勢は相変わらずだがアルスはどうした。フグみたいな顔しやなって。アルスの滑舌が完全に溶けてるしういはは…もうほんとに分からない。

 

「ところで桜先輩と夕陽先輩は何か面白い方たちだったりするんですか?魔法とか超能力が使えたり、未来人だったり、宇宙人だったり!」

 

ヤバいやつだと思ってたけどういはがここまでやばい人だとは思っていなかった。さすがに高校生にもなるとそんな存在を信じるほど…

 

「あはは…ちょっと心当たりはないねー」

 

え、桜さんもしかして?

 

「うぐ……私も知らないですねぇ…」

 

え、リリさんもしかして?

…いや、そうはならないでしょ。

 

「う、ういはちゃん?どうしたの急にさ?」

 

なるんだ。てかアルスもなんだ。

俺の周り変な人しかいなかったじゃん。いや、さすがにそんなことないでしょ。師匠…は俺が言うのもなんだけど変わってる。2歳の俺にパソコン与えるとか俺ならしない。

ハヤトさんは…最近代表取締役とかなんかに就任したからそろそろ大人になるかと思ってたけどこの前ゾイドのフィギアで『これ凄くないですか!?黛さん、これ凄いですよ!』ってはしゃいでたあたりまともじゃない。社員にあの姿見せられるんだろうか。

 

…俺の周りやばい人しかいないじゃん。残ってるのは…そうだ、施設の人達は優しいし大丈夫かな。今日お菓子でも差し入れしよう。

 

「んー…残念です…でも黛さんの知り合いっていう…なんというか、枠組みだけでなんだかとても面白そうなので入部を許可しましょう!」

 

「ういは、それどういう意味?」

 

「え、黛さんの知り合いってワードがもう面白くないですか?え、いたんだ!?みたいな感じで!」

 

ちょいちょい失礼なんだよね、この子。無自覚っぽいのが余計にやばいんだけど。

 

「それでさ、相羽…さん?」

 

「ういはでいいですよ!」

 

「ういはちゃんはさ、どういう部活を作りたいの?」

 

「あ、それうちも気になっとったんよー」

 

「実は私も全然知らないんだよぉ…」

 

そう言って3人は俺の方をむく。なんで?

 

「俺もういはに何も聞かされてないよ。みんなと同じだから。俺が1番気になってると言っても過言。」

 

「過言なんだ…」

 

「過言だね。」

 

「で、ういは?結局やりたいことって決まったの?」

 

「何言ってるんですか黛さぁーん?それを今から決めるんじゃないですか!」

 

「ノープランってことだね。了解。」

 

「なんかだんだんういはちゃんのこと分かってきたわ…」

 

「ごめん、私全然わかんないんだけど」

 

「いやぁーあはは…分からんかったん私だけじゃなかったんやね…」

 

俺と多分アルスもこれから先、この無自覚サイコパスに振り回される未来が何となく見えた気がした。

 

「ういは?そもそもさ、部活作るってなったら学校にプラスになるような活動内容を考えないと行けないんだけど分かってる?」

 

「地域社会に貢献するーとか学生生活を応援する、みたいなのでいいじゃないですか」

 

「なんかういは楽しいことしたいって言ってた割には普通だね」

 

「そんなの建前ですよ建前!」

 

「ういは建前とか使えたんだ」

 

「それぐらいできます!」

 

ういはは思ったよりも知性があるらしい。

 

「で、本音というか実際の活動内容はどんな感じにするの?」

 

「そこが大事だよねぇー」

 

「部室でゲームしたりお話したりあとは色々イベント的なことしたいですね…あとは…」

 

多分そのゲームとかイベント的なこととやらの準備はアルスと俺がやるんだろうな。

 

「ごめん、ちょっと質問なんだけど」

 

「はい、夕陽先輩、どうぞ。」

 

どうやらういはは議長になったつもりらしい。

 

「それ部活でやる必要あります?」

 

「はっ!…確かに…」

 

ういははやっぱり脳筋らしい。

 

「黛さん今なんか失礼なこと考えたでしょ!」

 

ういははニュータイプらしい。

さっきから俺ういはは○○らしい。しか言ってない気がする。ほぼ初対面だから仕方ないね。

 

「いや、何も。けどなんでういはは部活にしたいって思ったの?」

 

「いや、なんか放課後に学校でグダグダしたり遊んだりするのって何か楽しそうじゃないですか!」

 

「それなら部活じゃなくてもできるじゃん…」

 

「アルスさんは分かってないですねぇー」

 

「何がだよぉぅ」

 

「部活って響きがいいんです!」

 

もういっその事勝手に○○部って名乗って普通に空き教室とか誰かの家とかに集まって遊べばいいのに。

 

「やったら○○部って名前付けて勝手に私たちで活動したらいいっちゃない?」

 

「でもそれだと部室使えないから何かおもしろみに欠けるんですよね…せっかく活動するなら部室に集まって、っていう感じの?」

 

「じゃあ私が今入ってる超常現象研究部部員私しかいないので残りの4人でそこに入部するのはいかがですか?いいアイデアだと思うんですけど…」

 

「リリ先輩天才じゃないですか!!」

 

ういはの呼び方が夕陽先輩からリリ先輩に変わってる。相変わらず距離の詰め方が大型犬とかその辺に似た何かを感じる。今もリリさんにすりついてるし。

 

「っていうかリリさんなんでそんな部活入ってたの?」

 

「ははは…いや、親しい先輩がそこに在籍しててその人に誘われてって感じで…まあ、なりゆきですね。」

 

恐らく伏見先輩だろう。この前もトリガー(笑)とかやってたし。

 

「でもその先輩が卒業してしまって私の代に入部した人はいなかったですし1個うえの先輩もいなかったので現在部員は私1人。どうです?なかなか魅力的じゃあないですか?」

 

「リリちゃんええやん!」

 

「じゃあ決定ですね!これから私たちの活動内容は超常現象研究部に入部して、世界の様々な超常現象を解き明かしていきましょう!!」

 

さっきまでの部室でダラダラしたりゲームしたりっていうのはどこに行ったんだろうか。全くういはは落ち着きがないというか一貫性がないというか…恐らく明日になればまた活動内容も変わっているのだろう。

 

「というわけで私、入部届取ってきますね!」

 

嵐のように去っていった。

 

「はえぇ…あの1年生足超はえぇ」

 

「そういえばういはちゃんって地元のニュースになってなかったっけ?なんかのスポーツで全国に出たとかなんとか…」

 

「俺はちょっと分かんないかな。あんまそういうのは見なかったから。」

 

「私も知らないですね。でも、もしそうだとしたらなんで高校でその部活しないんですかね?」

 

「確かに…ちょっと複雑な事情があったりするんかもしれんね…」

 

「まあ、その辺は多分ういはがそのうち話してくれるんじゃないかな。俺は本人が言うまでは待とうと思う。本人である確信はまだないしね。」

 

「だねぇ…まゆくんがそういうなら私もそうする。」

 

どうやら精神的に引っ張り回されてる俺たちだが、これから先は肉体的にも振り回されるようになる日も近いかもしれない。そろそろ持ってかれるのが体力だけじゃなくて骨も何本か持っていかれそうな気がしてきた。ういはは超常現象研究部にて最強。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

数分後、手に紙を何枚か持って帰ってきた。

 

「入部届、持ってきましたよー!」

 

「早いね。」

 

「ふふーん私運動全般得意なのでお任せ下さい!黛さんとアルスさん2人がかりでも勝っちゃいますからー」

 

「いや、何に勝つのさ。」

 

「んー…腕相撲とかですかね?黛さんの腕ポキって折っちゃいそうです!」

 

「ういはちゃん発想がいちいち物騒だよぉぅ…」

 

「実際腕折れそうだからやめてね。」

 

「残念です…」

 

「ういはちゃんサイコパスだぁ…」

 

「黛、この1年生大丈夫な人か心配になってきたんだけど。」

 

「リリさん。残念だけど俺の周りにまともな人は居ないよ。」

 

「ぐえぇ…」

 

リリさん。自分もそこに入ってること分かってないな。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「あ、もうそろそろ夜になりよるね。」

 

「桜さん?」

 

唐突に桜さんが言い出した。そういえば桜さんもダジャレが好きだったな…しかし確かに、外の景色はすっかり夕暮れに変わっていて下校時間が近づいていることを知らせていた。

 

「そうですねー…じゃあ今日はそろそろ解散にしましょうか!明日の放課後に今渡した入部届に必要なとこ書いて持ってきてくださいね!」

 

「了解。場所は明日もここ?」

 

「そうですねー…そうしましょう!この空き教室に集合で!」

 

「はい、じゃあまた明日ですね。」

 

「あぃー、お疲れ様でしたぁー」

 

「おつりつきーん!」

 

「桜さんそれ可愛いですね!」

 

「可愛かろう?ドヤァ!ういはちゃん、それが分かるとはなかなかだねぇ!」

 

「おいー、お前らもうすぐ下校時間だぞー帰れ帰れー」

 

唐突にドアが開くと担任の郡道先生が下校時間がすぎていることを告げた。

 

「あ、ぐんみちじゃん」

 

「おい夕陽。先生と呼べ先生と。」

 

「誰?」

 

「黛お前担任の顔忘れんなよ!なんなら入学前にも色々話しただろうが!…あ、もしかして先生のこと、もっと知りたくなっちゃった?先生と特別指導…」

 

そう言いながら郡道先生が近寄ってきたので俺は小声でこう言った。

 

「先生北口で金髪糸目の男の人となにやら…」

 

「おーし!お前らさっさと帰れぇ!!」

 

よし。

ちなみに俺は詳しくは省くが郡道先生には入学前からお世話になっているため顔は忘れようがないんだけどね。

 

「じゃ、帰ろっか。」

 

「ですねー!」

 

「また明日ー」

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

本当はもっと早く施設に帰って来れるはずだったのに時刻はもう7時を回ろうとしていた。一応連絡はしていたけどご飯とかの都合もあるしあんまり遅くなると良くないんだけどな。

 

「お、灰くんおかえり。遅かったね。学校には馴染めそう?」

 

「まあ、それなりにかな。」

 

やけに施設の人達がこちらを見てニヤニヤしている。

 

「何?俺の顔になにか付いてる?」

 

「いや、灰くんがそんなに楽しそうな顔して学校から帰ってくるのがなんだか嬉しくってね。」

 

「別に。そんなことないけど。」

 

「そっか。」

 

「うん。」

 

ういはに振り回されるのが楽しい?俺にMっ気はなかったはずなんだけど…それよりも忘れないうちに入部届を書いておかないと。

明日忘れたなんて言えばういはになんて言われるか分からない。あとリリさんも面倒くさそう。あの人は絶対煽ってくる。

 

「あ、それでさ、ちょっと部活に入ることになったから保護者の欄に名前とハンコ押してくれない?」

 

「っ…!そっか、了解。ハンコ取ってくるね。」

 

遠くから灰くんが部活入るって!と大きな声で報告するもんだからガッツリ聞こえてる。恥ずかしいからやめて欲しい。あと誰かわかんないけど赤飯はいらないから。

 

 




どうも、鯖太郎です。

ハルヒみたいに部活作るように持っていけなかったのでハルヒで言うところの文学部に加入する形になりました。
レポートだったら4000字とかすごい大変なのにこっちではスラスラ書けるのなんでなんですかねぇ!!!!

あとちょっと話の整合性をとるためにちょっぴり郡道先生のセリフ変更しました。行き当たりばったりがバレちゃう。

不定期更新ですが近いうちにまたあげます。では。

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