相羽ういはの憂鬱   作:鯖太郎

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相羽ういはの憂鬱Ⅰ ③

朝学校に続く坂道を登っていると後ろから軽やかな足音共にいつもの騒がしいあいつがやってきた。

 

「黛さんおはようございます!」

 

「ん、おはよう。」

 

「黛さんテンション低くないですかぁー?」

 

「いや、ういはが朝からテンション高すぎるだけなんだって…」

 

「むー…そういうことにしておきましょう…それはさておき!ちゃんと入部届書いてきましたか?」

 

「聞かれると思った。ちゃんとやってきたよ。」

 

「はぇ…」

 

ういはの顔にありありと「黛さんが言い訳も何もなしにちゃんと持ってくるなんて…」と書いてある。そんなに驚くことだろうか。

 

「黛さん…何か言い訳でもして持ってこないと思ってました…」

 

ニアピン。

 

「いや、俺をなんだと思ってるのさ。」

 

「んー…クールですかした俺かっけー的な人かと…」

 

「え、そんな俺のイメージ悪かったの!?」

 

「わ、黛さんそんな大きな声出たんですね!?」

 

「いや、出るよ。ういは俺の事アンドロイドとか何かだと思ってる?」

 

「クールですか…」

 

「2回も言わなくていいから。」

 

「うー…ちょっとまだ信用ならないので入部届見せてもらっていいですか?」

 

「そんなに信用ないか俺の言葉…」

 

結構ショックだ。ういはが俺の事をクールですかした俺かっけーとか思ってるイタい奴だと思ってたという事実にまあまあショックを受けた。俺周りからそんなふうに見えてるのか…もっとボケた方がいいのかな。

 

「ほら、これ。ちゃんと書いてるでしょ?」

 

「ほんとですね…あれ、保護者の欄…」

 

ういはは保護者の欄に記載されてる名前の苗字が黛じゃないところを気にしている。まあ、普通はそうなるよね。

 

「あー…まだ言ってなかったね。俺、児童養護施設的なところで暮らしてるんだ。」

 

「え、そうだったんですか…?じゃあ親御さんは…」

 

「俺が2歳の時に交通事故で亡くなったんだよね。まあ、小さいの頃のことだからあんまりはっきり覚えてないしそんな気にすることじゃないよ。今の施設での暮らしも気に入ってるから。」

 

「すみません、クールですかしたやつとか言っちゃって…」

 

「いや、別に両親がいないからこうなったわけじゃないし、寧ろそれのお陰でもっと積極的にボケて行こうと思えたから大丈夫だよ。」

 

「黛さんボケなんですか!?」

 

「そうだよ?俺ツッコミの相方探してM-○優勝するのが夢だから。」

 

「へぇー…黛さんにもそんな夢があったんですね…」

 

「いや、ういはちゃん今のがボケだから…」

 

後ろから俺たちに追いついたのだろう、アルスが話に入ってきた。

 

「あ、そうだったんですか!ごめんなさい黛さん!気づかなくって!」

 

「いいよ…俺やっぱりボケ向いてないかもしれない。あとアルスおはよう。」

 

「まゆくんおはよー、多分ういはちゃんにボケるのがダメなんだと思うよ…天然ボケには勝てないからねー。で、何の話してたらそうなるのさ…」

 

「えっと黛さんのご両親が2歳の頃に亡くなってるって話です!」

 

「えっ、そんな重い話がM-○優勝とかそんな話に繋がってたの?ういはちゃんどんな思考回路してんの…というか、まゆくんのその話知らないしもう朝からパニックなんだけど?」

 

アルスは最初からういはが変な話の持って行き方をしたと断定している。まあ、そうなるよね。

 

「俺両親が2歳の頃に交通事故で亡くなってそれからずっと施設で生活してるんだよね。」

 

「へぇー…まゆくんも若いのに苦労してるんだね…」

 

「いや、何歳だよ。」

 

「あははは!アルスさんおじさんみたいだぁー!」

 

「お、おじさんて…せめておばさんとかにしろよぉ…」

 

「おばさんでいいんだ…」

 

「よかねぇけどおじさんよりはマシだろぅがよぉ…」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ま、黛が超常現象研究部…ぶふっ…す、すまん…くくっ…」

 

終礼後に担任の郡道先生に入部届を出したら爆笑された。

こんな失礼な人間がよく教師になれたものだと思う。黙ってれば美人なのに中身が残念すぎる。いつか失言とかして担任外されそうなまである。

まあ、こんな先生でも入学の手続きの時に俺の事情を話した時には

 

「学校としてはもちろん私一個人としても黛君が円滑に学校生活を送れるようできる限りの事はサポートしていきます。」

 

みたいなことを言ってくれたし、実際仕事の合間を縫って施設に来て施設の人を混じえて色んな話をしてくれた。

例えば学校でできるサポート的なこととか、学校としてどのような対応をするべきか、みたいなことを色々話してくれた。

そんなことをしてくれるあたり悪い人じゃなさそうなんだけどな…あと、まさか担任になるとは思ってなかった。その辺りももしかしたら融通をきかせてくれたのかもしれない。

 

「先生、怒るよ。」

 

「ご、ごめん、余りにも意外過ぎて…パソコン部とかだと思ってたからまさか超常現象研究部とは…まあ、先生としては黛が自発的にそういう活動に参加しようとしてくれるのは嬉しいよ。」

 

先生が施設に来た時俺が師匠にパソコンを教わってることとかは話してある。ちなみにもしういはに部活に誘われなかったとしてもパソコン部に入らなかったと思う。その時間があるなら自室のパソコンいじってる方が有益だと思うし。

 

「まあ、俺もういはに引っ張られてなかったら絶対に超常現象研究部はおろか部活すら入らなかったね。」

 

「あー…相羽か。そういえば黛、相羽とアルスの3人とで 仲良さそうに見えるけどなんか知り合いだったの?」

 

「いや、初日に目をつけられてそれ以降連れ回されてる。」

 

「そうか。まあ、黛にとってはあれくらい強引な方が良かったんじゃないの?」

 

「どうだろうね。」

 

「ま、その辺は私がとやかく言うところじゃないし…ほら、もう呼ばれてるわよ?」

 

振り向くとういはとアルスが手招きしていた。

 

「じゃ、先生。」

 

「うん。行ってらっしゃい。」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

リリさんが言うには、超常現象研究部の顧問は来栖先生という先生だが軽音楽部との兼任であり、また超常現象研究部が顧問を必要とする機会が少ない部活であるため、ほとんど顔を出すことがないらしい。

そのおかげか、部室は私物持ち込み放題らしくういはは何を持ち込むべきか思案し始めた。

 

「ちなみに部活の備品って今んとこ何が置いてあるの?」

 

「えーっとねぇ…先輩が置いていった大量のボドゲと、あと部費をちょろまかして買ったゲームハードとモニターがありますよ。」

 

「リリさん、確認なんだけどここってなんの部活だっけ?」

 

「超常現象研究部ですよ?」

 

「活動内容は?」

 

「世界で起こっている様々な非現実的な事象を解き明かす、ですね。」

 

「実際の活動内容は?」

 

「ここに集まってゲームしたりお菓子食ったりしてました。」

 

「学校でそんなことしてる人らがおったんかぁー…」

 

「桜さんもこれからそうなるんだからね?」

 

「はぁー…そっか…私も悪に染まるんかぁー…」

 

そんな大事ではない気もするけど。

 

「というわけで、今年度第1回超常現象研究部の活動内容を決める会議を始めます!」

 

「うわぁ!びっくりしたよぉぅ…」

 

ういはが突然議題の周りをやたらとキラキラを散りばめたホワイトボードを叩きながら宣言した。何がどういうわけなのか分からないけど、そこにつっこんでたら話が進まないのでここは黙って続きを聞くことにした。

 

「議題はここに書いてあるように活動内容です!これから先私たちがどんな活動をしていくか話し合いましょう!」

 

「夕陽先輩、他の部員がいた時ってどんな活動してたんですか?」

 

「アルスちゃん、ごめんだけど何もしてなかったんだよね…さっきも言ったけどマジでゲームしてるか雑談してるかだったから…」

 

「じゃあ今皆さんがやりたいことを上げていって行きましょう!」

 

「帰宅。」

 

「黛さん帰ろうとしないでください!」

 

「真面目に答えるとするとマ○クラかな…中学の時よく桜さんとやってたし。」

 

「あはは…やっぱり超常現象研究部の名前は無視するんやね…」

 

「マ○クラ1票入りましたー!」

 

「え、でもさ、パソコンどうするの?」

 

「なんと備品として調査用、と称したノーパソが5台程ございましてこれにマイクラ入れたらみんなで遊べますよ。」

 

「スペックはどれくらいなんですかぁ?」

 

「私たちの活動に伴って購入したので割と新しいやつですねー。ゲーミングPCには及ばないですけどまあ、マ○クラくらいなら何とかなるんじゃないですか?」

 

もうなんでもござれだな…

 

その後も超常現象研究部に関係ない様々な事が挙げられてはういはがやりましょう!と次々にホワイトボードに書いていく。

ふと、あることが気になった。

 

「リリさん、そういや文化祭の時はどうしてたの?」

 

そう、文化祭ではだいたい文化部は自信の行っている活動の発表があるものでは無いだろうか。

 

「あー…ガッくんが毎回適当にでっち上げてましたね…」

 

「伏見さんか…いや、なんかあの人なら適当にちょろまかしてそうだもんなー…パソコンももしかして?」

 

「そうですよ…なんだかよく分からないままにパソコンが備品として配備されてましたね。あと文化祭の発表内容なんですけど、私もどこから引っ張ってきたのか分からないんですけどやけにリアルだしクオリティ高いし…ほんとほぼ1人で超常現象研究部背負ってましたね。」

 

「まあ、俺としたらあの笑い声が1番超常現象なんだけどね。」

 

「それはそう。あの笑い声深夜に聞こえてきたら寝れなくなるって…」

 

酷い言われようだが実際そうなのだから仕方ない。

 

「夕陽先輩と黛さんっていつからお友達なんですか?」

 

「いつから…?多分小学校の時なんだろうけどいつの間にかリリさんは俺に対して突っかかってくるようになってたんだよね。」

 

「はぁぁ!?お前黛っ、ふざけんなよ!?」

 

「いや、ホントのことじゃん。」

 

「嘘はついちゃいけませんって習わなかったんですか!」

 

「俺教わる親がいなかったから。」

 

「ごめん。ごめんごめん。今のはごめん。ごめん、これはごめん。ごめん、ごm…もう、部長譲る。」

 

「それは困る。」

 

「え、部長譲ってくれるんですか?」

 

「ういは?話聞いてた?」

 

「いや、なんか部長譲りますよーって夕陽先輩」

 

粗方案が出終わった後はこんな感じで話してるうちに下校の時間が来た。今日の見回りは先日北口で郡道先生と一緒にいた人だ。神田先生というらしい。今度また郡道先生が絡んできた時の手札が増えた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

予め遅くなると連絡を入れていたので今日も子供たちとは一緒に食べず、大人たちと一緒に食べることになった。

ちょうど着いた時に晩御飯の準備が整ったらしく、すぐに食堂に向かったのだが…

 

「ねぇ、誰?赤飯炊いたの。」

 

何故かホカホカの赤飯がテーブルのど真ん中を陣取っている。

 

「あ、いや…ちょっと答えにくいんやけど…」

 

「え、あ、ごめん。」

 

俺の勘違いだった。この場にういはがいないことをこんなにも喜ばしく感じたことは無いかもしれない。ういはがいたらどんなに糾弾されることか。

 

「まあ、普通に灰くん部活動入部おめでとうの赤飯なんやけどね。」

 

「ねぇ。そういうのやめようよ。ややこしいし、めでたくもないし。」

 

「いや、めでたいんはめでたいやろ?まさか高校で部活動をするとは思ってへんかったから!」

 

何やらお酒まで準備している。酔っ払うとやたらと絡んでくるからちょっとめんどくさいんだよね。一応、百歩譲ってこの祝いの席を受けるとすると主賓は俺なんだから俺に優しいものにして欲しい。

 

「食後用にドーナッツ買ってきてるから楽しみにしててねー?」

 

「そうそう、灰くんの好きなやつも買ってきてるから!」

 

まあ、仕方ないか。




早いもので3話ですね。
どうしても比較的若い女教師を書こうとするとどうしても平塚先生に引っ張られるのを何とか必死に耐えてました。耐えきれてないかもです。
以前配信で施設に関西弁を喋る人がいるって言っていたのでそれをお借りしました。あと来栖夏芽先生はこの前の職業パロディボイスのやつです。
ハルヒ要素が出だしのみになってますがどうにか絡めたいですね。では。
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