Bazett in ClockTower (時計塔のバゼット)   作:kanpan

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Fate/Zero materialの月霊髄液の項目を読んで思いついてしまった妄想エピソードです。


第2話

これは数ヶ月前の出来事だ。

 

昼下がりの時間にバゼットはウェイバー宅にやってきた。

玄関で出迎えたウェイバーが片手に発泡スチロールのカップを持っていた。カップの中には細い棒が2本刺さっている。なにかのインスタント食品らしいのだが。

「ウェイバー、それ、なんですか?」

カップを指差して尋ねるバゼットに、ウェイバーはカップに刺さった棒を使って中身を引きずり出してみせた。

「ああ、これは日本のインスタント食品だ。カップラーメンという麺料理だよ」

カップの中から細い引き出されているのは細い麺の束だった。ずいぶんと塩気のある香りのする食べ物だ。中華料理の匂いに似ている気がする。

「バゼットは昼ご飯は済ませた?」

「いえまだです」

「じゃあ試しに食べてみるか?すぐできるよ」

ウェイバーはバゼットをリビングに連れてくると、台所へ入りすぐにカップラーメンとポットを持って戻ってきた。

 

「日本に行ったときにこのインスタント食品を知ったんだけどさ、どこのコンビニでもスーパーでも売っていて、お湯を入れて3分待つだけで出来上がるんだ。

 腹が減って今すぐなにか食べたいときに便利なんだぜ」

ウェイバーはカップラーメンのビニール包装を外し、カップの紙蓋を半分だけ開けてお湯を注いだ。そしてビニール包装の底についていたシールを使って蓋を閉じる。

 

「このまま3分待つんだ。3分経ったらこの『割り箸』を使って食べなよ」

とウェイバーはカップの横に細い木の棒を置いた。これが日本の食事道具らしい。割って使うようだ。

カップヌードルの準備を済ますと、ウェイバーはちょっとだけ用事があるからと書斎に引っ込んだ。

 

 

10秒

—20秒

——30秒

バゼットはテープルの上のカップラーメンをじっと見つめている。

 

 

—————1分

バゼットは黙ったままカップラーメンをじっと見つめている。

とりあえずカップの横の割り箸を手に取って割った。

 

 

————————1分30秒

バゼットはカップラーメンの蓋に右手を延ばした。

 

 

その時、バゼットの横から銀色の触手状のモノが伸びてバゼットの右手を掴んだ。

「なっ何!?」

振り向いたバゼットの視界にメタリックな光沢を放つ銀色の球体がいた。それは流体物であるらしくぷよぷよと弾んでいる。バゼットは掴まれている右手にひんやりとした感触を覚えた。

 

生物には見えない。とすると使い魔ではないようだ。

これは———流体型のゴーレム?

考えてみれば魔術師の家にゴーレムがいたとしても何ら不思議はない。いままで警備用の大型のゴーレムしか見た事がなかったが、もっと小型でこのように流体のゴーレムがあっても不思議ではない。魔術師にとってはゴーレムは一種の日常品のようなものだ。

 

気を取り直してバゼットはカップラーメンに左手を延ばそうとした。

が、それに先んじて銀色の球体が一瞬で変形し、複数の触手をバゼットめがけて伸ばす。

「ひ、やぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

触手はバゼットの全身を触手でぐるりと縛り上げた。

 

「は、はなせ!こいつ…!!」

バゼットは縛めをとこうと暴れたが、両手を縛り上げられた上に、足にまで触手が巻き付いていて身動きが取れない。

「この……!」

かろうじて動かせる指でなんとか攻撃のルーンを刻もうとする。

 

その時、

「ハイ、3分タチマシタ」

銀色の球体が喋った。バゼットを縛り上げていた触手がするりと外れ、球体のなかにしゅるしゅると戻っていく。

「ドウゾ、バゼット。

 カップラーメンがデキマシタヨ」

 

束縛を解かれたバゼットは右手をカップラーメンに、

ではなく、右拳を握りしめ、隣にいる銀色の球体に勢い良く叩き込んだ。

 

 

銀色の球体はぶよん、と変形しバゼットの一撃を跳ね返す。バゼットは拳を跳ね返されて一瞬体勢を崩しかけたがすぐに持ち直して戦闘態勢(ファイティングポーズ)をとった。

「油断しました。この私が1分半も拘束されるとは、なんて失態だ!」

バゼットは真剣に敵を見る目で銀色の球体をにらんだ。

球体は相変わらずぷよぷよとその場で小さく弾んでいる。

 

「はっ!」

バゼットは球体にとびかかった。球体はバゼットの動きを予測したのかすばやく後方に飛び退いて避ける。

そして球体も複数の触手を体からしゅるりと出して戦闘態勢に入った。球体が体を振るわせ、触手がバゼットに向かってムチのように伸びる。

 

「それは初見殺しにすぎません。二度目は喰わない!」

バゼットは自分を捉えようと狙ってくる銀色の触手を巧みにかわす。球体から生えている触手の根元をよく見ればその軌道はたやすく見切ることができる。触手は本体の動きにあわせて慣性で動いているだけだ。触手の先端が自立的に動く事はできないらしい。バゼットの運動能力ならばかわすことはたやすい。

 

触手をかいくぐり、バゼットは球体との距離を詰める。球体はぷよぷよとのんきに弾んでいるようにみえて、その動きはなかなかに素早くリビングの中を巧みに逃げ回る。

だが、体術を用いた一対一戦はバゼットの得意科目だ。バゼットは球体の移動先を読んでリビングの机や椅子をそちらに滑らせ、逃げ道を塞いだ。

 

ついにバゼットは球体をリビングの角に追いつめた。

ehwaz(エイワズ)!」

拳に強化のルーンを発動する。バゼットの両拳がルーンの加護でライトグリーンの光を放つ。

「鉄拳制裁!死ね———!」

 

「待てバゼットぉぉぉぉぉ!」

書斎からダッシュで戻ってきたウェイバーが目にしたのは、部屋の壁ごと月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)をブチ飛ばそうと拳を振りかぶったバゼットの姿だった。

「やめろ部屋が壊れるぅぅぅぅ!」

ウェイバーの悲鳴は間一髪で間に合い、バゼットは振り下ろす寸前の拳を止めた。

あと一瞬ウェイバーがリビングに戻るのが遅かったならば、ウェイバーは今頃あたらしい部屋探しをしているハメになっていたに違いない。

 

これがバゼットと月霊髄液の残念な出会いのエピソードである。

 

それからしばらくバゼットはリビングで月霊髄液を見かけると警戒していたのだが、基本的には家事手伝いのメイドゴーレムであり、敵対するものではないと理解してから徐々に慣れてくれた。

しかし、初対面時のこの出来事がバゼットのプライドを刺激したのか、月霊髄液が掃除洗濯料理などの家事を行っていると、バゼットも真似して手伝おうとする。

バゼットはいささか、というかだいぶ不器用なのでいろいろと失敗もしてくれて、ややありがた迷惑というのがウェイバーの本音である。

 

そんなこともあって、ウェイバーは自分の急用にかこつけてバゼットが月霊髄液と「アドミラブル大戦略IV」で勝負をするように仕向けてみたのだが、これうまくいったようだ。

 

ようやく用事が片付き、ウェイバーがリビングに戻ると相変わらずバゼットと月霊髄液はゲームを続けていた。




月霊髄液たん、メタルスライムみたいでかわいいよ。
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