トリガーライブ・スター! 作:内原戸哲夫
ウルトラマントリガー、そしてラブライブ!スーパースター!!の興奮に負け、ついつい書いてしまいました……。
両作ともまだ始まったばかりで二次創作を書くのは余りにも早計であるとは自分自身思っていますが、ただの自己満足と思ってもらって付き合って頂ければ幸いです。
亀更新になること間違いなしですが、楽しんで貰えたら嬉しいです。
それでは早速どうぞ
───いあ! いあ! いあ! いあ!
老いた星に興味は無い。神が望むのは命溢れる星。彼らは蘇るまで待っていた。そして刻が来た。悠久の刻を経て、神は花を咲かせるだろう。
その果てに待つものが何か等、我らには知る権利も無い──
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アラームが鳴る。少女は手を伸ばし、その発生元であるスマホを取って止めた。身体を起こしてベッドから立ち、カーテンを開ける。眩しい朝陽が、新たな日を祝っているかの様に美しく煌めく。
しかし彼女は、この日が来る事を誰よりも嫌悪していた。重々しい溜め息が口から出る。カーテンを閉じて眼鏡を掛けスマホをまた取り、ベッドに寝転がってリズムゲームのアプリを起動して遊び始めた。
ふと思い浮かぶ過去の事。大好きなものがあった。それがあれば、望む場所に行けると思っていた。そこを経て、みんなを笑顔にしたいと思っていた。出来ると思っていた。昔、今は遠い星にいる友人とした約束と自分の夢果たす一歩になる筈だった。
でも無理だった。何も出来なかった。友人には何も話せていない。彼女の夢は、あの日終わったのだ。
「お姉ちゃーん!」
部屋の外から聞こえてくる妹の声。気持ちの沈んでいる彼女はそれに応えるのが億劫に感じ、何も言わずにまた溜め息を吐く。スマホをソファーに投げ捨てると扉が開けられて妹が顔を覗かせた。
「あ、起きてるじゃん。返事してよ!」
「んー……」
「んーじゃないよ! 早くしないと、初日から遅刻しちゃうよ?」
「…………分かってるよ」
ぶっきらぼうにそう言うと妹は去っていく。それから彼女はハンガーに掛けられた高校の制服と、立て掛けられているギターケースを交互に見る。眉間に少し皺を寄せた後、一旦部屋を出て顔を洗い、コンタクトを着けてから髪をセットし、戻ってパジャマを脱ぎ捨て制服を着て、白い大きめのヘッドホンを首に掛けてからまた部屋を出るのであった。
2階から降りると、母と妹、そして兄の3人が、カフェとして使っているスペースにいた。
「おはようは?」
「おはよう……」
カウンターには朝ご飯が準備されており、彼女は椅子に座ってそれを黙々と急いで食べる。テーブル席に座ってコーヒーを飲んでいた兄はそんな彼女のことを一目見るが、すぐに手元のスマホに目を落とした。
「お姉ちゃん、そんなに急いで食べると詰まるよ?」
「うるさいなぁ……ごちそうさま」
立ち上がり、扉の方に向かっていく。が、一度逸れて彼女は扉付近の止まり木にいる梟の一種・コノハズクの前に来た。
「マンマル、行ってくるね」
部屋での不機嫌顔が嘘の様な笑顔でそう言った後、彼女は扉を開き出ようとする。
「かのん」
そんな彼女を、母親が呼び止めた。
「似合ってるわよ制服」
「っ…………似合ってない!」
澁谷 かのんは、勢い良く出て行くのだった。
「お姉ちゃん、まだ気にしてるのかなぁ?」
「そうねぇ……繊細だから」
彼女の様子見て、母と妹のありあは心配そうな顔をする。数ヶ月前のある出来事がかのんの胸のしこりとなっていた。それが彼女の表情を曇らせているのだ。
「まあ、だろうな」
「お兄ちゃん?」
兄はかのんが出て行った扉を見つめる。
「挫折とか失敗とか、忘れられるもんじゃないだろ。アイツも、ずっとそれ背負って生きてくことになるんだよ」
「……お兄ちゃんみたいに?」
「…………うっせぇ」
テーブルから立ち、空になったカップをカウンターから母に渡しにいく。その際ありあの頭を少し乱暴に撫でた。
「開店準備してくる」
「ショウゴ」
店前を掃除する為に箒を持って出ようとした彼の背に母が声を掛ける。
「無理しちゃダメよ」
「───してねぇよ」
扉を開けて外に出た澁谷 ショウゴ。妹と同じ様に溜め息を吐いた後、アスファルトに散らばった落ち葉を見る。
「甘えてるだけだっての」
何かを否定する様に、落ち葉を払うのであった───
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行き交う人の声、走る車のエンジン、モニターから流れる音、街の全ての喧騒を、かのんはヘッドホンから音楽を流して遮断していた。余計な物が何も聴こえない世界。それが本当に心地良かった。
彼女が通った道にあった大きなモニターにはスクールアイドルが映されていた。数十年程前から流行り出したコンテンツであり、学校でそこの生徒がアイドルをするというものだ。今や全国で大会が開催される程大人気となっている。2人組のスクールアイドルのライブ映像が終わり、次に映されたのは地球平和同盟TPUの会見であった。
《今から2年、怪獣災害に対応する為新たに設立された特捜チーム、それがGUTS-SELECTです。そして、遂にその拠点となる対怪獣用戦闘艇・ナースデッセイ号が完成しました》
GUTS-SELECTの隊長である辰巳 誠也がそう言うと、モニターに竜の頭部の様な物の付けられたら巨大な戦艦が映された。続いて戦闘機が映される。
《そしてこれが、怪獣攻撃及び災害時の救助活動に用いられる遠隔操作可能な多目的無人可変ドローダー・GUTSファルコンです。これらを駆使して、我々GUTS-SELECTが地球の平和と、皆さんの安全を守っていきます》
モニター内からは拍手の音が響き、見ていた人達も感嘆の声を漏らしている。だがそれらもかのんの耳には入って来ていなかった。辺りをキョロキョロとしながら歩くかのん。前を向いてどんどん進んでいると、目の前に2人の女子高生が現れた。
「かのんちゃん!」
「あ!? お、おはよう!?」
彼女はヘッドホンを外す。2人はかのんと同じ中学で、これから
「春休みあっという間だったねー、あははは……」
作り笑いでそう言う彼女。
「そう? 私は早く結ヶ丘に行きたくてうずうずしてたよ!」
「私も!」
「やっぱり、音楽科受かる子は凄いなぁ! 制服も似合ってる!」
少しだけ上擦ってる声。でもそれを2人に悟られない様にする。
「かのんちゃんも、普通科の制服も可愛いし似合ってるよ!」
───似合ってない。
そう言いそうになるのを少しだけ唇を噛んで押さえた。
「あ、ご、ごめんね!? そんなつもりじゃ……」
「ううん、気にしないで。普通科の方が楽だし」
彼女達に悪気は無い。それは分かっている。分かっているからこそより心が苦しくなってしまう。醜い嫉妬が、胸から溢れそうになるからだ。
「かのんちゃんが音楽科落ちるだなんて信じられなくて……」
「私達、かのんちゃんの歌に憧れてたから……」
かのんは歌が好きだった。いつかこの歌で、世界中のみんなを笑顔にしたいとある時から思う様になっていた。そしてその為にも、都内でも特に有名な音楽に力を入れてる高校・結ヶ丘女子高等学校の音楽科を受験したのだ。
しかし、結果は最悪だった。彼女は課題曲を歌うことが出来ず不合格となり、普通科に通うこととなってしまった。もしあの受験の時、歌うことが出来ていれば……。自分も目の前の2人と同じ、白く可愛い制服を着れただろう。遣る瀬無い気持ちが胸で渦巻く。そんな時、スマホの着信音が鳴った。
「あ、ごめんね、何か電話来たみたい! それじゃ、ばいばい!」
急足で2人から離れる。これ以上彼女達と話すのはしんどかったので本当にベストのタイミングだった。スマホを取り液晶を見る。良い時に電話をして来たのは「
「もしもし?」
《あ、かのん? おはよう!》
スマホ越しに聞こえてくる元気な男の子の声。彼は小学校の頃からの友人。幼馴染という程では無いが、長い付き合いのある人だ。
「おはよう。どうかしたの?」
《かのん、今日入学式でしょ? だからおめでとうって言いたくて》
「そんなの別にメッセでいいじゃん。わざわざ電話しなくてもさ。そっち確か夜でしょ?」
《今は夜の11時だよ。でもこういうのはちゃんと言葉で伝えたいの》
相変わらずだなとかのんは思った。彼は今、時差がある程遠く離れた場所にいるのだ。
《改めて結ヶ丘に入学おめでとうかのん》
「うん、ありがとねダイキ君」
《これで僕達の夢に一歩近付いたね!》
その言葉を聞いて彼女の表情が強張る。実はダイキに対しては、音楽科を落ちて普通科に行くことになったのを伝えていないのだ。
「う、うん、そうだね……。ダイキ君ももうすぐ学校だよね?」
《こっちの時間で明後日からね。僕もかのんみたいに夢に向かって頑張るよ!》
明るい声が彼女の胸を締め付ける。本当のことを言えば彼にがっかりされるかも知れない……そう思うと嫌で伝えられないでいた。彼は遠く離れた地にいてこちらに来ることは滅多に無い筈。なら、嘘を吐いてもきっとバレないだろう。そう思い罪悪感に囚われながらも彼を騙すしかなかった。
《……かのん、何か元気無い?》
ドキッとしてしまった。彼はこういう勘は本当に冴えている。何とかして誤魔化さないと。
「だ、大丈夫だよ! ちょっとまだ眠いだけだから!」
《もしかして昨日、入学が楽しみで眠れなかったとか?》
「そ、そうなんだー!」
どうやら勘違いしてくれた様で助かった。
《あっ、あんまり長話するのも迷惑だよね》
「大丈夫、今日はありがとうねダイキ君」
《うん! かのん、スマイルスマイルだよ!》
通話を終え、かのんは空を見上げる。この空の先の更にその先に彼はいる。心の中で本当のことを伝えていないことを謝りながら、ヘッドホンを付け直して彼女はまた歩き出した。自分の中のもやもやした気持ちを掻き消す様に、かのんは思わず歌を口遊む。その美しい声は、朝の澄んだ空気に溶けて鳴り渡る。歌に釣られたのか小鳥や猫が顔を出して止まる。まるで彼女の周囲だけが楽園になったかの様であった。
そしてその歌を偶然聴いてしまった少女が居たことに、かのんは気付いていなかった……。
歌い終え、もやもやとしていた気分が少し晴れたかのんは歩き出す。何でもない時は歌えるのに……そうボヤいた時である。
「美麗的聲音……!」
「へっ!?」
かのんの眼前に1人の少女が目を輝かせながら現れた。
「你唱歌很好聽! 想一起成為學園偶像嗎!? 你的歌一定會讓你成為一個偉大的學園偶像!!」
「え、えっ!? 何!? 中国語!?」
捲し立ててくる謎の少女。その勢いにかのんは圧倒されてしまう。少女は更にかのんへと顔を近付けて迫った。
「我求求你! 一起成為學園偶像吧! 這絕對很有趣,所以讓我們去做吧!」
「顔近いぃぃ!? ニーハオシェイシェイショーロンポー!!」
知ってる中国語を適当に言った後、かのんは少女から一目散に逃げた。だが少女は彼女を追って来る。
「請稍等!? 我只想和你一起做學園偶像!」
「ひぃぃぃ!? なになに!? 怖いぃぃぃぃ!!」
急に解らない言葉であんな風に話し掛けれれば無理もない。かのんは少女から逃れる為に必死に走るのであった……。
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かのんとの通話を終え、円淵 ダイキはスマホを置き、窓から空を見上げた。暗い空には、キラキラと星が輝いている。それから彼は振り返り、部屋にある机の上に置かれているまだ蕾の花へと近付いた。
「かのんも頑張ってるから、僕も頑張らなきゃだよね」
未だ咲かない花。それに対して彼は柔かな笑顔で語り掛けた。
「君の花を咲かせてみせるよ、ルルイエ!」
星の浮かぶ暗い空。それが映し出されているドームの外には赤と青の混じった空が広がる。彼が居る場所。それは赤い星・火星の第三居住都市である───
A.D.2025
深淵より甦りし邪神が、光の巨人とこの星の光により滅ぼされてから15年後の世界だ───
内容的には少ないですが第一話目、如何だったでしょうか?
アニメを基準にしてますがコピペになるのを避ける為、描写や台詞を若干変えたり、かのんの心理描写を多めにしたりしてます。
本作ですがウルトラマンティガ本編から15年後の2025年が舞台となってます。ダイナに関してはどうするかギリギリまで迷いましたが、そこまで入れるとより設定が多くなると思い、あくまでも新世代のティガであるトリガーをメインにしたいという考えから今回は泣く泣く外すことにしました。ダイナの物語を決して蔑ろにしたつもりは無く、寧ろ尊重するからこその決断でもあります。
本作はセブンからの平成セブンやウルトラマンからの漫画ULTRAMANの様な、他の作品の世界が無かった世界となっているのです。
細かな年代表は後々公開します。
そしてメインとなるオリキャラは2人。円淵 ダイキと澁谷 ショウゴ。この2人がどう物語に関わっていくか、お楽しみ下さい。
ダイキは火星におり、その時差をどうするか迷った末、火星での時間はグリニッジ標準時と同じとしました。ですので日本とは9時間の時差があります。あと中国語は翻訳したものを使っているので、もしかしたらおかしな所もあるかも知れませんが悪しからず……。もしかなりおかしいところがあったら教えて頂けると嬉しいです。
次回投稿は遅くなり、もっと言うとそれ以降もかなり遅くなると思いますが待って頂けたら幸いです。
それでは皆様の感想や高評価、ここすき等、心よりお待ちしております。