トリガーライブ・スター! 作:内原戸哲夫
先に駆け出したのはオカグビラ。強靭な四足で大地を蹴ってトリガーへと突っ込む。彼はそれを正面から受け止めた。
『セアッ!──クゥ!?』
だがオカグビラのパワーは強力であり、後ろに押されていく。抵抗してチョップやエルボーを打ち込むが、それでも奴は止まらない。
「Caaaaaaa!」
『クァ!?』
身体を横に振り、トリガーを払う。倒れてしまったトリガー。そこへ更にオカグビラは上からのしかかった。3万5000トンの重量が一気に襲い掛かり、彼を苦しめる。
苦痛の声を漏らすトリガーへ前脚を叩き付けて攻撃。原種のグビラには無い頑丈な爪が彼のボディを傷付けた。
必死に足掻くトリガーだが、オカグビラの猛攻撃を止められない。
───うう……強い……!?───
ガギ戦の時もそうであったが彼は戦闘に関してはまだまだ素人。時折自分のトリガーとしての肉体やフラッシュバックする謎の記憶が彼に戦いを教えるが、ダイキ自身の戦闘センスは酷いものだった。
両前脚を大きく上げたオカグビラが、勢い良く全身でのしかかる。
「アイツ、何やってるのよ……」
───BOOT UP!THUNDER!
オカグビラに苦戦するトリガーを見て眉を顰めながら、アユは宇宙怪獣エレキングの力が宿されたGUTSハイパーキーをGUTSスパークレンスに装填。そして銃口より閃光を放ちながら雷撃が発射され、オカグビラの横っ腹に着弾。火花が散り不意を突かれてしまったオカグビラは横に倒れ、その隙にトリガーは転がって距離を取る。
「しっかりしなさい」
───ありがとう、アユ!
立ち上がって再度構えるトリガー。オカグビラも身体を起こし、怒りの咆哮を放った。
睨み合う2体。彼らは同時に駆け出した。
走りながらトリガーハンドスラッシュを連射。鏃型の青白い光弾がオカグビラへ飛んでいくが、それらを掻い潜りながら奴は進み、鼻先のドリルを高速回転させてジャンプしトリガーへ突っ込んだ。強力なドリルアタックが炸裂し、彼の胸を抉る。
トリガーは苦しみ、オカグビラは滑りながら着地して更にドリルを利用し地面へと潜行。地中を移動して再度トリガーへと迫っていく。
オカグビラから必死に逃げてたかのん、可可、ショウゴの3人は橋の上からトリガーと戦いを見ていた。というのも避難所へと向かっている途中ショウゴが立ち止まって戦闘を見つめ始め、かのんと可可は早く逃げようと声を掛けるが彼はトリガーの姿に釘付けになっていた。
「お兄ちゃん! 何やってるの!?」
「早く逃げないと危ないデスよ!」
2人から催促されるがショウゴは動かない。
地面を泳ぐ様に自在に移動し、飛び出してトリガーへの突撃を繰り返すオカグビラ。その影響で道路は凸凹、ビルが幾つも沈み倒れる。
「まるで地の鮫デス……!」
可可が息を呑んでそう呟いた。その動きと獲物を何度も執拗に攻撃する姿には言い得て妙だろう。
またオカグビラが地面から勢い良く飛び出した。鋭いドリルが、カラータイマーの鳴り始めたトリガーに向けられる。
「危ない!?」
「ウルトラマン!?」
叫ぶ2人。あの一撃を喰らえばトリガーも只では済まない。しかしオカグビラのドリルが届く事は無かった。寸前で、GUTSファルコンがバルカン砲を連射して撃ち落としたからだ。
地面に堕ちたオカグビラ。反撃のチャンスは今に於いて他には無い。ファルコンの方を向いて礼をする様に頷いた後、トリガーは立ち上がり両腕を額の前でクロスする。
───ULTRAMAN TRIGGER!POWER TYPE!
─── BOOT UP!DERACIUM!
GUTSスパークレンスにパワータイプのハイパーキーをセット。そしてスパークレンスを前に突き出した。
「勝利を掴む、剛力の光ッ!
ウルトラマン、トリガーーーッ!!」
───ULTRAMAN TRIGGER!POWER TYPE!
『ンンッ……ハァッ!』
剛力形態であるパワータイプに変化。そして倒れていたオカグビラに近付き、奴の身体を高々と持ち上げた。マルチタイプでは苦戦したが、パワータイプならこの程度の重量大した重さでは無い。
『ハァァッ!』
そのまま投げ飛ばす。地面に叩きつけられたオカグビラは悲痛な叫びを上げた。
「Cooooo……ッ!?」
少々可哀想に思ってしまいそうな鳴き声だが、暴れまくった奴に対して同情などして要られない。尻尾を掴み、そのままオカグビラの事をぶん回す。所謂ジャイアントスイングだ。
この技・ウルトラスウィングで思いっきり投げ飛ばされたオカグビラは地面を転がっていった。
「す、凄い!」
「流石ウルトラマン!」
形勢逆転したトリガーを見てかのんと可可は声を上げる。一方、ショウゴは唯々黙ってその戦いを見つめていた。まるで何かに、取り憑かれたかの様に。
体勢を立て直してトリガーに向き直るオカグビラ。拳を握り締めてがっしりと構えている彼に対し、この怪獣は凄まじい怒りを感じた。自身を痛め付けたこの存在を必ず排除しなければならないと。そもそも、何故自分は此処に居るのか……?
いや、そんな事はどうでも良い。今はとにかく、コイツを自慢のドリルで串刺しにして殺すのみ。
「Coooooooooh!!」
『フッ! ハァァァァ………セェアァッ!!』
オカグビラは咆哮しながら勢い良く駆け出す。両腕を左右にから上に挙げ、胸の前に超高熱のエネルギーを集めたトリガーは向かって来るオカグビラへ、それをデラシウム光流として放った。光流は大きく開けられたオカグビラの口の中に入る。体内でエネルギーは膨張し、その肉体を粉砕するのであった。
「やった!」
「やりました! ウルトラマンが勝ちました!」
かのんと可可はトリガーの勝利を喜び手を合わせる。周りを見れば、多くの人々が彼女達と同じく歓声を上げていた。
そんな中でショウゴは空へと飛び発つトリガーを見つめている。以前、我が家に来た妹の友人である青年はあの巨人から光を感じたと話してくれた。そして今、確かにその
自分なんかとは違う、光というモノを。
「───……ちゃん! お兄ちゃん!」
呼び掛ける声が耳に入り横に目を向ける。そこに居たのは心配そうに見つめてくる妹・かのんの姿があった。
「お兄ちゃん、大丈夫なの?」
「あ、ああ……悪い……」
「何だか顔色、良くないデスよ……?」
可可の言う通り、彼の顔は青白くなっていた。まるで何か恐ろしいモノを見たかの様だ。
「大丈夫……走って疲れただけだ」
「本当に?」
「ああ。ほら、一旦家に帰るぞ」
そう言って歩き出すショウゴ。180を超える身長の彼であるが、かのんと可可には去って行くその背が今は酷く小さく見えた。
『やれやれ……危なっかしいじゃあないか、私のトリガー……』
『あの程度の相手に苦戦するとは、我が好敵手は何をしているのか……!』
ビルの屋上に立ち、人間と変わらないサイズになっているカルミラとダーゴンはトリガーの戦いを見ていた。
自分達の知っている彼ならオカグビラ如き意図も容易く殺せた筈。それなのにあんなにも苦戦していた彼に対し、2人とも思う所があった様だ。カルミラは奥歯を噛み締め、ダーゴンは拳を握る。
『それとカルミラ。先の怪獣……』
『ええ、間違いない。アイツだねえ』
カルミラは目を細めて爆死し散らばったオカグビラの肉片を見た。そこから僅かながら感じられたのは此処に居ないもう1人の仲間の闇の波動。それに刺激されてオカグビラは暴れていたのだろう。
それから彼女は、変身を解除したダイキに目を向ける。彼は少しフラつきながらも手を振りかのんと可可の所へ向かっていた。
トリガーに利用されている矮小な人間。彼はそうする事でしかあの忌々しい姿に成れないらしい。何故その様な事になっているのかは分からないが、早急に彼を取り戻し
『行くよダーゴン』
現れた闇のゲートの中にカルミラは入り、ダーゴンもそれに続く。一族の悲願の為に、そしてそれぞれの持つ願望の為に、彼女達は集結しようとしていた。
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「おーーーいっ!」
「ダイキさん!」
「ダイキ君!」
戦いを終えたダイキはウルトラマンから人の姿となり、戦闘前に見たかのん達の元へ手を振りながら駆け寄って行った。
「2人とも大丈夫? ケガは無い?」
「はい、大丈夫デス!」
「そっか、良かった……。あれ、ショウゴさんも一緒だったよね?」
先程一緒に見かけた筈のショウゴが居ないことを疑問に思うダイキ。
「あー……ちょっと用事があるみたいで先に帰ったんだ」
「デスデス」
聞かれた2人は、少し困った様な表情を見せながら答える。何となくだが、さっきの彼の事を伝え難いと感じてこの様な回答になってしまった。
「そうなんだね」
「うん。ダイキ君こそ、大丈夫だったの? GUTS-SELECTの仕事でここに居るだよね?」
「大丈夫大丈夫!」
ダイキは胸を張る。実際にはかなり苦戦をした為、大丈夫だったとは言い難いが。
「そうだダイキさん! 実はかのんさんが私達の歌を完成させてくれましタ!」
「え、本当!?」
「はい!」
彼女達がスクールアイドルとして歌う曲。それは可可が今まで書き溜めて来た歌詞やワードを参考にし、かのんが編集し曲を付けて完成させた物。歌詞の中に書かれていた「あきらめないキモチ」。この言葉を何よりも大切にしながら、可可と共に最高の曲にする為に頑張って仕上げたのだ。
曲の完成は彼女達を応援しているダイキにとっても凄く嬉しい事であった。
「せっかくデスのでかのんさん! ここでダイキさんに聴いてもらいまショウ!」
「へ?…………へええええ!?」
「そうだね! 聴かせてよかのん!」
「いや、そんないきなりぃ!?」
ほんの数分前まで怪獣から逃げ回っていたというのに予想外の提案を可可からされて戸惑うかのん。先程のショウゴに対してといい、彼女はどうしても誰かにかのんの歌を聴いてもらいたい様だ。
「お願いします、かのんさん!」
「かのん、僕からもお願い!」
懇願する2人。嫌な気はしないし、このまま自分に親身になってくれている可可とダイキの望みならそれは応えたいと彼女も思っている。
「それなら……」と彼女は意を決して息を吸った。
「スゥ────……………」
「………」
「………」
サイレンが鳴る中、この場だけが静かになる。
「………………」
「………」
「………」
歌は始まらない。
「………………」
「………」
「………」
まだ始まらない。
「……………あ、あれ……?」
「………?」
「………かのん?」
「ちょ、ちょっと待って……!スゥ──……」
もう一度息を吸うかのん。
「………………」
「か、かのんさん……?」
「もしかして……?」
だがそれでも、歌は始まらない。
「ど、どうしよう……!?」
目尻に涙を溜めながら、彼女は2人の方を向く。
「また歌えなく、なっちゃったぁ……!?」
「「え、えええええええええええ!!??」」
辺りの喧騒を掻き消す程の、大きな叫びが街を包むのであった。
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広大な宇宙。そこに大きな黒雲があった。黒雲は電気
纏い、只々宇宙を揺蕩っている。かつては地球の電離層内にあったこの黒雲。それが何故この様な場所にあるのか。その理由は黒雲内に棲息している生物にある。
名は空中棲息生物クリッター。クリオネに似た生物であり、長らく存在の立証されてなかった生物であったが、約18年前に水野 隆治博士によって発見
クリッターの棲息する黒雲内に食料と言える物は全く存在しない。そんな彼らが生きる為に行っているのが共喰いだ。餌であると認知した物を「トモダチ」と呼び、容赦無く捕食していく恐ろしい生物だ。
人類の文明が発展したことにより大量の電磁波やマイクロ波が電離層に流れ、その影響によりクリッターは凶暴化し、更にファースト・コンタクト、セカンド・コンタクトを経て人類を「トモダチ」であると認定して旅客機などを襲う様になった。
その後、事態を重く見た当時のTPCは大規模火力を持ってクリッターを掃討する「クリッター作戦」を計画。そして攻撃を決行するが、初撃を回避した後に奴らは大気圏を離脱。地球から宇宙へと飛び去ってしまった。「人間に愛想を尽かした」とも言われたが、彼らの真意は解らないままである。
人間という邪魔な存在が無く、彼らは穏やかに暮らしていた。
だがその中に、飛び込んで来る異形の巨人が現れた。巨人は蒼い瞳を輝かせ、その腕から闇を放つ。
『貴方達の力、利用させて頂きますよ』
闇がクリッター達を飲み込む。そして苦しむ彼らを無理矢理融合させ、変貌させた。
赤い瞳、裂けた大きな口、逆三角形の様な身体、鰭状の両腕。恐ろしい怪獣となったクリッター……いや、それは最早クリッターでは無い。
巨人が指を鳴らすと、怪獣は闇に包まれてワープする。着いた場所は小惑星の上。そして瞳に映されたのはかつて自分達が存在していた星、自分が好きだった場所。
そこへの望郷の念か、それとも自分達を攻撃し追い出した者達への怒りか。怪獣がどんな想いで星を見つめているのかは解らないが、間違い無く感じている事がある。
あの場所に自分達の求めるモノがあるという事だ。それは……。
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歪に飛びながら、闇変形怪獣ガゾートは地球へと向かっていくのであった。
感想、高評価、質問、その他、是非是非お待ちしています。
次回、クーカー結成。