トリガーライブ・スター! 作:内原戸哲夫
広い宇宙を揺蕩う。あの日、光に敗れたソレはただの石像となり広大な宇宙に放り捨てられていた。眠りについたが、それでも光への怨嗟は決して消えない。頭の中で、胸の奥で、黒い邪心の炎が燃え盛り身を焦がす。
殺したい、潰したい、刻みたい、引き裂きたい───愛したい。次々と溢れ出す想いが、動くことの無い身体に染み渡る。これが殺意……これが愛……そうだ、この想いを伝えなければならない。あの光へ、私の中の渇きを。
───おはよう、カルミラ。
声が聴こえた。聴こえてはいけない声だ。そしてそれと同時に、石像の表面に亀裂が出来る。亀裂は次第に広がっていき、やがてその表面が砕け散った。中から現れたのは鈍い銀の身体に金のラインが入った妖艶な女巨人。カルミラと呼ばれた巨人は青い光の鞭を出現させる。言いたいことは無限にある、吐きたい想いが溢れそうになる。彼女はそれら全てをあの光の巨人へ込めて絶叫した──
「トリガァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
人では聴き取れない言葉。だがもしも人間が聞いていたのなら今の叫びは、叫びに込められた途方の無い愛と憎しみは通じたであろう。
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目の前に花がある。赤い星で初めて芽を出した、未だ咲かない花。その蕾から淡い光が放たれていた。
まさか開花するのか?そう思い彼の心は高鳴る。ずっとずっと待ち続けていた時が、今来ようとしているのだ。自然と笑顔になり、それを待つ。
瞬間、背にどろりとしたモノを感じた。途轍も無い程悪い何か。それが今、自分の背後に存在している。
恐る恐る振り返った。するとそこには……。
「闇の……巨人……!?」
闇を纏いし漆黒の巨人。溢れ出すその闇は、彼の恐怖を駆り立てる。眼前に立つ圧倒的存在に、彼は言葉を放つことが出来ず兢々としていた。
「そうだ……!ルルイエ!?」
振り返り咲こうとしていた花に目を向ける。しかしそこにあった筈の花は無く、代わりに白い衣を纏い、腰の当たり前まで伸びた長い銀髪の人物が立っていた。その顔を彼は何故か認識出来ず、男か女か判らない。
その者の口が動き何かを伝えようとしてくる。しかし声が出ていることは理解出来るが、何を言っているのかが伝わって来なかった。
「君は一体───」
誰なのか?そう聞こうとした時、闇の巨人の手が彼に迫って来た。黒い手が慄く彼のことを掴もうとして伸びていく。そして────
「うわぁぁぁ!?…………あれ……?夢……?」
ベッドから飛び跳ねる様に起きた円淵 ダイキは周囲を見回す。彼がいるのは自室であり、闇の巨人も銀髪の人物もいない。そういえばと思い花・ルルイエの方を向く。ルルイエはいつも通り、蕾のままであった。
「咲いたと思ったけど、やっぱ夢かぁ……」
アレが夢でなかったら彼は悲惨な目に遭っていたかも知れないというのにがっかりした様子で溜め息を吐く。やはりアレは、ただの夢であった様だ……と。
「おはよう母さん!」
「おはようダイキ」
ルルイエをケースの中に入れ、それを持ってリビングへ向かったダイキ。キッチンには母である円淵 礼奈が立っていた。
「あれ、母さんもう仕事いくの?」
「そうなの。静間会長が遺跡を視察に来るから、その付き添いの為に早めに出るの」
「へぇー、大変そうだね」
椅子に座り、テーブルに出されていたパンに齧り付く。
「アンタも明日から学校でしょ?これからきっと大変になるわよ」
「大丈夫だって。どんな時でも、スマイルスマイル!でやっていくからさ」
笑顔の息子を見て、相変わらずだなと思い彼女も笑った。
「今日もバイオパークに行くんでしょ?
「わかってるよ」
「そう。なら、母さんもう行くわね」
母は荷物を取り、家を出る。それからダイキも朝食を食べて支度をし、ルルイエを抱えて外出。外へ出た彼は空を見上げる。巨大なガラスのドームが天には有り、その先には赤と青の混じった空が拡がっている。ここは第三火星都市。多くの人が生活する、火星の居住区だ。
「あーーーっ!?また枯れてるぅ……」
第三バイオパークに着き、そこで育てていた花を見てダイキは嘆いていた。ものの見事に全て枯れてしまっていたのだ。ここで育てられている花や植物は火星で生まれたものであるが、土壌として使われているのは地球の土や火星の土を少し混ぜた物が使われている。火星の土壌だけでは植物は育たず、例え育ったとしてもすぐに枯れてしまうのが殆どであった。そんな中で唯一蕾が生じたのがルルイエだ。そのことを彼はとても喜び、他の花も同じ様に育てられると思って挑戦しているのだが結果は実らないままである。ダイキは溜め息を吐き、分かりやすく落ち込んでいた。
「ダイキお兄ちゃん!」
「あ、光ちゃん!」
そんな彼に声を掛けて来た少女。彼女は円 光。火星にある全てのバイオパークの総責任者である人の娘であり、世界初の火星で誕生したスターチャイルドなのだ。
「もしかして、また?」
「うん……やっぱり火星の土壌で花を咲かせるのは無理なのかなぁ……」
落ち込むダイキの背を光が撫でて慰める。彼女とは中学生の時にこのバイオパークで植物を育てることを許可された頃から仲であり、兄妹の様に仲睦まじい関係であった。
「うーん、どうだろう。パパも火星産まれの花の土には、地球の土がたくさん混ざってるって言ってたし。そうでもしないと花は咲かないんじゃないかなぁ?」
「やっぱりかぁ……」
「でも、このままテラフォーミングが進んで大地が地球人と似た成分になれば、いつかは火星にも植物が生えるんじゃない?」
現在小学四年生となった光だが、両親の影響や自身が勤勉なこともあってか火星の事情に精通していた。火星の大気のテラフォーミングは最終段階まで来ており、後三年もすれば気温も地球と変わらない温暖なものとなってドームを無くしても問題無く人間が生活出来る様になると言われている。大地も開発が進められており、地球の土と混ぜる事で植物が繁殖出来る大地を作ろうとしていた。
「確かにそうすれば花は咲く。でも、それって本当に火星で咲いた花って言えるのかなって思うんだ。この火星の大地で咲いた花……僕はそれが見たいし、それをみんなに見て笑顔になって欲しいんだ」
変な拘りではあるが、そこだけはどうしても貫きたかった。
「ふふっ、パパもママも似た様なこと言ってたな。火星で咲いた花を、未来の子ども達に見てもらいたいって」
「え、そうなの!?」
「うん!パパとママも頑張ってるから、ダイキお兄ちゃんも夢を叶える為に頑張ってね!」
彼女のその言葉にダイキは明るく返事をした。自分の夢を応援してくれる人がいるのだから諦める訳にはいかない。そんな時、彼はあることを思い付いて勢い良く立ち上がった。
「そうだ!」
「うわぁ!?ど、どうかした?」
「遺跡周辺の土はどうかな!?」
「遺跡って、あの火星遺跡?」
今から5年前、第一火星都市が完成してから数ヶ月後、第三火星都市建設予定であった区域で謎の遺跡が発見された。最初は風や隕石の落下などで偶然作られたものではないかと思われたが、その中に入り当時の調査員達は驚愕した。舗装された道、遺跡を支える為の柱、文字や絵が記された石板の数々、どう考えても人の手によって作られたであろう痕跡が大量に見つかったのだ。これは火星にはかつて文明が有ったことの証拠となり、学会を大いに賑わせた。遺跡発見から2年後、万全の準備を行ってから本格的な調査を開始したのだが、未だに遺跡の全貌は分かっていない状態なのだ。
「遺跡が有ったっことは、人が居たってことだよね!?なら、きっとその人達も花を育ててた筈!だから遺跡の土ならきっと!」
「う、うーん、どうだろう?花を育ててたかは分かんないし、そもそも人かどうかも……。それにそもそも、遺跡の中って入れるの?」
「僕の母さん、遺跡調査の責任者だからね。遺跡で働いてる人達には僕少し顔が効くんだ」
にっこりと笑うダイキ。少し不安ではあるが、こうなったら彼は絶対に止まらないだろう。
「じゃあ、行ってくるね!あ、ご両親や翼君によろしくね!」
そう言ってダイキはルルイエを抱え、足早に去っていった。
「あー、行っちゃったぁ……」
「光」
ダイキの背を見送っていると、1人の女性がパーク内に入って来て彼女に声を掛ける。
「ママ!」
穏やかな顔をしたこの女性は光の母親であり火星にあるバイオパークの総責任者の妻だ。光は彼女に連れられて今日この第三バイオパークに来ていた。
「どうかしたの?」
「さっきまでダイキお兄ちゃんが来てたんだ」
「ダイキ君が?」
「うん。でも、遺跡の方に行っちゃったの。そこの土を貰いに行くんだって」
「あはは、相変わらずねぇ……」
苦笑いした後、女性はダイキが出て行ったであろう道を見つめた。
「ルルイエ、か………」
彼が花に付けている名前を呟く。その顔は、何か複雑な想いを抱えている様であった……。
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地球。時はまだ、火星でダイキが謎の夢を見ていた頃。かのんの自宅であるカフェに彼女と、今朝彼女に迫って来た少女が来ていた。少女の名は
「チョコ渡る染みぃ……」
「あはは、逆……」
「あっち行ってて」
「むっ。はぁーい」
彼女にクッキーとココアを持って来たありあを下がらせ、かのんは可可に小声で話しかける。
「やっぱり私がアイドルって、無理があると思うんだ……」
「そんなことないです!スクールアイドルは誰だってなれます!」
その声は母達にも聞こえた様で。
「アイドルぅ!?」
「アンタがぁ!?」
「嘘だろ?」
「うるさいなぁ!話聞かないで!」
家族3人に対して聞くなというが、こんな話聞かない訳にはいない。3人は耳を傾ける。
運命を感じたという可可に説得されるが、自分はアイドルなんて柄じゃない。そう言ってなんとか諦めてもらおうとするのだが……。
「そんなことないです!かのんさん、すっごくカワイイです!」
「可愛いぃ!?」
「お姉ちゃんがぁ!?」
「眼科行けよ」
「だから話聞かないでって!!あとお兄ちゃんは後でブッ飛ばす!!」
物騒なことを言う妹に顔を顰めさせるショウゴ。それから彼女達は2階にあるかのんの部屋にへと上がっていった。これ以上話を聞かれない様にする為だろう。去り際、かのんの軽くショウゴの肩を叩いていった。
「痛い」
「お兄ちゃんがあんなこと言うからだよ」
「そうそう」
「アンタらも人のこと言えないからな?」
1人だけ扱いが雑な気がして腑に落ちない。彼女達が使っていたテーブルを片付ける為に布巾を持って歩き出した。テーブルを拭きながら、そういえばかのんが幼馴染以外の友達を連れて来たのは久しぶりだなと思った。受験に失敗し、周りの期待を裏切ってしまったという思いと結ヶ丘女子の音楽科に受かった人への劣等感からか、春休み期間中は中学時代の友人と会うことをしなかった彼女。そんな彼女が入学してすぐ新しい友達を連れて来たのは少し意外で、そして喜ばしくも感じた。
「………フフッ」
「何笑ってるのお兄ちゃん?もしかして、さっきの子に恋したとか!?」
「そうなのショウゴ!?」
「張っ倒すぞアンタら」
それからも茶化してくる2人を適当に足らいながらふと天井を見上げる。
「お前も───」
俺とは違うよな。
出て来そうになったその言葉を呑み込み、未だニヤニヤしながら弄ってくるありあの顔面に布巾を投げつけるのであった。
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火星遺跡。A.D.2020に発見された謎の遺跡であり、三年前から調査が進められているが、その全体は未だ謎だ。発見当初、遺跡は浅い地中に広がっているだけかと思われたが、スキャニングにより逆ピラミッド型になって地中に埋まっていることが判明した。ここには謎の壁画や石板などの出土品が発掘されており、かつて火星には地球の様な文明が有ったことを証明していた。まだ最下層まで調べられてないこの遺跡だが一週間前にある物が見つかり、それを見る為に静間会長が地球から火星に来たのだ。
「火星遺跡で新たな発見があったとは……。研究者の血が騒ぐよ」
「今回見つかった物は、是非会長に見て貰いたいんです」
「ほお、それは楽しみだ」
そんな話をしながら、光圀と礼奈、そして調査チーム達が遺跡に向けて歩いていく。その後ろを息子であるダイキがついて来ていることなど、礼奈は思ってもいなかった。
遺跡に到着した光圀は驚愕していた。そこにあったのは、巨大な剣の様な形をした石の物体だ。その大きさは20mは超えていると思われる程。
「この物体ですが、これまで地球で発見されてきた遺跡にあった石像と同じ成分で構成されていました」
「それは本当か!?」
「ええ。東北のピラミッド、そして熊本の地下、それらで発見された巨人像と同じなのです」
「やはり火星にも、地球と同じ超古代文明があったとは。そしてこの石像、まさに石の神話だな」
世紀の発見と言っても過言では無いことに息を呑む光圀。
一方、隠れながら礼奈達の後を着いて来ていたダイキもその巨大なそれに驚きを隠せないでいた。
「すっごい……!?」
当初の目的も忘れてじっと見つめるダイキ。すると突然、物体は亀裂の間から光を放ち始めた。
「な、何だ!?」
「こんな反応、初めてです!?」
突然のことに驚き同様する光圀、礼奈と調査員達。そしてダイキは……。
「これって……!?」
彼の両手が青白く光を放っていた。更にそれと同時に、大きな揺れが発生した。揺れと自分に起こった異変。二つのことに困惑していると彼の頭上の天井が崩れ、岩が落下して来た。
「うわああああああ!?」
それに気付きしゃがんで思わず両手を突き出す。そんなことしても潰されてしまいその人生を終えることになるだろう……が、彼を守る様にしてシールドが発生し、岩を弾いてしまった。何が何だか分からずおどおどとしていると、礼奈がダイキに気付いて駆け寄って来た。
「ダイキ!?貴方どうしてこんな所に!?」
「ご、ごめんさい……遺跡の土が欲しくて……」
「一先ず退避しよう。みんな、急いで逃げるんだ!」
光圀の指示を受け、調査隊の皆は急いで遺跡から脱出していく。そして外に辿り着いた時彼らが目にした物は、大地を揺るがす猛獣と、空を切り裂く怪竜であった。
「Gooooooooooooooッ!!」
「Kyeeeeeeeeeeッ!!」
「ゴルザにメルバ……!?何故火星に!?」
15年前、モンゴル高原にて初めて姿を現した超古代怪獣ゴルザ、そしてイースター島より飛び立った超古代竜メルバ。2匹の怪獣がドームの外壁をブチ破り、遺跡に向かって猛進していた───
今回はウルトラ要素多めとなりました。
トリガーサイドの話は設定の解説が入ってしまうのでどうしても長くなってしまう……。スパスタサイドが疎かにならない様、頑張って調整していきます。
今回登場した少女・光。ティガ、そしてダイナを観た皆様なら知っているでしょうあのヒカリちゃんです。ならそのあと出て来た母親は……。
こんな感じでティガの原作キャラクター達も登場していくことになります。
そして最後にゴルバー……ではなく、ゴルザとメルバの登場です。何故地球怪獣である筈の2体が現れたのか?それは次回以降で明らかとなる予定です。是非お楽しみに。
それと、今回から「ウルトラマンオーブ」やっていたようなサブタイトルを探せを不定期になるかもですがやっていこうと思います。何処かにウルトラシリーズのサブタイトルが隠れているので、是非探してみて下さい。
それでは皆様の感想や高評価、ここすき等、心よりお待ちしております。