トリガーライブ・スター!   作:内原戸哲夫

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3繋いだのは

 

 

 

 

 

 火星にてゴルザとメルバが現れた頃、かのんは自室のベッドに身体を沈めていた。歌わないならスクールアイドルになっても構わないと可可に言ったが、彼女からは本当にそれで良いのか聞かれることに。かのんの歌が大好きになった可可はどうしても彼女と一緒に歌いたいのだが、かのんにはそれを決断することが出来なかった……。

 

 スクールアイドルになりたい人が居ないか探すのを手伝うと言ってから可可を見送った後、彼女は幼馴染である嵐 千砂都がバイトをしている移動型のたこ焼き店に行った。そこで彼女にスクールアイドルに興味のある子はいないかと聞いたが、どうやら音楽科にはその様な人は居なさそうだ。それどころかスクールアイドルのことを快く思ってない人も少なからず居るらしい。特に学校を創設した葉月 花の娘である葉月 恋がそうだと。実際に恋は、学校でスクールアイドル勧誘のチラシを配っていた可可に対して厳しい言葉を掛けていた。

 

 ふと、壁に立て掛けてあるギターのケースに目を向ける。可可の力にはなりたいが、自分に出来るのは精々メンバー集め程度。歌えない以上、仲間になるなど不可能だろう。人前でさえ歌えたら……そこまで考えて頭を振る。そもそも可能不可能以前にスクールアイドルなんてなる気は無いんだ。可可には悪いがやっぱりこれ以上関わるのは辞めようかと考える。そうすればこんな変なことも思わずに済む筈だ。そんなこんな思考を巡らせていた時、扉がノックされてから開いた。

 

「お兄ちゃん……」

 

「よう」

 

「入って良いって言ってないけど」

 

 少しムスッとするかのんを無視してショウゴは部屋の中に入り、手に持っていた皿をテーブルに置く。その上にはパンケーキが乗せられていた。

 

「何それ?」

 

「試作だ。食って感想をくれ」

 

「こんな時間に食べたら太りそうなんだけど」

 

「別に誰も気にしねえよ」

 

 失礼なことを言うショウゴの顔に枕を直撃させた後、テーブルの前に移動し、一緒に乗っていたフォークとナイフを使ってパンケーキを食べる。

 

「んっ……美味しい」

 

 パンケーキをどんどん食べ進めるかのん。そんな彼女を見ながら、ショウゴが言葉を投げ掛ける。

 

「やるのか、スクールアイドル?」

 

「えっ?」

 

「誘われてただろ、あの子に」

 

「やらないよ。お兄ちゃんだって知ってるでしょ?私が人前で歌えないの……」

 

 そう返されるとショウゴは何も言えなかった。あの日の夜、自身の不甲斐無さを嘆いてこっそり涙を流してたこと、過去にも彼女は発表会などの場で極度の緊張から歌えず倒れたこと、歌と音楽が大好きで結ヶ丘の音楽科を本気で目指していたこと。彼女の歌に掛けていた想いを知っているから、無理だと思っていることを強く勧めることは出来なかった。

 

「そっか」

 

「クゥクゥちゃんとも、出来るだけ関わらない様にしようかなって思ってる。そうすれば、こんな変な思いもしないでいいだろし……」

 

「それは無理だろ」

 

 彼の言葉に、かのんは目をキョトンとさせる。

 

「お前は目付きが悪い、口が悪い、態度も悪い」

 

「喧嘩売ってる?」

 

「でも、友達を見捨てれるほど腐っちゃいない。どうせすぐに助けに行くに決まってる」

 

「………私、そんなに良い子じゃないよ」

 

「良い子だよ、俺よりはな」

 

 その頭をわしわしと撫でた後、ショウゴは部屋を出て行こうとする。だがその背中にかのんが声を掛けて止めた。

 

「お兄ちゃんも良い人だよ」

 

「俺は違うっての」

 

「そんなことない。こうやって、私のこと心配してくれたじゃん」

 

 どうだかな。振り向いた後そう呟いて、彼は部屋を出る。その時見たかのんの瞳には、確かな光が宿っていた。

 

 それから、自室に戻り一人佇む。そして今見たかのんの光を思い返した。自分には無い、他のみんなが持っている光を。

 

「光……」

 

 追憶するあの日の記憶。眩い幾多もの光が、柱となって天を昇り、あの英雄を救う為に飛び立っていく。一人、また一人、光となるその光景を、彼は幼い妹を抱きながら見ていた。そして妹も、無邪気な笑顔と希望に満ちた声と共に光へと変わる。自分も……そう思い右手を伸ばし────

 

 

 

「ンッ!?グオッ、オエエエェェッ!?ガハッ、ガハッ!?ゲェァァッ!?」

 

 襲い掛かる不快感と嘔吐。ショウゴは伸ばしていた右手を床に着き、晩に食べた物と胃液をカーペットの上に撒き散らした。酸っぱい臭いが、部屋の中に漂っていく。

 

「ハァ……ハァ……臭えな……」

 

 また吐きそうになるのを抑えながら、掃除をする為雑巾を取りに部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

####################

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自動防衛システムが起動し、ゴルザとメルバへ砲弾が放たれていく。しかし奴らはそれを物ともせず進み、ゴルザは額から超音波光線を、メルバは目から破壊光弾メルバニックレイを放ち、赤い目をギラギラと輝かせながら砲台を破壊していった。

 

「このままでは……!?」

 

「あ、危ない!」

 

 破壊光弾が遺跡に直撃、大きな揺れと共に一部が崩れて瓦礫が落ちる。

 

「ダイキ、大丈夫!?」

 

「僕は大丈夫だよ、母さん……!」

 

 砲台を全て破壊した2匹が遺跡へと迫る。このままでは不味い……みんながそう思った時、幾つものレーザー光線が、2匹の怪獣に浴びせられた。

 

「あれは!?」

 

「スーパーGUTSマーズ……!来てくれたか!」

 

 

 

 スーパーGUTSマーズ。2013年に旧GUTSを再編成して誕生した特捜チームがスーパーGUTSであり、彼らは様々な怪獣災害や怪事件、宇宙人からの侵略に立ち向かい、被害を最小限に留めてくれた。これまでは日本中心だったこれらの災害だが、2015年に起きた事件をキッカケに日本以外でも怪獣は頻繁に現れる様になり、それに対抗する為、静間財団から支援を受け再編成したTPUは2019年までに各国にスーパーGUTSを配置。そして2021年、日本を守っていたスーパーGUTSのチームを火星防衛担当とし、スーパーGUTSマーズとして改称した。彼らは火星に住む人々を、襲い来る毒牙から守り抜いているのだ。

 

 主力機である3機のガッツイーグルがゴルザとメルバに攻撃を繰り出していく。怪獣達はそれを受けて足を止め、反撃として光線や光弾を発射。3機は散開して回避した。

 

「各機、敵の動きに注意しつつ攻撃を続けろ!奴らをこれ以上先に進ませるな!」

 

「「「「ラジャー!」」」」

 

 β機に乗っている隊長の香田 俊之の命令を受けて動き出す。それを見て、メルバが翼を拡げて飛び上がった。

 

「飛鳥、涼!お前達はメルバを!」

 

「ラジャー!叩き落としてやるぜ!」

 

「調子に乗って墜ちないでよ?」

 

「墜ちるかよ!俺のファインプレー見せてる!」

 

 α機の飛鳥 真、γ機の弓村 涼がメルバへと向かう。マッハ6のスピードで飛ぶメルバであるが、両機ともそれを超えるスピードで迫っていく。

 

「くらえ!」

 

 2機のレーザーがメルバに直撃。体勢を崩したメルバは地面に落下した。起き上がり、2機のガッツイーグルに光弾を放つが、飛鳥と涼の巧な操縦により全て躱されてしまう。そして2機はローリングしながら迫りα機がレーザーを、γ機がミサイルを放った。また直撃を受けた悲鳴を上げながら倒れる。

 

 一方、β機はゴルザの攻撃を躱しながら弧を描く様に動いて熱線を足下に当てる。その威力にゴルザは少しずつ後退していた。

 

「先へは進ませない!」

 

 操縦と攻撃を担当している刈谷 康平がトリガーを押しゴルザを攻撃し続ける。そんな中、解析をしていた中島 努が声を上げた。

 

「奴らは過去に地球に出現したゴルザ、メルバと同種でしょう。しっかし、何故火星に現れたんだ……?」

 

「火星には地球の超古代遺跡と似た物があった。それが関係してるんじゃないか?」

 

「でもこれまでの調査で火星に生命体が居ないことは証明されていて──」

 

「議論は後だ!今はとにかく、奴らを倒すぞ!」

 

 β機は更に激しく攻撃。ゴルザをまた一歩後退させた。

 

 倒れたメルバは立ち上がり翼を拡げる。再び飛び上がり反撃しようと考えているのだ。その時生まれた一瞬の隙を、涼は見逃さなかった。

 

「墜ちなさい!」

 

 冷凍ミサイルを発射。ミサイルはメルバの左の翼に当たり凍り付かせた。それによってバランスを崩したメルバはまた地面に叩き付けられる。

 

「よっしゃ、トドメだ!」

 

 α機が下部ハッチを開きビーム砲を放った。ビームは身体を起き上がらせようとしたメルバの胸元に直撃し猛烈な火花を散らす。その一撃が致命傷になったのだろう、メルバは弱々しい断末魔を上げた後に完全に地に伏して絶命するのであった。

 

「っしゃー!見たか、俺の超ファインプレー!」

 

 喜びガッツポーズをする飛鳥。そんな彼に少し呆れながらも、涼はサムズアップを見せた。

 

 メルバが死んだのを見たゴルザは急遽方向転換し地面を掘り始めた。そのまま逃げるつもりなのだ。

 

「逃がすか!」

 

 ゴルザの上まで行き、β機は爆雷を落とす。凄まじい爆発音が辺りに響いた。

 

「やったか!?」

 

「熱反応無し……逃げられたみたいです」

 

「くそっ!」

 

「まあ、被害を食い止められただけ良しとしよう。各機、着陸して地上の状況確認に当たるぞ」

 

 ゴルザには逃げられてしまったが一先ず危機は去った。スーパーGUTSマーズの面々は被害状況を確認する為にガッツイーグルを着陸させた。

 

 

 

 

 

 多くの怪我人こそいるが重傷者や死者は居らず、被害は最小限に抑えられたと言って良いだろう。しかし、避難所として使っている遺跡探索の為に建てられた拠点内に流れている空気は余り良いものでは無かった。突然の怪獣襲撃による被害は、物理的な破損や負傷よりも、人々の心に暗い影を落としたのだ。ここにいる人達の表情は暗く、重々しいものばかりになっている。

 

「こんな時、僕に何が出来るんだろう……?」

 

 ポツリと呟くダイキ。そして抱えていたケースの中にあるルルイエを見つめる。みんなを笑顔にしたい。でも、今の自分では何も出来ない。ただ無力を感じて唇を噛み締めるしかないのだ。自分自身に、嫌気が差してしまった。

 

「よっ!」

 

「っ、飛鳥さん」

 

 そんな彼に声を掛けたのは飛鳥。2人は以前からの知り合いなのだ。

 

「どうしたよー?暗い顔しちゃってさ」

 

「僕、みんなが悲しそうな顔してるのに何も出来なくて……。何だか、自分が凄く小さく思ってきちゃったんです……」

 

 心情を吐露するダイキ。飛鳥はそれを黙って聞いている。

 

「僕はルルイエを咲かせて、見た人が笑顔になれる様な花にしたかった。みんなが笑顔で居られる世界にしたい。かのんともそう約束したから……。でも、今の僕にはそんな力、何処にも無い……。僕は弱いんだ……」

 

 ダイキは無力を痛感しながら目を伏せる。

 

「本当にそう思うか?」

 

「えっ?」

 

「俺はダイキが弱いだなんて思わないぜ。だって、今も誰かの為を思ってるじゃないか。だからダイキは充分強い」

 

 飛鳥から言われた予想外の言葉に彼は目を丸くした。

 

「どんな時でも、決して諦めない。それが俺のポリシーなんだ。諦めなければ、必ず道は開かれる。前の隊長もよく言ってたし。──だからダイキも諦めるな。本当の戦いは、ここからだぜ」

 

 そう言って笑顔でサムズアップする飛鳥は、ダイキには眩い光に見えた。

 

「飛鳥、ちょっと来て!」

 

「おっ、呼ばれたな。じゃあ、またなダイキ」

 

 去っていく飛鳥。諦めない心……それが大きな力になるだろうか?そう考えていた時、今度は別の人物に声を掛けられた。

 

「君の望む未来は何だ?」

 

 声を掛けたのは光圀だ。

 

「君が望む未来、君の思い描く世界。それはどんなものかな?」

 

 未来──声に出し呟く。彼が望むのは、あの日かのんと約束したのはみんなを笑顔にする花を咲かせ、世界中を人々を笑顔にすること。こんな所で挫ける訳にはいかない。彼女も歌でみんなを笑顔にする為に頑張っているのに、自分が立ち止まる訳にはいかない。約束を果たし夢を叶える為に立ち向かわなくてはならないのだ。

 

「僕の望む未来は、みんなが笑顔で居られる未来です!」

 

 迷わず答える。そんなダイキを見て光圀は少し笑った後、アタッシュケースを開けてその中身を彼に見せた。中には白を基調とした大きな銃、それを入れるホルスター、ベルト、そして薄い青緑色のUSBメモリの様な機械が入れられていた。

 

「なら君は、自分の力でその未来を切り開かなければならない。これはその為に必要になる物だ」

 

 近付いてそれらのアイテムを見る。これを取れば、もう後には引けない。何故かそんな気がしてきた。そこへ母である礼奈が彼らの元にやって来る。

 

「ダイキ」

 

 優しい母の声。

 

「貴方は貴方を信じなさい。貴方自身の運命の光の中で、切り拓ける未来があるのだから」

 

 でも、今は何処か寂しさが混じっている。その瞳には少しだけ涙が滲んでいた。

 

「母さん、スマイルスマイル!」

 

 息子から発せされたいつもの口癖。それは不安を抱えていた彼女の心に光を与える。

 

「ルルイエをお願い」

 

 ルルイエの入ったケースを彼女に渡し、ダイキは銃・GUTSスパークレンスを手に取る。ベルトを巻き、2つのホルスターを付け、最後にブランク状態のGUTSハイパーキーを取った。スパークレンスとキーをそれぞれのホルスターに入れ、彼は突き動かされる様に遺跡へと走り出した。

 

 

 

 同刻である。地面より再びゴルザが現れたのは。

 

「ゴルザが再出現しました!」

 

「何!?」

 

「急いでイーグルに戻るぞ!!」

 

 スーパーGUTSマーズはガッツイーグルで再度ゴルザに立ち向かう為に機体へと向かっていく。一方でゴルザは、まだ処理されていなかったメルバの死体の側に来ていた。

 

「アイツ、何を?」

 

 メルバの側に立ったゴルザ。すると、メルバの肉体が闇となり、そのままゴルザに吸収されていく。そしてゴルザの身体は変化をしていった。メルバの翼が生え、頭部にはメルバの上顎と目と鶏冠、尾もメルバの様な物となる。2体の超古代怪獣が悍ましく融合し、超古代闇怪獣ゴルバーとなり火星に降臨したのだ。

 

 「GooooooooKyeeeeeee!!」

 

 2匹の鳴き声が混じり合った叫びが轟く。3機のガッツイーグルは奴を倒す為に飛び上がり、立ち向かう。それに対して、ゴルバーは光弾と破壊音波を放つのであった。

 

 

 

 ゴルバーが暴れる中、ダイキはあの石像がある所まで来ていた。あの時起こった不思議な現象。ここなら何かあるのではないかと思ったのだ。するとまた石像が光を放ち、それに呼応する様にダイキの手も光った。

 

「これって一体……────ッ!?」

 

 何なのだろう?そう言う前に、突如足下に円形の穴が空いた。突然のことで何が何だか分からないまま、彼は絶叫と共に落ちていく………。

 

「痛ッ!?ううぅ……もしかして、遺跡の最下層?」

 

 地面に叩き付けられたダイキは周りを見ながら、ここが遺跡の最下層ではないかと予想し呟く。そして起き上がり振り向くとそこには、巨大な石像が片膝を突いた状態で鎮座していた。その姿形は今朝、ダイキが夢に見た闇の巨人に似ていた。

 

「や、闇の……!?……いや、違う?」

 

 だが巨人から感じられるのは闇では無い。寧ろ、暖かな光を感じられた。

 

■■■(ああ)……■■■■■(やっと会えた)……」

 

 背後から聞こえた聞き慣れない言語。また振り返ったダイキが見たのは、女性型の明らかに人間では無い存在。奇妙な言語を喋っているが、何故かダイキにはその言葉の意味が理解出来た。そしてその存在の持つ禍々しい闇の力も、彼は感じ取ることが出来ていた。

 

「会いたかったよお……。3000万年の間ずっとねぇ。もう少し感動的な再会を期待したんだけどこの際仕方ない……この想い、受け止めもらおうじゃあないのォッ!!」

 

 その存在・カルミラは光の鞭カルミラウィップで石像を打つ。このままそれを続けられたら、石像は破壊されてしまうだろう。

 

「や、やめろぉ!!」

 

 それを許す訳にはいかないと彼は何故か思った。ダイキは勇気を振り絞ってカルミラの前に立った。

 

「ああァ?何だい人間、邪魔だよ!」

 

「ぐあっ!?」

 

 振われた鞭がダイキの身体を弾き飛ばす。地面を転がるダイキ。頬からは血が出ており、痛みが身体を襲う。だがそれでも彼は諦めず立ち上がり、またカルミラの前に立つ。

 

「チッ、鬱陶しいねぇ」

 

「僕はみんなを……笑顔にしたいんだ!!」

 

 胸に秘めた夢を叫ぶ。眼前にいる彼女は人の笑顔を奪う存在だと直感的に理解した彼は、絶対に彼女に屈する訳にはいかなかった。自分の中の熱い想いを言葉にして、己の心と身体を奮い立たせる。すると次の瞬間、巨人の石像から光が放たれた。

 

「えっ……?」

 

「何だい!?ああああッ!?」

 

 光はカルミラのことを吹き飛ばし遺跡の壁に叩き付けた。それから光はダイキの周りに集まっていき、彼の腰に備えられたGUTSハイパーキーに吸収されていく。キーは紫色に変色し、表面には巨人の絵が描かれた。

 

 それを手にした時、彼の頭の中に明確なビジョンが浮かぶ。

 

「トリガー……そうか、ウルトラマントリガー!」

 

 ウルトラマン。それは過去に人類を闇から救った光の英雄の名。ここに鎮座する巨人も、同じウルトラマンなのだ。GUTSスパークレンスを抜き、ダイキはGUTSハイパーキーのスイッチを押した。

 

───ULTRAMAN TRIGGER!MULTI TYPE!

 

 そしてキーをスパークレンスの銃底に装填。

 

───BOOT UP!ZEPERION!

 

 銃身の上部を展開し、ビジョンの中で見た神器と似た形状に変形させた。それを前面にへと突き出す。

 

 その様子を、夢の中で見た白い髪の貌の無い女性が見つめていることに、ダイキは気付いていなかった。

 

「未来を築く、希望の光!」

 

 自分の夢、笑顔の溢れる世界の為。花咲く未来の為。

 

 全ての想いを込めて、彼はその名を叫ぶ───

 

 

 

 

 

「ウルトラマンッ、トリガァーーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

####################

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝。ショウゴは店のテーブルを拭いていた。そんな彼の背後に、学校へ行く準備をしたかのんが立つ。

 

「お兄ちゃん」

 

「何だ?小遣いならやらんぞ」

 

「それは期待してないからいい。………私ね、クゥクゥちゃんのこと手伝う。スクールアイドルやるのは多分無理だけど、メンバー探すくらいなら出来ると思うから」

 

 そう言ってはにかむ彼女を見て、ショウゴも笑った。

 

「そっか。なら、頑張って来い」

 

「うん!じゃあ、行ってきます」

 

 店を出て学校へ向かうかのん。その足取りは昨日より軽い。

 

「あの子のこと、励ましてくれたのね」

 

「アイツが勝手に元気になっただけだ。俺は何もしてないよ」

 

 テーブルを拭く手を動かすショウゴを見て母はクスクスと笑う。彼が照れ隠ししているのに気付いてるのだろう。そんなやり取りをしていた時、ドタドタという足音と共にありあが飛び込んで来た。

 

「た、大変だよ!?」

 

「どうしたのありあ?」

 

「良いからニュース!!テレビ見て!!」

 

 店内スペースにあるテレビを母が点けた。何かと思いながらショウゴもテレビに目を向ける。そこには……。

 

《日本時間21時頃、火星に2体の怪獣が現れました。怪獣は火星遺跡の探索チームを襲いましたがスーパーGUTSマーズにより1体は駆除、もう1体は撃退されました。しかしそのご日本時間深夜1時頃に再び現れてスーパーGUTSマーズと戦い、なんと全ての戦闘機を墜落させてしまいました。万事休すかと思われた現場でしたが、なんと!》

 

 テレビに映される光の巨人。銀をベースしたボディに赤と紫の色が入り、胸には金色に輝くプロテクター、そして胸には青い菱形のクリスタル。

 

 その姿を見て、ショウゴは持っていた布巾を落とした。手が、唇が、そして全身が震える。目を逸らしたいけど逸らせない。それは彼にとって、忘れられない存在に良く似ていたからだ。恐怖か、怒りか、哀しみか。外観からは決して分からない感情が、その表情には浮かんでいた。

 

 震える唇をゆっくりと動かし、彼はその名を呟いた───

 

 

 

 

 

「ウルトラマン……ティガ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ショウゴと話し、可可を助ける為に動き出したかのん。そんな彼女にショウゴは光を感じ……。ティガ、ダイナ、そしてその他のウルトラシリーズでも大切にされてきた「光」というワードは、本作でも重要なキーワードとなります。

火星にはゴルザとメルバを倒す為、スーパーGUTSマーズが出動。このチームは小説ダイナ「未来へのゼロドライブ」や映画「ウルトラマンサーガ」に登場したものです。そしてそのメンバーには、あのアスカもいます。本作の世界にはスフィアが登場せず、ダイナの物語に派生しなかった世界線なので彼も普通にこの世界に存在してます。そして彼の言葉はダイキの胸を打つことにに。世界は違っても、彼はやはり熱い心と光を持つ者ということでしょう。
本編ティガ、ダイナに登場したキャラクター達は本編とは違うifの存在という形になり、その為敢えて本編では片仮名表記だった名前を漢字表記にしています。
また、スーパーGUTSマーズは本来の歴史では2027年に発足してますが、こちらでは2021年発足となっています。

スーパーGUTSマーズによって倒されたメルバ。それを吸収してゴルバーが誕生。これは自分がやりたかった展開です。

飛鳥、光圀、そして母の言葉を受けて駆け出したダイキ。そして彼は遂に光を繋ぐ者としてウルトラマントリガーへ変身。その活躍は次回をお楽しみに。

そして前回のサブタイトルを探せの答えですが終盤の光圀の台詞にあった「石の神話」です。これはウルトラマンティガ第2話のタイトルになります。今回も隠れているので是非探してみて下さい。前回より少し難易度が高いかも……?

それでは皆様の感想や高評価、ここすき等、心よりお待ちしております。
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