トリガーライブ・スター! 作:内原戸哲夫
「スクールアイドルかぁ……」
「ごめんねぇ、歌はどうしても苦手で……」
「他にやりたいことあるんだ」
かのんはクラスメイトにスクールアイドルに興味が無いかを片っ端から聞き回っていた。しかしななみ、やえ、ここの、それ以外の子達にも断られており前途多難のスタートを切っている。上手く事が運ばないことに溜め息を吐きながらそれを可可に報告。すると彼女の方も似た様な結果であったらしい。どうしたものか……?中庭にある木を囲んで作られたベンチに並んで座り考えるかのんと可可。するととある少女がかのんの目に映り、彼女は立ち上がってその子の元へ駆けた。
「あの!?」
「………何でしょう?」
「同じクラスの平安名 すみれちゃん、だよね?」
美しい金髪と白い肌、エメラルドの瞳が輝いているこの少女の名は平安名 すみれ。自己紹介の時、とても堂々としていたことからかのんも印象に残っていた。可愛い子揃いの結ヶ丘だが、その中でも頭1つ抜き出た美少女だ。彼女がスクールアイドルをやってくれれば百人力だと思ったのだが……。
「私を誰だと思っているの!?」
一喝。予想外の迫力にかのんはビビり、その隙にすみれは去ってしまった。
「ごめんなさい、かのんさん……」
「ううん、大丈夫……!他のクラスや音楽科の子にも聞いてみよう」
すみれに怒鳴られたかのんを見て、可可は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
それから彼女達は音楽科の人達に声を掛ける為にその校舎に向かった。しかしそこは、あの葉月 恋が見回りをしていた。彼女から目の敵にされてる2人は身を隠しながら進みスカウトを敢行しようとしたが、恋の監視を突破することは叶わず、結局かのん達は普通科ではメンバーを見つけることは出来ず、音楽科では誰にも声を掛けられないまま放課後を迎えることになるのだった……。
夕焼けが空を茜色に染め始める刻。彼女達は肩を落としながら普通科の校舎を出た。進展は無く、特に可可の落胆振りは火を見るより明らか。
「明日、また探してみよ?これだけ人が居るんだし、きっと1人くらい興味を持ってくれる人がいるよ」
そう言って可可をかのんは励ますが彼女の表情は複雑なものになっている。人が多いと言っても音楽科の人達に声を掛け難い状況である以上、残すは他のクラスの人達。新設されたばかりで一期生だけの結ヶ丘には自分達より上の学年は居らず先輩に声をということは出来ないので正直言って状況はかなり厳しい。
どうすれば良いかと考えてながら進むかのん。可可の力になる為に、自分に出来ることは何か……。そう考えていた時、背中から可可に呼び止められた。
「あの!?かのんさん!!」
振り向くと彼女は何か言い辛そうな表情となりながらも、意を決した様に唇を結びそれを開いた。
「やっぱり、かのんさんもスクールアイドルやりませんか!?」
「えっ……?」
「迷惑かと思って言うかどうか迷ってたのですが……でも、どうしても可可は、かのんさんと一緒にスクールアイドルがしたいです!!」
初めて彼女を見た時から、初めて彼女の歌を聴いた時からそう思っていた。可可はかのんの歌が大好きであり、歌が大好きなかのんと一緒にスクールアイドルになりたかった。彼女ならきっと、みんなに勇気と希望をくれるスクールアイドルになれる筈。可可はそう確信しているのだ。
「む、無理無理!私は歌えないし、クゥクゥちゃんの迷惑になる……。それに私よりスクールアイドルに相応しい人なんていっぱいいるよ」
「かのんさんだってそうです!スクールアイドルにピッタリの人です!かのんさんの歌、みんなが聴きたいって思っています!」
「………私には出来ない。私の歌は、もうお終いなんだから」
結ヶ丘の受験で歌えなかったあの時、もう自分の歌の道は閉ざされたのだと感じていた。どんなに頑張っても、人を前にしたら喉から声は出ない。みんなが大好きだと言ってくれたこの歌声を、誰かに届けることは出来ないのだ。周りのみんなをがっかりさせてしまうのはもう嫌なのだ。昔、ダイキと交わした約束を果たすことも叶わなくなり、歌が大好きだという想いを胸の中に圧し殺していた。
後ろ向きな気持ちで前へと進む。可可の想いに応えることは自分には不可能。今日はもうこのまま帰ろう。そう思った時である……。
「応援します!!かのんさんが歌えるようになるまで、絶対諦めないで応援します!!」
可可の必死の叫びが、胸の中の何かを動かしたのは──
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時を戻す。火星にはゴルバーが現れ猛威を奮っていた。スーパーGUTSマーズが立ち向かっていったのだが、奴はゴルザとメルバの両方の特性を持ち合わせ更に強化されており彼らの攻撃を物ともせず、メルバの目の部分よりパワーアップしたメルバニックレイ、口より超音波光線を放って暴れる。
その脅威的な力の前に、既にβ機とγ機は堕とされてしまった……。
「この野郎……!」
飛鳥の乗るα機がジーグを放ちながら突っ込んでいく。攻撃は命中こそしてるがゴルバーには全く通用していない。余裕とばかりに撃たれた部分を軽く手で撫でるゴルバーを見て飛鳥は唇を噛み締める。
「舐めやがってぇ……!喰らいやがれ!」
再度攻撃。だがやはり通じない。ヤケクソ気味に叫びながらもう一度突っ込むα機。その機体に、ゴルバーが振り回した尻尾の先端が叩き付けられた。
「ぐああああああ!?」
スピンしながら高度を落とし、アルファ機は火星の大地を滑っていくことになる。スーパーGUTSマーズを退けたゴルバーは、火星遺跡に目を向ける。そして超音波光線を遺跡へと放った。奴の目的は遺跡を破壊することなのだ。光線により包まれてた岩が崩れ、中から黄金に輝く逆三角形のピラミッドの外壁が露見する。更にメルバニックレイも放って岩を剥がしていき、ピラミッドの一面が見える様になった。
破壊対象がしっかりと見えたことに興奮したのか咆哮するゴルバー。そして大地を揺らしながらピラミッドへと近付いていく。文字通り自身の手で破壊するつもりなのだろう。意気揚々と奴は迫っていく。だがその時だ。
───ULTRAMAN TRIGGER!MULTI TYPE!
ピラミッドの前に光の柱が現れて天にへと昇る。そしてその中から現れたのは、身長50メートルは有るであろう巨人であった。光と共に現れたその眩い存在に、現場にいた全ての物の目が奪われることになる。
「あれは……!?」
「光の巨人!?」
「ティガ、なのか?」
「ティガとは違う、新しいウルトラマン……!?」
「ダイキ……」
「やはりダイキ君も、光を受け継ぐ者」
自身の変化に少し戸惑いながらも、悠久の時を経て甦った光の巨人・ウルトラマントリガーとなったダイキはゴルバーに構えた。赤と紫のラインに金のプロテクターが胸部や手、足に備えられ胸に青く輝くクリスタルのある姿となった彼に、ゴルバーは吼えた。超古代より続く因縁。倒すべきその相手が眼前にいる。過去の記憶が、刻まれた遺伝子が、奴を殺せと騒いでいた。
「Gooooookiiiiiiiii!!」
『セアッ!』
踏み出し、因縁の相手にゴルバーは向かう。トリガーもそれに対抗して駆け出した。跳躍しゴルバーの脳天にチョップを叩き込む。その威力に光がスパークし、奴を少し怯ませた。更にキックにパンチと攻めていきゴルバーに反撃の隙を与えない様にする。ゴルバーも負けじと腕を振るい抵抗するが、トリガーはそれを回避しストレートキックを叩き込んで後退させた。
「Guuuu……!?Gaaaakeeee!!」
超音波光線とメルバニックレイを同時発射してトリガーを攻撃。彼はそれを後方回転していきながら躱し、止まると同時に手裏剣を飛ばす様に青白い光弾・トリガーハンドスラッシュを連続して放った。光弾はゴルバーの顔面や胸部に当たりダメージを与える。
『フッ!』
苦悶の声を漏らしたゴルバーへ追撃を仕掛けようとするトリガー。だがその時、横っ腹に強烈な衝撃が叩き込まれて彼は倒れた。地面をゴロゴロと転がる。彼を突き飛ばしたのは、巨大化したカルミラだ。
『アタシに会う為に人間を使うなんて……情熱的じゃあないか……。嬉しいねェェェ!』
起き上がろうとしたトリガー。その瞬間彼の、ダイキの脳裏にまたビジョンが浮かぶ。
天を目指して聳え立つ塔。燃え盛る大地。崩れていく街。塔の前に立つ3人の巨人。真ん中にいるのがカルミラだ。奥にはまた3人の巨人がおり、更に奥には1人佇む巨人の姿がらあった。
突如流れて来た記憶に困惑していたトリガーを、カルミラは蹴り付けて背中から倒れさせる。そしてその腹や胸をヒールの様な足で何度も踏み付けた。恨みを込め、歓喜する様に笑いながら容赦無いカルミラのストンプがトリガーを襲う。何とかして転がって逃れ立ち上がろうとしたのだが、今度はそこにゴルバーが突っ込んで来て猛烈な体当たりを喰らわせて来た。トリガーの身体は宙に浮き、再度地面に叩き付けられる。
『グゥ……クッ……!?』
『そんなもんかい?もっともっと、情熱的に愛し合おうじゃあないのォ!』
飛び掛かって来たカルミラ。2人は組み合い、絡れ合いながら地面を転がる。マウントを取っては返しを互いに繰り返していき、土に汚れようが構わず戦う。数度転がり合った後に、カルミラが馬乗りとなってトリガーの首を絞めた。ギリギリと強力な握力で生物にとって弱点となり得る場所を攻めながら、更に拳を頬に叩き付けてくる。トリガーの胸に付けられた青い水晶・カラータイマーが赤く点滅し警告音を鳴らす。これは彼の命に危機が迫っているのを報せているのだ。
『フフフッ、もっと聞かせてくれよ……苦しみの悲鳴をォ!』
───このままじゃ……!?───
殺られてしまう。その思考が頭を過り冷汗が伝う。無理矢理彼を立たせたカルミラ。そしてゴルバーが吼えながら向かって来る。まずいと思った時、何度目かのビジョンが浮かんだ。
───あの剣……そうか!───
手を伸ばすダイキ。するとトリガーの前に光輝く物が現れ、彼はそれを掴んだ。
───CIRCLE ARMS!
超古代からの贈り物、神器サークルアームズである。
『ハッ!』
『チィッ!』
身体を捻ってカルミラから離れ、回転しながら剣を振るう。カルミラは後方に大きく飛んでそれを躱した。奴が離れた隙に、トリガーは向かって来るゴルバーへと駆け出す。そしてすれ違いざま、剣で一閃。強烈な斬撃がゴルバーの腹部を裂き、血と肉片が飛び散る。
「Gooooooo!?」
振り返り、ダイキは手にしている小型化したサークルアームズのスロットにトリガーマルチタイプのGUTSハイパーキーを装填。
───MAXIMUM!BOOT UP!MULTI!
そして柄のトリガーを引く。
─── ZEPERION!SWORD FINISH!
光がサークルアームズ・マルチソードの刃に収縮していき限界まで達した時、彼はその剣を振るった。光の斬撃が飛ばされてゴルバーを斬る。余波による凄まじい爆発と共に、ゴルバーは大地に倒れた。最早満身創痍であり立つことは叶わないだろう。弱々しい鳴き声が奴から放たれる。
『フンッ!』
鞭・カルミラウィップをトリガーに向けて振るうカルミラ。しかし彼はそれを剣を振って弾いた。様々な軌道を描きながら鞭が彼を襲うが、決して怯むこと無く剣で全て対処。そして一歩踏み込んで斬撃を飛ばした。斬撃は彼女にヒットし、数歩後退させることに成功する。
『くっ!?おのれェェ!』
少しだけだがカルミラは怯んだ。攻めるなら今がチャンス。トリガーはサークルアームズを地面に突き立て、拳を握り脇を締めて腰に引いた後眼前に伸ばしてクロスし、それを横一文字に開いていく。光が彼のプロテクターや胸に集まっていき、眩い輝きで満ちている。その動きは、かつてのヒーローと同じもの。そしてトリガーは腕をL字に構え、そこから強烈な熱光線を放った。
『ハァッ!!』
あのヒーロー・ウルトラマンティガも使用していた最大最強の必殺光線・ゼペリオン光線がカルミラ目掛けて放たれたのだ。
『フンッ!』
カルミラは鞭を伸ばしてゴルバーに巻き付ける。そしてその巨体を自身の前まで持って来た。肉盾として利用するつもりなのだ。目論見通り、ゼペリオン光線はゴルバーに直撃する。
凄まじい熱量の光線がゴルバーの肉体を削っていく。奴も何とか耐えようとするが、トリガーは更に力を込めて放った。光線がより太くなり、プロテクターがより強く輝く。それを耐え切ることなど出来る筈も無く、遂にゴルバーは砕け散ってしまった。大爆発し、肉片が辺り散らばる。爆発の余波はカルミラのことを押し退げていく。
『ッ!?……やるじゃあないか。このぐらいなきゃ面白味ってもんが無いからねえ』
そう言うと指を鳴らし、彼女は闇に包まれて姿を消す。
火星の地に降臨したウルトラマントリガーは闇の怪獣を撃破し、闇の巨人を退散させることに成功したのであった。
「ダイキ……」
戦いを終えて構えを解き、消失していくトリガーを礼奈は見つめる。背負わされた宿命、そしてこれから待ち受けるであろう運命。鬼が出るか蛇が出るか、予想も出来ない未来が息子の前に立ち塞がっているのだと思うと胸が苦しくなる。せめて自分が代わってあげることが出来たなら……そう思うがそれは決して出来無いのだ。
「お母さん」
息子のことを思う彼女の隣りに光圀が並ぶ。
「彼の前に立ち塞がった巨人は石板に描かれていた闇の巨人の1体。そして恐らく、他の闇の巨人も復活する可能性が高い。そうなれば、ダイキ君はいつ終わるか分からない戦いを続けていくことになるでしょう……」
「でも、それがあの子の運命。なら私は、見守るしかありません。ダイキが夢見ている未来に辿り着けるその時まで……私は自分の息子を信じていますから」
そんな話をしていると、遠くからダイキが手を振りながらこちらに走って来た。これからの不安は大きく数え切れは程ある。だが今は、笑顔で向かって来る息子に対して優しく手を振り返りすことが、自分の出来る精一杯であった。
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背後から投げかけられた可可の言葉。それでもかのんは校門に向けて歩いた。本当にこのままで良いのだろうか?自分の歌が大好きだと言ってくれる彼女を、一緒に歌いたいと言ってくれる彼女のことを、置いて行ってしまって良いのだろうか?
「本当にこのままで良いの……?」
思わず言葉が漏れる。
あと一歩踏み出せば校門を出ると言う時、かのんは踵を返して駆け出した。
もう嘘は吐きたくない。この想いを誤魔化したくない。がむしゃらに走り、可可の前に立つ。
幼い頃からずっと思っていたことがある。歌が好きで、凄く大好きで、歌っていれば羽が生えた様に何処までも飛んでいける。辛いことも悲しいことも、荒んだ気持ちも力に変えて前に進める。笑顔になることが出来るのだと。
「いつか見た未来を諦めたくない。やっぱり私……」
胸の中のキモチを、かのんは全力で叫んだ。
「歌が大好きだ!!」
湧き上がる歓喜と感謝の想いが奏でられる。これから訪れるまだ分からない未来。それがどんなものでも彼女は頑張りたいと心が震えていた。高い壁も飛び越えて、信じる未来へと走り出せる筈だ。
───未来予報ハレルヤ。
彼女は歌う。これまで溜まっていた想いを全て吐き出す様に。その美しい歌声と踊りに1人、また1人と人が引き寄せられて来た。
歌い終えた時、彼女の周りには多くの人が集まっており、賛頌と拍手が起こっていた───
「私……歌えた……!!」
今までずっと人前で歌うことが出来なかった彼女。しかし今日この時、遂にかのんは大勢の人の前で緊張すること無く歌い切ることが出来たのだ。
喜びに満ち溢れ、笑顔が咲く。可可も、聴いてくれたみんなも笑顔でかのんを賞賛していた。みんなの賞賛に応える様に照れながら手を振る。そんな時、携帯に着信音が鳴った。相手はダイキだ。
この喜びを彼にも伝えたい。そう思い彼女は通話ボタンを押して携帯を耳に当てる。
「もしもしダイキく───」
《かのん!?実は大変なんだ!!》
だが、彼女が人前で歌えたことと同じくらいに衝撃的なことが、彼の口から伝えられるのであった……。
《僕、結ヶ丘に通うことになっちゃった!!》
「へ?………ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」
ここから始まる物語。その先に何があるのかは分からない。
ただ遠い宇宙の何処かで、誰かが笑った様な気がした。
ウルトラマントリガー登場!そしてゴルバーを撃破!
戦闘シーンは本編と流れは殆ど同じですが所々変更しています。
かのんが歌えるようになったシーンも一部台詞を変更。とはいえ今回はほぼほぼ本編と同じ流れになってしまいました……。
ラストにて衝撃のことをダイキから告げられたかのん。一体これから、彼女達にはどんな未来が待ち受けているのでしょうか……?
何やらきな臭い物を残しながらも、これにて1話分が終わりました。次回も数回に分けて2話目を書いていきたいと思います。
そして前回のサブタイを探せですが、ダイキの母である礼奈の台詞にあった「運命の光の中で」が正解になります。ウルトラマンダイナ第29話のタイトルです。今回も隠れているので探してみて下さい。
それでは皆様からの感想や高評価、ここすき等、心よりお待ちしております。