トリガーライブ・スター!   作:内原戸哲夫

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お久しぶりです。
流石に一ヶ月空けるのは不味いと思い書き上げました。

それでは早速どうぞ




5いざ地球へ

 

 

 

 

 

 

 

 石像が宇宙を漂う。醒める事無き眠りの中で追憶するのはかの日の闘争。血が煮え滾り、肉の踊る戦い。破壊の限りを尽くす中で己に向かって来る最高の好敵手。刻み刻まれた拳は、忘れることは出来無い。

 

 せめてもう一度……もう一度だけあの衝動を。

 決して叶わないであろうその想いだけが胸中を支配していた。

 

 

 

 

 

───君の番だよ、ダーゴン。

 

 

 

 

 

 胸の辺りに亀裂が生じる。それはどんどん拡がっていき、やがて全面に至った。そして石は弾け飛び、石像となっていた巨人は解放されて近くの小惑星に落下。大の字で寝転がった。

 黒と鈍い赤い体色。鎧を着込んでいる為、非常に力強い姿をしている。

 

 復活する事は決して無い筈の自分が何故解放されたのか?

 そして今聴こえた声は……。

 

 

 

 

『いつまで寝てるんだいダーゴン?』

 

 そんな彼に声を掛けたのは妖麗戦士カルミラだ。起き上がろうとした彼を蹴りまた転がす。

 彼の名はダーゴン。剛力闘士の異名を持つ者。

 

『おお……! カルミラかァ!?』

 

 幾年ぶりの再会をダーゴンは喜び立ち上がる。雑に扱われたがそれはいつもの事。寧ろ久々の感覚は懐かしく悪くないとさえ思えた。

 そんなダーゴンにカルミラは溜め息を吐く。暑苦しいのは昔から変わらない。

 

『アンタが眠ってる間に、3000万年経っちまったよ』

 

『なんとォ!? 長い時が流れただろうとは思ったがそれ程とは……!』

 

『やれやれ……。良いかいダーゴン、トリガーを見つけたよ』

 

『我が好敵手を!?』

 

 カルミラの言葉に驚き、勢い余って右足で地面を踏み抜く。小惑星全体がその衝撃で揺れた。

 

『そうか……そうかそうか!! 再び我が好敵手と相見(あいまみ)えることが出来るというか!! 何たる僥倖!!』

 

 幾度もぶつかったあの好敵手とまた戦う(殺し合う)……。叶わないと思っていた願望が、永き刻を経て現実のものとなろうとしていることをダーゴンは心奥底から歓喜していた。握り締める拳は、興奮と期待でギリギリと音を鳴らしている。

 3000万年の死闘を思い返し高揚するダーゴンを見てカルミラは細く笑む。後はアイツを見つければ……。

 

『待っていろ、トリガーよ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 やばい……まずい……。

 夜、かのんは自室のソファーに寝転がり焦りで顔を歪ませていた。

 

 可可の想いや、兄のショウゴの言葉を切っ掛けにし、彼女は遂に人前で歌うことが出来た。そしてこれから、可可と共にスクールアイドルになると決意をした。そこまでは良かったのだが、そのすぐ後に予想外の問題が発生する。

 

 なんと友人である円淵 ダイキが地球に戻って来て、しかも結ヶ丘女子高等学校に入学するという電話が掛かってきたのだ。

 

 火星に住んでいる彼が、建設された学校に入学する筈だった彼が、そして何より男子である筈の彼が、何故結ヶ丘に入学することになったのか?

 多分電話で理由の説明は受けたと思うのだが、正直驚いていた為余り頭に入って来ていなかった。

 

 別に帰って来るのが嫌という訳ではない。一緒の学校に通うのだって昔を思い出して嬉しい気持ちにはなる。彼女がこんなに焦っている理由は別の所にある。それは……。

 

「嘘吐いてたのバレちゃうよぉ……」

 

 彼女がダイキに、結ヶ丘の音楽科に合格したと嘘を言っていたこと。彼が学校に来ればこれがバレてしまうからだ。昔、まだ小さな子どもだった頃、かのんは彼とある約束をしていた。かのんは世界中の人々を自分の歌で笑顔にするという夢を、ダイキは世界中の人々を笑顔にする花を咲かせるという夢を、それぞれ叶える為に頑張るという約束だ。

 

 元々結ヶ丘を受験したのも、その夢の為の第一歩であった。結果は不合格であり、彼女は普通科に通うことになってしまったが……。

 

 夢への一歩を踏み外してしまった彼女であったがそれをダイキに伝えることが出来ず、音楽科に合格したという嘘を吐いてしまったのである。彼は火星に住んでいるし当面はバレること無いだろうと思っていたが、結ヶ丘に入学して来るとなれば話は変わってくる。

 

「別のクラスだったらバレない? いや、どうせすぐ分かっちゃうよねぇ……。ちいちゃんから音楽科の制服借りる? ダメダメ! そんな迷惑掛けられない……。うーん、どうしよぉ〜……」

 

 正直に言うのが一番良いのだろうが、そんなことすればダイキを失望させてしまうかも知れない。そう思うとなかなか言い出せないでいた。

 

 結局どうしたら良いか思い付かず、彼女はいつの間にかソファーで眠ってしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 一夜明け、東京・ソラフネシティ。2014年に複数の市町村の合併により誕生し、活発な都市開発によって3年後には政令指定都市となったその街の郊外に、TPU総合本部基地が建てられていた。中部地方山間部にあった旧TPC、及びTPU本部基地として利用されたグランドームから本部施設を移動して作られ、2021年に完成した物だ。

 外観はこれでのダイブハンガーやグランドームとは違い一般的な建物、基地施設に近い形の構造ではあるが、内部には過去2つ以上の設備を持つ地球防衛の要となっている。

 

 そしてその基地に、ダイキは静間 光圀会長と共に来ていた。彼にとっては久々の地球であり、青空を見て興奮していた。

 

「うわぁ……!」

 

「どうだね、久しぶりの地球は?」

 

「何だか、ドキドキしてます! これから地球での生活が始まるんですね! 僕、ウルトラマントリガーとして──」

 

「ダイキ君」

 

 「頑張っていきます!」そう言おうとしたのを光圀が止め、彼に耳打ちする。

 

「良いかね? 君がトリガーであることは極力秘密だ。いつ誰が聞いてるかも分からないからね」

 

「は、はい!」

 

 そんな話をした後、2人は施設内に入っていく。そこで彼が見たのは、巨大な戦闘艇であった。

 

「で、でっけぇ!! 何ですかこれ!?」

 

「対怪獣用戦闘艇ナースデッセイ号だよ」

 

 ダイキの質問に答えたのは光圀ではなく別の男性だった。白衣を纏っており、知的な雰囲気が醸し出されている。男性は柔かな笑顔でダイキ達のもとに歩み寄って来た。

 

「紹介しよう。彼は高山博士。量子物理学の権威であり、このナースデッセイ号の開発に関わった天才だ」

 

「初めまして、高山です」

 

「僕、円淵 ダイキです! こんな大きな船作ったなんて、凄いですね!!」

 

「いやいや、僕らが関与したのは浮遊システムぐらいで、殆どは特務3課の人達による頑張りが大きいよ」

 

 謙遜する高山博士だがダイキからしてみたら凄いのは変わりなく、キラキラとした瞳を向けていた。

 

「それに設計したのは、君と同い年くらいの天才少女だよ」

 

「僕と同い年!? そんな凄い子がいるんですねぇ……!」

 

「その内会えるかもね。おっと、僕はこれで。友人と会う約束があるんで」

 

 2人に頭を下げてから高山博士はその場を後にする。

 TPUには凄い技術力を持った人達がいることを、改めて肌で感じたダイキ。そしてこれから彼が入隊するGUTS-SELECTにも優れた人達がいるのだろう。期待と緊張で胸が高鳴る。

 彼は、火星を発つ前に母から贈られた言葉を思い返した。

 

 

 

───ダイキ。どんな時でも、母さんは貴方の味方よ。ずっと貴方のことを想っているわ。辛い事、悲しい事があってもそれだけは忘れないで。ダイキは私の、大切な息子なのだから。

 

 

 

 その言葉と共にされた優しい抱擁。その温もり、そして彼女の何処か嬉しくも苦しそうな表情と涙は決して忘れない。

 

「頑張るよ、母さん」

 

 大切な家族への想いを胸に、彼は一歩前へと踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 ナースデッセイ号内の移動作戦室にダイキは通されていた。そこにはGUTS-SELECTのメンバーが揃っている。

 

「初めまして! 円淵 ダイキです! よろしくお願いします!」

 

「おー! 元気いっぱいだなぁ!」

 

「何か暑苦しそうなのが増えたわね……」

 

 「ガハハッ!」と笑いながら大柄な男性がダイキの隣りに来て肩を組んだ。

 

「元気な若者は大歓迎だぜ! 俺は佐久間 鉄心! このナースデッセイ号のパイロットだ! そしてあっちの頭の硬そうな美人は七瀬 ひまり!」

 

「よろしく、坊や。そっちのゴリラの話はスルーして良いわよ」

 

「誰がゴリラだ!?」

 

 眼鏡をクイっと上げるひまり。その彼女の隣りには、大きな赤い頭部に黄色い眼の明らかに異星人であろう小柄な存在が立っている。

 

「そして俺様が、由緒正しいメトロン星人のマルゥル様だ!」

 

「うわぁ! 可愛い!」

 

「はぁ!? 可愛いだと!? ふざけんな!!」

 

 メトロン星人。メトロン星出身の宇宙人であり、別名幻覚宇宙人と呼ばれる事もある種族。TPUでは余り公表はされていないが、こうやって宇宙人が働いているのも珍しくないのだ。

 

 可愛いと言われたのが気に食わなかったマルゥルはダイキに食い掛かる。そんな彼を鉄心が「まあまあ」と抑え、ひまりが呆れながらそれを見ていた。

 

「私が隊長の辰巳 誠也だ。火星では静間会長を助けてくれたそうだな。感謝する」

 

「い、いえ!? これからよろしくお願いします!」

 

「ああ。だが、敬礼のやり方が良くないな。掌はこう、顎を引いて背筋は伸ばす」

 

 ダイキの変な敬礼を誠也は矯正。

 

「少しずつ覚えていけば良い。それと──」

 

 辰巳隊長が目線を向けた先。そこに居たのは何処か不満そうな顔をして壁に寄り掛かっている少女だ。一度ダイキに目を向けるが、すぐにそれを外す。

 

「こらアユ! ちゃんと挨拶しろ!」

 

 そう鉄心に言われ、少女・アユは渋々ダイキの前に出た。

 

「静間 アユ……」

 

「静間? もしかして会長の?」

 

「彼女は私の娘だよ」

 

「娘!? そうなんだねぇ。けど君なんか暗いよ? ほら、スマイルスマイル!」

 

 アユの前で両人差し指を頬に当て、いつもの口癖を言うダイキ。彼は彼女に笑顔になって欲しいという親切心からそんなことを言ったのだろう。しかしそれは、彼女の神経を逆撫でするだけでしかない。

 

「ウザい」

 

 一蹴。そしてアユは彼の横を通り過ぎて作戦室を出ようとする。それを誠也が止めた。

 

「アユ」

 

「………ナースデッセイ号の最終調整に入ります」

 

 そう言った後、彼女は出て行ってしまった。

 彼女の背中を、ダイキは見送るしかなかった。そんな彼の肩に光圀が手を置く。

 

「彼女は君と同い年で、今年から結ヶ丘女子高等学校に通うことになっている。そして、このナースデッセイ号の設計をしたのも彼女だ」

 

「あの子が!? えっ、ちょっと待って下さい、結ヶ丘って……」

 

「ああ」

 

 光圀は更に言葉を続けた。

 

「君には彼女と共に、結ヶ丘女子高等学校に通ってもらうよ」

 

 光圀にその台詞はダイキを、そして彼が女子校に通うというのを知らなかった隊員達を驚かせることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ナースデッセイ号内の研究室にユアは居た。

 そこには超古代の石板が管理されており、彼女によって調査されている。繋がれたいくつものケーブル。その先にある装置には、ブランクのGUTSハイパーキーが装填されていた。

 

 机に浮かび上がったキーボードのホログラムを打ち、誠也に伝えた通りナースデッセイ号の最終調整を行うアユ。

 ふと、彼女は机の上に置かれていたある物を見る。

 

 それは、ダイキのGUTSスパークレンスに酷似した石の像であった。

 

「何でアイツが……」

 

 ボソリと呟いたアユ。

 どうしようも無い悔しさを、彼女は奥歯で噛み締めていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ……」

 

 結局何の解決案も思い付く事なく朝を迎えてしまったかのん。学校に向かうのだが足取りは少し重い。

 

 入学自体は少し先だがダイキが地球に来るのは今日の朝らしく、恐らくもう着いているだろう。そうなると、彼は店に来るかも知れない。そしたら母や妹、そして兄が真実を言ってしまう可能性がある。

 

 どうしたものかと考えるが良い案は浮かばない。

 

「ああーーっ!! どうしたら良いのーーっ!?───きゃっ!?」

 

 背後で何かが衝突した様な大きな音が鳴った。振り返ると、道路で大破した自動車があった。まるで何かに全力でぶつかった様に前面が押し潰されており、フロントガラスも粉々。運転席のエアバッグが作動していて、運転手はどうやら無事らしい。後続の車も止まり、大惨事にはならなかった様だ。

 

 しかし、どうもおかしい。

 そう思っていると、今後は何かにぶつかった様な音がして、自転車通勤中であったのだろうサラリーマンと思われる男性が倒れた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 かのんは男性を起こす為に走って近付いていく。だが………。

 

「痛ッ!?」

 

 彼女は何かにぶつかって転んでしまった。デコを摩りながら身体を起き上がらせて前を見るがそこには何も無い。

 

「ど、どういこと……?」

 

 立ち上がり、手を前に出して恐る恐る進む。すると、手は何かに当たった。

 

「もしかして……見えない、壁?」

 

 何も無いではなく見えないが正解。

 彼女の前には、透明で視認が難しい壁が現れていたのだ。かのん以外の人々も気付いたのか、見えない壁に手を当てたり、それを叩いて出せと叫ぶ者もいる。

 

「何なのよこれ……!?」

 

 まさかの事態に驚いているかのん。一体何故こんな事が?

 その答えは、すぐに背後から現れた。

 

「Kshyyyyyyyyyyyy!!」

 

 咆哮と共に大地を破って姿を見せたのは巨大な一角、大きな爪、そしてしなやかな触手を持つ巨大な生物・怪獣である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ショウゴは昨日の新聞を店のカウンターに座って読んでいた。彼が開いているページに写されているのは火星に現れたウルトラマン。

 

「ティガに似てるけど、違うウルトラマン……」

 

 15年前に姿を消したとされている英雄・ウルトラマンティガ。火星に現れた巨人はそれによく似ている。何か関係があるのだろうかと考え込む。するとそこにありあが降りて来た。

 

「おはようお兄ちゃん。何読んでるの?」

 

「栄光と伝説。それを持つだろう巨人様の記事だよ」

 

 そう言って席から立ち、新聞を丸めて軽くありあの頭を叩く。ありあが吠えるが気にせず彼は住居スペースに入っていった。

 

 栄光。どんな強敵にも諦めず立ち向かい、人類を守り抜いた。

 

 伝説。太古より甦り、その光で闇を撃ち破った。

 

 今度現れた巨人も、きっとそんな風になるのだろう。人々の光に導かれて世界を救うのだろう。

 

超人(ウルトラマン)、か……」

 

 そう呟いた直後である。スマホからアラームが鳴り響き、怪獣出現が知らされたのは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ダーゴンの復活、悩むかのん、地球に来たダイキ、GUTS-SELECTメンバーの登場、更に怪獣出現と、全体的に前振りみたいな回になった今回。

本編スパスタではあの後ルンルンだったかのんですが、こちらではそうもいかず……。彼女がどうするのかお楽しみに。

ナースデッセイ号開発に関わった量子物理学の権威である高山博士とその友人………。
ちょっとしたお遊びみたいな所もあるので、余り深くは考えなくて大丈夫です。

GUTS-SELECTメンバーはほぼ原作通りですが1人オリキャラである静間 アユを登場させてます。
本編トリガーのアキト+ユナみたいなキャラです。どちらかと言えばアキト寄りにはなりそうですが。

最後に現れた怪獣。見えない壁、そして爪や触手が特徴的な怪獣と言えば……。
これも次回お楽しみに。

前回のサブタイを探せの答えですが、終盤のかのんの台詞にあった「いつか見た未来」が正解です。
これはウルトラマンガイア第32話のサブタイとなっています。
今回のサブタイを探せですが……かなり難しいと思います。是非探してみて下さい。

スパスタもトリガーもどんどん盛り上がり、更にティガのサブスク解禁と、最近は嬉しいことが多くて楽しいです。本作も頑張っていくので是非よろしくお願いします。

それでは皆様の感想など心よりお待ちしています。


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