トリガーライブ・スター!   作:内原戸哲夫

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お待たせしました!



7未来への約束

 

 

 

 

 

 

 

「…………これでよし」

 

「ありがとうございます! いてて……!」

 

 ガギ出現、トリガーの登場、そしてダーゴンの飛来。様々なことがあった後、ダイキはかのんの実家である喫茶店に居た。彼の怪我を見たかのんが、治療の為に連れて来たのだ。そこで店を手伝っていたショウゴからダイキは手当を受ける。

 手当が終わり、笑顔で立ち上がってお礼の為に頭を下げたダイキ。その動きが少し傷に響いた。

 

「急に動くからだ」

 

「あはは、つい……」

 

「それにしても驚いたよ。火星から戻って来て、久しぶりに会ったと思ったら怪我してるし、しかもGUTS-SELECTに入隊してたなんて……。オマケに明後日から結ヶ丘に入学するんでしょ? 情報量多くてパンクしそう……」

 

 

「正直、僕もそうなんだ」

 

 少し困った様に笑うダイキ。

 

「あ、あの!」

 

 そこに可可が声を上げた。

 

「結ヶ丘って女子校ですヨネ? 男性の貴方がどうして結ヶ丘に?」

 

「火星であった怪獣事件の時、いろいろあってGUTS-SELECTに入る事になったんだ」

 

「いろいろって、出来ればそこを知りたいんだけど……」

 

「そこはまぁ、いろいろ……」

 

 トリガーに変身したことなど言える筈も無いので適当に笑って誤魔化す。そして火星と怪獣という単語に、ショウゴは少し反応していた。

 

「それで急遽地球で生活することになったんだけど僕一応高校生でしょ? 学校をどうするかって話になった時、結ヶ丘を勧められたんだ。僕をGUTS-SELECTに入れてくれた人がそこの理事長と知り合いらしくてね」

 

「なるほど! 要するにコネ入学というやつデスネ!」

 

「ま、まあ、そうなるね……」

 

 あながち間違っては無いがなかなか胸に刺さる台詞だ。

 

「それに結ヶ丘には僕と同じでGUTS-SELECTのメンバーの子がいるから、その子にいろいろとサポートしてもらえっても言われてるんだ」

 

「へー、そうなんだ。ていうか今更だけど、GUTS-SELECTって高校生でも入隊出来るんだね。私でも入れるかな?」

 

「かのんなら出来るんじゃない?」

 

「駄目デース!!」

 

 バンッとテーブルを叩いて可可が立ち上がった。

 

「かのんさんは可可とスクールアイドルになるんデス!」

 

「スクール……アイドル?」

 

 火星に長いこと住んでいたダイキはスクールアイドルを知らず首を傾げる。

 

「スクールアイドルを知らないんデスか!?」

 

「僕、火星暮らしが長かったから……」

 

「では可可がお教えしましょう! スクールアイドルとは!」

 

「はいはいクゥクゥちゃん落ち着いて!」

 

 暴走しそうな可可をかのんが抑えた。彼女にスクールアイドルを語らせたら日が暮れてしまうから。仲の良さそうな2人のやり取りを見て、ダイキは自然と笑みが溢れた。

 

「はっ! す、すいません、つい……」

 

「大丈夫だよ。えっと……」

 

「あ、自己紹介がまだでしたね。唐 可可と言いマス。かのんさんと同じ、結ヶ丘高校普通科の一年生デス」

 

「僕は円淵 ダイキ。これからよろしくね、クゥクゥさん……ってあれ? 普通科?」

 

 ダイキは彼女の言葉にある疑問を感じる。

 

「そうデスよ」

 

「でも、かのんって音楽科じゃ……───」

 

「わああああああああああ!! ちょ、可可ちゃんちょっと来て!!」

 

 突如大声を出し、かのんは可可の手を取って店内スペースから自身の部屋へと引っ張って行ってしまった。突然のことにポカンとしてしまうダイキ。店内には彼とショウゴ、そしてカウンター席に座ってるありあとその前にいる母が残される。

 アイツ、音楽科落ちたこと言ってないな……。とかのんの様子からショウゴは察した。

 

「どうしたんだろ、かのん……?」

 

「さあ?」

 

 勝手に言うのは野暮だろうと思い、ショウゴは黙って置くことにした。ダイキの前の席に彼は座る。

 

「火星に居たんだってな」

 

「あ、はい」

 

「見たのか、あの巨人……?」

 

「トリガーのことですか?」

 

「トリガー?」

 

 思わず名を言ってしまったダイキ。まだトリガーという名は世間には公表されていないので、彼の口からそれを聞いてショウゴは少し怪訝に思う。

 一方、うっかり言ってしまったダイキもヤバいと思いどうにか誤魔化そうとする。

 

「か、火星にいたTPUの人に教えて貰ったんです! あの巨人、ウルトラマントリガーって名前だそうです!」

 

「そう、なのか……」

 

 彼はGUTS-SELECTの隊員だから知ってたとしても不自然では無いだろうと一応納得。どうやら誤魔化せたみたいだとダイキは内心ホッとした。

 

「……どうだった、そのトリガーは」

 

「そうですね……。何て言ったら良いか難しいんですけど、光を感じました」

 

「光……」

 

「はい! みんなを守ってくれる様な、暖かな光です!」

 

 笑顔でそう言うダイキ。彼は変身したあの時に自分が感じたものをショウゴに伝えたのだ。

 その光という言葉が、ショウゴの胸の中に奇妙で少し不快な感覚を残しているなど彼は知らない……。

 

「そっか……光、か。そういえば名前聞いて無かったな。俺は澁谷 ショウゴ。かのんの兄貴だ」

 

「円淵 ダイキです。かのんとは小さい頃から友達でした! よろしくお願いします!」

 

「まさかアイツに、男友達が居たなんて知らなかったよ。まあ、あんな妹だけど仲良くしてやってくれ」

 

「はい!」

 

 眩しい笑顔をダイキは見せる。それを見て、彼もあの日光になったのだろうかとショウゴは思った。

 

「今からココア入れるから、それ持ってアイツの部屋に行って来な」

 

「ありがとうございます!」

 

「待ってる間、今度はそっちの妹と話してやってくれ」

 

 ショウゴが目線を向けた方に首を回す。そこには妙に瞳を輝かせたありあの姿があった。姉が連れて来た同世代の男の子……姉との関係だったり何なり、気になってしょうがないのだろう。興味津々なありあは立ち上がったショウゴと変わる様にダイキの前の席に座った。

 

「初めまして! 私、澁谷 ありあです! 早速なんですけどお姉ちゃんとの出会いとか関係とかどんな風に想ってるかとかその他いろいろを教えて下さい! 是非!」

 

「え、ええ!?」

 

 凄い勢いで食い付くショウゴはカウンター内に入ってコップを三つ出す。ふと、あることを思い隣りで皿を洗っている母に尋ねた。

 

「なあ、母さん」

 

「んー? どうかした?」

 

「あのダイキって子、母さんは知ってたか?」

 

「私も初めて会ったけどぉ、あの子昔はいろんな子と遊んでいたし、私達の知らない友達が居ても変じゃ無いんじゃない?」

 

「それも、そっか」

 

 ありあに質問攻めされてるダイキに一度目を向けた後、ショウゴはお湯を沸かす為にケトルのスイッチを押すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

#################

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナースデッセイ号内の研究室。そこにある石板を、アユは見つめていた。描かれているのは超古代の記録の一端。

 三体の闇の巨人。神器を掲げ、それに立ち向かう勇士。闇を払う光の巨人。そして祈りを捧げる巫女。彼女はその石板を手で優しく撫でた後、唇を噛み締める。

 

 あの力は、自分が手にする筈だった。光の巨人となり、決して赦せないあの存在を滅す筈だった。そして復活する闇の巨人達を討ち、世界に平和をもたらす筈だった。

 しかし、その力は彼女ではなくあのダイキという青年を選んだ。あんな何も背負ってない様な、ヘラヘラと笑っているだけの男を。

 

 力を得る為に知って来た長年の研究も努力も全てが水の泡となり消えた。

 何故自分じゃないのか?

 どうしてあの男なのか?

 どうしようもない悔しさが、彼女の心を掻き乱していく。

 

「アユ……」

 

 そんな彼女に、部屋に入って来て光圀が声を掛けた。

 

「知ったんだな、トリガーの正体を」

 

「…………はい」

 

「君の気持ちは分かる。だが、ダイキ君をサポートしてくれないか? 彼がウルトラマントリガーとして戦っていくには、君の力が必要なんだ。この世界を、復活する闇から守り抜く為にも」

 

 蘇るであろう闇。

 それを打ち砕くにはトリガーの力が必須。そしてそれが出来るのはダイキだけ。もう彼女に、光を手にする機会は無い。

 

「頼む……!」

 

 頭を下げる光圀。事情を知っているからこそ、この願いがどれだけ彼女にとって屈辱なものかも解っている。だがそれでも、これから起こるであろう厄災に立ち向かう為にはダイキとアユ、二人の協力が必要なのだ。

 

 彼女は何も言わず石板の、勇士が神器を掲げている箇所を見つめる。

 その時、石板と繋がれている装置に装填されていたブランクのハイパーキーが赤く輝いた───

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ええーっ!? ダイキさんに音楽科を落ちたことを言ってないーーっ!?」

 

「ちょ、声が大きいよ!?」

 

 叫ぶ可可の口をかのんが塞ぐ。自室にて、彼女は可可に自分が音楽科の受験に落ちて普通科に通っていることを、まだダイキに伝えてないことを話した。そして音楽科に通っているという嘘を吐いてしまったことも……。

 

「ううぅ〜……どうしたらいいんだろうぉ……?」

 

「そんなの簡単デス。正直に伝えたら良いんデスよ」

 

「そ、そうは言ってもぉ……!?」

 

 可可の言う通り、ちゃんと本当のことを言うのが一番だろう。しかしそれを伝えて幻滅されるかも知れないと思うと踏ん切りが着かないでいた。

 

「だったら可可が言いマス!」

 

「い、いや、それは!?」

 

 立ち上がった可可の手をかのんが取る。

 

「何故デスか!? とっとと言った方がかのんさんだって楽になれる筈デース!」

 

「それはそうなんだけどぉ……!」

 

 どうしても言い出すことが出来無いかのん。その後も可可と押し問答していると扉を叩く音が聞こえて来た。

 

「かのん、入ってもいいかな?」

 

「ダ、ダイキ君!?」

 

 扉を叩いたのはダイキだ。かのんは「ど、どうぞ」と言って彼を自室の中に招き入れる。彼の手には三杯のココアが乗せられたトレイが持たれていた。

 

「これ、ショウゴさんがみんなにって」

 

「そう、なんだ。あはは……ありがとね……」

 

 ダイキはトレイをテーブルの上に置く。

 そんな彼を見ているかのんの脇腹を、可可が軽く小突いた。早く本当のことを言えという意味を込めてだろう。

 

「あ、あの!!」

 

 勇気を振り絞り、彼女はダイキに声を掛けた。

 

「どうしたの?」

 

「えっと……そのぉ……」

 

 しかし二の句が継げない。どうしても、真実を言うのを躊躇ってしまう。

 

「じ、実はね!」

 

「うん」

 

「その、実はぁ……」

 

 小声で可可が「頑張るデス」と伝えて来た。早く言わなければずっと引き摺っていくことになってしまう。ちゃんと言わないと、そして謝らないと。頭ではそう思っているのだが……。

 

「こ、今度ダイキ君のお帰りパーティーやろうよ! ちぃちゃんも呼んでさ!」

 

 そうじゃないだろ。と胸の中で自分にツッコミを入れるかのん。可可も呆れた様な目線を向けていた。

 

「ほんと!? 嬉しいなぁ!」

 

 そんな彼女の心中など知らず、ダイキは素直に喜んでいる。彼の見せる純粋な笑顔が、かのんの罪悪感を強くしていた。

 

「かのんさん、ちゃんと言わないとダメデスよ」

 

「分かってるけどぉ……!」

 

「ん? どうかした?」

 

「い、いやー、何でもないよ!?」

 

 結局誤魔化してしまう自分に内心嫌気が差す。このままじゃダメなのに……。少しずつ、かのんの表情は曇っていく。

 

「かのん」

 

 そんな彼女の前に、ダイキは来た。

 

「スマイル、スマイル!」

 

「ダイキ君……?」

 

「せっかく久しぶりに会えたんだから、僕はかのんの笑顔が見たいな。暗い顔してたら楽しくないよ!」

 

 スマイル。それは彼の口癖で信条でもある。どんな時も笑顔を忘れず前へと進む。彼はかのんにもそう在って欲しかったのだ。

 

「……ありがとう、ダイキ君」

 

 自然と表情が柔らかくなり口角が上がる。昔から彼の笑顔は不思議で、見てると自分も笑顔になることが出来た。

 そんな時、ダイキの持つPDIが鳴った。辰巳隊長からの通信だ。

 

「はい、ダイキです!」

 

《今朝の赤い闇の巨人が現れた! 急ぎ現場に向かい、避難誘導に取り掛かれ!》

 

「ラ、ラジャー! ごめんね、かのん、可可ちゃん! 僕、行ってくる!」

 

 立ち上がり、かのんの部屋を飛び出そうとするダイキ。彼がドアノブに手を掛けた時、かのんが「待って!」と声を掛けた。

 

「あの、私ね……ダイキ君に言わなきゃいけないことがあるの。だから、戻って来たら聞いて欲しいな……ちゃんと、伝えるから」

 

 もう逃げない。彼に本当のことをちゃんと伝えるんだ。その想いを込めて彼にそう言ったかのん。そんな彼女の想いが届いたのだろうか、ダイキはまた優しい笑顔を見せた。

 

「うん、分かったよ!」

 

 そして彼は駆け出す。再度現れた闇の巨人・ダーゴンに挑む為に。部屋の窓を開け、走っていくダイキのことをかのんは見送るのであった。

 

「………何だか、告白するみたいデスね」

 

「は、はあ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずんずんちゃん! ずんずんちゃん!」

 

 陽気なラップを口遊みながらかのんの家に向かう銀色お団子ヘアーの少女が一人。そんな彼女の横をダイキが駆けていく。

 

「あれ? 今のって……」

 

 かのんのカフェから飛び出して来た見覚えの無い少年。その背を彼女・(あらし) 千砂都(ちさと)は何故か見送ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

##################

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出て来いトリガー!! 我と闘え!!』

 

 逢魔が時の街に、ダーゴンが出現。好敵手であるトリガーを誘き出す為に、地面を殴り付けて衝撃波を発生させてビルを破壊し始めた。圧倒的なパワーを持つダーゴンに、人々は恐怖して逃げ惑う。

 

 その現場にダイキは辿り着き、GUTSスパークレンスとハイパーキーを取り出した。

 

「あのパワー、どうすれば……!?」

 

 ダーゴンの怪力に対抗するにはより強いパワーが必要だ。しかし今のダイキではそこまでのパワーを発揮することは出来無い。このままでは前と違ってエネルギーが充分の状態とはいえ、また敗れる可能性も高い……。

 

 それでもやらなければ……!

 ダイキはハイパーキーを起動する為に構えた。

 

「待て」

 

「ッ!? ア、アユちゃん!?」

 

「ちゃんは辞めて。ほら、これ」

 

 ダイキに声を掛けたのはアユだ。彼女は彼に向かって、赤いハイパーキーを投げ渡す。

 

「そのキーの力なら、あの闇の巨人のパワーにも対抗出来る筈よ」

 

「本当!?」

 

「まあ、アンタがちゃんとまともに戦えたらの話にはなるけど」

 

「ありがとう!」

 

「………」

 

 皮肉を言ったの笑顔で礼を言うダイキに少しイラッとする。

 

 力は手に入れた。これでダーゴンにも勝てる!

 ダイキはハイパーキーを起動させる。

 

───ULTRAMAN TRIGGER!MULTI TYPE!

 

───BOOT UP!ZEPERION!

 

「未来を築く、希望の光ッ!

 ウルトラマン、トリガァァーーーッ!」

 

───ULTRAMAN TRIGGER!MULTI TYPE!

 

 日が沈み、空が黒に染まっていく中、光と共に現れたウルトラマントリガー・マルチタイプ。彼はダーゴンに対して構えた。

 

「激闘の覇者になるのは、どっちかしらね……」

 

 睨み合う二人の巨人を、アユは見つめるのであった。

 

 

 

 

『来たな! 我が好敵手よォ!』

 

 トリガーの出現を喜ぶダーゴン。

 

『勝負だ、闇の巨人!』

 

───ULTRAMAN TRIGGER!POWER TYPE!

 

 ダイキはアユから貰った赤いGUTSハイパーキーのスイッチを押して起動。マルチタイプのハイパーキーを抜いてから、それを新たにGUTSスパークレンスのスロットに装填。

 

───BOOT UP!DERACIUM!

 

「勝利を掴む、剛力の光ッ!

 ウルトラマン、トリガァァーーーッ!」

 

 GUTSスパークレンスを掲げてトリガーを引くと、赤い力の光が解放された。

 

───ULTRAMAN TRIGGER!POWER TYPE!

 

『ンンッ……! ハッ!』

 

 眼前で両腕をクロスさせて力を込めると、額のクリスタルが赤く光る。そしてそれを勢い良く開くと、トリガーの身体が真紅に染まった。全身の筋肉が膨張してマッシブになり、プロテクターや頭部の形も変化。

 強靭な肉体と何者にも負けない剛力。圧倒的な力を持ったウルトラマントリガー・パワータイプにへと彼はタイプチェンジしたのだ。

 

『その姿!? そうだ、それと闘いたかったのだァ!!』

 

 自分と同じく強力なパワーを得た姿となったトリガーを見て歓喜するダーゴン。彼は地面を踏み締めて駆け出し、トリガーもそれに対抗して駆けた。

 

『いくぞォォォッ!!』

 

『シェアァッ!!』

 

 ガッチリと組み合う二人の巨人。その衝突が衝撃を発生させて周囲の建物や自動車などを震わせる。

 

『フンッ!!』

 

 トリガーを押すダーゴン。足が下がって道路が抉れる。だがトリガーは、すぐにダーゴンを押し返した。

 

『何とォ!?』

 

『ハァァッ!!』

 

 強烈なパンチがダーゴンの胸に叩き込まれ火花が散る。更にトリガーは踏み込んでいき、連続でパンチを打ち込んでいった。

 

『ハッ! セアッ! ダァッ!』

 

『グオオオッ!? やるではないかァ!』

 

 ダーゴンも負けじと拳を振るった。

 それからトリガーのパンチをダーゴンが受け止めて逆にパンチを叩き込む、押さえ込もうとしてくるダーゴンを躱してトリガーがキックを叩き込む等、互いに一歩も譲らない肉弾戦が繰り広げられていく。

 

 ストレートパンチを放ったトリガー。だがダーゴンはそれを取り、そのまま一本背負いを決めた。背を地面に叩きつけられた彼のことをダーゴンは踏み付けようとして足を振り上げたが、寸前の所で転がって回避し起き上がる。そしてそこへダーゴンが強烈なタックルを仕掛けた。

 

『グアァァァァッ!?』

 

 吹っ飛ばされ、トリガーはビルを壊しながら倒れてしまう。追撃をする為に向かって来たダーゴン。彼はそれを起き上がりながらのキックで後退させる。

 

 距離が開き、二人は構え合う。トリガーは広げた両腕を左右から上に挙げながらエネルギーを集め、胸の前で光球状にする。そしてそれをダーゴンに向けて投げ付けた。光球は光の奔流となって奴へと突き進む。パワータイプの必殺の一撃・デラシウム光流だ。

 

『ンッ!! グウウゥゥ……ガアアアッ!?』

 

 腕をクロスして防いだダーゴン。しかし完全に防ぎ切れることは出来ず大きく吹き飛んでしまい、そのまま海にへと落ち沈んでいく。トリガーはそれを追って海に飛び込んだ。

 

 

 彼らは海底に立ち、地上と同様拳を打ち合っていた。深い海の底では水圧によって圧し潰されたり、潰れなくても動きが鈍くなったりするものだが、強靭な筋力を持つ彼らは地上と全く変わらない動きで戦っていた。

 

 豪快なキックがダーゴンを蹴り飛ばす。吹っ飛んだダーゴンは海中で回転して体勢を立て直し着地。トリガーは更に奴を追い詰める為にサークルアームズを手にした。

 その時、彼の脳裏にまたビジョンが映った。

 

───そうか……これだ!

 

───POWER CLAW!

 

 手のサークルアームズの刃を二又に開く。闇を裂く牙爪、サークルアームズ・パワークロー。その先端を向けてダーゴンに走り出した。

 

『セアァッ!』

 

『ヌウウゥ!?』

 

 パワークローを振りダーゴンの鎧に火花を散らす。何度も振られる鋭い爪は奴の身体を傷付け追い詰める。

 

『ハァァッ!!』

 

 突き出された爪で鋏の様にダーゴンの身体を挟む。そしてそのまま振り回し、ダーゴンを投げ飛ばした。先程の様に受け身を取ることが出来ず、ダーゴンは海底に叩き付けられた。

 

『ヌゥッ!?』

 

 立ち上がり、エネルギーをチャージして右拳を振り上げる。そしてそれを地面に突き付けて爆煙衝撃波・ファイアビートクラッシャーを放った。衝撃波は海底を破壊しながらトリガーへ向かっていく。

 

───MAXIMUM!BOOT UP!

 

───DERACIUM!CLAW IMPACT!

 

 ハイパーキーを装填しパワークローにエネルギーを溜め、それをダーゴンの拳と同じく地面に突き立てた。デラシウムクローインパクトが、超高熱の衝撃波となってダーゴンの技に対抗して放たれた。

 

 衝突する二つの破壊衝撃波。凄まじい爆発が起こり、海中に衝撃が伝達していき海上では大きな水柱が立った。

 結果は相殺。トリガーとダーゴンは互いに睨み合う。そしてダーゴンが、ふと笑みを溢した。

 

『それでこそ我が好敵手。またいずれ、拳を交えよう』

 

 闇に包まれていくダーゴン。撃破こそ出来なかったがどうにか先の雪辱を、トリガーは果たすことが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

####################

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん! 実は私、音楽科落ちて普通科に通ってるんだ……」

 

 翌朝。カフェの前で待ち合わせをし、かのんはダイキに本当のことを告げた。

 

「嘘吐いてて、本当にごめんなさい」

 

 頭を下げるかのん。

 嘘吐いていたことを罵られるだろうか?

 音楽科を落ちたことを嘲笑われるだろうか?

 ネガティブなことばかりを考えてしまって恐怖していたが、そんな彼女にダイキは優しく声を掛けた。

 

「顔を上げて、かのん」

 

 彼の表情はいつもと変わらない笑顔だ。

 

「本当のこと言ってくれてありがとう。ずっと抱えさせちゃってたんだね……ごめん」

 

「ダイキ君は悪くないよ! 私が嘘吐いてたのがいけないんだし……」

 

「僕は全然気にしてないよ。それに、音楽科じゃなくてもかのんの歌を聴くことは出来るでしょ」

 

 これから彼女はスクールアイドルとして活動していくのだから、たくさん歌を聴けるのだと彼は思っていた。

 

「あ……それなんだけどちょっと困ったことがあって……」

 

「困ったこと?」

 

「うん。実は、音楽科の生徒会長? みたいな感じの人にスクールアイドルは認めませんって言われてるんだ……」

 

 音楽科の葉月 恋に、結ヶ丘でスクールアイドルをするのは禁止だと言われている彼女達。可可が抗議に言ったが一蹴されており、ダイキが去った後に彼女は退学して別の学校でスクールアイドルをしようだなんてかのんに言ったりもした。

 

「そんなことがあったなんて……」

 

「でも私今日またクゥクゥちゃんと一緒に、葉月さんに抗議しようって思うんだ。このまま引き下がったら、この学校は葉月の思うままになっちゃうし、クゥクゥちゃんのスクールアイドルをやりたいって想いも叶えてあげたい。そして何より、私がスクールアイドルをやりたいから!」

 

 彼女の意思の込められた強い瞳。それを見て、ダイキの胸にも火が灯る。

 

「じゃあ、僕にも手伝わせて! 僕もスクールアイドルをしてるかのんの笑顔を見たいから!」

 

「本当!? でも、大丈夫なの? GUTS-SELECTのことだってあるし……」

 

「大丈夫! どっちもしっかりやっていくから!」

 

 結ヶ丘の生徒として、GUTS-SELECTの隊員として、かのんの親友として、そしてウルトラマントリガーとして。自分に与えられた使命を果たしていくんだとダイキは燃える様な闘志を沸き起こしていく。

 

「そっか……なんかダイキ君らしいね」

 

「へへっ、そうかな?」

 

「うん。じゃあ、これからよろしくね!」

 

 握手する二人。

 朝の陽射しが、新たなる一歩を踏み出した者達のことを祝福する様に降り注いだ───

 

 

 

 

 

 

「なら、早速学校に行こー!」

 

「いや、ダイキ君の入学は明日からでしょ!?」

 

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

######################

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い出しをしていたショウゴ。

 空に轟音が響き、見上げるとそこには巨大な戦闘艇が飛翔していた。

 

 GUTS-SELECTの最大の戦力・ナースデッセイ号が遂に飛び立ったのである。空を高く上がっていくその姿をショウゴは見つめる。朝の青空が、痛いくらいに眩しい。

 

「光……」

 

 ふと、何故か昨日ダイキから聞いた言葉を思い出した。ナースデッセイ号も、そこに乗るGUTS-SELECTの隊員達も、人類を守る希望の光なのだろう。それがどうしようなく彼には眩しくて遠く見える。

 

 届かないモノを見詰める彼のことを、影で見るモノが居たことに、ショウゴは全く気付いていなかった───

 

 

 

 

 

 

 







パワータイプ登場!
そしてかのんのダイキに対するわだかまりが解消された回にもなりました。

パワータイプのハイパーキーを渡したアユ。一先ずは彼がトリガーであることを許容したようですがこれからどうなるのか……。彼女が何故光の巨人の力を欲したのか、それも後々明らかとなります。

サブタイを探せの答えはダーゴンのセリフにあった「男と男の誓い」です。これはウルトラマンレオ第4話のものになります。今回も隠れてますので是非探してみて下さい。

次回もまたよろしくお願いします。
感想や高評価お待ちしています。


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