トリガーライブ・スター!   作:内原戸哲夫

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一年以上、長らくお待たせしました……!





8スクールアイドルへの道

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結ヶ丘女子高等学校普通科の教室。

 そこにいる女生徒達は、教壇に立っている1人の転校生を見て困惑していた。何故なら……。

 

「はじめまして! 僕の名前は円淵 ダイキです!」

 

 それが女子ではなく男子だったから。

 結ヶ丘は女子校。なのに男子が入学して来たとなれば皆驚き困惑するのも無理ないだろう。「実は女の子なのか?」、なんて考えた者もいるが、その姿や声は間違い無く男性のものだ。

 

「円淵さんは火星の学校に入学の予定でしたが、諸事情で急遽地球に来る事になってこの学校に入る事になりました。急に男子が入って来て困惑してる人もいると思います。ですがそれは彼も同じですので、皆さん仲良くしてあげて下さいね」

 

 担任の言葉に皆は少し戸惑いながらも「はい」と応えた。考えてみれば女子校にたった1人の男子という状況はかなり不安なものであろう。出来る限り助けになろうと多くの者は思った。

 しかし、中には男子が入って来たことに不快感を感じている者もいた。男子が嫌だからこの女子校に来た者だっている以上無理もない。

 

 いろいろな思いを込めた目線がダイキに刺さるが、彼は相変わらずのスマイルで立っていた。

 

「それじゃあ円淵君は、静間さんの隣りね」

 

「はい!」

 

 ダイキは進み、空いている静間 アユの隣りの席に座った。

 

「改めてよろしくね」

 

 そう言って彼女に握手を求めて手を伸ばす。だが彼女は鼻を鳴らした後そっぽを向いてしまう。同じGUTS-SELECTの仲間であるアユとは仲良くしたいのだが、彼女は彼に対して余り良い感情を持っていない様だ。

 

 授業が進んでいき昼休みになるとダイキの周りに彼に興味を持った生徒達が集まってきた。質問攻めに合って困っている様子の彼のことを、かのんと可可は離れた所から見ていた。

 

「ダイキさん、大変そうデスネ」

 

「あはは……そうだね……。まあ、女子校に男子が入って来たらああもなるよね……」

 

 助けに行こうにも囲まれているので飛び込むのは難しそう。そう思っているとダイキは何とか包囲を抜け出してかのん達のところにやって来た。

 

「た、助けてよかのん〜……」

 

「ごめんごめん。私もあの中に突っ込んで行くのはちょっと気が引けて……」

 

「何か動物園のパンダの気持ちが分かった様な気がするよ……」

 

「ふむー、何でパンダって日本であんなに人気何ですかネ?」

 

 そんなこんな話していた時、教室の出入り口から「かのんちゃん」と彼女を呼ぶ声が聞こえて来た。振り向くとそこには千砂都の姿が。

 

「おはよう、ちぃちゃん!」

 

「おいっすー! クゥクゥちゃんもおいっすー!」

 

「おいっすーデス!」

 

「そしてぇ〜……!」

 

 千砂都は両手でダイキの左手を掴み、キラキラとした目線を向ける。

 

「円淵君! 君の名字を頂戴!」

 

「ちょ、千砂都!?」

 

 彼女の発言、「名字を下さい」はプロポーズを連想させる様な言葉だ。教室内での爆弾発言にクラスの子達は驚きの声を上げた。

 

「え、どういこと!?」

 

「あの子、音楽科の嵐さんだよね?」

 

「まさか、円淵君の恋人!?」

 

「ち、違うよ!? 千砂都、みんなが誤解する様なこと言わないでよ!?」

 

 慌ただしくなる教室。みんなの誤解を何とか解こうとしてるダイキとニコニコと笑っている千砂都を見ながら、何をやってるんだかと呟いてかのんは苦笑する。

 

「か、かのんさん! 千砂都さんとダイキさんって、本当にお付き合いしてるのデスかぁ!?」

 

「ああ、違うよ」

 

 驚いてる可可に対してかのんは冷静に答えた。

 彼女、嵐 千砂都は丸や円形の物などを好んでいる。ダイキの名字である円淵には「円」の字が入っているので彼女はそれを羨ましがって欲しいと思っているらしい。

 

「な、ナルホドー」

 

「昔っからなんだよね。まあ、楽しそうだからほっといて大丈夫」

 

「僕結構本気で困ってるんだけど!?」

 

「いいじゃん、いいじゃん!」

 

 タジタジになっているダイキのことをかのんは笑う。昔から何も変わってない、相変わらずなそのやり取りには安心感があった。

 そしてその様子を見ていた他の女子達も思わず失笑。何人かは彼への警戒や嫌悪が薄くなった様子である。千砂都にいい様にされてる彼を見て、悪い人物ではないと感じたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……? あれ?」

 

「どーかしました、かのんさん?」

 

「何か、変な感じがしたんだけど……」

 

「変?」

 

「まあ、何でも無いでしょ。気にしないで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ################

 

 

 

 

 

 

 

 澁谷家が経営するカフェ「se・luz」。3時、つまりは間食の時間が近い事からか客も少しずつ増えて来ており、看板フクロウ(?)であるコノハズクのマンマルに見惚れている客もしばしば見受けられる。そんな店の中で、ショウゴは流し台で食器を洗っていた。

 

 端正な顔立ちをしている彼のことを女性客の何人かはチラチラと見ているが、気にすること無く食器洗いを続けている。

 その時テレビから気になるニュースが流れて来た。ウルトラマントリガーに関するものだ。

 

《約18年前に蘇り地球を救った光の巨人・ウルトラマンティガ。彼に似た巨人が火星に現れ、そして先日地球にも降臨しました》

 

 18年前のティガの過去の戦い、火星でのゴルバー、カルミラ戦と地球でのガギ戦、そしてダーゴン戦の映像が流れた。

 

《本日はTPU情報局総合本部参謀長である入麻 恵さんに来て頂いてます。よろしくお願いします》

 

 KCBのアナウンサーである藤宮 玲子に紹介された入麻は頭を下げる。

 

《この巨人をTPUはウルトラマントリガーと呼称してる様ですが、彼もティガと同様、人類の味方なのでしょうか?》

 

《恐らくそうだと思います。ティガとトリガー、彼らウルトラマンは人類の味方であり、共に時代を守る仲間であると私は考えています。彼らは決して神や救世主では無い。我々と人類と同じ光を持つ存在なのです》

 

《なるほど……。そして光、というと15年前の()()()()()の時の……?》

 

 藤宮アナからの質問に入麻は頷く。

 そして「闇の支配者」という言葉を聞いた時、ショウゴは心臓を掴まれた様な感覚に襲われて洗っていたコップを落としてしまった。ガシャンとコップ割れる音が店内に響き、破片が流しに散らばった。テレビではまだ入麻と藤宮アナの会話が続いているが、もう彼の耳には入って来ない。

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

 母が慌てて客に「すいません」とながら近付いて来た。

 

「す、すまん……」

 

「全く……怪我は無い?」

 

「大丈夫、だ」

 

 手を見るが切り傷などは無い。母が流しの破片を集めていくのを、ショウゴは少し虚な目で見ていた。そんな時、扉が開いて元気の良い声が響き渡った。

 

「お兄さーん! こんにちはー!」

 

 入って来たのは黒髪にピンクのインナーカラー、両サイドを結っており、白い肌にパッチリとした瞳の可愛らしい顔の少女。ピンクを基調とした所謂地雷系の様なファッションに身を包み、愛らしい笑顔を見せながら少女は軽い足取りでカウンターまで来る。

 

 その姿を見て、何処か虚だったショウゴの瞳は厄介な者を見る物に変わった。

 

「南天……」

 

「えへへー、アヤメですよー!」

 

 彼女の名は南天(みそら) アヤメ。ショウゴのことを慕いこの店に足繁く通う常連客だ。彼女は彼の母に挨拶した後カウンターの席、ショウゴの目の前に座る。

 

「あらアヤメちゃん、いらっしゃい」

 

「はい! 来ちゃいました! お兄さん、ココア下さい! 特別甘ぁ〜いやつを、お兄さんが作ってくださいね?」

 

 ニコニコと笑い、首を傾げておねだりでもする様にショウゴに注文したアヤメ。それに対して彼は面倒くさいという態度を滲み出しながら溜め息を吐いた。

 

「むむっ、何ですかその態度はぁ? アヤメはお客様なんですよぉ?」

 

「だったらもっと売上に貢献しろ。お前コスパ最悪なんだよ」

 

 彼女は高頻度で店に来てはカウンターに座り、毎度毎度ショウゴに絡んでくる。注文は大抵ココアかオレンジジュースなどの甘い飲み物、稀にクッキーやパンケーキ。それだけで長時間居座るのでショウゴからしたら溜まったものではない。更に彼女がショウゴのことをほぼ独占していることから、彼目当てで来ている一部女性客からもヘイトを買っている。

 

「えぇ〜!? お兄さんはアヤメが居たら嫌なんですかぁ?」

 

「分かってるじゃないか」

 

「ひーどーいー!」

 

「ふふふ、気にしなくて良いわよアヤメちゃん」

 

 母が笑いアヤメにそう声を掛けた。

 

「わーいっ♪ お兄さんのママ優しい〜♪」

 

「母さん……」

 

 甘やかすなよと言っても、彼女のことを気に入ってる母には暖簾に腕押しだろう。カップを手に取り、彼女の注文したココアを渋々と作り始める。

 

「お兄さんお兄さん! アヤメぇ、今年もまたミスコンにまた出ないかって言われてるんですよぉ〜」

 

 彼女は通っている大学の去年のミスコンで優勝している。そしてショウゴはその大学のOBだ。

 

「好きにしろよ」

 

「もちろん、お兄さんは見に来てくれますよねぇ〜?」

 

「………それやるの秋だろ?」

 

「今から約束してた方が良いじゃないですかぁ〜♪ それにその方が、モチベも上がりますしぃ」

 

「知るかよ……」

 

「とか言いながらぁ、ちゃんと来てくれるのがお兄さんですもんねぇ〜?」

 

「………」

 

 眉間に皺を寄せながら黙るショウゴをアヤメは楽しそうに見る。

 ニコニコと笑いながらそれからも色々な事を話して来た。学校のこと、最近の流行、自分がハマっていること、他愛も無い話題が次から次に彼に投げ掛けられ、ショウゴも少し面倒そうながらもそれらに全て応えていく。

 そうこうしていると、店の扉が開きありあが帰って来た。

 

「ただいまー……げっ」

 

「ありあちゃん、おかえりーっ♪」

 

 アヤメのことを見て苦虫を噛み潰したような表情になるありあ。彼女はアヤメのことが苦手なのだ。因みにかのんも彼女と話すのは少し不得意としている。

 

「ま、またお兄ちゃんにちょっかい出してるんですか!?」

 

「ちょっかいだなんてぇ、そんなとこしてないですよねぇ〜?」

 

 目線を向けられたがショウゴはそっぽを向く。

 

「それにぃ〜、ありあちゃんは将来、アヤメの義妹になるんだしねぇ〜♪」

 

「な、なる訳ないでしょう!? お兄ちゃんは渡しませんよ!!」

 

「えー、もしかしてありあちゃん、ブラコン?」

 

「違います!!!」

 

 ギャーギャーと騒ぐありあ。

 彼女を揶揄って楽しむアヤメ。

 そんな2人を見て母は微笑み、ショウゴは何度目かの溜め息を吐く。この店「se・luz」ではよく見られる光景だ。

 

 彼はエプロンを脱いで適当な所に掛ける。

 

「小麦粉、切れそうだから買出し行ってくる」

 

「あっ、ならアヤメも行きまーすっ♪」

 

「着いて来んな」

 

 そう言ってさっさと外に出た。少し風が吹いて肌寒い。

 先程感じた嫌な感覚は、もう無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 #############

 

 

 

 

 

 

 

 

 代々木スクールアイドルフェス。結ヶ丘の地元で開催されるイベントだ。数年前から催されていて多くのスクールアイドルが参加しており、パフォーマンスをして順位を決めるという人気のイベントになっている。

 

 先日、可可とかのんはスクールアイドル部の設立、活動を認可させる為の署名活動を行っていたところを理事長に呼び出された。そこには彼女達の活動を良しとしなかった臨時の生徒会長である葉月 恋もおり、スクールアイドル活動をする条件としてある課題を出される。

 

 それが前述した代々木スクールアイドルフェスで優勝することであった。

 

 結ヶ丘にとって音楽は誇り。故にそれに関するもので中途半端な結果を出す訳にはいかいというのが理事長の言葉だ。スクールアイドルを始めたばかりの彼女達が優勝というのは非常に厳しいが理事長の言う事も一理ある。それにここで引けばこの学校は恋の好きな様に出来るという事になってしまう。彼女達には優勝するという選択肢しかなかった。

 

 かのんと可可はその後、千砂都にダンスを教えてもらうことになった。高いダンススキルを持つ彼女から教われば、未経験の2人でも少しはマシになるだろう。

 その際可可が彼女をスクールアイドルに誘ったが、かのんは無理をさせたくないと言って止めた。

 更にその後、可可が運動神経が悪く体力も無いという事実が発覚。予想外の事にかのんも千砂都も驚いたが、とにかく基礎体力を付けながらダンスのレッスンも進めていくことになり、可可が書き溜めてた歌詞でかのんが曲を作ることも決まった。

 

 何もかもまだ足りてないかのんと可可だが、優勝してスクールアイドル活動を認めされるという目標の為に全力で走り出していた。

 

 

 

「へー、そんなことがあったんだね」

 

 放課後、上記のことをかのんと千砂都から聞かせられたダイキはそう返した。現在彼女達はランニングを終えた後であり、校内のベンチに座っている3人の前には息絶え絶えの可可が倒れ込んでいる。

 

「うん。まあ、まだまだ何だけどね……」

 

「そっかぁー。ねえ、僕もかのん達のスクールアイドル活動、手伝ってもいいかな?」

 

「それって、スクールアイドル部に参加してくれるってことデスかぁ!?」

 

 ダイキからの言葉に可可がバッと起き上がり勢い良く食い付いた。

 

「うん!」

 

「けど、大丈夫なの? ダイキ君、GUTS-SELECTのこともあるのに……」

 

 手伝ってくれるのは凄くありがたいが、GUTS-SELECTとして活動もしている彼にとって更なる負担にならないかと彼女は心配になる。しかしダイキは「大丈夫!」と笑顔を見せた。

 

「辰巳隊長や静間会長からは学校の事を優先して青春を楽しんで来いって言われてるからさ。それに僕は、かのん達が笑顔になれる手伝いなら全力に頑張るよ!」

 

 誰かの笑顔の為にいつでも全力になれる。それが彼の良い所だ。昔から変わらない彼にかのは自然と笑みを溢す。

 そんな2人を、千砂都が少し羨ましそうに見ていた。

 

「よし! じゃあ、練習再開しよ!」

 

「は、はいデスぅ!」

 

 彼が仲間入りしてくれた事でやる気が上昇し、かのんと可可は立ち上がる。まだまだ長い道のりで時間も無いが、可能性は決してゼロではない。

 

「でも、何で葉月さんはスクールアイドルの活動を認めてくれないんだろう?」

 

 ランニングを再開して暫くするとダイキがそう呟いた。

 

「理事長と同じで、結ヶ丘は音楽に関する事は一番じゃなきゃいけないって考えてるからじゃないかな?」

 

「うーん……」

 

 千砂都が走りながら応えるも、彼は何処か納得してない様子だ。

 

「それだけじゃない気がするけど……」

 

「何か他に理由があるとか?」

 

「分からないけど、そんな気がするかな……」

 

 曖昧な考えだが、彼のこういう勘は結構当たる。かのんも千砂都も、もしかしたら葉月 恋には何か別の事情があるのではないかと走りながら少し考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…… 我快死了(死にそうです)……!」

 

 その彼女らの十数メートル後ろから、可可が死にそうな顔で追いかけていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ###############

 

 

 

 

 

 

 結ヶ丘の生徒会室。一通りの作業を終えた恋は一息を吐いた。手にしていた書類を机の上に置く。窓から見上げた空は少しだけ朱み掛かっている。

 

 目線をまた机に戻した時、ふとある物が映った。可可達が持って来たスクールアイドル部設立の為の書類。

 

「スクールアイドル……」

 

 書類を手に取りじっと見つめる。その時彼女の脳裏に、ある情景が浮かんだ。

 

 

 

 

 ───恋……。

 

 

 

 穏やかに笑う女性。

 伸ばされる優しい手。

 

 何よりも愛おしい記憶。

 そしてそれが何よりも忌むべき記憶に変わる。

 

 怒号と悲鳴、全てを裂く喧騒。

 朱に沈む大切な手。

 もう笑わない、笑えないその顔を。

 

 

 

 

「スクールアイドルなど……!」

 

 抑えられない感情が湧き上がる。

 持っていた書類は、気付けばくしゃくしゃになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフッ……。Excellent(素晴らしい)……!」

 

 闇より彼女を見つめる瞳に、誰も気付く事は無い。

 

 

 

 

 

 





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