アダムス操縦士学院   作:藤咲晃

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18話 接触を謀る者

 テロ襲撃から早6日が経ち。

 5月に入り中間テストが刻々と近付く。

 今月はテスト明けに控えるクラス対抗試合が有る。

 しかしテロ事件の影響で3日の休校。

 これはまだ部隊戦が授業で行われていない1年生にとって3日の遅れは非常に大きい。

 そんな中、長い金髪を靡かせたエミリ教官が指導する錬金科を終えたCクラスは、第3グラウンドに移動開始していた。

 

 移動の傍らガイの背後を一定の距離感を保ちながら歩くリンの姿に、誰しもが訝しむ。

 あの2人に何が有った?

 クラスメイトの疑問の眼差しにガイはどこ吹く風で、リンもいつも通り。

 もう3日だ。あの2人が一定の距離感で行動するのは。

 そんな2人を見兼ねたレナとデュラン、そしてジンが其々に歩み寄る。

 

「どうしたよ? ナギサキと何か有った?」

 

「別に何も」

 

「何もって。こういう時の原因はガイに有るんじゃないのか。例えば知らずの間に失礼を働いたとかさ」

 

 ジンのある意味で失礼な検討にガイは眉を歪める。

 本当に彼女とは何もない。

 あの件をわざわざ2人に伝えるのも面倒臭い。

 そう考えたガイは何も告げず歩く速度を速める。

 ガイの様子に慌てずに追い掛ける2人。

 そんな3人の後ろでは。

 

「本当に何が有ったの?」

 

「えへへ〜何もありませんよ」

 

 緩んだ笑みを見せるリン。

 どう見ても何か有りましたと語っている反応だ。

 寮の自室で聴いてもはぐらかすばかりで一向に答えられは得られない。

 そこに来て各クラスの情報を持ち込むリン。

 テロ事件、リンはガイを3日間看病していたことは周知の事実だ。

 何か有ればその時だろうとレナは睨む。

 友人に隠し事の1つや2つは有る。

 レナは敢えて深くまでは追求しなかった。

 

「対抗戦に支障は出る?」

 

「そちらに関しては大丈夫です。でも、お昼休みにCクラスの騎士人形に付いて聞かれてましたよね」

 

「聞かれたわね。諜報戦かなあって思って、実はオルディスには隠された能力が! なんて言ったわ」

 

 オルディスは試作型(プロトタイプ)だ。

 当然そんな能力も隠された秘密も無い。

 しかしレナが言った言葉を間に受けた生徒は、オルディスに関して調べ上げようと躍起になった。

 そこにリンが畳み掛けるように情報を振り撒く。

 オルディスは他の騎士人形と融合合体できると。

 

「いやぁ〜放課後にでもディアスさんの下に他クラスの生徒が来るとは思いますけど……勝つためですからね!」

 

「諜報戦も立派な戦い。勝つためなら仕方ないわね」

 

 そんな2人の話し声にエレンの眼鏡が煌めく。

 

「いっそのことディアスさんを全面に押し出す形で情報を流すのはどうでしょう?」

 

 あの事件でCクラスの能力と武器は知られてしまった。

 しかし見ただけではまだ判らない事も有るのが現状で、特にバルラの能力に関しては謎が多い。

 奇跡的とも言うべきか、ジンはあの戦闘で能力を使用しなかった。

 だからバルラに関しては何も知らない。そもそも操縦士のジン事態が何も理解していない。

 

「うーん、流す情報は今日の集団戦の結果次第かも」

 

「虚偽に真実を混ぜ込むんですね」

 

「魔術師がよくやる手ですが、勝つ為なら良い手ですね」

 

 あれこれ話し合う女子3人を他所に、廊下の曲がり角から女子生徒が勢いよく飛び出す。

 ガイと衝突しそうになる女子生徒。

 しかしガイは半身を逸らすことで女子生徒避けた。 

 対象を失った女子生徒は慌てて止まろうと足に力を入れるが、間に合わず尻餅付いてしまう。

 

「白……白か」

 

 めくれたスカートの中にデュランはしみじみと呟く。

 彼の呟きが聴こえた女子生徒は慌てた様子でスカートを隠し、羞恥心から頬を赤く染めた。

 長い白髪に色白で大人しそうで何処か庇護欲を駆り立てる女子。

 そんな女子を他所にジンはデュランを蔑んだ。

 

「デュランはさぁ、本当にさぁ……残念な奴だよな」

 

「見えちまった物はしょうがないだろ。謂わば事故だ事故」

 

 女子は何も言えず、顔を赤く染めたまま俯く。

 

「デュラン、例え見えちゃったとしても見てない、記憶から抹消するのが紳士よ」

 

「……残念ハーバーさんには記憶消却術が必要ですかね?」

 

「大丈夫? あなたは確かAクラスの」

 

「ミコト・エイブル……あ、あの慌てていたこちらの不注意なので、デュランさんには批はありません」

 

 ミコトはスカートの中身を見られた事は、この際仕方ないと語る。

 やがてミコトは周囲を見渡し、

 

「あ、あのガイさんは?」

 

「ガイならもう行った。全く、女の子が転んだんだから気に掛けるぐらいしても良いだろ」

 

 ジンの返答にミコトは肩を落とし落胆した。

 あからさまに落ち込んでいる彼女に、レナは声を掛ける。

 

「ガイに何か用があるの?」

 

 言われたミコトは頬を赤くしながら。

 

「じ、実は……ガイさん、ちょと良いなあって思ってて」

 

 彼女の恥ずかしがる仕草、赤く染まった頬。

 どう見ても告白する前の女子だ。

 しかし対抗戦が近付くこのタイミングでの接触。

 絶対に裏があると、ジン、デュラン、レナ、エレナは考えた。

 しかしそんな中、リンはミコトの両肩を掴む。

 

「ダメですよ」

 

 あまりにも冷たい眼差しで威圧した。

 そんな眼差しを向けられたミコトは身体を震わせ、汗を滲ませる。

 

「え、えっと……あ、あの」

 

 威圧で声が上手く出せない。

 それでもミコトは勇気を振り絞る。

 

「が、ガイさんに告白しようと貴女には関係無いじゃないですか!」

 

 無関係とは言えない。

 しかし主従関係を明言する気にはなれず、かと言って嘘を付く気にはなれない。

 ミコトの瞳があまりにも真っ直ぐだからだ。

 それこそ諜報には不向きな程に。

 

「……確かに友人では有りますが、貴女の告白を止める権利はあたしには有りませんね──ですが、それは貴女が本気ならです!」

 

 指を突き付けるリンにミコトはたじろぐ。

 彼女の様子にリンは察していた。

 古の時代から存在するハニートラップ。

 それを担うのは、小柄で可愛く庇護欲を唆るミコト。

 ターゲットは絶賛話題沸騰中のガイ。

 Aクラスもよく考えたものだとリンは舌を巻く。

 

「本気なら間を空けず即答するものです。時間もあまり無いのであたし達は失礼しますよ」

 

 廊下の床に崩れ落ちるミコトを他所に、Cクラスは移動を再開する。

 

 

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