アダムス操縦士学院   作:藤咲晃

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5話 昼休みの交流

 昼食を終え教室で昼休みを過ごしているガイに、デュランが近付く。

 彼は苦笑を浮かべるや否や。

 

「2限と3限は災難だったな。てっきり売られた喧嘩は買うもんだと思ってたけどよ」

 

 予想と外れたことに肩透かしだったのか、窓辺に寄り掛かりそんな事を語り出した。

 

「相手はプライドがめんどくせぇ貴族だ。そこそこ愛着の有るスラム街に手を出されたらそれこそ面倒だろ?」

 

「あー、確かにフォンゲイル家なら腹いせに報復しかねないよなぁ。ガイはそこまで考えて我慢してたのか」

 

「正直相手をするのが面倒臭い、この一言に尽きる」

 

「そこは素直に()()()()()()()()()()()()()()! って言っても良いと思うけどな」

 

「俺がそんな熱血漢に見えるか?」

 

 ガイの軽口にデュランは肩を竦めた。

 

「悪い、全然見えねえや。どっちかと言うと暴力沙汰大歓迎って悪い顔してるや」

 

 デュランの率直な返しにガイは肩を竦める。

 

「そう言うお前は、アトラスと接点を作りたいって魂胆が見えるがな」

 

 デュランは吹き出した。

 確かにガイと交流を持てば必然とレナとお近付きになる機会が有る。

 そう打算も有って話し掛けたが、彼は顔に似合わず知的だ。

 デュランのガイの第一印象はクラスで一人浮遊城を眺める仏頂面の暗いヤツ。

 だが蓋を開けて見れば後先考えず暴走しない理性と先々の事を考える知恵を持ち合わせていた。

 

「やっ、最初はそうだったけどよ。……迷惑か?」

 

 デュランの捨てられた仔犬のような眼差しに、親近感を覚えつつもガイは首を横に振った。

 

「敵意を向けられるよか話し掛けられた方が楽だ」

 

「それは良かった。それにしてもアトラスは可愛いだけじゃなくて、強いってのも魅力的だよなぁ」

 

「確かに強かったが、俺はそれよりも──」

 

 リンの動きが気になった。その言葉を発するよりも先に。

 

「あたしの噂ですか? 嬉しいですねぇ」

 

 いつの間にかガイとデュランの間で笑みを浮かべていた。

 

「おわっ!? い、いつの間に来たんだよ」

 

「え? ハーバーさんが捨てられた仔犬の眼差しを向けた辺りからですが」

 

「誰が仔犬だよ?!」

 

 叫ぶデュランを尻目にリンは、ガイの机に頬杖を付きながら見上げる。

 

「それであたしの評価は如何ですか? かわいいとか、なんか無いですか」

 

 リンの軽口をガイは無視して独自の評価を告げた。

 

「殺し合いならお前の方が数段強い。それが俺の評価だ」

 

「えぇ〜そこは容姿を褒めるべきですよぉ」

 

 ケラケラと答えるリンにガイはジト目を向ける。

 

「俺が女子の容姿を褒めるように見えるのか?」

 

 リンはじっと見つめてデュランに視線を移した。

 彼女の行動が、ガイは女子を素直に褒める様には見えなかったと語る。

 

「じゃあハーバーさん、評価プリーズ!」

 

「しょうがないなぁ、みたいに話題振るのやめてくんね!? や、ナギサキもかわいい分類、というか小柄な体格に反して……」

 

 デュランの視線がリンの胸部に向けられると、彼女は蔑んだ眼差しを向ける。

 彼の指摘にガイはリンに改めて観察した。

 確かに彼の言う通り、リンは体格に反して少々胸が大きいという印象を抱く。

 

「素直な評価は嬉しいですけど、えっちなのは引きますねぇ」

 

「男の性なんだ! だから蔑むのはやめてください」

 

 叫ぶデュランを他所にガイは不意に思い出す。

 昼休みの開始時に、リンはレナと教室を出たことを。

 

「そういや、アトラスは如何したんだ? 一緒じゃなかったのか」

 

「あー食堂で一緒に食事してたんですけどね。フォンゲイルさんに絡まれまして、嫌がるレナ、そこに颯爽と現れたのはブルークスさん! 何と2人はレナを挟んで口論を始めたので、先に帰りました」

 

「止めろよ!? アトラスが可哀想過ぎるだろ!」

 

 食堂内の光景が容易に想像出来たことに、ガイはレナに同情した。

 

「移民者が五月蝿い貴族に楯突くと居場所を喪いかねないので」

 

 2人の会話を聴いていると。

 

「もう! 置いて行くなんて酷いじゃない」

 

 背後から当人であるレナが現れた。

 食堂の騒動は終わったのか。何となしにガイは質問する。

 

「大変だったらしいが、件の2人は如何したんだ?」

 

「ああ、喧しいから放置して来たわよ。多分まだ喧嘩してるんじゃないかな」

 

 レナの返答に3人は顔を見合わせた。

 

「止める選択肢は?」

 

「大丈夫じゃないかな? 私が食堂を出る時、クオン教官とすれ違ったから」

 

「あー、お……クオン教官相手じゃご愁傷様ですね」

 

 不自然な間を開け、リンは件の2人に合掌すると。

 

「なあリンってヤマト連合国の移民者なんだよな?」

 

 デュランが思い切った質問をぶつけた。

 故郷からわざわざ他国に戸籍を作る理由が有る。

 込み入った話しを切り出したデュランにリンは考える素振りを見せ。

 

「自分から移民者って言いましたからね。それが何か?」

 

「ヤマト連合国で操縦士の扱いって如何なんだ?」

 

「あー、そっちですか。意志を持つ騎士人形はツクモガミとして神聖視されているので、彼らと共に有る操縦士は巫女のような扱いですね」

 

 ツクモガミという単語にガイは老師から聴いた話を思い出す。

 

「ツクモガミ? 確か道具に精霊か神が宿った物の総称だったか」

 

「ですです。なのでヤマトの操縦士は高待遇で歓迎されますし、一般人と何も変わらない生活が送れますよ」

 

「へえ。そいつは魅力的な国だけどよ、誰かが騎士人形で暴れたりしないのか?」

 

「待遇面で恵まれていたとしても残念ながら暴れる人も居ます。そう言った方々は連合会議で裁判に掛けられた後、処遇が決まりますね」

 

「やっぱり騎士人形は大きな力だから、その辺は仕方ないよね」

 

 レナの言葉に3人は同意を示す。

 やがて昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響き、午後の授業が開始されることに。

 同い年と交流するのも悪くない時間。ガイは5限目の準備に取り掛かりながら内心でそんなことを思い浮かべていた。

 

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