とある科学の空間操作《Director》 作:アークテラクト
…朝か。
…口囃子、起きて、朝だよ。
「…あ、おふぁよう…。」
「…ってまだ五時ですよ早紀…もう少し寝かせて…。」
…わかった、じゃあまた六時に起こすよ。
彼女は僕の幼馴染、口囃子早鳥。 蜘蛛が苦手な可愛い奴だ。
…さて、早く起きたのはいいものの…どうするか。
…あ、そういえば今日は
/
…ズボンが欲しいな、やっぱり。
僕は露出度が高い服が嫌いだ。 スカートも…あまり好きじゃないんだよね。
…ああ、面倒くさい。
ベッドに倒れこむ。 腐ったバナナのような程よい柔らかさ、まぁベッドなので臭くは無い。
時計をゆっくりと掴む…まだ六時のようだ。
…僕の身体検査開始時刻は昼間、及びそれから続けて二回目…時間には余裕がある。
前者の検査内容としては、
そして、補助というのは…ふふっ、
それを回避するために、僕の身体検査と並行して行われる訳。 まぁ、並行して行う意味は無いと思うけど。
後者の検査だが…これは、最大接続点数と最大接続面積の計測となる。
校庭に設置されたゴム弾射出装置から、ガラス棒を守るだけだ。
空間接続点の立体座標指定、角度指定、通過後のゴム弾の処理…同時並行処理能力も問われる。
…大雑把に座標を指定してしまったり、通過方向の処理を間違えるととんでもないことになる、なんとも面倒くさい検査だ。
…きついな。
棚から、箱を取り出し、イチゴのジャムが入ったチョコを口に放り込んだ。
噛んだ瞬間に、ジャムが染み出して、口の中に甘みが広がる。
…少し、甘みが強すぎるか。
唾液で溶けたチョコを飲みこんだ。
/
プールサイド。
僕の隣には短い茶髪の娘がいる。
「遠慮無くしていいですか? 新島先輩。」
はいはい、いいよ御坂君。
…新島、空間接続完了しました、いつでもいけます。
声色を業務用に切り替えて、無線機の向こう側の検査員に確認を取る。
『了解。 では、
御坂君の周りから、白い閃光、電気が迸る。
『開始。』
という合図とともに、
【ドォン】
という、大砲のような轟音と、雷が落ちたような甲高い音がプールに鳴り響く。
続けて、二射目。 先程の言葉通り、プールには
そして、それを僕は被害が出ないように転移情報を指定し、転移させる。
衝撃波、分子、熱量、電気量、ベクトル、それらを全て指定し、被害が出ない場所へ転移する。
続けて三射目。 弾速は衰えるどころか加速していく。
「もっといきますよ、先輩!」
うん、もっとやっちゃっていいよ。 不敵に笑って囁く。
…ふふっ、楽しいなぁ。 彼女は。
/
『最大砲弾初速、1124m/s。 連発能力、11発/min。 着弾分布、18.7mm。 評価、LEVEL5。』
『空間操作は体育館へ移動してください。』
了解しました。 御坂君、また後で。
私は彼女に向かって微笑みながら言った。
「ありがとうございました、先輩!」
いやいや、いい準備運動になったよ。
じゃ、またね。
(…準備運動、か。 私もまだまだだなー。)
/
校庭に着いた。 どうやら機材の設置はもう完了しているみたいだ。
バツ印で指定されている場所に歩き進む。
ある程度運動をしないと脳は活性化しないから、そこまで歩くのを能力で省いたりはしないのだが…ああ、楽しみだ。
『…第二次検査開始、五秒前。』
…Point:are.A~ZZZ>AAB_GDG_SHS_AQB_HAD_NDD_NSD_AJN=72882_63828_24818_77281_64821_74932_73922,hig*spe:Information:fir*tak*aft=:Way:str:InPass:o^way:OutPass:not:PermissionPass:fir*tak*aft=:Etc:sca^0:
…オールクリア。
ガラス板に通したように、光が歪み始める。
『三、二、一、』
『開始。』
…Act:START/
ビー、という、もはやチェーンソーのような機関銃の音。
目には見えない速度のゴム弾。 思考速度以上。 発射音に入り混じる風切り音。
そして、そのゴム弾は僕とガラス棒に近づいた瞬間、歪んだ光に触れ消失した。
…五秒で二百の通過ログ、前回より速い。
頭の中を埋めようとするログを無視して、僕は空間接続の維持をし続ける。
空間接続は先程の様に詳細に設定する場合、その時の状態に合わせて設定を変化させる必要があるため、少々手古摺る時がある。
今の接続設定は初期通過した物体の通過許可、なのだが、これに当てはあらない場合はその物体のスカラーを強制的にゼロにするという設定だ。
この設定が発動するのは、例えば、弾種が変わった時とか。
【ピキン】
ッ―――Etc:pass!
このように、情報と違う異物があると、その異物を一時停止させてから弄らないといけなくなる。
…予定外のことは大っ嫌いだ。
イレギュラーは弾種が変わった時くらいだが、ガラス棒はまだ無傷だ。 弾は雨のように降り続ける。
…弾の処理は指定された位置にしている。 せいぜいゴム弾だからそれほど威力は無い。
まぁ、当たったら肉が削げるけど。
…そんなことを考えていたら斉射が止まった。 どうやら検査が終了したらしい。
Act:END/
『…検査結果計算中。』
『接続可能距離、71104.2m 最大接続点、223-446点。 接続点維持時間、1分以上。 最大接続面積、43m^2。 評価、LEVEL5。』
『お疲れ様でした、以上で検査は終了です。』
…ふー、良かった。 じゃあ、シャワー浴びて帰るか。
僕はそう呟いて、校庭を後にした。
/
シャワー室。
鏡には短い黒髪で碧眼の、自分の姿が写っていた。 …碧眼なのは、生まれつきで、ドイツ人の父親の遺伝らしい。
これが原因でいじめられたこともあったが、そのいじめが原因なのか、喉と耳が悪くなった。 確か、プロレスごっこ、だったか。
…全く、幼い頃から僕は不幸だ。
あと胸が邪魔だ。 男にはあまり興味は無いし、媚売る相手もいないし必要はないと思うんだけど、体が必要だと思っているんだから仕方ない。 あとレズではない。
「早紀、携帯が鳴ってますよ。」
ん、ああ、ありがとう口囃子。
適当なところで接続し、携帯をスカートのポケットから取り出し、確認する。 ガラケーで何が悪い、防水性だぞ。
まぁ、そんなことはどうでもいいが…どうやら、
もしもし、新島だ。
『通り魔事件発生。 被害者の保護及び容疑者の確保をお願いします。』
『第一七七支部は別件を担当していますので、第一七二支部の私がオペレーターを担当します。』
…全く、私、シャワーはゆっくり浴びる派なんだが。
/
どよめく表通り、被害にあったのは長点上機学園の女子生徒のようだ。
…現着した、被害者は…腹部からの出血多量、刺されてから数十秒後だと思われる。
オペレーターに報告する、ただ、ほかの事件も対応しているらしく、少々混線しているようだ。
「っありがとう…ござい、ます。」
いえ、義務ですから。
それよりもあまり喋らないでくださいね、傷に響きます。
…安心してください、私がついてますから。
彼女に微笑みかける。 あまり不安にさせるのもあれだしな。
(うわ、すご…い、カッコいい…。)
…意識が薄いな、持つといいけど。
空間接続で、無理やり損傷部位を塞いでいるが応急処置程度だ、看護を優先しないといけない。
だが、犯人の特定はどうするか…。
『…対応が遅れすみません! 被害者の容体確認しました、救急部隊を出動しましょうか?』
いや、それはいい。 最寄りの病院に搬送するつもりだ。
…そうだ、現在位置の衛星観測を要請する。 被害者を護送後犯人を追跡する。
『了解しました。 座標の指示、お願いします。』
座標はAAC=13911…いや、DC92番、表通りのベンチだ。 そこを中心に頼む。
…だが、おそらく犯人の追跡はまた今度だろうな。 もう遅すぎる。
私はため息を吐いた。 連続通り魔事件の犯人を取り逃がしてしまったのだから。
最近、学園都市では上位能力者が無差別に襲われる事件が起こっている。
事件での被害者の外傷は過去の全員が腹部で、どうしても被害者を優先するため犯人を捕まえられない。
そして、犯人は光学系統だとか空間移動系統だとかなんとかで、情報が混雑しすぎているため、犯人を特定できないのが現状である。
…腹立たしい限りだ。
『すみません、衛星は既に使用されており、観測できません。 被害者を病院へ送ってください。』
了解。
すみません。 少し、移動しますよ。
「…っ…は、い…。」
彼女を横抱きする。
…DEFAULT|Point:STB=83443:Act:START/
/
とある病院内。
この病院にはカエル医者こと、
彼の腕は一級品なんてものじゃない。
事故で吹き飛んだ腕を、何事もなかったかのように治す事も可能なんだとか。
「彼女の容体は思いのほか安定しているよ。 君の応急処置のおかげだね。」
いえいえ、僕は当然のことをしたまでですので。
それに、本当に応急処置にすぎませんので、あなたがいてくれてありがたい限りです。
僕も彼に助けられたことがあるため、それも含めてのお礼だけどね。
「もし君が高等学校に進めなかったらこの病院に来るといい、すぐにでも雇用するよ。」
あはは…僕一応、長点上機に顔パスで行けますから…。
「ふむ、それは残念。」
ざ、残念って言わないでくださいよ…。
彼はにっこりと笑っていた。
【ヒュン】
「突然失礼しますの、新島先輩。」
ドアから、ではなく虚空から現れる白井君。
どうしたのかな、白井君。
「いえ、後で勉強を手伝っていただけないかと思いまして、よろしいですか?」
ああ、いいよ。
じゃあ、また後で。
「ありがとうございます、ではまた後でですの!」
うん。 ばいばい。
「…人に講座ができる程とは、やはりすごいね。 君は。」
それほどでも。 それに僕は恨みを買いやすい人間ですので。
それを聞いた彼は苦笑しながら「それが少し問題だね。」と言って、コーヒーを僕に差し出した。
見ててわかると思いますが、基本的には空間接続がメインです。
他にも色々できるという設定ですが、あまり使いません、使わせません。
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