とあるトレーナーの願い   作:屋守 竜

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先日実施しましたアンケートで、セリフ前に誰が話しているか分かりやすくするように名前をつけるよりも、ない方がいいという方が多かったので、このままで行きます。いつも見てくださって、ありがとうございます。


知りたい、知られたくない

「シチーさん」

 

ケータイの件があった次の日、アタシはマヤノに呼び止められた。こっちを見てるマヤノの表情はなんというか、普段の天真爛漫な様子とは少し違って真剣……というか、悩み事があるような顔をしている。

 

「どうしたんマヤノ?」

 

「……昨日のことなんだけど……トレーナーちゃんのケータイのこと」

 

そう。トレーナーのスマホのロックを解除したのはアタシだ。4桁の数字、と聞いた時、一つだけ思い当たる数字があった。多分ほかの娘は見たことも聞いたこともない……と思う。

ちょっと前にアイツと気まずくなってた時、って言うよりアタシがアイツのプライベートに踏み込みすぎただけ……完全にアタシが悪いんだけど、アイツはわざわざ謝ってきたんだ。あの時はすまなかった。いつかは誰かに話す時が来るかもしれない、そうは思ってもいる。だけどまだ今は話せない、待って欲しい。普段のポーカーフェイスはどこに行ったのと尋ねたくなるくらいの顔をして頭を下げたアイツは、今思えばアタシが思っているよりもずっと……上手く言えないけど、悩んでるんだと思う。

 

「なんで番号知ってたの?もしかして、トレーナーちゃんから聞いてたの?」

 

なんと言い訳したもんかねー。いっその事ありのままに話すか。

 

「聞いてたって言うか……まあ、アタシとアイツがなんて言うか……ギスギスしてた時にさ、それらしいことを聞いたことがあったんだよね。」

 

「それがパスワードの話だったの?」

 

「んー、て言うより、原因になったのってさ、アイツが着けてたロケットなんよね」

「ロケット?」

 

「アイツが首から下げてるやつ。いっつもペンダントみたいなの下げてるでしょ?」

 

「ほんとだ!トレーナーちゃんいっつも首になにかかけてた!」

 

「そうそう、それそれ。アイツのロケットになんか数字が書いてあって、それを入れたら開いたってわけ。」

実際のところ、教えて貰えたわけでも聞いた訳でもない。トレーナー室でアイツが寝てる時にこっそりと見えたそれを覗いただけ。好奇心には勝てなかった。

 

マヤノはまだちょっと不満そうだったけど、納得はしてくれたらしい。

 

ほんの少し、ほんの少しだけど、アイツが自分を見せてくれた。今はまだ触れてほしくない、今は、まだ。アイツが話したアイツ自身のこと。アタシからわざわざ踏み込んであれしか聞けないのは癪なんだけど……しばらくはアタシだけが知ってるってことでもいいと思う。ほかの誰かには、知られたくない。

 

____________________

 

ファインモーションはアイルランドからの留学生だ。毎日の色んな光景に興味を持ち、その一瞬一瞬を味わって生きている。そんな彼女がトレーナーに興味を持つのはごくごく自然な事だった。

彼は特別秀でた成績を出している訳では無い。学園の中で特別注目されているか、といえばそうでも無い。ただ、彼の指導の仕方はほかのトレーナーとは違っていて、そこに魅力を感じるウマ娘がいたのもまた事実だった。かく言うファインモーションもその1人である。魅力を感じると言うよりは、単純な興味だったが……

トレーナー契約を結んでから、その選択は間違いじゃないと確信した。彼は技術の多くを実践できた。言葉で指導されるより数段わかりやすい。レースでの成績を急いでくることもない。日本での生活を楽しみ、味わいたい彼女にとって、それは本当に嬉しい事だった。

デビューしても、彼の対応は変わらなかった。出たいと言ったレースには基本的に出してくれる。ローテーションを提案することはあるが、それを強いてくることは無い。今回も秋華賞とエリザベス女王杯に出たいと言った時、それに合わせたトレーニングをすぐに組んでくれた。

そんなトレーナーについているうちに、ファインモーションはあることに気づいた。彼は私たちのことを知って色々してくれるけど、彼自身のことについては、私たちはほとんど分からない。と言うより、知らない。話してくれることもないし、こっちから踏み込んだこともなかった。今まで自分から色んなことを知りに行っていた彼女にとって、それは衝撃的だった。チームにトレーナーのことを知りたいという雰囲気がなかったのだ。なぜかは分からない。でもチームにそういう雰囲気はなかった。

 

それに気づいた時だった。もっと彼のことを知りたい。

 

そう思った時、ファインモーションはスマホを手に取った。

 

____________________

 

知られたくないこと。ゴールドシチーはついにそこに踏み込んできた。彼女はチームの古参で、なんだかんだ聡い性格も相まって、俺にあまり踏み込んでくることは無かった。いつからだろうか。他のメンバーと比べて彼女が俺に話しかけてくるようになったのは。

彼女は俺の事をもう少し知りたいのだろう。箱の中身は開けてみるまで分からないし、その箱が開かなければ開けたくなるものだ。こちらがひたすらに自分のことを話さなければ、いつかはあちらから聞いてくる。そんなことはわかっていたはずなのに。

……もしかしたら、俺は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。あれからもう3年、いや、4年になろうとしているのか。自分を無理やり箱に閉じ込めて、その箱だけを見てもらうのはもう限界なのかもしれない。

 




ほとんど話の進まない今回でしたが、次はもうちょい進めます。心理描写が今後多くなっていきますが、許してください。

UA10000を記念して、簡単なssを書きたいと思います。どの子の話がいいか選んで欲しいです。締切は10月10日までです

  • マヤノトップガン
  • ゴールドシチー
  • ナリタタイシン
  • トーセンジョーダン
  • ファインモーション
  • エイシンフラッシュ
  • その他
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