とあるトレーナーの願い   作:屋守 竜

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レシステンシア順当に勝ってましたね。秋競馬も面白くなりそうですね


メイクデビュー、彼女達の門出

夏の合宿が終わった8月半ば、マヤノトップガン、ファインモーションはデビュー戦を控え、最終調整に入っていた。並走トレーニングでもマヤノトップガンは1000メートルでゴールドシチーに外併入でハナ差、ファインモーションはタイシンに対して同条件アタマ差先着と相当な仕上がりを見せている。デビュー戦を戦う身としては過剰なほどの実力とも言えるだろう。しかし、彼女たちはこれから秋のクラシック路線に向かうため、条件戦を勝ち上がらなければならない。そこまで見据えた上で今回のレベルまで仕上げているのだ。デビュー戦で躓いている暇などない。

ただ、懸念点もある。夏競バの開催地は基本的に新潟、函館、札幌、小倉。この中でも特に北海道の競バ場は洋芝が使われていることもあり、他のレース場と比べるとバ場が重めで、それなりのスタミナとパワーが要求される。2人のデビュー戦が函館に決まったこともあり、その対策として砂浜でのランニングやダートを取り入れてはいた。だが、結局は当日それに適応できるかどうか。ファインモーションは元々留学生で、日本のウマ娘と比べると比較的パワーもある。姉妹も海外で好成績を残せていることもあって、その面では不安は小さい。問題はないだろう。ただ、マヤノトップガンはどうか。彼女は本格化を迎えているとはいえ、パワーの方はまだ発展途上。彼女の鋭い直感で上手く勝機をつかんでくれれば、そういったところだった。

「調子の方はどうだ?2人のデビュー戦はこの土日だが」

 

「わたしは大丈夫かなー。調子もいいし。あと、北海道行くならラーメン食べたいなー」

 

「マヤも調子いいよ!バビューンって行けちゃいそう!」

 

「そうか、なら良かった。あとラーメンならどちらかと言うと札幌の方がいいと思うが」

 

「函館にも美味しいラーメン屋さんいっぱいあるみたいなんだよねー。そうだトレーナーさん!わたしとマヤノちゃんが勝てたら、みんなで食べに行こうよ」

 

「まぁ構わないが……金が出せるかはわからんぞ」

 

「うん、そこは気にしなくていいよ!みんなで食べに行ければそれで!」

 

そう言ってファインモーションは遠くでストレッチをしているゴールドシチーのほうをチラリと見た。相当気を遣わせてしまったようだ。できるだけ早く改善しておくべきだろう。

 

「わかった。できるだけ早く改善しておく」

 

「うふふっ。トレーナーさんならすぐに仲直りできるよ。しっかり見てあげて」

 

「……敵わないな、ファインモーションには」

 

「わたしだって女の子だもん。トレーナーさんよりはシチーさんの気持ち、わかってるよ。」

 

________________

 

北海道とはいえ夏は夏。暑い。流れ出した汗が身体から体温を確実に奪っているはずなのだが、どれだけ身体の水を使っても身体が冷える感覚はない。人間より運動能力が高い分代謝がいい彼女たちもまた絶え間なく流れる汗にタオルを手放せないでいた。

 

「なぁファインモーション、ラーメンじゃなくて冷やし中華にしないか?」

 

「えーだめだよ。約束したよね?みんなでラーメン屋さん行くって」

 

彼女は暑さに強いのだろうか。暑さにやられている他のウマ娘たちとは異なり、いつもの優雅な立ち振る舞いのままだ。言っていることはそこまで優雅でもないが。

 

「それはそうだが……まぁマヤノとお前の2人が勝ってからの話だけどな」

 

「マヤ絶対に勝つよ!トレーナーちゃんとラーメン食べに行くもん!」

 

そう言ってマヤノトップガンが俺の腕に抱きついてくる。暑さにはこたえているようだが、気合いは十分だ。愛嬌の方もよし。

 

「勝てるようにトレーニングをつけてきた。お前らの地力なら多少の不利があっても押し切れるはずだ。やりたいようにやってこい」

 

うん!そう返事をした2人は控え室へと入っていった。

 

________________

 

トレーナーさんはパドックを見に来ることがない。十分な調整をしたと信じて疑わないからだろうな。今日の第4レース、クラシック級未勝利戦。普通はデビュー戦にはメイクデビューレースを使うのだけど、トレーナーさんはクラシック級の未勝利戦にわたしを出した。わたしが秋華賞に出たいって言ったら、メイクデビューに出るよりも未勝利戦で場馴れしてる娘とやる方がいいって、こっちに登録したみたい。

控え室の娘たちは1番キャリアの短い娘でも3戦目。対してわたしは1戦目。ちょっと不安もあって、緊張もするけれど……トレーナーさんは最後のトレーニングの時言ってくれた。

 

「お前なら確かに今年の秋華賞に今から割り込める。だが、それは薄氷を踏むような勝負だ。どこかの条件戦で1度でも背中を拝むようなことがあれば、その道はなくなってしまう。それはわかった上で、なんだよな?」

 

「うん」

 

「そうか……ならやれることをやってこい。俺は君が、君が目指す未来を叶えることを期待する」

 

彼はそう言って手を振った。

 

「うん、行ってくるね。勝ってくるから」

 

 

 

函館2000メートル芝。重賞レースも行われるこのコースに16人のウマ娘が闘志を燃やす。あるものは掴めそうで長く掴めない勝利を目指して、あるものはリベンジに燃え、あるものは生涯で1度きりのデビュー戦に心を躍らせて。それぞれがそれぞれの思いをひめて、ゲートへと入った。一瞬の静寂。

ゲートが開いた。大きく視界が開け、いっせいに飛び出す。

ハナをきったのは5枠10番のウマ娘。スタートを抜群に上手く切り、全体を引っ張る形。

2番手につけたのは今回がデビュー戦の2枠4番のウマ娘。アイルランドから来たというそのウマ娘はハナをきったウマ娘をしっかりと追走していた。

3番手につけたのは明るい栗毛のウマ娘。こちらもスタートが上手く、2番手のすぐ背後に着けた。

他のウマ娘も続々と隊列を作るように並び、先頭から殿まで12~3バ身といったところだった。1000メートルの通過タイムは1:01.5。おおよそ標準的なタイムだ。しかし、このタイムは良馬場とはいえやや重い洋芝でのもので、負担は小さくない。

第4コーナーでその負担が少しずつあらわれた。コーナー終盤、先頭のウマ娘が少し垂れた。2番手のウマ娘はそれを見逃さなかった。後方を確認して外に出る。一気にスパートをかける。観客たちは彼女のスパートに目を疑った。一瞬の加速。このレースの他の……いや、今日走ったほかのウマ娘と比べても圧倒的な加速。2番手の各ウマ娘を突き放していく。そのままゴール板を駆け抜けた。2番手につけた差は5バ身。デビュー戦とは思えない、圧倒的な勝利だった。

ウイニングランでのにっこりと浮かべた笑顔と、視線の先のトレーナーにラーメンと叫ぶ姿は全ての観客を魅了した。




長くなりそうだったので、マヤノのレースは次回になりますm(_ _)m
今日も読んでいただいて、ありがとうございます

UA10000を記念して、簡単なssを書きたいと思います。どの子の話がいいか選んで欲しいです。締切は10月10日までです

  • マヤノトップガン
  • ゴールドシチー
  • ナリタタイシン
  • トーセンジョーダン
  • ファインモーション
  • エイシンフラッシュ
  • その他
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