「なんだこれは」
旧校舎の中に入りドアを開いてユーシスから驚愕の声が上がる。ユーシスだけではなく、リィンやエマも驚きで声を上げていた。ただ、なぜかツナとフィーは驚かなかったが。
リィンたちの驚きの声を無視してツナとフィーは部屋の中央にある台座に上がる。
「リィンさん。さっさと行きませんか」
ツナの声に意識が戻ったリィンは疑問がわく。それはユーシスとエマも同じようで、リィンよりも先に質問していた。
「先程、驚かなかったんですけど知ってたんですか?」
「他にも、いかにも怪しい台座になぜ平然と上がれる」
エマとユーシスの質問にツナとフィーは顔を見合わせ、ユーシスたちの質問に答える。
「一回、ツナと調べてみたことがあるし」
「結構、良い鍛錬になりますよ」
「そうかな。弱すぎてなんも意味が無い気がするけど」
「街道の魔獣よりはマシだろー」
ツナとフィーの言葉に溜息を吐くメンバー。旧校舎の調査は必要ない気がするのだ。溜息を吐くのは当然だろう。
「はぁ。このまま仕合をするか?」
リィンは呆れてツナに問いかけるが。
「えっ。調査の方が先でしょ」
「「「「えっ?」」」」
「リィンさんは先月は最奥で巨大な魔獣を倒したんですよね?」
ツナの言葉にリィンは戸惑いながら肯定する。質問の意味が分からないのだ。
「俺とフィーはこの二階層では倒してないんです。もともと居ないのか。偶々なのか調べてみないといけませんし」
ツナの言葉に納得し、リィンたちは旧校舎の調査を開始する。
「ふっ」
「はぁ!」
「やっ」
リィンたちは襲い掛かってくる魔獣に迎撃をしているがツナの言ったように弱くはない。それどころか手強くも感じるが、ツナたちに文句も言えない。
なぜなら。
「はっ!」
「……ん」
ツナたちは襲い掛かってくる魔獣を一撃で倒している。それも当たり前の表情でだ。そんな姿を見せられたら自分たちの未熟さを恥を持って、更に研鑽を積むしかない。
「すさまじいな。この魔物が弱いと言っていたのもわかってしまう」
「あぁ。あの二人にとっては暇潰し程度にしか感じないんだろう」
「……同情する」
「いきなりどうした!?」
ユーシスの突然の言葉に驚くリィン。
「調査終了後、ツナと戦うのだろう。傍目から見てもかなりの実力差だ、下手したら心が折れかねんぞ」
ユーシスはリィンの心配をしている。ツナから仕合の依頼を受けたとはいえ、実力差がありすぎる。仕合にもならないかもしれない。それにツナが言っていた”トラウマを突く”という言葉に不安になってくる。リィンを潰してしまうのではないかと。同じクラスだし、止められるのに止めなかったら気分が悪い。
「大丈夫だ。これは本当に大切なことだろう。少しでも踏み込めるようにならなければ直ぐに死んでしまうことになるかもしれない。それを心配しての依頼だろうしな」
ユーシスはリィンの言葉に怪訝な表情になるが、本人が納得しているならそれで良いと判断したようでそれ以上は続けなかった。
「リィンさん。死んでしまうってどういうことですか?」
エマがリィンとユーシスの会話に”死んでしまう”という言葉に反応を示す。
「ツナと戦うから、それを見ればいいさ。ただ言わせてもらうなら俺自身への恐れだな」
「皆さん!最奥に着きましたよ!」
「着いたようだな。皆、念のため構えて突入するぞ!」
ツナの言葉にリィンはメンバーに指示を出し、最奥に突入する。
「………!」
巨大な魔獣が現われた。
「ふん。ツナ、お前たちが以前来たときは出なかったようだな?」
「はい!」
「巨大な魔獣が出る条件も調査した方がよさそうだ。」
「そんな事より、戦わないとやられちゃうよ」
「そうですね。まずは魔獣を倒しましょう!」
「あぁ。行くぞ!」
「俺とフィーが二体の巨大な魔獣を引き付けます。その間に一体を倒してください!」
ツナはフィーと一緒に二体の巨大な魔獣に突撃する。リィンたちはツナとフィーの実力は単独でも連携でも上回っていると、この調査で理解しているので二人に任せて残った一体の撃破にかかる。
始めはリィンは魔獣ケルビムゲイトにクラフト【紅葉切り】を放つところから始まった。
そのまますかさずユーシスはクラフト【クイックスラスト】で相手の動きを怯ませる。その間にエマはクラフト【ディフェクター】を使い相手の耐性を下げる。
それを好機と見たリィンとユーシスが同時に攻撃し、体勢を崩したケルビムゲイトにエマが追撃する。
そのままやられるはずもなく、ケルビムゲイトは反撃する。
「ぐっ」
反撃を受けたリィンとユーシスは吹き飛ばされてしまい、エマにもぶつかってしまう。
「きゃっ」
更に攻撃を受けたリィンはユーシスに攻撃をしてしまう。混乱しているようだ。
「くっ。ふん、受け取れ!」
ユーシスは鎮静剤をリィンに使い回復させる。
「すまない!助かった!」
「礼はいい。先に倒すぞ!」
「あぁ!」
リィンは集中しSクラフト【焔の太刀】を放ち大ダメージを与えながら、ケルビムゲイトを火傷状態にする。
「やぁ!」
そして、エマの攻撃と火傷のダメージで魔獣は倒れた。
「よし、次だ!」
リィンの言葉でツナたちの援護にいこうとするが……。
既に残り魔獣は一体となっていた。残る魔獣もあと一撃でも攻撃したら倒れてしまうぐらいにはボロボロにされている。
「弱い」
フィーの呆れた声と一緒に響いた銃声と同時に魔獣は倒れた。リィンたちが一体の魔獣を倒す間に、ツナたちは二体の魔獣を倒したのだ。しかも、見たところ無傷なようだ。
そして、ツナはリィンの方を見て言葉を出す。
「さて仕合をしましょうか」