リィンはツナの言葉に頷き距離をとり、胸を抑える。
「最初から本当の全力かぁ。俺も少しばかり本気を出さないと」
ツナの言葉にリィンは苦笑する。
「…?どうしたんですか?」
「いや、どうあがいても俺じゃツナに勝てそうな気がしなくてな」
リィンの言葉に今度はツナが苦笑する。自分より年下の少年が自分より優れていると認めるのは並大抵ではないからだ。しかもリィンはまだ17歳。この年齢でも感情面でも納得できず否定するのが普通だ。
「そうか。来い」
ツナは苦笑した後、全身から炎が噴出された。
「なっ」「キャッ」「…ん。本気なんだ」
その炎は離れていたユーシスたちの目を覆った。
「なんだあれは…?」
前が見えるようになってツナを見たユーシスは呆然と呟いた。それもそのはず、ツナの姿は拳と額に炎を燃やし、目付きが鋭くなっていた。いつもと雰囲気も違う姿に呆然となるのも仕方がないだろう。
「もう少し気を強く持たないと立てないよ」
フィーの言葉にユーシスとエマは自分がツナに跪く姿をしていることに気付いた。フィーは普通に立っている。リィンは自分自身に集中しているせいか跪いていない。
「兄上も言った通り、やはりツナは……!」
「ツナは興味ないみたいだよ。兄弟や親は家族で過ごしたいみたいだけど」
フィーの言葉に振り向くユーシスとエマ。
「ツナ。血縁上の兄と会っているから、知っているよ」
「いくぞ」
リィンは胸を抑え、目を閉じる。自分の中にある者を開放するために集中しているようだ。
「シャアァァ!」
リィンは目をカッと開くと雄叫びと共にツナに襲い掛かって行った。その姿は銀髪灼眼と普段と変わっている。
「なっ!?見えんぞ!?」
変わったのは外見だけではないスピードも桁違いに速くなっている。少なくともユーシスとエマには視えていない。
「ガァァ…!」
ドガンという音をした方向を見るとリィンが壁に叩きつけられていた。
「遅い」
どうやらツナが襲い掛かったリィンを殴り飛ばしたようだ。
「中途半端だ。もっと踏み込め。でないと、いつまでたってもその力を支配できないままだ」
更に言葉を続けるツナ。リィンはクラフト【紅葉切り】を放つがツナのグローブで防がれ、蹴り飛ばされる。
「グッ…!」
体勢を立て直しリィンはツナに襲い掛かる。
「ツナ、かなり手加減してるね。仕合というより、リィンへの教育っぽい」
フィーはツナたちの仕合を見ていて感想をこぼす。その言葉を聞いたユーシスとエマは驚愕の表情でフィーを向く。
「まて、あれで手加減しているだと…!?」
「ありえません。あれ以上は最早、人間の領域を超えてしまっているんじゃないですか…!?」
エマとユーシスの言葉にフィーはどうでもよさそうに言葉を返す。
「あの程度じゃ全力じゃないよ。私にもハッキリと視えているし」
フィーの言葉に再び驚愕する二人。フィーがこんなことでは嘘を付かないと分かっているからこそ信じられないでいた。
「…ん。終わるね」
フィーの言葉にツナたちを再び見るとリィンは刀の刃先を下に向けて構えていた。Sクラフトを放つつもりだ。
「……滅びよ」
が。やはりツナに止められてしまう。
「いくぜ」
ツナの炎を纏った拳がリィンに襲い壁に叩きこまれた。
「ガハッ…」
「終わった」
壁に叩きこまれたリィンを見てフィーはツナに走り寄った。
「ツナ、お疲れ。それとこれも。リィンにも渡すけど、保健室にでも連れていく?」
リィンを保健室に連れていくかツナに聞いている。その手にはティアの薬がある。
「ありがとう。けど、怪我してないからいいや。リィンさんは気絶しているから保健室に連れて行った方がいいと思う」
ツナはフィーに返すとリィンの方に歩いて行った。そして、リィンを肩に運ぶ。小柄な体からは想像できない力だった。