ゲーム知識がまるで役に立たないのだけれど?   作:夢泉

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すみません、2話同時に投稿します。こちらが先です。


幕間:主人公強すぎる説

 今、私は魔王様が食事に誘ったある男の部屋に向かっている。

 魔王様が連れて帰ってきた素性も良く分からない人間の男だ。

 魔王様のことは心の底から敬愛しているし、この命に代えても受けたご恩に報いるつもりではある。そうではあるが、それはそれとして怪しい者を、しかも人間なんてゴミを連れ込むのはいただけない。

 しかも魔王様は、その人間を「()()()客人」と称し、騎士叙任の形式さえ用いて大英雄リベタスの名を与えられた。

 

 一体、その人間は魔王様にとっての何なのですか?まさか、恋をしていらっしゃる?

 

 …いや、そんなわけがない。だってそれは、あまりにも報われない。

 魔族と人は憎しみ合うしかなく、例え万が一にも奇跡的…否、絶望的な偶然が重なって愛を交わしても直ぐに終わる。近くにいるだけで人間の方が衰弱していくし、仮に夜を共にして体を重ねたりなどすれば人間は呆気なく死ぬだろう。

 しかも、その間に子供などできてしまったとしたら、それは悲劇という言葉すら生ぬるい。だってそれは、愛し合った結果の子供が、魔王様のように生涯苦しみ続けるということを意味しているのだから。そんなのあまりにも救いがない。

 魔王様が恋をする…それ自体はとても喜ばしい。ずっと苦しみ続けてきた、これからも苦しみ続ける魔王様が僅かながらでも幸福を感じられるのなら、それに勝る喜びはない。だが、それも相手が人間であるということを除けば、だが。

 もっとも、魔族と人間の愛がもたらす結果を誰よりも知っている魔王様が、あの人間を伴侶にすることなど無いとは思うけれど。

 

 そんなことを考えながら人間の部屋へ向かっていると、廊下で私の倍以上の背丈がある大男と遭遇した。

 

「おぉ、ミリアではないか」

「これはドラゴネス様、お勤めご苦労様です」

 

 それは四天王のお一人にして魔王軍の「武」を象徴する()()、ドラゴネス様でした。

 ただのメイドに過ぎない私ですが、ドラゴネス様とは交流があるのです。

 お互い、数少ない魔王様に忠誠を誓った存在であり、何よりも魔王様を優先すると信頼できる心強い同志です。

 魔王様の敵はあまりに多い。四天王ですら、ドラゴネス様ともう一方しか信用出来ないのです。

 

「急いだ様子でどこに向かっておるのだ?」

「魔王様が例の人間と食事をしたいとのことでしたので。連行するために」

 

 いつも魔王様のお食事は私が調理しています。

 なのに今日は、魔王様は自ら料理をしてまであの人間と食事をするというのです。

 どうして、あの人間はそんなに信頼されているんでしょうか。

 まぁ、「余にできないことはない。今日はミリアにも日頃の感謝を込めてご馳走するぞ」と言って私の指導も断ったのです。大変うれしいですが、どんな結果になるか火を見るより明らかでしょう。

 ふふ、ふふふ。私も無事では済まないでしょうが、こうなったら貴様も道連れだ、人間。

 共に地獄を見ようではないか。

 

「ふぅむ、なるほどな。お主はあの者についてどう思っておる?」

 

 あの人間をどう思っているか、ですか?

 何を答えが決まりきったことを聞いてるんでしょうか、この若作りジジイ。

 

「そうですね。まず人間というだけで腹立たしい存在です」

「むぅ。お主の人間嫌いは筋金入りであるな。わかっておるだろう?魔王様の半分は…」

「そんなこと百も承知です。でもだからこそ余計に腹立たしい。人間の血さえなければ魔王様はあれほど苦しむことはありませんでした」

 

 そうだ。魔王様があれだけ苦しんでいるのは人間の血のせいではないか。人間の血さえなければ魔王様が苦悩することはなかった。

 もっともそんな仮定は…

 

「あり得ない仮定だな。現状がどうあれ、先代魔王様とあの人間の間だったから魔王様が産まれたのだ」

 

 そうだ。そんな仮定はありえない。どうあれ、私が敬愛する魔王様は人間と魔族の混血として産まれたのだから。

 

「わかっているんですよ、それも。けれど、お体を血に染めて目覚める魔王様の御姿を見ると、どうしても考えてしまうのです。何故魔王様ばかりがあれほど苦しまなければならないのか、と」

 

 毎朝、自らの無力をかみしめる。魔王様をお救いできない事実が私を苛む。何もできない自分が憎らしい。

 そして、いつも思ってしまうのだ。

 1人の少女をあれ程の苦しみの中に突き落とすなど。

 しかも、救われる手段が1つとして存在しないなんて、そんなの。

 それが神の意思であるならば…

 

「…我らが神「ミウイ」は本当に人間たちが言う通りの邪神なのかもしれませんね」

「やめよ。誰かに聞かれたらどうするつもりだ。我とて、魔王様にあれ程の苦難を与える我らが神に思うところがないと言えば嘘になる。だがな、それは決して口に出してはいけない事柄なのだ」

 

 わかっている。神の批判などしてはならない。どうあれ私たちがこの地で生きていられるのは神の助力があってのものなのだから。

 

「話は戻るが、我は奴を認めても良いと考えておる」

「はぁ?正気ですか?馬鹿なんですか?ついに耄碌しましたか?」

 

 なにやら老害が意味不明なことをほざき始めました。大丈夫ですか、コイツ?

 

「この若々しい声のどこに老いがあるというのか。我はまだ426才であるぞ?」

「十分ジジイじゃないですか、老害」

 

 コイツは龍人。リザードマンと似ているが、まるで異なる種族。

 寿命は他の種と比べても遥かに長く、膂力も魔力も圧倒的。

 本質的には「龍」なのだ。今の姿だって本来の姿じゃない。

 幼い少年の声を発しているが、400年という時を生きてきた爺である。

 

「辛辣だな…そんなに口が悪いと嫁の貰い手が…」

「ぶっ殺しますよ?」

 

 ホントにこの老害ムカつく。魔王様の味方じゃなかったら早々に暗殺してるのに。

 

「まぁ、冗談はさておき、話を戻すぞ。お主も理解しておろう?()()()()()()()()()()()()()()()

「それは、まぁ、確かに」

 

 そうなのだ。あの人間は人間の癖に信じられない程強い。

 

「この城に到着してからずっと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 魔族は技量を確認するために己の排出する魔力を相手に叩きつけるという方法を取る。

 基本的に弱者へと流れ込む魔力ではあるが、ある程度は操作できるのだ。

 これによって、お互いの魔力がぶつかり合い、力負けした側の体に魔力が流れ込む。結果、体内魔力が他者の魔力で乱されて体調不良となり、負けを認めざるを得なくなるというわけだ。

 それを、城にいるほとんどの魔族から一斉に向けられておいて、あの人間は涼しい顔をしていたのだ。そんなの普通はあり得ない。

 

「極めつけに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。こんなことは久しくなかったことよ。アイツは魔王様に匹敵するほど魔力の許容限界値が膨大であるのかもしれんな」

 

 私もあれには驚いた。魔王様によって複数の魔族と共にあの人間と同じ部屋に押し込まれたとき、ドラゴネス様は魔王様の命に従って真っ先に人間へと話しかけた。

 その時、ドラゴネス様も人間を見極めようとしたのでしょう。槍を握る手に力を籠めたドラゴネス様は、全身から膨大な魔力を放出しました。離れていた私ですら少しだけ影響を受けてしまうほどの魔力量でしたが、それを受けて尚、人間はケロリとした表情をしていたのです。

 けれど。

 

「ありえません。アイツの瞳は黒色で、魔族の気配は微塵も感じませんでした。そして、ただの人間が魔王様に匹敵するわけがない。考えられるとすれば、魔力のコントロールにおいて神がかり的な技量を有しているということでは?」

 

 自らの体内魔力と流れ込んでくる外部の魔力。それら全てを緻密な計算と寸分の狂いもない制御によって支配し、意のままに操作する。流れ込む量を調節し、流れ込んだ分だけ体内の魔力を排出する。これができるのであれば、理論上は如何なる巨大な魔力にも耐えられる。

 できるのであれば、だが。

 

「それくらいしかなかろうな。とはいえ、それも全く尋常ではない。我が生きてきた400年の歳月でもそんな馬鹿げたことを可能とした存在は記憶にないな」

 

 それはそうだろう。魔力という目に見えないモノの量を正確に推し量り、自らの体内にある魔力を意のままに動かさなければならないのだから。体内魔力は血潮のようなモノであり、自らの血を操るということと大差ない。いくら自分の体とはいえ、血を操れるとか普通じゃない。

 そも、そんなことが可能ならとっくに私やドラゴネス様が習得している。その力があれば魔王様を本能的に恐れてしまうのを防げるのだから。

 それでも習得していないのは、魔族である私や、長き時を生きる老害ですら不可能な神業だということに他ならない。

 

「それに、技量もそうだが、人柄もよさそうであったぞ。何せ、我の声を真っ先に褒め称えたのだから。不覚にも気に入ってしまったわ」

「はぁ…。物好きな者もいるものですね。私にはまったく理解できませんが」

 

 この筋肉ダルマが幼い少年の声で話すことの何が良いのやら。

 龍は若さや幼さを好む生き物だ。貢物として求めるのは老人ではなく幼き者や若い娘。

 自らが長命であるが故に、若さへの拘りが異常なのだ。

 それは、自ら喉を魔術で改造し、幼い少年の声へと変えてしまうくらいには。

 もっとも、龍以外には全く理解されない価値観であるので、この老害の声は魔族たちの間でも不評の極み。常に裏で馬鹿にされている。

 こんなものを好むとか、本当に人間というのは悪趣味で理解できない。まぁ、それはそれで愚かな人間らしいとも言えますが。

 

「そろそろ行かないと不味いです。申し訳ございませんが、私は職務に戻ります」

「そうだな。我も仕事が溜まっておる。…最後に。わかっておるとは思うが、あれが人間側の密偵の類であったときは…」

「わかっています。どれだけ魔王様に悲しまれようと、私が()()()()()()()()()()

 

 

  ◆

 

 

 その後、紆余曲折の末、魔王様お手製の食事を振舞われることになった人間と私でしたが…。

 案の定、魔王様が出してきた食事は酷いものでした。見てくれだけは整えられているが、基本的に味付けがおかしい。調味料について十分に知らない上に、味見もしていないことが明白です。具材の斬り方は適当で、形も大きさもバラバラ。混ぜる食材も適当で最終的な味とか何も考えちゃいません。良く煮込んだようで火が通っていないということだけは無かったのが唯一の救いでしょうか。まぁ、それもやりすぎて焦げとかできちゃってたんですけど。

 いや、とてもじゃないけど食えたもんじゃない。

 だというのに。

 人間は完食しやがった。味が崩壊していることに気付いた魔王様による必死の制止も無視して、私に用意された分まで平らげてみせた。

 

「ご馳走様です、空腹だったので助かりました。…まぁ、確かに味は美味しくはなかったかもしれませんが、今後上達していけばいいんですよ。今度、ミリアさんや俺と一緒につくってみませんか?大勢で作って食べるのもきっと楽しいですよ?」

「…また、食べてくれるのか?こんなものつくったのに?」

「最初は誰だって失敗するものですよ。だから練習するんじゃないですか。それに、魔王様のような可愛い女の子が作ってくれた料理を食べるのは男の幸せってやつなんですよ」

 

 ちくしょう、ちょっとだけ格好いいじゃないか。

 少しはこの人間のことを認めては良いのかもしれないなんて思ってしまった。

 それはそれとして、魔王様に向かって「可愛い女の子」とか……疑いようもない事実ではあるけど、口説いてるのかコイツは?

 コイツの脚の間にあるモノ、潰しておくべきでは?

 

 




〈あとがき〉
 設定を小出しにする方針にしたわけですが、魔王様の設定の文字数が多すぎて後書き欄にはうまく収まらない感じでした。そのため、魔王様&聖女ちゃんのダブルヒロインの設定を一話にして次に載せました。

○人気投票アンケートについて○

 前回の試作アンケートへのご協力ありがとうございました。自らの「肉体・技」に頼るという人がかなりたくさんいて驚きました。マッスルマッスル!地球も意外と魔境だった…?圧倒的な「レベリング」の人気は納得というかなんというか…この小説でも「レベリング」については後々触れる予定です。あと、どんなアンケートでも同じですが「その他」が何なのか凄く気になっちゃいますね。一体何なのでしょう?

 さて、色々なキャラの名前や設定も明らかになってきたので、この辺りで人気投票を行います。
 実は、自分のオリジナル作品でキャラの人気投票をするというのが長年の夢というか憧れの1つでした。なので、ご協力いただけますと幸いです。
 アンケートは次の話に設置してあります。
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