序章は導入であり、主人公が己の実力を思い知る章
なので、次なる1章は一般的な物語における修行回になるのだが…?
地球人類にレベルアップ機能は実装されておりません
俺が魔王城に来てから早いもので既に10日が経過した。
特筆するような事件も無い、存外平和な日常だった。
魔王様の敵も多く、俺が人間だということもあるので、すわ敵襲か…!?と警戒していたのだが、何とか無事に生きている。
表向きはトップである魔王様が「客人」として宣言したこと、ドラゴネスさんの威光、そして、俺の部屋に仕掛けられた魔王様お手製の最高峰魔術ガード&隣のミリアさんガードが想像以上に堅牢らしい。
魔王様とドラゴネスさんは非常に忙しい身の上なので一緒にいることはなかなか出来ず、ほとんど俺の日常はミリアさんとのものになった。
ただ、食事だけは基本的に魔王様と俺とミリアさんの3人、時々そこにドラゴネスさんも加わってするのが常であった。皆で料理して、皆で食べる。なんでもないことだけど、これが存外楽しいのだ。
因みに、「実は料理が出来る系男子だった!」とか、しかもそれが「店開けるレベルで超絶美味い!」なんて隠し要素は俺にはない。料理で異世界人を懐柔とか異世界で和食無双とかそう言ったアレコレを俺に求めても無駄である。
そんなわけで、終始ミリアさんに頼りっぱなしのお料理教室であった。
てか、ミリアさんの料理マジ美味い…
一緒にいてつくづく実感したのだけれど、このメイドさん、基本的にスペックお化けなんだよな。
そも、何かできなかったという場面をこの10日間で一度も目にしていない。
王の専属料理人の実力は本物で、料理をすれば地球でも食べたことのないような美味しい料理を作る。
隠しアイテムを見つけ出して破壊したことからもわかるように、掃除をすれば新築かって位に綺麗にしちゃう。
他にも洗濯や裁縫など家事に分類される一通りのことを神がかってるレベルでこなす。
あれ、このメイド嫁力高すぎないか…?
あと、戦闘力もヤバイらしい。まぁ、俺が4、5回に分けて運ぶ必要があるような荷物を軽々と1度で運んでたから納得ではある。魔力の力ってスゲー。
まぁ、そんなわけで存外に平穏な10日間であった。
だからこそ、その平穏に甘んじるのではなく、この間にできることはやっておこうと、そんな決意をして過ごしてきた。
具体的には、少しでも戦力として役立てるようになろうというものであった。
確かに俺は弱い。だが、魔法や魔術などの不思議パワーがある世界なら、頑張れば戦えるようになるかもしれないではないか。しかも、ここがゲームに似た世界だというのなら、「レベルアップ」とかして強くなることも可能ではないのか。とまぁ、このように考えたわけである。
なお、『YOUR FANTASY』は王道RPGだけあって、ちゃんとレベルアップ機能があった。キャラのスキル構成やプレイヤーのプレイスキル重視の面も多かったが、確かにレベルアップは存在していたのだ。
だから、頑張ってレベルアップすれば、無双とまでいかなくとも、辛うじて戦えるくらいにはなるんじゃないか。
…そんな風に考えたりもしたのだが。
そんな甘い希望は早々に打ち砕かれたのである。
◆
城内生活3日目。
1日目は魔王様の手料理を食べて終了し、2日目はなぜか微妙に痛む腹をさすりつつ、魔力などの基本的な事柄をミリアさん&魔王様に教わって過ごした。
2日目のチュートリアル的な学びを経て、俺はとりあえず第一優先課題として「レベルアップ」を設定した。
そして3日目。
この世界においてレベルやレベルアップがどのように扱われているのかを魔王様に尋ねたのである。
「れべるあっぷ…?なんだ、それは。詳しく聞かせてくれんか」
もうこの時点で嫌な予感がビンビンしたよね。
とはいえ、俺は必死にレベルアップを説明した。敵を倒すことで経験を積む以外に魔法的な感じで強くなる現象とか、何かしらの経験を一定以上積むと体や技量が急激に成長する現象とか、そんな感じに説明してみたのである。
すると、魔王様はそれに近しい現象があることを教えてくれたのだ。
「…むぅ?魔力上限増幅現象のことだろうか…?かなり違うが、強くなるという点では似た現象はあるぞ。ふむ、ちょうど良い。少し時間もあるし講義をしてやろう」
「ありがとうございます!ルナウディア先生!」
「う、うむ…。「先生」か。悪くないな…」
なんと、レベルアップっぽい現象があるというではないか!ちょっと違うらしいが構わん。初めてゲーム知識が役に立ったのだ!俺は喜びで小躍りしそうになった。
そんなわけで何やら「先生」呼びに嬉しがっている魔王系ロリっ娘女教師が爆誕し、俺は「魔力上限増幅現象」なるものについて教わったのであった。
…のだが、わかったのは現実がそうそう甘くないものだということである。
「まず、魔力が強いものから弱いものへと流れることは既に知っているな?」
「はい、ルナウディア先生!あと、その魔力は個体別に許容限界量があることも学びました!」
「…っ!そう、そうだな。その通りだ。生徒が真面目で先生は嬉しいぞ」
魔王様は先生呼びをするとちょっと嬉しそうになる。教師になりたい願望でもあるんだろうか?まぁ、本人が嬉しいことなら良いことだ。今後もどんどん先生と呼んでいこう。
「それで、だ。この許容限界量は、通常、産まれ持った量から変動することはない。しかし、唯一例外が存在している」
「例外、ですか?」
「うむ。それこそが、「魔石」を用いた魔力上限増幅現象なのだ」
魔石…?ゲームではそんなのなかった気がするけど…?アイテムであったかな?よく覚えてない。
「魔石というのは、簡単に言えば、魔力を有する存在が死ぬときに残す「体内魔力」の結晶体だ」
ほほう?
「どんな死に方でも魔石が残るというわけではない。生物が寿命や病気などによってゆっくりと死に至る時、死の原因を無くす、或いは直そうとして体内の魔力が盛大に消費される。そのため、結晶体になる程の魔力は死体に残されない。」
つまり、普通に死ぬのでは魔石は出来ない、と。
「体内魔力」が病気とか怪我を直そうと頑張って延命するから、最終的に死体に魔力は残っていないということかな。
「しかし、一瞬で絶命するような状況であれば話は別だ。何者かによって首を斬られて即死したりした場合だな。そうなると、生命維持に使われるはずだった大量の体内魔力は行き場を失う。生命が生きることで生み出す力が魔力であるならば、既に死んだ体では魔力を扱うことができないという訳だな」
なるほど…?殺されたり、あとは転落死とかかな?そういう即死的な状況でのみ魔石が出来ると。
「そうして、行き場を失った魔力は、一切消費されることなく体の中心である心臓へと集まる。この時に集まった魔力が結晶化した物こそが、魔石なのだ」
ゲームで言うドロップアイテム、みたいなものか?
「そして、この魔石にはある特性がある。自らより強い存在の魔石、即ち己より保有魔力上限が大きい存在の魔石を食べると、上限値が僅かに上昇するというものだ」
つまり、即死させた対象の心臓を喰うってこと?グロテスク過ぎない?
俺にできるか、それ…?いや、生きるか死ぬかって場面で必要ならばするだろうけど!
「なぜこのような現象が起きるのか、実はまだ解明されていない。随分と前に「神が祝福として魔力を与える。ならば他者を殺して魔力上限が増えるのは、殺し合いを神が祝福しているからだ」という学説が提唱されたものの、教会などの激しい抗議を受けて消えていった。真相は闇の中、というわけだな」
「…先生はその説についてどう考えているんです?」
「……さぁ、な。そういうこともあるだろうな、とは思う。ただ、仮にも統治者として考えるならば、消えてよかったのかもしれないと考えている。国教が殺し合いを肯定しているとなれば国の混乱は必須だからな」
それはそうかもしれない。神様が殺しを肯定しているとか治安も何もあったもんじゃない。
ちょっと魔王様の答えに含むところがある感じだったけど、魔王様が抱える事情に関わってたりするのかもしれない。
まぁ、魔王様が俺に話しても良いと思ってくれた時に明らかになることだ。今は考えないで良いだろう。
「ただまぁ、長々と話したが、余の生徒にはあまり関係ないことだ」
「何故です?」
「だってお主、上限が増えるも何も元から魔力を貯める仕組みを有していないではないか。これは元からある上限を拡張する現象であって、初めから存在しない場合は適用できん」
な、何だって――――!?
つまり、こういうことか?
地球人類にレベルアップ機能は実装されておりません、と?
◆
回想終わり。悲しい事件だったね…。
というわけで、俺はレベルアップ計画を早々に諦めたのである。
雀の涙程度かもしれないが、肉体・戦闘力に関しては筋トレを日課とすることにした。
そうして、俺はこの世界の知識を蓄える方向へと変えた。役に立たないゲーム知識を少しでも活かすためにもこの世界の知識を片っ端から頭に詰め込むことにしたのだ。
とはいえ、それも一筋縄ではいかなかったのだが…。
この魔石、後々で結構重要になります。
<あとがき>
前話のアンケートにご協力いただき誠にありがとうございます!
まだまだ投票は受け付けていますが、途中経過を発表します。
2021年8月10日10時時点
1位:ルナウディア(魔王)……131票/45%
2位:ミリア(メイド)………… 51票/17%
3位:リベタス(主人公)……… 42票/14%
4位:ドラゴネス(四天王) ………32票/11%
5位:ソレイユ(聖女)………… 29票/10%
6位:ミウイ(邪神/魔族の神)…… 7票/ 2%
7位:ニエーナ(女神) …………… 2票/ 1%
その他(感想欄) 門の衛兵…… 1票
総じて思うのは、自分が考えたキャラクターが受け入れられて好ましく思ってもらえるのは何にも勝る喜びということです!感無量です!
魔王様の人気が圧倒的ですね。流石はメインヒロイン。
ミリアさんが想像以上に人気で驚きました。主人公超えてるっていうね。
そして、ショタボ筋肉爺さんに負けているヒロインがいるらしい…(笑)
聖女ちゃんはこれからだから大丈夫…(震え声)
まだまだ受け付けていますが、第2回実施までには締め切ります。
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