高い壁だけど、目指せ2500pt超え…!
「あの…何をそんなに怒っていらっしゃるんです、ミリアさん…?」
魔王城生活5日目。
何やら朝からミリアさんの機嫌が悪い。
「…あ、あぁ。すみません。確かに、今の私は機嫌が悪いですが、貴方には全く関係の無いことが原因です。気にしないでください。ご不快な思いをさせたのなら、申し訳ありません」
そうは言われても気になるもんは気になる。
「その、余計なお世話かもしれませんけど、ミリアさんには世話になってばかりですし、なにか手伝えることなら手伝いますよ?」
「…ありがとうございます。…そうですね、なら、愚痴を聞いてもらっても良いでしょうか?」
「愚痴、ですか?勿論ですよ。仕事を円滑に進めるのに愚痴は必要なんだって俺は思ってますし」
愚痴でも出さなきゃストレスが貯まってどうしようもなくなっちまう。
ストレス社会の日本で生きていくための必須技能ってやつだな。知らんけど。
「なかなか面白い価値観ですね。…同僚にだってあまり愚痴は言えないんです。何をどのように捻じ曲げられて伝えられてしまうかわからないので」
そうか、魔王様陣営は敵が多いから…。それは大変だろうなぁ。
でもそんな愚痴を俺には聞かせてくれるってことは、少しは信頼してくれたってことで良いのかね?
◆
「愚痴の内容は、何を隠そうあの老害四天王のことです」
「もしかしなくてもドラゴネスさんですね?」
「えぇ、その通りです。あの老害がまた問題を起こしたので頭を悩ませていたんですよ」
「問題を、
俺の中のドラゴネスさんのイメージは頼りになる武人さんって感じだ。問題を何度も起こすような方とは思えなかったがなぁ…。
「はぁ…。最初は誰もがそんな感じに騙されるんです。いいですか、決してあの老害を尊敬などしてはなりません」
そうは言われてもなぁ。やっぱり信じられん。
「信じられないようですね。なら、今回何が問題となったか語って聞かせましょう。えぇ、そうしましょう」
なんかミリアさんの眼が据わっている。よほど怒りがたまっているらしい。どうどう。
しかし、そのように落ち着いて聞いていられるのもそこまでだった。彼女の口から語られたドラゴネスさんの不祥事が想像を超えていたからだ。
「今回奴は幼い男の子に手を出そうとして官憲に捕まったんです。よりにもよって有力貴族の子息に手を出そうとするとか何を考えてるんですかね…」
「は?」
は?え?幼い、男の子…に?ショタに手を出したと?
「えぇ、貴方がそういう反応をしてくださって安心しました」
「えぇ…ちょっと待って…えぇ…?」
やばい理解が追いつかない。どういうことだってばよ?
「あれが「龍人」という種族だということは知っていますか?」
「いえ、てっきり「リザードマン」かと」
「そう思ってしまうのも無理はありません。しかし、あれは龍人。本質的にはただの「龍」なのです。「龍」については知っていますか?」
龍。龍と言うとアレだよな?地球の知識であっているかは分からないけど…
「巨大で長い蛇のようで、空を飛ぶ…みたいな認識であってるのなら」
「えぇ、その認識であっています。ドラゴネス様…いえ、この場では呼び捨てで良いでしょう。ドラゴネスはただの龍なんです。分類も魔族ではなく正式には魔物。あの姿と声ですがもう426歳になります」
「426才!?」
めっちゃファンタジーやん。やっば。魔族の寿命が種族差はあるけど人類種の2倍くらいというのは教えてもらってたんだが、まさかそこまでとは。
「貴方は妙にあの声を気に入っているようですが、あれは自らの喉を改造した結果です」
いやー、ショタボイスの癒し効果は馬鹿にできない物があるぜ?
「何故に改造なんてことを?」
「そこが問題の本質です。「龍」というのが「幼さ」を求める生物だというのは知っていますか?」
うん?地球の龍ってそうだったか?
「「龍」は古来より「生きる災害」として人類種にも魔族種にも恐れられてきました。その怒りを鎮めるために生贄などを差し出そうとしたのですが、その時に求めるのは決まって幼い者や若い娘だったのです」
それは何となく分かる気がする。地球の伝承的にも若い娘を求める龍というのはしっくりくる。
「奴らは他の如何なる種族と比べても異常な長さの寿命を有しています。そのため、必然的に若くない時間が長くなる。自らの精神が時と共に老成すればするほど、「幼さ」を求め始めるのです」
「えぇ…?それは、その、まさか恋愛的な意味でですか?」
「えぇ、その通りです。幼ければ男の子でも女の子でも見境なく手を出そうとする屑です。しかも成長したら見向きもしなくなります」
うわぁ。これが本当なら結構ヤバイぞドラゴネスさん。
人から聞いた話だけで判断するのは良くないとは思うんだけど、俺の中のドラゴネスさんへの信頼がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じる。
そしてロリショタと言えば頭に浮かぶ存在が1人いる。
「まさかとは思いますが、魔王様の味方をしているのも…?」
「私は怪しいと思っています」
「うわぁ…」
それは駄目だろう、ドラゴネスさん。
すると、顔を寄せて内緒話をしていた俺とミリアさんの後ろに大きな影が迫った。
「一体どんな賞賛の話になるかと思って黙って聞いておれば、風評被害も良い所だ。変な噂を広めるでないぞ」
「あ、釈放されたんですか。おめでとうございます。娑婆の空気は美味しいですか?」
何を隠そうドラゴネスさんであった。聞かれてしまっていたようだ。
とはいえ、全く驚いていないミリアさんの反応を見るに彼女は既に気付いていたっぽい。流石できるメイドさんは違うわ。
「ちょっと事情を聴かれただけだ。あの家の一人息子だと知っておれば話しかけ等せんかったわ」
「俺は十分アウトだと思いますよ、それ」
それ、貴族の息子とかじゃなかったら止まらなかったってことだよな?
「む、人間。お主までそのようなことを。まぁ良い。とりあえず最大の誤解を解かねばならぬ」
「最大の誤解、ですか?」
どれのことだ?
「魔王様の事だ。良いか?「かつての主君にして生涯最高の友」の娘に手を出すほど我は落ちぶれてはおらん」
ふむ?となると察するに…
「それは魔王様の父親の、先代魔王様の事ですか?」
「そうだ。我が魔王様をお守りするのも、その忠義あってのもの。決して疚しい感情など無いわ」
へーそうなんだ。主君の娘を主君亡き後も護る武人…なんか格好いいな。
そんな風に感心する俺だったが、ミリアさんは容赦なく斬り込んでいく。
「では、魔王様が友の娘ではなかったとしたらどうです?」
「ふーむ?それでもあり得んな。そも我等にとっての「幼さ」とは心・魂の在り様よ。穢れを知らず無垢であり、可能性に満ちた存在だな。そういう意味では魔王様が該当しないのはお主が一番わかっておろう、ミリア?」
「……えぇ、そうですね」
なんだろう。ちょっと疎外感。
二人だけがわかっている何かがあるらしい。
けど新参の俺が彼女たちの全てを知れるなんて思い上がりも甚だしい。もっともっと信頼してもらって、やがては彼女たちの抱えるものの一部でも背負えたらいいな、なんて思う。
そんな風に話し込んでいると、また新たな乱入者が現れた。
「のう、お主ら。黙って聞いておれば、先程からの話は一体全体どういう前提のもとで成り立っておるのかのう?まるで余の体形が幼いものとして会話が成り立っているように聞こえたが?」
「「「げ。魔王様」」」
「げ、とはなんだ!仲良く息など揃えおって!ええぃ、この体はまだまだ成長するのだぞ!まだ余は30才だからな!」
人間でいう15才。確かにまだ希望はありそうだが、なんとなく無理っぽい感じが漂うのは何故だろうか。
「馬鹿にしおってぇ…!今に見ておれ!ボンキュッボンのミリアみたいなナイスバディに成長してやるからな!」
そういって怒って140㎝程度の魔王様はどこかへ行ってしまった。
なんということはない、平和な一日の一幕であった。
この章はこういう感じの話も多いです。物語が本格的に動くとそういう余裕は無くなっていくので…。
【キャラ設定5】
名前:ドラゴネス 真の名:????
「武」の四天王。男性。426才。
容姿:蒼い鱗に覆われているリザードマンっぽい姿。体長は3mを優に超え、筋骨隆々である。
種族:龍人(本質的にはただの「龍」)
好きな物:幼い存在。一流の武を誇る者。
嫌いな物:己の弱さ
魔王軍四天王にして、最強の武力を誇る男。魔法勝負になればルナウディアに軍配があがるが、単純な膂力・戦闘技能に関しては右に出るものがいない。…しかも、これが現在の姿における話に過ぎず、本来の姿となれば手が付けられない強さ。
実は、「龍」は「魔物」に分類される。とはいえ、魔族に支配される存在としての魔物ではなく、その圧倒的上位種。かつては魔物の「龍」として好き勝手暴れていたらしい。「龍人」として人型をとっているのは、そんな自らへの戒めの意味もある。それとは別に、自らの成長のための枷としての人型、武技を鍛えるための人型という目的もある。
徹底的な武人気質。己の強さを鍛えることに余念がなく、強者との戦いを最も好む。また、忠義に生きるのもこの武人気質故。リベタス(主人公)のことも競うべき強者としてロックオンしているが、彼と戦うのはルナウディアに禁じられている。もしも地球に産まれていたら堅気かどうか怪しい。武道・スポーツで名を馳せるか、裏社会で戦いに明け暮れるかのどちらかだと思う。
その声は体に全く似合わない幼い少年の声。これは、「幼さ」を求めるあまりに自らの喉を改造した結果。「幼い存在」を求めるのは長き時を生きる「龍」共通の性質。自らの精神が時と共に老成すればするほど、無垢で可能性の塊である「幼さ」が尊いものとして映るが故。…ちょっと格好いい風に言っているが、恋愛対象も「幼い者」であるので決して憧れてはいけない。身も蓋も無い表現をすれば、「筋骨隆々ショタボのロリコン兼ショタコン爺」という業が深い存在。しょっちゅう「幼い者」に手を出しては、成長したら興味を失う。この在り方を知っているからこそ、ミリアは彼を「老害」と呼ぶ。
念のために言っておくと、いくらロリ体型とは言えルナウディアに恋愛感情はない。「かつての主君にして生涯最高の友」の娘に欲情するほど落ちぶれてはいない、とは本人の談。そもそも、龍にとっての「幼さ」とは、心・魂の在り様。ルナウディアは無垢と言うには世界の悲劇や汚さを知り過ぎているし、未来が閉ざされていて「可能性の塊」にはなり得ないのだ。