ゲーム知識がまるで役に立たないのだけれど?   作:夢泉

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聖女、東方へ行く

 「彼」が魔王に連れ去られてから7日経ちました。

 7日。それは一人の人間が壊れてしまうには充分な時間です。

 魔族だらけの地で人間がまともな扱いを受けるはずがありません。きっと拷問をはじめとした酷いことをされているでしょう。食事だって与えられているかどうか分かりません。そして、7日間も痛めつけられれば普通の人間は体か精神を壊してしまいます。

 そもそも、あの土地自体が並の人間では生きていくこともできない魔力濃度の土地。いくら彼が魔王の魔力に耐えられる実力があるとはいえ、寝ても覚めても休むことなく高濃度の魔力に晒されれば異常が生じて当然です。

 なのに、軍は未だ動けません。7日間という時間は一人の人間を壊すには充分すぎますが、町が復興するのにも軍が動き出すのにも足らなすぎるのです。勇者もまだ見出されてはいません。

 この7日間は生きた心地がしませんでした。常に彼の無事を願っていることしか私には出来ないのですから。

 不安や焦燥を誤魔化すように、「聖女」の力を扱う修行に没頭しました。訓練の間は頭を空っぽにしていられるから、ただひたすらに集中していたのです。……自らの罪から逃げるように。自分は何もしていないわけじゃないんだって言い訳をするように。本当に、最低だ。

 でも、ついに希望が到来しました。

 

 女神様が「勇者」を選び出すという神託が下ったのです。

 

「神託が下った。東方で今代の勇者が見出されるとのことだ。そこで、聖女ソレイユ様には、聖騎士様や賢者様と合流し、東方へ向かっていただきたい」

 

 東方。恐らくは彼の出身地。何か知れることもあるかもしれません。

 それなりに地位がある方だったようですし、ご家族でも見つけることができれば、救出のための協力を取り付けられる可能性だってあるでしょう。

 そもそも、勇者様の力があれば魔族たちに対して攻勢に出ることが可能となります。それはつまり、彼を救うことができるようになるということです。

 私は、別の町からヒロネスタへと向かっている「聖騎士」様との合流をした後に、東方へと向かうこととなりました。「賢者」様は東方へ向かう中で合流する手はずとなっているそうです。

 

 名も知れぬ貴方。

 高潔で優しい心を持つ貴方。

 どうかどうか無事でいてください。もう少しだけ耐えていてください。

 

 

  ◆

 

 

 翌日、「聖騎士」様がヒロネスタに到着しました。

 

「貴女様が聖女ソレイユ様ですか。私は今代の聖騎士に選ばれましたヴィヴィアンと言います。この町も魔王の手先によって被害を受けたとか。心中お察しします。共に悪しき魔王を打倒しましょう」

 

 今代の聖騎士に選ばれた方はとても美しい女性の方でした。長い金髪が美しい美人さん。背が高く、スタイルの良い方です。言葉や所作に品があるので、どこかの令嬢なのかもしれません。ただ、とても物腰は柔らかく、平民を見下すような高慢な態度はありませんでした。

 …そういえば「彼」もそういう方だったと聞いた。

 …いけない、また彼の事を考えている。最近は、彼の事を考えるとそれだけで思考が埋められてしまって思わぬ失敗をしてしまうことも多かった。今はなすべきことに集中しなければならない。

 男性の方との二人旅にならなかったのは幸運だったかもしれませんね。

 

 東方の国へは、馬の疲労を聖女の力で癒しながら行けば3日もあれば着けるだろうとのことでした。

 3日。つまり往復で6日。最低でもそれだけの日数、彼は辛い目に遭い続ける。

 歯がゆく、苦しい。胸が痛む。

 けれど、今はこうするしかないのも事実なのでした。

 

 

  ◆

 

 

 東方へ向かう途中の町で「賢者」様と合流しました。

 

「君たちが聖女と聖騎士だね。初めまして。ボクが今代の賢者だよ。名前はエマ!仲良くしようね!」

 

 驚くべきことに、賢者様も女性の方でした。淡い水色の髪を短髪にした、背が小さくて可愛い女の子。ぶかぶかの紺色のローブに身を包み、背丈ほどもある大きな杖を持った姿は子供が勇者一行ごっこをしているようにも見えてしまいます。

 でも、その実力は本物で、道中で遭遇した魔物を魔術一発で仕留めてしまうのです。また、賢者の名が示すとおり、とても博識な方でもありました。

 聖騎士のヴィヴィアン様もとても強くて、その細い躰からは想像もできない力で魔物を両断してしまいます。女神様がくださった力の凄まじさを改めて感じました。

 

 2人と仲良くなるのにそれほど時間はかかりませんでした。

 道中、2人とは色々な話をしました。好きなもの、出身地、そして…恋バナ、とかも。

 話の流れで、私は「彼」のことも2人に話すことになりました。

 

「なるほど。…そのような高潔で強い殿方がいたのですか。是非私も会ってみたかったですね。必ず魔王を打倒して救い出しましょう」

「へ~凄いなぁその男の人。ニシシ、聖女ちゃんはその人に惚れちゃったってわけなんだね?」

「な…!そういうわけでは…!」

「なに?話す様子を見るにそうなのかと思っていたが…違うのならば私が狙ってしまっても良いか?それだけ実力がある殿方なら当家に迎え入れるに相応しいしな」

「え、え…!?えっと、それは…」

「あれ~何を焦ってるのかな~?惚れてるわけじゃないんでしょ~?」

「そ、その、えっと…えっと…」

「ははは!なに、冗談だ。すまぬな。ついつい反応が可愛くて弄り過ぎてしまった」

「そうそう!ソレイユちゃん初心で可愛いよな~!」

「もうっ…!ヴィヴィアンさんもエマさんも意地悪です!」

「はは、ごめんってば~!」

 

 こんな何でもない会話がとてもとても楽しいのです。

 …ただ、楽しければ楽しいほど、辛い状況に置かれた彼のことが脳裏をよぎってしまうのでした。

 

 

  ◆

 

 

 ヒロネスタを出発してから3日目。

 遂に私たちは東方の国「ジパニス」へと到着したのです。

 

 

 …そして、その地で運命の再開を果たすことになるのでした。

 




なお、7日目といえば、主人公が海で美女・美少女と遊んでいた日です。

また、実は2章の舞台は東方の地になります。章の名前はまだ迷っていますが、「東方陰謀編」とでも言えばいいでしょうか。お楽しみいただければ幸いです。
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