ゲーム知識がまるで役に立たないのだけれど?   作:夢泉

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主人公の「凡人」性、そして「普通」についての掘り下げ回。
何だけど、とある名無しキャラが目立ちまくっている件。下手したら主要キャラを超えて得票してしまう可能性が…頑張れネームドたち…


幕間:一般魔族さん(96才/男性/衛兵・門番)

 本当、俺は何やってんだろうなぁ…。

 

 俺の故郷はド田舎だった。珍しいモンも何もない、だだっ広い畑と深い山があるだけ。平和だけが取り柄のクソ田舎。日々同じことの連続で、少しでも周りと、昨日と違うことがしたくてヤンチャばかりしていた。

 そのおかげと言っていいのか何なのか、気付いたら俺は村一番の強者になっていた。誰よりも強くて相手になる奴が1人もいなくなっていたのだ。

 …でも、平和が取り柄の村では力があっても何にもならなくて。

 だから、いつか故郷の外に出て、俺の力を広い世界に示すんだって誓った。

 俺の力は凄くて、外の世界のどんな奴にも負けないんだって思っていた。

 大きな街に出て、武勇を示して、王様に認められて…。絶対にそうなるに違いないと信じて疑わなかった。

 

 そうして、村を出て。

 他の似たような奴らと同じように現実を知った。

 何てことはない。井の中の蛙が大きな海を知っただけ。

 ありふれた話だ。どこにでも転がっている世間知らずの田舎者の話だ。

 

 自分の「強さ」なんてちり芥に過ぎないと知って。それでもそんな現実を認めたくなくて足掻いて足掻いて足掻いて…そうしたら、ひょんなことから城で働く機会を得た。

 俺の頑張りが認められたって思った。やっぱり俺はスゲー奴だったんだって思えた。

 

 けど、いつかの焼き直しのように、俺のちっぽけな思い上がりは直ぐに粉々に砕けて跡形もなくなった。

 

 来る日も来る日も同じことを繰り返している。

 来城した者と事前の来城予定を見比べる。差異があったらお引き取りを願う。

 持ち込まれる荷馬車の中を調べて異常が無いことを確認する。

 それだって俺だけじゃなくて複数人でチェックする。

 要するに、俺じゃなくても良い仕事だ。代わり何ていくらでもいるんだろうさ。

 後は掃除と、有事に備えての訓練か。

 これを延々と繰り返すだけ。

 村にいた頃と何が違うのだろうか?

 その事に気付いてしまった時。多分、俺の中の何かが折れた。

 もう、変な希望は抱かない。ただただ、死ぬまで同じことを繰り返してればいい。

 そうすれば、少なくとも今より辛い思いをすることはない。

 

 ただ、同じころに登用された奴が出世しているのを見ると、無性に悲しくなることがある。

 

 今日も、そんな日で。

 ちょっと一人になりたくて、どこかいい場所はないかと探していた時。

 そんな時、俺は魔王様の客人だという人間に出逢った。

 

 

  ◆

 

 

 俺は虫の居所が悪かったから、最初ソイツにきつく当たった。

 人間なんかが一国の王に大切にされてるのが癪に障った。

 初対面の奴にどうかと思うけど、魔族に酷いことをしてきた人間だから良いかなんて自分を納得させて。かなり酷いことをたくさん言っていたと思う。

 怒って当然だろう言葉の数々だった。俺だったらキレて半殺しにしていたかもしれない。

 そもそも、コイツは凄く強いって話だし、魔王様の客人への暴言とか普通に極刑で当然だし。人間の隣には魔王様の側近の美人メイドもいたから、確実に伝えられて終わりだと思った。でも、もうそれでも良いかなって思うくらいには自暴自棄になっていたんだよな。

 

 なのに。

 その人間は少しも怒りを見せずに、ただ頭を深く下げて。

 

「本当にすみません」

 

 なんて謝りやがった。

 だから、意味が解らなくて、何で怒らないんだと問いかけたんだ。

そしたら。

 

「戦争するレベルで仲が悪い種族の、しかも身元不明の怪しい奴が城に居座って魔王様の傍にいるんですから。城を、そして()()()()()()()()()()()()()怒って当然でしょう?でも、俺はこの城を離れるわけにはいかなくって、だから謝るしかないなって思うんですよ。こっちの都合で迷惑をかけたなら謝る。普通のことではないですか?」

「………そうか。そうだな。「普通」の事かもしれないな。故郷のお袋も良く言っていた。……すまなかった。俺はお前に八つ当たりをしてしまったんだ。申し訳なかった」

 

 お袋に叱られた昔のことを思い出した。そして、何より()()1()()()()()が何故か胸に突き刺さった。

 

「……?良く分からないですけど、八つ当たりってことは何かあったんですか?」

「あったにはあったが、お前には関係の無いことだ。気にするな」

 

 何故あの言葉が気にかかるのか不思議はあったが、これ以上コイツに迷惑をかけるとマズいと思った。冷静になれば、このままだと打ち首かもしれないという恐怖が出てきたのだ。

 

「健全な仕事に愚痴は必須ですよ。ね、ミリアさん?」

「………えぇ、そうかもしれませんね。昨日、貴方に愚痴を言って気分が軽くなったのは事実です」

「ま、そういうわけです。ここで会ったのも何かの縁ってことで。話してみません?俺はこの城に厄介になっている身ですし、こういうところでお返ししていかないと借りてばっかりの借金野郎になっちゃうので」

 

 けれど。

 

「…お前はさっき、俺の事を「王様を守る立場」なんて言ったがな。俺はそんな大層なもんじゃ無えんだよ。ただの数いる門番の一人に過ぎねえ。長い話になるんだが、田舎から出てきた俺は…………」

 

 気付いたら俺はコイツに自分語りをしていた。

 冷静に考えたら何を馬鹿な事をしてんだって感じだ。

 でも、多分、さっき無性に「王様を守る立場」という言葉に心がざわついた理由が知りたかったんだろうな。

 長い長い自分語りが終わって、やはり思う。

 俺はコイツがさっき言ったような大層なモンじゃねえ。

 

「……………だからよ、俺は替えの利く有象無象の雑用係に過ぎない。「王様を守る立場」なんかじゃ無ぇんだわ」

「……?え、それは「王様を守る立場」では?むしろめっちゃ凄いのではないですか?」

 

 けれど。全部を聞き終わった人間の第一声はそれだった。

 

「んー?ヒルダさんもこの魔族さんもなんで皆こんなに卑屈なんだ…?あの、ちょっと聞いて良いですか?この城に門番担当って何人いるんです?」

「あぁ?詳しい数は知らねえが…正門と裏門で合わせて50ってところじゃねえか?」

 

 なんで急に衛兵の数なんか聞くんだ?

 

「正確には52名です。直接の検問要員が各門に常時12名。他は有事の際の対応やその他業務に割り振られており、交代制で仕事を回しています」

「うっわ、まさかミリアさん、城内全ての人員配置を把握していらっしゃる…?」

「メイドとして当然です」

 

 有能って噂だったが、この美人メイドやべえな。噂を軽く超えてるぞ。

 

「うわーまじかー…っと、つまりですよ?この城の出入り口…攻め入る時に最初に狙われる場所の守りを任されている52名ってことですよね。全ての魔族の中で52人だけしかつけない仕事なわけで…これが凄くなくて何なんです?」

「……は?」

 

 何を言っている?コイツは?52人もいるじゃねえか。俺の代わりになる奴が51人もいるんだぞ。

 

「王様がいる城…即ち国の心臓ですよね。そこの守りを任されているのなら、誇らない方がおかしいと俺は思うんですが」

「それは違うだろ。俺と同時期にここに来た奴は文官として出世して凄いんだぜ。誇ることができるのはそういう奴だろ」

「それ、同じようなことをヒルダさんも言っていましたよ。「魔」の四天王のヒルダさんです。自分は魔術の腕で魔王様に負けちゃう程度の雑魚でしかないーって」

 

 あの「魔」の四天王がそんなことを…?

 

「俺からすると、ちょっと理解が出来ないんですよね。だって、普通にみんな凄いじゃないですか」

 

 いや、確かにヒルダ様が雑魚ってのは理解できないが。それとこれとは話が…

 

「魔王城が国の象徴に相応しく綺麗なのは、メイドさんを始めとした方々が綺麗にしているからです。ここが国の政治の中心として機能しているのは文官の方々が日々仕事をしているからです。でも、多分、それらもやっている人からしたら「()()()()()()」なんですよ。毎日がイレギュラーばかりとか体制見直すべきですし」

 

 ………。

 

「だから同じなんです。衛兵の人が「いつもの」仕事をしているから、この城に賊が入り込むことがないんです。それがあるから、メイドさんや文官さんが安心して仕事ができるんです。きっとそれは凄いことなんですよ。「凡人」の俺は…「凡人」の俺だからこそそう思います」

 

 くそっ。変な希望は抱かないようにって思ってたのに。

 なのに、コイツの言い分に救われそうになっている俺がいるのを否定できない。

 だから、せめて何か言い返してやろうと思った。

 

「……お前が「凡人」だと?ただの「凡人」が魔王様の客人になって四天王と話せたりするかよ」

「いえ、それは偶然の結果です。俺はどこまでいっても「凡人」ですよ」

「はぁ?」

「世の中には天性の才能としか言えない凄い能力を持っている人が少数ながらいます。固有の魔法とか良い例です。でも、俺にはそれはありません。

 世の中には結果が出なくても失敗しても努力を続けられる人たちがいます。…貴方もそうですね。他の皆が村に骨をうずめる中で外の世界を見ようと決意して外に出た。そして、挫折を経験しても我武者羅に努力をし続けて遂に国の中枢を守る役割を与えられたんですから。

 でも俺はそうじゃないので、サボってばかりでしたし諦めてばかりでした。…ほら、「凡人」でしょう?」

 

 その言い分を信じるなら、そうなのかもしれないな…?

 確かに俺は故郷に逃げ帰る事だけはしなかった。

 魔物退治とかで少しずつ実力を付けていったことを思い出す。あの日々は大変なこともあったが逃げるという選択肢だけは選ばなかった。

 

「でも、私が見る限り今の貴方は毎日勉強を頑張っています。その努力には私も目を見張るものがありますよ?」

 

 ここでメイドが話に割って入る。

 

「えぇ。それは「()()()()()()()」から、「()()()」やっているだけです。日頃から自分を磨き続けられるような凄いヒトだったらこうはなってません。毎日のように思いますよ。凄い肉体や能力があれば良かったのに。もっと体を鍛えておけば、もっと知識を蓄えておけばって。……もっと力があればあの子の助けになることができるのにって」

「貴方は…」

 

 メイドが何かに思い至ったように呟く。「あの子」という言葉に反応していたようだが、この2人に共通認識の「あの子」がいるのか。

 ………もしかして、魔王様の事か?いや、あの化け物クラスの強さの魔王に助けが必要なのか…?でも、メイドとコイツの共通の存在ってそれくらいだよな…。

 いや、分からないことは良い。

 

 ともかく。

 この人間は。大切な誰かのために慌てて足掻いている「凡人」だと、そう言うのか。

 でも、きっとそれは「普通」だけど――。

 

「そんな「凡人」が俺です。でも、そんなに悲観してるわけじゃないんですよ。「凡人」だからこそ「目的」のためにやれることは全てやっておこうって思うだけです。じゃなきゃ、他の凄い人に蹂躙されて直ぐにゲームオーバーですから」

 

 ――いや、「普通」だからこそ凄いことでもあるのだろう。

 

「そんな「凡人」の俺が断言します。貴方は凄い方なんですよ。貴方たちが城を守ってくれないと俺も危ないんで、とても助かってます。いつもありがとうございます」

 

 

 

 それが俺と人間が最初に会った日。

 その日から俺は自分の仕事に誇りを持つことができるようになった。

  

 

 

 だから。

 二回目にアイツと会った時、炎に包まれる魔王城の中で。

 魔王様を抱えて走り去るアイツの背中を見て。

 俺の役目を果たせて良かったって思ったんだ。

 




皆様、いつもありがとうございます。
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基本ネームドキャラ+名無しゲスト。
前回の結果発表は次回、2章予告と一緒に投稿します。

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