「あっ…リベタスそこは…んっ!」
少女の声が小さな部屋に響く。
その幼げな見た目の割に漏れ出る声には妙なつやがある。
こういうのを甘い声と表現するのだろうか。
「なるほど、ここか。翼で隠したりしちゃ駄目だろ、アリア。ほら、じっとして」
どうやら目的の箇所を見つけたようなので、そこを念入りに触っていく。
「やっ、だ…っめえっ…!」
堪えきれなかったようで、少女は翼をピンと立てて悶える。
「さて、次はここ…かな?」
それでも俺の手が止まることはない。そのまま次の場所を求めて少女の体を調べていく。
「ぃや、ちょっと、だけ、休ませて…欲しい、っス…お願いっス」
少女は荒い吐息を小さな口から漏らしている。
眼の焦点は定まらず、呂律もうまく回っていない。
それでも。
「駄目に決まってるだろ。ここまでやったんだ、最後まで一気にいくぞ」
「鬼畜!ドS!これ以上は自分、壊れちゃ…んにゃぁ!」
そうやって少女の抗議も無視して行為を続けていく。
終わるころには、少女はピクリとも動かなくなっていた。
少しやり過ぎたか…。
そうやって反省していると、ややあってアリアが復活した。
見れば、その赤い眼は嗜虐的な色に染まっている。
あ、これはマズイ。撤退を…。
「体中を随分と好き勝手に弄んでくれやがったっスね…次は自分の番っスよ。覚悟しろっス、リベタス」
そう言ってアリアが俺を押し倒して馬乗りになる。
なるほど、これでは逃げられないな。
「あ、いやちょっと待て。話せばわかっ…!ぅひゃあ!」
攻守は完全に逆転し、次は俺が少女の猛攻を受けるのだった。
………………
……………
…………
………
「……拙者の庵で乳繰り合うのは止めていただきたいのでござるが。せめて夜になるまで待ってはくれぬか?」
「そんなことしてません。ただの治療です」
そう。何やらアブナイ雰囲気であったが、ただの医療行為だ。
アリアは魔法や魔術を封じられているし、権兵衛さんも術は得意ではないという。故に、権兵衛さんの庵にあった薬をアリアの傷に塗り込んでいたのだ。
その後は逆に俺がアリアに塗ってもらっていた。
翼の裏側とか背中とか自分じゃできないしね。
ただ、この薬かなり沁みるのだ。塗った箇所が痛いような痒いような擽ったいような良く分かんない感じになってしまう。
「ちちく?…って何っスか?」
「なんでもないよ、アリアは気にしなくていい」
アリアは34才。その年齢ならば大人のアレコレも大丈夫な気がするが、人間年齢に換算すると17才なのである。
この場合、R-18的なのが平気なのかどうか俺には自信が無い。
肉体も精神も人間の17才相当であることを考えると、ちょっと色々マズイ気がするのよね。
ドラゴネスさん?あれは完全にアウトだ。参考にしちゃいけない。
「さて、少し落ち着いたところで、今の状況を整理すべきかと。リベタス殿たちの事情も聞かせていただけると有難いでござる。無論、話せる範囲で構わないでござるよ」
まぁ、そうだな。ミリアさんが目覚めた時に俺やアリアまで状況を理解できていなかったら混乱させてしまう。今のうちに事情を共有しておいた方が良いだろう。
権兵衛さんは話したくないことは話さなくていいとは言ってくれている。けれど、ここまでしてもらって隠し事ばかりは不義理すぎる。
ということで、俺は自らが魔王ルナウディアの客人であることも含めて事情を明かした。話していないのは俺が異世界人であることやゲーム知識についての事くらいだろう。
「ふむぅ、なるほど。先ずは、拙者を信用して話してくれたことに感謝致す。話を聞く限り、ミリア殿の任務の内容がわからねば動くに動けない状況にござるな」
確かにその通りだ。アリアの飛行魔法が使えない以上、魔王城への帰還も難しい。ミリアさんが魔法を使えればいいが、そう上手くはいかないだろう。
治療をしたアリア曰く、ミリアさんの体にもアリアの翼にあるものと同じ式が刻まれていたそうだ。であれば、ミリアさんも飛行魔術を含め魔法・魔術が使えなくなっているとみて間違いない。
当面はミリアさんの回復を待ちつつ、この式を解除する方法を探すというのが最善だろう。
また、少しでも多くの情報を集めて現状を打開する方法も探さねばならない。
先ずは戦力の把握だ。権兵衛さんについて知れる範囲で知っておかないと。
「そういえば、権兵衛さんは先ほど「剣聖」と呼ばれていましたよね」
「そうっスよ!自分の記憶が確かなら、「剣聖」は女神が力を与える「勇者」とかとは別の凄い称号だったはずっス!」
なるほど。もしかしたら「勇者」や「聖女」的なもので魔王様達の敵になってしまうのかと不安視していたが、どうやら別口らしい。
「かかっ!確かに「剣聖」とは人間の中より人間が選び出す剣の頂を指す言葉。しかし、そう大したものでもないでござるよ。ただ剣を振り続けていたら何時しか呼ばれるようになっていただけの称号にござる。加えて、拙者はまだまだ己が「頂」に至ったなどとは微塵も思っておらぬ故」
うわ、あの目視できない抜刀術の先があるのかよ。
でもやっぱこの侍さん凄いな。決して妥協せず、ただ剣の道を究めようとしているんだろう。
「そんな凄い人が偶然にも居合わせて助太刀してくれて…幸運なんてものじゃないな」
「そうっスね…一年分くらい幸運使い切った感じがするっス」
そうなると、この後は不幸な事ばかり続くとかありそう…。
「む?ただの偶然とは言い切れないでござるよ。確かに始まりは偶然でござったが、そこからあの状況に持って行ったのは紛れもなくリベタス殿の力にござる」
「…?どういうことです?」
俺の力ってどういうことだ?俺は何もしてない気がするんだけど。
「ふむ。そのことに関して拙者はリベタス殿たちに謝らねばならないでござる」
謝罪?助けてくれた権兵衛さんが?何故だ?
「最近の拙者は依頼を受けては鬼や魔物を狩り、生計を立ててござった。そんな折、何やら鬼共に不穏な動きあるとのことで、拙者に調査の依頼があったでござる。そこであの岩山付近を調べておったところ、何やら鬼同士が争い合っているのを目撃致した」
あの岩山…つまり、俺とアリアさんが駆け付けたミリアさんが倒れていた所か。
となると、その争っている方の片割れは…
「その通りでござる。片方はミリア殿でござった。とはいえ、拙者が鬼の内輪揉めに介入する理由はござらず、とりあえず様子を見ることにしたでござる。あそこで拙者がミリア殿に加勢しておれば、ミリア殿の傷ももう少し浅くて済んだはずにござる」
なるほど。これが「謝らねばならない」ことなのか。
いや、でもそれは…
「いえ、普通に見ず知らずの、しかも人間の敵である鬼を救うというのは流石に無理があった筈です。結果的にみんな無事でしたし、権兵衛さんが気に病むことではないですよ。俺からは感謝しかないです」
「そうっスね。リベタスの言うとおりっス。最後に助けてくれただけで感謝の極みっスよ」
「かたじけない。そう言ってもらえると救われる気持ちにござる」
再びの感謝の応酬が終わったところで、権兵衛さんの話が進んでいく。
ここまでで「謝罪」の方は分かったが、「俺の力」って方が意味不明なままだよな。
「そうして観察を続けていると、空より青年が、勇ましい口上と共に舞い降りてきたのでござる」
ん?もしかしなくても俺だな、それ。
勇ましい口上って言われてもアレは…
「左様、リベタス殿にござる。あの時の貴殿の言葉が拙者の胸を打ちぬきましてな。『一つ、女人の生き血を啜り。二つ、不埒な悪逆非道。三つ、悲しき浮世の鬼を。退治てくれよう、この杖で』…「サムライ」が何たるか思い知らされたような心地にござったよ。いやはや、自分もまだまだにござるなぁ」
すみません、あれ時代劇のパクリなんです…。
そりゃあ「サムライ」らしい口上だろうね、だって「侍」が主役の時代劇だもの。
ただ、当然「時代劇」なんてものを説明するわけにもいかないので…。
「その、ある「侍」が言っているのを聞いたことがあったので、真似させてもらっただけなんです…」
「なんと!あれ程の信念を有した「サムライ」が貴殿以外にも居ると!ぜひ一度会って手合わせしたいものにござる!」
「あー、多分それは出来ないかと。この世界にはいないので…」
「……なるほど、故人でござったか。辛い話をさせてしまい申し訳ないでござる。さぞ高潔な武人であったことでござろうなぁ…」
うーん、これ以上話を広げてもチグハグになるだけだし、そういうことにしておこうか。この勘違いが何か問題に繋がるってわけでも無いだろうし。
まぁ、結局は作品の中の架空の存在だ。「生きている」とか「死んでいる」とかそういう次元でもないしな。
「ともかく、あの時の口上を聞いたからこそ、拙者はリベタス殿たちに助太刀致そうと考えたでござるよ。それがなければ見捨てていた筈。故に、あれらはリベタス殿自信が手繰り寄せた状況でござったのだ。ただの幸運、偶然と断じるのは些か良くないことでござろう」
「そうだったんですね…」
そっか、「凡人」の俺にも成し得たことがあったんだな。本当に良かった。
「じゃあ、権兵衛さんにありがとうは当然っスけど、リベタスにもありがとうっスね!」
うわ、まぶしい!なんてまぶしい笑顔を向けてくるんだ、この子は!
結局そこまで大したことはしてないんだ、俺は。権兵衛さんを動かすきっかけになったのも借り物の言葉でしかないし。
まぁ、でも。
「それを言ったら飛んだアリアにもありがとうでしょ」
「じゃあ、皆で皆にありがとうっスね!」
「かかっ!誠にその通りでござるな!」
俺の足掻きがミリアさんと、そして目の前で元気に笑う少女を守ることに繋がったというのなら、それは最高だったなって思うんだよな。
「喘ぎ声ジェネレータ」なる機能があったので使ってみましたけれど…なかなか難しい機能ですね、これ。使いこなすのは大変そうです。
こういう感じの文章を書いたのは初めてだったので難しかったです…