ゲーム知識がまるで役に立たないのだけれど?   作:夢泉

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本当は2話に分けようと思っていたんですが、字数の関係で1話に。なのでちょっと読みにくいかもしれません…。すみません。


初めてのお使いin異世界

 権兵衛さんの庵で傷を癒すことになって2日。

 まだミリアさんは目を覚まさないが、俺もアリアも十分行動できるようにはなった。

 

「人間の街にですか?」

「然り。そろそろ薬が足りなくなりそう故、あの街で医者をやっている者に分けてもらいに行く必要がござる。かの御仁であればリベタス殿の力にもなってくれるはずにござるよ」

 

 すると、権兵衛さんから人間の街へ行って欲しいと頼まれたわけだな。

 因みに、権兵衛さんの庵は町から少し離れた竹林の中にひっそりと建っている。

 人里離れた隠居生活みたいな感じだ。

 

「だけど、ミリアさんとアリアを置いていくことになるんですよね…」

 

 ミリアさんとアリアは魔族で、人間の街に入ったら大変なことになってしまう。

 そんな二人を庵に置いて行ってしまうのではないかと考えたわけだが…。

 

「それは心配ござらん。拙者が二人を必ずや守り抜いてみせるにござるよ」

「………ん?もしかして俺って単独行動?」

「男児であればそれくらい出来て当然でござろう?安心召され、同じ人間相手に問答無用で斬りかかるような者はそうそうござらん。先方も拙者の手紙さえあれば事情は分かってくれるはずにござる」

 

 まぁ、言われてみれば当然だな。人間だから街に入れる俺が薬を調達に行く。

 目を覚まさないミリアさんと戦闘力ゼロのアリアを守るために権兵衛さんは残る。うん、当たり前の判断すぎるね。

 そんなわけで、俺の初めてのお使い異世界バージョンが始まったのだ。

 

 

  ◆

 

 

 リベタス君はしっかりとお使いできるのかな~?

 

「おのれ、貴様も賊の仲間か!ソヤツを庇うのであれば容赦はせぬ!」

 

 おやおや~?早速トラブルのようだね。大丈夫かな~?

 

「ちょっと落ち着いて話を…!」

「問答無用!」

 

 権兵衛さーん!?何か聞いてた話と違うんですがぁ!?

 何かサムライさんの集団が俺に斬りかかろうとしていますよぉ!?

 

 ……どうしてこうなったんだっけ?

 はい、回想シーン入りまーす。なお、現実逃避とも言う。

 

 

  ◆

 

 

 俺は、権兵衛さんから貰った地図を頼りに人間の街を歩いていた。

 そして目的の場所へと向かう途中、歌声が聞こえて足を止めたんだ。

 若い女性の歌声だった。

 

「貴方と手を握り合えるなら。どれだけ幸せな事だろう」

 

 透き通るような美しさで、それでいて強く訴えかけているような。

 可憐なのに強く、綺麗なのに哀しい。そんな歌声だった。

 

「でも世界はそれを許さなくて。女神は決して微笑んではくれなくて」

 

 俺は魔王様の味方をすると決めたが、別に人間の敵になったつもりはない。ないのだが、それでも人間から見れば俺は間違いなく裏切り者ってやつなんだろう。

 

「友は優しく止めろと言うのだろう。親は優しく叱ってくれるのだろう」

 

 だから、人間の街に長居するつもりはなかったんだ。早くお使いを済ませて権兵衛さんの庵に帰ろうと思っていたのに。

 

「それでも私は――」

 

 それなのに、その歌を聞いて足が動かなくなった。

 

「けれど、君は言うんだ」

「私のために」

「私と離れるって」

「そして私も――」

 

 その理由は、きっと。

 

「世界がもう少しだけ優しければ」

 

 きっと、この歌が。

 

「姿形は違えども」

「その爪が私を切り裂くことはないと」

「瞳の色が違えども」

「その紅が私を焼いてしまうことはないと」

「信じられる強さがあれば」

 

 俺が異世界に来てからずっと抱いていた何かに。

 

「姿形が違うから」

「その翼で私を空へ連れて行ってくれるのだと」

「瞳の色が違うから」

「その紅で私の恋を燃え上がらせるのだと」

「伝えられる弱さがあれば」

 

 モヤモヤとして曖昧で、良く分からなかった何かに。

 明確な形を与えていくような、そんな風に感じたんだ。

 

「溢れる涙の意味はきっと――」

 

 気付けば、俺は泣いていた。

 往来でみっともないと理解しているのに。

 涙があふれて止まらなかった。

 あの日、陽の沈みゆく海岸で。自らの死を語った魔王様の、救われたような微笑みが頭によぎるのだ。

 

「おい、アレが噂の…」

「あぁ、本当に世間知らずなんだな。あそこまでお花畑の歌を歌えるなんてよ。ある意味で才能だよ」

「ははっ、違いねぇ」

 

 なぜか周囲の人々の反応は良いとは言えない。それどころか、侮蔑や嘲笑などが大半で、一部は憎悪や怒りのような感情さえ向けているようだった。

 泣いているのなんて俺だけで、やがて人々は俺の事を指さしてクスクスと笑うようにさえなって。

 とてもとても場違いな気がしてしまって。俺は急いでその場を走り去ったのだ。

 その直前、美しい着物に身を包んだ歌姫と目が合ったような気がした。

 彼女は何故かとても驚いたような顔をしていたけれど。

 その理由が明らかになることもなく、俺はただ逃げるようにして走り去ったんだ。

 

 その後は、少し急ぎ足になっていたと思う。

 歌を聞いていて時間を食ってしまったから、ちょっと急ごうと思って。

 それで、地図に示された通路ではないけど、どう考えても近道できそうな薄暗い路地があったから通ることにして、それで…。

 

「助けて、ください…」

 

 路地裏でボロボロの忍者さん…女性だったから、くノ一さんかな。ともかく、その忍者さんに助けを求められて、まぁ、事情は分からないけど普通に助けるべきだと思ったんだよな。

 それで、俺が向かうのはお医者さんの所だって話だったし、連れて行こうと思って背負いながら進み始めたわけだ。

 

 

  ◆

 

 

 はい、回想終わり!

 なるほどなるほど、この忍者さんが「賊」であって、それを必死の形相で背負いながら逃げようとしている…これは仲間と思われても不思議はないな!しかも俺が着てるのって黒ずくめの服だし!ちょっと忍者っぽいかもしれないね!?

 だから話も通じない!

 権兵衛さんもアリアも庵に居て助けに来れるはずがない!

 これは万事休す!絶体絶命!

 街中で使うようなモノではないけれど、超絶奥義目潰しの出番かと杖を構える。

 まぁ、目潰ししたところで人一人抱えたまま遠くまで逃げるほどの時間は稼げないだろうけど…大通りに出て人ごみに紛れたりすれば可能性はあるのだろうか?

 絶望的な勝負に出ようと考えていて、そして。

 

「お止めなさい!その二人に危害を加えてはなりません!私「ソラネ」が、この国の姫として命じます!今すぐ刀を収めなさい!」

 

 先程の歌姫さんが何故か自分で「姫」を名乗って現れた。

 どう考えても「歌姫」の「姫」ではなさそうなんだけど…?助かったと思っていいんだろうか?

 

 




ソラネ:「空音」。「空」は太陽とも月とも共にある。

〈あとがき〉※読まなくても大丈夫です。

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新しい短編を投稿しました。
『転生したら巨大武闘大会開いて繰り広げられる人間ドラマを堪能したい!』
「ゲーム知識」と直接の関係はありませんが、世界観が繋がっているところもある作品です。具体的には物語後半でマーレイが出てきたりする予定。
需要があれば連載化しようと思っている作品ですので、もしよろしければ読んでいただけると幸いです。
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