ゲーム知識がまるで役に立たないのだけれど?   作:夢泉

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続きました。3話目です。


異世界はCVまで対応してはくれないらしい

 …というわけで。

 魔王様からのお招き(強制)に応じ、やってきました魔王城。

 

 いろいろあるんだけど、先ず言いたい。やっぱ城ってスゲーわ。大きいし、綺麗だし、圧倒されたよね(語彙力)。奴隷にされるかもしれないとか空飛んでるの怖いとか抱えてた不安が一瞬でどっか消えてったよ。

 確かに、王道RPG世界らしく、これぞ魔王城って感じの黒い城ではあるんよ。基本的な構造もゲームと同じで西洋風。ただゲームの最終決戦直前に出てきた一枚絵とはだいぶ様子が違う。

 この一枚絵は魔王城とそれを見据える勇者一行を描いたものだったのだが、空は真っ黒な雲で覆われ、稲光が走り、謎の黒い靄とかあって超絶不気味だった。しかし、今の俺の目の前にあるのは、抜けるような青空の中で陽光を受けて黒光りする漆黒の城という何とも美しい光景である。ゲームのあの恐ろしい様子はあくまでも演出であったということか。或いは、今が昼だから美しいだけで夜や悪天候の時はあの一枚絵みたいになるのかもしれない。

 様式はまるで異なるけれど、仮に黒いタージ・マハルが出来てたらこんな感じだったんじゃないかと思う。蒼穹に漆黒の城、流石は魔王様、良い趣味してる!

 

 …そんな感じで賛辞を思いつくまま垂れ流していたら、魔王様は「石の塊など褒められても嬉しくはない」とか仰ってそっぽを向いてしまわれた。けど、耳が赤くなっていたから嬉しかったんだろうね。かわいい。

 

 で、だ。次に考えねばならんのは俺の待遇なわけだが…。

 

 どうやら、幸運なことに奴隷コースではないっぽい?むしろ、超絶待遇が良いまである。魔王様直々の案内で城の隅々まで紹介されているってのは、信長様が安土城の案内してくれるみたいなもんよ?これがVIP待遇でなくて何だと言うのか。

 魔王様の自室まで紹介された時には本気で焦った。お付きの魔族の方とか滅茶苦茶止めてたのに、魔王様が無理やり強行した次第である。女の子の部屋とか初めてで緊張しすぎて死ぬかと思った。

 まぁ、流石に寝室ではなかったよ。執務室っていうのかな?仕事用の机とか本棚とか最低限の物がある部屋だった。とはいえ、統治者の仕事部屋らしく優美さと気品が溢れていて、ここで作業したら捗るだろうことは間違いなかった。

 執務室を紹介する魔王様の目がどことなく何かを求めているようであったので、とりあえず城の時と同じく思いつくままの感想を言っておいた。やっぱり魔王様は顔を逸らしてしまわれたが、真っ白な耳は赤く染まっておられた。かわいい。

 

 ただ、凄い好待遇であるのは間違いないんだけれど、歓迎はされていないっぽいんだよな。

 なんていうのかな、既に完成された仲良し幼馴染グループに新参者が連れて来られた感じって表現すればいいのだろうか?魔王様以外の魔族の方々から視線の圧が凄いんだわ。「何お嬢と仲良くなってんのじゃワレぇ」的な圧が全方向から来てるのよ。

 うーん、これ魔王様と離れたらヤバいのでは?多分、今の俺が五体満足でいられるのは魔王様がずっと近くにいるからな気がする。だって魔族の方々、魔王様の目が離れた瞬間に凄い形相で睨んでくるもの。魔王様は俺の事なんて説明したの?違うんです、俺は誘拐されただけの被害者なんです。

 

 そんなこんなで好待遇にもかかわらず心が休まらない時間を過ごすこと暫し。ついに恐れていた事態がやってきた。魔王様が俺の歓迎会の準備をさせるのだとどこかへ行ってしまわれたのだ。すっごい嬉しいけれど、今は離れないで欲しかった。

 

 現在、俺がいる部屋は空気が凍り付いたような状態にある。魔王様が他の魔族の方とも仲良くなれるようにと、それなりの大きさの部屋に何名かの魔族の方々と押し込んだ結果がこれだ。初対面の人たち(敵意あり)と仲良くなるとか陰キャの俺には無理な相談です…。王は陰キャの心がわからない…。

 というか、魔族の方々の敵意が強すぎてどんな陽キャでも攻略不可能になっている気がする。数時間後に足にコンクリ付けられて東京湾へ沈められててもなにも不思議ではない雰囲気。東京湾無いけど。

 

 魔族の皆さんも様子を見ているようだったが、ややあって一人が前へと出てくる。当然のように敵意はMAXである。

 所謂リザードマンと呼ばれる種族のようだ。筋骨隆々で3メートルはある蜥蜴が鎧を着て二足歩行をしているのだから違和感が凄い。おそらく魔王を護る四天王の1人だった気がする。いや、リザードマンの見分けとかつかないけれど、ゲームで見覚えのある超絶強力な槍を片手に持ってるから間違いないと思う。人と話そうって時に武器持ち出してんじゃないよ!いつでも斬れる体制じゃないですかヤダー!

 

 どうする?どうすれば切り抜けられる?

 正直に話す?異世界から来て魔王様に拉致られましたって?怪しすぎる。というか、俺は身元不明無一文の不審者でしかないじゃん、無理じゃん。

 じゃあ、魔王様を大声で呼ぶ?これも無理っぽいな。だって壁が厚すぎるもん。

 俺の頭はどうにかしてここを乗り切れないかと、人生最大級に思考をめぐらしていく。なにか、なにかあるはずだ…!

 

 しかし、その思考は次の瞬間にはたった一つの驚愕に塗りつぶされたのであった。

 

「我は魔王様を護る四天王が1人、「武」のドラゴネスである。応えよ人間。貴様は一体何者であるか」

 

 なぜだ。

 何故だ。

 何故にその見た目で声変わり前の可愛い少年ボイスなんです?

 いや、アンタの声は超絶渋いダンディ声の声優が担当していただろうが!?

 でもそうか、ゲームの世界だからって声まで一緒になるわけじゃないのね!喉の辺りの構造が違うんだから当たり前なのか?あくまでも声優さんは俺の世界の方の人たちだもんね。その人たちと喉の構造が完全に一致していないと同じ声にはならないもんな。

 それにしても違和感が凄い。凄すぎる。

 

 そんな驚愕に襲われてしまったせいで、俺は何を話すべきか思考が纏まらずに沈黙してしまった。当然、相手は訝しむ。

 

「何を黙っている。まさか、言葉が通じていないわけではあるまい?先程、魔王様と会話していたことは知っている。その無礼な態度、相応の理由があってのことなのであろうな?」

 

 槍を持つ手に力を込めながら四天王さんは(ショタっ子ボイスで)言う。なるほど、相応の理由がなきゃ斬り捨てるってわけですね!

 どうにかしてこの事態を切り抜けねばならない。ならないのだが、俺の思考は彼の声に対する驚愕で染まり切っていた。そのせいだろう、思考が纏まらないまま馬鹿正直に口走ってしまったのは。

 

「も、申し訳ありません。そ、その…声が…貴方の声があまりにも凄かったので」

 

 ホント凄かった。違和感が凄かった。

 けど、これどう考えても無礼打待ったなしだよね。四天王という地位ある方(槍持ってる)の声を馬鹿にしたわけだからさ。もう終わったわ。ごめん、魔王様歓迎回出れそうもねえわ。

 

「…ほう?貴様、我の声を褒め称えるとはなかなか見どころがあるではないか。四天王からの問いかけに窮するなど斬り捨てられて当然の無礼ではある。しかし、この我の声に心奪われてしまうというのも無理はないことだ。良い、今回は見逃してやろう」

 

 もしかしなくても助かった、のか…?

 

「ふむ。なかなか面白い人間よな。魔王様が気に入られたのも解るというものだ。本来、人間なぞこの城に入れてはならぬ存在ではあるが…。皆の者、「武」の四天王の名において、この者を魔王様の客人として最高待遇で扱うこととする」

 

 彼は部屋にいた他の魔族の方へ視線を向けつつ、とても威厳ある感じで言った。なお、やっぱりその声は癒しのショタっ子ボイスであった。

 




感想、評価、お気に入りなどありがとうございます!想像以上の高評価を頂けて感無量です。ゆっくりにはなりますが、今後も続きを投稿していきたいと思います。

次回は聖女ちゃん視点を予定しております。



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