空色ギターを奏でる彼女は僕の世界を変えていく 作:味なしコンフレーク
Ep.00
若葉が香る爽やかな5月のある日。
僕、近衛深春は、数週間お世話になった病院を退院することになった。
「おめでとう」
主治医の先生が僕に握手を求めた。その顔は何故か苦笑い。
「僕の顔に何かついています?」
「・・・いや、だってさ。君、左腕吹き飛んでいたんだよ?義手を使ったリハビリとか考えても最低2ヶ月だよ?1ヶ月も経たずに退院とか普通ありえないから」
「あぁ〜・・・それは、まぁ・・・」
僕の退院が早まったのは、烏合衆の医療魔術も受けていたからなのだが、先生は魔術の存在を知らないので驚くのも無理はないだろう。
「そもそも運ばれてきた時点で折れた骨が内臓を傷つけまくっていたんだよ!?出血多量で死んでいるって普通!どうなっているの、君の身体?」
「医者が患者に言うセリフじゃないと思うんですけど・・・」
「それくらいの奇跡だったってことだよ。せっかく助かった命だから、大事にしなさい」
「・・・そうします」
(まぁ・・・約束はできないけどね)
Ep.01
(死んでいた、か・・・)
帰り道をのんびりと歩きながら、僕はぼんやりと考え込む。
確かにあの時、僕は死んでいてもおかしくなかった。格上の魔術師を相手にほぼ無策で挑んだのだから。
(でも、これで終わりじゃない。僕はこれからも人助けを続けるつもりなんだ。当然、魂狩りより強い魔術師と戦う時が来るかもしれない。今のままじゃダメだ。魔眼に頼るだけじゃなくて、違う側面でのパワーアップを・・・)
ドン!
「っと・・・?」
考え込むと周りが見えなくなってしまうのは僕の悪い癖だ。どうやら、誰かにぶつかってしまったようだ。
「ご、ごめんなさい。前、見てなくて・・・っ!?」
「あ、アンタ・・・」
しかも、そう言う時に限って運も悪い。ぶつかった相手は、美竹 蘭。お友達に飲み物ぶっかけて僕への憎悪をマシマシにした相手だ。
「・・・誰かと思えば、美竹さんじゃあないですか。何ですか?恨むだけじゃあ飽き足らず、今度はわざとぶつかって金取ろうとか考えているわけ?言っておくけど、僕は「もうそういうの良いから」・・・え?」
僕の言葉を遮った美竹は僕に頭を下げた。
「アンタが大怪我して病院に運ばれた時に、つぐみからぜんぶ聞いたの。知らなかったとはいえ、酷いことを言ったから、ちゃんと謝りたくて・・・今までごめん」
「・・・謝らなくて良いよ。君がそれだけ、幼馴染を大事にしているってことだろ?」
羽沢が黙っていれば、美竹は辛い思いをしなくて済んでいたし、僕は人助けをする人間として、美竹の笑顔を守れていた。Win-Winの関係だったのだ。どっちが悪いとか良いとかはないはずなのだが・・・?
「私が謝りたいから謝っただけ。用事もそれだけだから・・・またね。深春」
そう言って美竹は再び歩き出し、雑踏に紛れて見えなくなった。
「・・・呼び捨てかよ」
Ep.02
「動画、ですか?」
美竹と仲直りした数十分後、僕は旭湯に来ていた。六花に会いたかったからというのが一番の理由だが、バンドメンバー探しの話し合いも兼ねている。
「ギター弾いて、動画にあげるんだよ。『バンドメンバー募集中』って」
「じゃあ撮影機材を用意しないとですね。スタジオも押さえて・・・」
「それについては心配いらないよ」
「心配いらないって・・・?」
「烏合衆に全部手配してもらうことになった」
「ええぇ〜!?烏合衆って政府直属の組織なんですよね?だ、大丈夫なんですか!?」
「あぁ。庵堂に頼んだら即OKしてくれたよ」
「ウィノラさん、どえれぇ人やぁ・・・」
「まぁ、魂狩りの件で、怖い目にあわせてしまった六花に負い目を感じているんだろう。ありがたく好意を受け取っておけばいいさ。それで庵堂も少しは気が軽くなるんだろうからさ」
「そう、ですね・・・じゃあ、お言葉に甘えてしまいます」
そう言って六花は、僕の隣に座り直して肩にもたれかかって来た。
「あの、六花サン?」
「深春さん、今、怖い顔していましたよ?」
「え、ホント?」
「はい。だから先回りして言わせてもらいますけど、深春さんも私に負い目を感じる必要はありませんよ?」
「・・・六花って僕の眼より良く視えているんだね。何だか頼もしいよ」
「深春さん限定、ですけどね」
くすくすと笑う彼女。その仕草がすごく可愛らしい。
・・・面と向かっては、まだ言えないけれど。
「・・・どうかな。僕の顔が分かりやすいという可能性も・・・」
「ないとは言い切れませんね」
「言い切れないんかーいッ!!」