空色ギターを奏でる彼女は僕の世界を変えていく 作:味なしコンフレーク
「自己紹介?」
チュチュのマンションにて今日も雑務をしながら六花が楽しそうにギターをかき鳴らしているのを眺めていると、ふいにビデオカメラを向けられた。RASのキーボード担当で可愛いものが大好きな鳰原 令王那だ。
「はい!ミーさんもRASにとってはもう大事なメンバーですから」
当初はスカウトを受けた六花のマネージャーとしてRASことRAISE A SUILENのバンド活動に参加することになっていた僕だが、魔術の存在がプロデューサー兼DJ担当であるチュチュこと珠手ちゆにバレてしまってからは魔術を使った雑用諸々を引き受けている。
「メンバーって言っても、やっていることは楽器のメンテナンスとか送迎とか、やろうと思えば魔術なんか使わなくても出来るようなことばっかりだしなぁ・・・使う予定とかないんでしょ?やる意味ある?」
「やりましょうよぉ!『まんまるお山に彩りを!』みたいなやつしましょうよぉ!」
「それだけは絶対ヤダ」
この子、まだ僕のことをパスパレファンだと勘違いしているんじゃないだろうな?
まぁ、弓手と良い勝負をするほどのパスパレガチ勢な彼女だが、察しがいい子だから、僕がそこまでパスパレに興味がないことには気づいているのかも知れない・・・気づいていたとして沼に引きずり込もうとしているのなら、弓手以上に厄介な相手になりそうだが。
「・・・分かったよ。僕も鳰原には世話になっているし、そういうことで良いならお安い御用だ」
「わぁい!ありがとうございます!」
『・・・えーっと、近衛深春です。RASで雑用全般やっています。
日野芽学園大学の文学部1年生・・・メンバーの中では最年長ですね。
ステージに立つことはありませんが、RASが最高のパフォーマンスをできるように
やれることはなんでもやるつもりです。よろしくお願いします。
・・・え?まだ何か話せって?もう言う事ないんだけど
・・・
・・・・・・この間、ファンだとか言っていた男がロックの手を握っていたのを見かけた・・・アイドルじゃないんだから気安く話しかけんなって思ったよ。
僕は喧嘩とか強くないし、臆病だし、痛いのは嫌いだけど・・・彼女だけは渡せない。
どうせ自分なんかって思っていた。この先ずっと、誰にも必要とされない、別にいてもいなくても大丈夫みたいな生き方をしていくんだって思っていたんだ。
でも彼女だけは違った。楽しいから。一緒にいたいから、いる。それだけで十分だって言ってくれた。
大切な女の子だ。
命に変えても守りたい人だ。
だから、どんなに弱い僕でも・・・六花だけは守り通してみせるつもりだ』
「これだけ喋れば尺としては十分だろ?もういいよな、鳰原・・・鳰原?」
自己紹介なんて滅多にやらないから少しだけ緊張したけど、やってみたら意外と楽しかったなぁなんて思いながら撮影をしている鳰原に声をかけたが・・・何やら様子が変だ。
「・・・///」
顔を少し赤くしながら居心地が悪そうにモジモジしている。
「あのー・・・鳰原?何かおかしなところでもあったか?」
「・・・あ、いえいえ!大変カッコよくて、なんというか、私までドキドキしましたけど・・・もうこれ自己紹介になってなくないです?」
「なんで?」
僕のことを語るというのなら、自分が今まで何を考えながら生きてきたのか、そして誰が僕の考えを変えてくれたのかを語るべきだと思ったから、六花との出会いを少し語っただけなのだが、一体それのどこがいけなかったのだろうか?
その時、スタジオのブースからちびっこプロデューサーの怒号が飛んできた。
『ミハル!アンタのせいでロックが顔を真っ赤にしてぶっ倒れちゃったわ!これじゃあ練習が再開出来ないじゃない、なんとかして!』