空色ギターを奏でる彼女は僕の世界を変えていく 作:味なしコンフレーク
お知らせのついでに今回は六花視点での第1章の後日談を書きました。読んで頂けたら嬉しいです^^
深春さんが目を覚ましてから数日後。
「ふっ・・・!」
リハビリでダンベルを動かしているのは本物と寸分違わない義手の左腕。
失った腕の代わりになる義手をウィノラさんに作ってもらえるようにお願いしたと聞いていたが、まるで本物の腕を動かしているみたいだ。
「どうかな?違和感とかある?」
工具箱を片付けた庵堂は僕に義手の調子を尋ねた。
「いや、全く・・・庵堂がこれを作ったのか?」
「いーや、作ったのは烏合衆お抱えの技師さ」
「でも、取り付けたりは出来るんだな」
「ウチも色々とあるんだよ。それに、今は他に語らなければいけないことがあるだろう・・・ね、六花チャン?」
「え、私ですか!?」
「君以外に誰がいる?」
突然、話を振られてビックリしている私に少し呆れた様子のウィノラさん。
「深春クンの助けになりたいのなら、きみは私たち『魔術師』の世界を知る必要がある。それに君には、大規模な炉心が存在する。いつまた狙われるか分からないんだから、知識として魔術を理解しておくべきだ」
そう、『魔術』。ゲームやアニメの世界だけだと思われていたものが実在するのだと深春さんから聞かされた時は本当に驚いた。でも、それは私には関係のない話でお友達のあこちゃんが知ったら大喜びしそうだなぁ、くらいにしか思っていなかったのだが・・・。
「魔術といっても、家系や派閥によって解釈は異なる・・・さて、どこから話したものか」
「そんな難しく考えなくても、基礎的な事だけで良いんじゃないか?炉心があっても、氷川みたいに使いこなせるかどうかは分からないんだから」
「あのー・・・さっきから出てくる『炉心』ってなんですか?」
「まずはそこからだな・・・僕たち魔術を使う人間には『魔力炉心』という器官があって、そこで生成される魔力を使うんだ。魔術師の価値は魔力を受け入れる魔力炉心の大きさで決まるんだ」
「???」
「つまりゲームでの
深春先輩の説明が理解できず疑問符を浮かべる私のためにウィノラさんが分かりやすく教えてくれた。
「そ、そんなものを私が持っていたなんて・・・それもたくさん」
その時、病室のドアが開いて看護婦が入ってきた。
「近衛さん、検査の時間ですよ」
「あ、はい」
「じゃあ私たちはお暇しよう」
「はい・・・深春さん、また明日」
「うん」
「君は本当に彼のそばにいるつもりか?」
家まで送るというウィノラさんの好意に甘えて、彼女が運転する車に揺られながら窓の外を眺めていると、不意に話を振られた。
「・・・そのつもりです」
「私たちのいる世界は君が思っている以上に混沌だ。強い者だけが正義だとされる場所だ・・・まともな価値観では心がもたないぞ」
「何度も同じことを説明するつもりはありません」
遠回しに手を引けと言われた気がしたけれど、私の覚悟は変わらない。
「近衛深春とは長い付き合いがあるわけではないのだろう?彼が助けた人間は数え切れないほどいる。君が特別じゃないんだ。なのに、どうしてそこまで彼の側にいることにこだわる?」
「?・・・誰かの側にいることに理由が必要なんですか?」
「は・・・?」
「別に私は自分が特別だなんて思ってはいません。それは深春さんも同じです。どんなにすごい力を持っていても、あの人は本当は『普通でありたい』と願っている。そうあれないのは、彼が不器用だけど優しい人だからだと私は思います」
ちょうど旭湯に到着したので私は「ありがとうございました」と言って車を降りた。
「六花チャンは強いんだな」
「強いのでしょうか?」
「そう思うよ。どうやら、余計なお節介だった」
「君は、とっくにまともじゃなかったんだな」