Re+verse~英雄に成りたかった僕と、お姫様に成りたかった幼馴染みとの詩~ 作:霧夢龍人
「いい天気だなぁ」
なんと言う事もない、柔らかな風が頬を撫でる昼下がり。
村の皆がてきぱきと働く中で、僕だけは鬱蒼と生い茂る芝生に寝転がりながら蒼天を見上げている。
───なんだろう。少しメランコリックな気分だ。
今年で八歳になる僕になる僕の憂鬱なんか、周りにいる大人達に比べたら本当にどうでもいいことなのかもしれない。
けど、どうでもよくても言わせて欲しい。
僕の幼馴染み・・・少し出来すぎじゃない?と。
いやいや、八歳から見た出来すぎなんてたかが知れてるよ、なんて僕がこの事を相談した時にそう返した父さんなんかは、じゃあ試しに剣で打ち合いしてみたら?と僕が言うと、本当に僕の幼馴染みと剣で打ち合い始めた。
そして数分後──大人としての面目が立たない程にぼこぼこにされてた。
今度は数学の教師だったお母さんにこの事を相談してみた。
あんた女の子相手に嫉妬してんの?はぁ・・・それでも男なの?と、呆れ混じれにそう言われたから、じゃあなんか問題出してあげてよって僕が言うと、そこまで言うなら・・・となんか難しそうな問題を幼馴染みに出していた。
数分後、数学教師として呆気ない姿を晒す母さんがそこにいた。なんでも出す問題全て、秒速且つ暗算で正確に解いたという。
この経験から、やっぱり僕の幼馴染みは凄いんだと改めて思った。
大体、僕の幼馴染みと喧嘩して勝った奴なんて見たことないし、学校(小さな村のだけど)でも百点以外殆ど見たことない。
むしろ、百点じゃなかったら体調不良を疑ってしまう。
おまけに可愛い。
それはもう可愛い。
父さんに、お前は将来イケメンに成りそうだなっ!て褒められた僕が言うんだから間違いない。
「可愛くて優し・・・くはないけど、勉強も出来て強くて・・・あれ、やっぱり僕の幼馴染み最強じゃん」
「そ、そんな・・・照れちゃうよ」
僕の独り言に対して、思わずと言った様に言葉を溢した──銀髪の女の子。
というか、全く気付かなかったから女子みたいな声をあげてしまった。
「うわぁっ!?い、いつからそこにいたのさ!?」
「えっ?・・・いい天気だなぁ、の辺りかな?」
「一番最初じゃないかっ!!見てたなら言ってくれよ!」
「だ、だってぇ・・・気持ち良さそうに寝転がってたからぁ・・・」
そう、思わずその銀髪を撫で回したくなる可愛さを持ったこの子が───僕の幼馴染みである、ルラ=セルアール。
太陽を反射する神々しい銀髪に、可愛らしさを引き立たせるくりっとした蒼い目。そして、何処に父さんをぼこぼこに打ち負かす力があるのかわからない白磁のような柔腕と、耳を溶かすような優しい声を持つのが彼女だ──って、なんか変態みたいだな僕。
でも、冴えない顔の父さんお墨付きである僕が、将来美女になるだろうな・・・って思うくらいには、果てしない顔面偏差値をしている。
「ぐっ・・・わ、悪かったよ。良い天気だからさ?少し黄昏れてたというか・・・」
母さんにいいわたされた薪割りをサボって、こうして寝転がっている理由を必死に探す僕。
つまり彼女は、たった一言で僕の生殺与奪の権を握られてしまったのだ。
これだけで彼女がどれだけ恐ろしいか分かるだろう・・・僕は彼女に勝てないのだ。
「んもぅ・・・そんなんじゃ
くっ、流石はルラ、僕の痛いところを的確に突いてくる!
「な、何年前の話だよ!」
「えー、私結構本気にしてたのにぃ・・・迎えに来てくれるんでしょ?」
ニヤニヤと嫌らしい笑みでそう告げるルラは、ムカつくくらい可愛らしかった。
彼女が言う迎えに来てくれる、というのは、思い出すのも憚れる───いわば、僕のちょっとした黒歴史だ。
三年前の当時読んでいた、勇者フィーフルの成り上がりという絵本に、僕はそれはもうめちゃくちゃ影響された。
笑い方も、勇者フィーフルの真似をしてふははは!だったし、村中の困ってる人達を助けようとお手伝いをしていた。
そして───だ。
なんとあろうことに僕は、当時好きだったルラに対してこう言ったのだ。
英雄になったら、僕は君をお姫様として迎えに来るね、と。
当然それを聞いたルラは、各々の両親に言い触らし、最終的に僕の両親にも知られる結果となってしまった。
「・・・し、知らないっ!」
「あっ!もーう照れないでよぉ!!」
フィレ=ルクソール、八歳。
訂正する。
やっぱり僕の幼馴染みは意地悪で可愛くて出来すぎだと思う。