オリーブドラブさん3次創作第二弾
機動戦士ガンダム 烈火のジャブロー
番外話

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タイトルの読みは「このこみどりに、そまれよきりゅう」


この濃緑に、染まれよ機竜

『RX-78 2 ガンダム』この名は連邦軍において、かなり有名とされている

実際のところ、ガンダムはこの一年戦争における連邦軍の力の象徴であり、反撃の狼煙であり、そして現状も戦果を上げ続けている英雄だ。

 

 もっと細かく言うのなら『RX-ナンバーシリーズ』の開発によるモビルスーツの製造、そしてその量産化……最初に圧倒的高性能を持つ究極の機体をコスト度外視で一機作る、そしてそれをゲリラの如く暴れさせつつ、機体に搭載された自己学習機能でデータを収集し、性能を制限してコストを下げた量産機にフィードバックするという計画、『V計画』の最優の機体として扱われているからだ。

 

「……こんなファイルいるかなぁ」

 

 Gシリーズの機体をまとめたデータに添付されていた情報の羅列をまとめて読み返しながら、軍服を着た青年『シンジ・ミュラー』はため息をついた。

 

「あら、新機体で明日初飛行の割には随分と強気な発言ね?自分の乗る機体の基本情報も調べなくて良いの?」「それとこれは話が違うじゃないですか……俺は戦闘機乗り(ファイター)で、格闘家(ファイター)じゃない、それにモビルスーツは俺にとっては専門外ですよ」

 

 コンソールから視線を離して

後ろに立っていた女性に反駁するシンジだが、それも虚しいこと、すぐに正論に潰されてしまう

 

「軍部の命令なんだからしょうがないのよ

今の空戦部隊(ファルコン)で一番モビルスーツ適性が高いのは貴方だわ、シンジ」

「サクラ大尉こそ、模擬機体のシュミレーターでA-4判定だったじゃないですか

あんだけ乗れてればいっそそっちに注力してくれても良いのに」

「……バカねぇ、シンジ?

A-4判定だからなんとかっていうなら、貴方自身A-5判定なんだからね?

それにあくまで地上での動作シュミレーション、実機使ってるわけでも無ければ戦闘機動だって取ってないのよ?そんなので当てにならないわ」

 

 ああ言えばこう言う、と言わんばかりに互いに言い訳をこねる女性は『Vermilian・Sakura(サクラ・ヴァーミリアン)』階級は大尉

身長170と長身ではあるが、それ以上に目立つのはB95のHカップという巨乳の方だ。

 

「……本当に事故らないと良いんですが」

「事故っても生きてりゃなんとか出来るわよ、千羽鶴くらいは折ってあげるわ

……ほら、機種転換訓練が終わったらすぐMSの戦術マニュアルとかも読まないといけないのよ?今日はもう寝なさい!」

 

「……了解(Yes、mam)

 

 研究所に据え付けられているコンソールの席を立ち、すっかり強張ってしまった体の様子を見ながら、シンジは脚を気遣いつつ、自分のベッドに向かうのだった。

 

 

「これよりFF-X5を用いたコアファイターへの機種転換訓練を行う、用意はいいな!」

「はい!」

 

「よし!搭乗!」

「了解!」

 

 装備を確認した後、全て暗記したファイルを机に残したままコアファイターに乗り込む

そしてエンジンを起動し……。

 

「コアファイター、発進!」

「コアファイター、シンジ 発進します!」

 

 定型の宣言の後、操縦桿を押し込む……モビルスーツ用の操縦桿と空戦用の操縦桿はそれぞれ別であるため、間違えないように気をつけなければならない。

 

「よし、安定した、このまま……」

 

「シンジ、加速と旋回の具合を確認しろ」

「了解!」

 

 飛行時間は約一時間、通常の戦闘機であるなら短い時間だが、コアファイターは本来ならモビルスーツのコックピットであり、それ以上でもそれ以下でもないはずなのだが何故か大気圏での自力飛行が可能な脱出ポッドとして計画され、何故か戦闘機として分類されているという都合上、戦闘機としてあらゆる部分が中途半端なのだ。

 

「シンジ機、A滑走路に着陸せよ」

「了解」

 

 誘導に従い旋回しながら機首を下げ、下へと降りていき、そして着陸の寸前に機首を上向け、機体下部ランディングギアを滑走路の路面に当てる

キュキュキュ……という音と共に減速し、停止したコアファイターの風防を上げたシンジは大声で補給を要求した。

 

 

「……というのが3日前なはずなんだが」

 

「ガンダムへの空中換装訓練、これより実施します、ガンペリー、パーツ投下用意完了」

「コアファイター変形準備完了、相対速度合わせ!」

 

 すーっとお互いの速度を合わせながらボヤくシンジ。

 

「相対速度合わせ、よし、パーツ投下!」

「了解、マーカー確認!ドッキング・GO!」

 

 残念ながらこの後も彼の訓練は山のように増え、川のように続くことになり、気づいた時にはMS戦技研の尉官2人を相手に挟撃されてもまるで危なげなく両方撃墜できるほどになって単独での戦闘に秀でる特殊部隊に編入されetc……とさまざまな経験を経て、一年戦争の半ばにはすでに士官学校で教鞭をとることになっているのだった

 


 

 

「こちらドラゴン1、偵察任務中、ポイントd-4にてザクⅡ(陸上型)2機、戦闘機(ドップ)2機、トレーラー1台を確認

交戦許可を要請」

 

「こちらケイジ、了解、交戦を許可する」

「オーケー……行くぞッ!」

 

 たかが戦闘機、コアファイターの一機で何ができるのか

そんな質問は無意味である

()()()()()()()のだから

コアファイターは宇宙、地上、高空全てに対応する戦闘機、しかしその性能は貧弱だ

ではもし、その性能を少しだけ伸ばせたら?

低性能なバルカンを粒子砲に、ミサイルを多連装型に交換し、積載重量を水増しし

増槽を搭載しスラスターを追加したら?

器用貧乏(マルチロール)は、真の万能(オールラウンド)へと躍進する

 

「コアブースター、お前の力を見せてくれ」

 

 シンジは高空へと一気に駆け上り

遥か上空から急降下攻撃を狙った

撃つのはザクⅡ、指揮官機だ

使う武装はメガ粒子砲、流石に戦艦ほどではないが、ガンキャノンの標準装備である狙撃用のビームライフルに準ずる性能を持っている。

 

「オラッ!発射!」

 

 ピンク色の粒子砲はものの見事にザクの胴体を貫き、そのまま擱座させる

爆発はしない、無論ビームに貫かれた内部コックピットは御釈迦様の特等席と化したこと請け合いであるが、機体のジェネーターには傷をつけずに枢要部のみを撃ち抜くことで停止させたのだ。

 

 唐突に倒れ込んだまま起き上がらなくなったザクの後続についていたもう一機のザク

流石に練度不足と謗られるような無様を晒す事はなく、即座に警戒態勢に入って、しかし遅い。

 

 間髪開けずに発射された次弾が今度は腰部を吹き飛ばし、上半身と下半身を泣き別れさせて

何があったのかも理解しないうちに、ザクは機能を失った鉄屑と一歩も動くこと能わない廃棄物と化した

 

「早々に脱出するんだな」

 

 シンジは短距離開放回線で無線に呼びかけながら旋回し、今度は獰猛に笑う

今シンジが捉えているのはモビルスーツよりはるかに食い出がある敵、そう戦闘機だ。

 

「ジオンの戦闘機……!」

 

 識別名称はドップ、TINコッド等の地上用戦闘機と戦闘するためにジオンが作った戦闘機だが、明らかに翼やドーム状のコックピットの形状はおかしく、理解し難い

それでもかなりの高速を出してくるのだから、まさに

「おもしろいっ!」

 

 いっぱいまで吹かしたスラスターで急加速、降下から上昇に転じて、同時に相手を挑発する

“ついてこれるか?”と

 

【貴様が叔父上をやったのかぁぁっ!?】

 

 開放回線のままだった通信機から、おそらくはドップに乗っているのだろうジオン兵の声が流れる

 

「若いな、それに女?」

【黙れ!貴様も私を馬鹿にするのか!

女だから!幼いから戦えないと!】

 

「いや?俺は平等に扱うよ!

なにせパイロットなんだからなぁっ!」

 

 かなり無茶な動きで機種を上げて追随してきたドップ2機、その先頭の機体こそ、この声の主人が駆るそれであると判断して

シンジは高空へと舞い上がり、水平飛行へ移行する

 

「だが練度が足りない!そらついてこいっ!」

 

 敵機を背後に回す、致命的な隙を晒しながらもシンジは慌てずに次々と操作を行う

エンジン出力全カット、フルフラップオン、機体は急激に減速する

同時に操縦桿を目一杯押し込み、スロットルを戻して思いっきり蹴り込む。

 

「これが大日本帝国が使った伝統の……」

 

 重力によって徐々に落下する機体は

推力を取り戻し、水平基準儀を目まぐるしく動かして一回転、敵機の真後ろを取った。

 

「左捻り込み旋回だぁぁっ!」

 

ピピピピピッ!

 

 ロックオンをけたたましく鳴らしながら、絶殺の決意を秘めたミサイルが放たれる

必死に翼を振ったドップだが、ミサイルの速度はその運動性能を凌駕し

エンジン部分を爆散させる。

 

【ジョォォォォッ!】

 

 爆発した機体のパイロットの名なのか

悲痛な叫びを上げるその子を置いて、爆風を潜り抜けるように前の機体に追いつく。

 

「じゃあな」

 

 三発目のビーム砲が、コックピットを焼き払った。

 

もう、声は聞こえない



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