【完結】ペニーウォートの怪物   作:唯のかえる

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3行あらすじ!
うねうねにょろにょろ! タタリガミですわ!
さぞかし名のある山の主と見うけたが何故そのようにあらぶるのですか!
俺達が壊して喰らってるからですけどォーッ!

おそくなりました。


第11話

 少しだけ時間がさかのぼる。

 

「捕食攻撃、来ますッ!!」

 

 エイミーは戦っているイザナイに報告した。

 計器、感応レーダーの反応を視界に収める。

 捕食攻撃のオラクルパターンを目に移した時。

 エイミーの心臓がドクンと跳ねる。

 

『ヒヒ、すたこらサッサだぜ』

 

 戦っているイザナイの通信がどこか遠くに聞こえた。

 呼吸が浅くなり、動悸が激しくなる。

 

『エイミー、スタングレネードを使った。ヒヒヒ戦略的撤退だ、ナビゲートを頼むぜ』

「……っ。ぁっ……えと」

『エイミー? ……とりあえず離れる、ついでにリザーブ!』

 

 ──フラッシュバックする。

 一度目は灰域踏破船を灰域種が襲った時。

 まったく同じような捕食攻撃のオラクルパターンを目にした。直後オリーネのバイタルと偏食因子の機能が低下し、死んでもおかしくない状態に。

 

 フィムがいなかったらオリーネは死んでいた。

 

 計器で示されるヌァザのオラクル反応がどんどん増大していく。

 広範囲に遠距離攻撃が来る。伝えなくては。

 口がまごついたように動かない。

 

 伝えろ!! 

 

『エイミー。エイミーちゃーん? オペレーター?』

「よ、避けてっ!!」

『? ……ッマジ、かよッ!!!?』 

 

 ──フラッシュバックする。

 二度目は、灰域種ラーが急速接近してきたときに起きた。

 戦闘に出ていた全員の偏食因子の機能急速に低下。

 フィムがいたから、奇跡的に全員生きてる。

 

 いなかったら、みんなしんでいた。

 

「……ぁ」

 

 きょう、げんばにフィムはいない。

 

『ヒヒヒ、仕方ねぇなァ? 遊んでやるよ』

 

 灰域種アラガミ。

 出会えば「即死不可避」の謳い文句。

 逃がすためのオペレートは訓練してきた。

 倒すための訓練も、あの二回の件があってから死ぬ気で取り組んでいたつもりだった。取り組んでいたのは、心のどこかで恐れていたから。

 

 短い期間で二度の極度のストレスにさらされた。それも、自分が関わる形での人の死を確信するような出来事(トラウマ)

 PTSD。

 自分の意志とは関係なく陥る急性ストレス障害をエイミーは患っていたのだった。

 

 

 ◇

 

 

 捕食攻撃の触腕が振り回される。

 オペレーターのエイミーからの返答はない。

 何とかこの状況を切り抜けなくてはと、イザナイは頭を回す。

 まぁオペレーターがいないのはいつもの事だ。

 

 イザナイはエイミーの反応がなくなっている理由もある程度察していた。

 あの過保護なクリサンセマムの女オーナーが、いくら何でも一人で灰域種に突っ込ませるだろうか? 

 人を見る目があるイルダは、エイミーが灰域種襲来以降どこか張り詰めたようにオペレートの訓練をしているのを見ていたようだ。イザナイは念押しをするようにトレーラーに乗る際、起こりうるかもしれないと注意をされていたのだった。

 そして、イルダはイザナイの強さを信じてくれていた。心配そうではあったが、一人で送り出してくれた。

 クリサンセマムで実際に戦うのは初めてなのに、ペニーウォートのAGE達が自慢げにイザナイの事を話すのを全て信じてくれていた結果だ。正直、灰域種の捕食攻撃よりも接触禁忌種の怒り攻撃のほうが火力が高いから仕方ないね。スサノオの神機での食いつきとか普通に千切れてお死にになりますわ! 

 

 とにかくだ。灰域種の捕食攻撃にトラウマを抱いているエイミーがいる。トラウマを解消する方法はいくつかあるが、手っ取り早いのは灰域種、恐れるに足らずと思わせる。イルダはイザナイにそれを依頼した。そんなに単純でいいのかと思うが、イザナイにできるのはこれだけだ。

 つまり、単純明快ぶっ飛ばす! 

 この手に限る! 

 

 ありえないほうが良かったのは確かだ。

 だが、起きてしまったなら。

 未来のオーナーの人使いの粗さに付き合ってやるのも、まぁ悪くない。

 

 ──ふふ。未来のオーナー、ですの? 

 ──……。

 

「ヒヒヒ。エイミー、残りバースト時間を報告してくれ」

『ぁ……ぇ』

「数字だけ見て、数字だけを読み上げろ。目に写るそれだけをっとと!」

『の、のこり50びょう。よ、48、47、46──』

「よーしよし、いい子だ。それだけ続けろ。他は何も考えるな」

 

 取り乱した人間を落ち着かせるのは、正直難しすぎる。

 だったら、冷静さを取り戻させるために端的な行動だけさせればいい。

 例えば『動物の形をした雲を3つ探させる』とか。

 例えば『目に写る数字だけを読み上げさせる』とか。

 

 少しでも冷静になってもらい、そのあとに灰域種を倒す。

 そちらの方が、無力感などの苛みが少なくなり、自身も戦いに協力して敵を倒せたという実感もわくだろう。そもそもエイミーはとても優秀なオペレーターだ。きっかけさえあればすぐ正気に戻れる……とイザナイは信じてみることにした。

 これでダメだったら、お医者さんにお願いですわ! 

 

 当たったら、死ぬ。

 鞭のように振り回される赤黒い触手をアクロバットに避けていく。

 建物が瓦礫になり周囲の視界が良くなった場所で、叩き潰されるのを拒む羽虫の様にヌァザへとまとわりつきながら、空中で二段ジャンプをしたりしながら逃げ続ける。

 攻撃は一切せずに、避けることに注力。

 息をつけるタイミングがあれば、エイミーに声をかける。

 

「ヒヒ、アイツをぶっ飛ばすぜエイミー」

『29、28、27──』

「それにはお前の力が必要だ」

『20、19、18──』

「それに今回は大丈夫。なんせ俺はペニーウォートの怪物で、超強いからなァ!」

 

 戦場で不安になる幼いAGE達を安心させるいつもの宣伝文句を使う。エイミーの数字を数える声に力が宿っていく。たどたどしかった発音が凛々しくなる。

 

 ヌァザが飛び上がってイザナイを踏みつけるように巨体で圧し潰すような動き。

 空中から地面に降り立った時の衝撃波が地面を攫う。イザナイは空中へと、それを逃れる。

 見越したようにヌァザが横に払う鞭のように触腕を振るう。

 更にそれを読んだイザナイが空中から三角に飛ぶように地面へ飛び込む。

 以後、空中へは逃れない。

 読まれているし、何より──。

 

『3、2、1、0。バースト時間終了しました』

「少しは落ち着いたか? エイミー」

『……ごめんなさい。取り乱してしまって』

「ヒヒ、んじゃァ力を貸してくれよォ? オペレーター」

『はい!』

 

 いいのいいの。とギザ歯をむき出しにして笑い、イザナイは神機を構える。バースト状態が終わり、体中にみなぎっていた力が抜け落ちる。だが、戦意に衰えはない。

 ヌァザはこちらのバーストが終わったのに気が付いたのか、これで終わりだと天高く触腕を振り上げ──。

 

「まぁ、そこにはトラップ仕込んでるんだがな。ヒヒ、ここが違うんだよ、ここが!」

『アラガミ、封神状態。対象オラクル細胞、活性化が抑え込まれます』

 

 触腕が宙に霧散するようにほどけて消えた。コンコンと、指でこめかみを叩いて挑発するイザナイ。

 先ほど、飛び込んできたヌァザの周辺に封神トラップを仕込んでおいたのだ。

 天へと腕を伸ばす際に踏み込んだヌァザの体に封神トラップが炸裂。ヌァザを状態異常に陥らせる。

 

 その封神とはゴッドイーターからアラガミに与える状態異常の一つ。

 アラガミの体内のオラクル細胞の活性化を押さえつけるもの。

 怒り状態とは、要するに全身のオラクル細胞が活性化してる状態だ。

 そして、捕食攻撃は怒り状態でしか行えない。つまり、完全に体中のオラクル細胞を活性化させなくては使用することが出来ない。

 

 つまり、活性化を阻害してしまえば捕食攻撃は一時的に押さえつけられる。

 あくまで一時的。

 だが、イザナイが形勢を立て直すには充分の時間! 

 

「封神秒数カウント開始しろォ! 極東リザレクション流『鮫牙』!」

『残り16秒! 15! 14!』

 

 捕食攻撃のための触腕が構成できずに戸惑うヌァザに向かって、地面を滑るように高速移動しながら捕食攻撃を繰り出す。

 

「こっちの反撃ターンだァ! バーストアーツ『飛天翔』!」

『──10! 9! 8!』

 

 足元を抜けるように捕食、再びバースト。

 横目で、先ほど結合崩壊させた足の確認をする。やはり、ヌァザの捕食攻撃が単調だったのはまだ完全に治り切っていないからだ。再び足をバーストアーツで切り飛ばし、ダウンさせる。

 

『飛天翔』は空中へ移行するように飛び上がる技だ。

 神機で切り飛ばしながら、空中へ移行。その際に慣性を使いながらヌァザの背面へと飛び上がる。

 ガシャコン! 近接武器形態から銃形態へと高速換装! 

 リザーブを何度も行ったブラストには充分な弾数が込められている。

 

「いい加減、その輪っか邪魔なんだよォ!」

『──5! 4! 3!』

「『ないぞうはかいだん』だ!! ぶっ壊れろォッ!!」

 

 クリサンセマムでの暇な期間にターミナルを使用して作ったカスタムバレット。

 それは、イザナイの前世で超有名なカスタムバレットだった。

 バレット構成を見たキースがドン引きしていたのを思い出し、イザナイの口許に苦笑いが浮かぶ。使おうとしてなんだが、やはりこれえぐいよな……と心で一人語る。だが、手は休めない。

 

 ドドドドドド! と保有オラクルが許す限り背中に向けて打ち続ける。

 

 パスンと弾丸がヌァザの皮膚内に入り込む。

 一拍、体内からホウセンカの種の様にレーザーを吹き出して全方位にはじける。

 背中の輪は根こそぎ穴だらけになって、今度こそ砕け散った。さらに背中から噴き出したレーザーがヌァザの身もついでに焼いていく。

 封神化は、対象のオラクルの活性化を抑える。つまり、オラクル同士の結合を阻害しているという事に他ならない。簡単に言うと、防御力ががくんと下がっているのだ。今まで高密度のオラクル細胞が集中しているために決定打が与えられなかった背中の輪にも、致命の一撃が下ったのだった。

 

「GOAAAAAAAAA!?」

『2! 1! 0! 封神状態、解除。敵対アラガミ、結合崩壊発生。アラガミ沈黙寸前。止めを!』

 

 地面に降り立った瞬間、銃形態から近接攻撃形態に換装。

 そのまま畳みかけるように結合崩壊部位へと攻撃を放つ。

 

 だが、ヌァザも黙ってやられてはくれないようだ。

 全身を振り回すように、起き上がる。イザナイは一時的に離れ、攻撃のチャンスを再度見つけるために様子を見る。

 再び怒り状態に戻ったヌァザは、一つ覚えの様に触腕をイザナイに振るおうとして、なにかに気が付いたような素振りを見せる。そして、駆け出した。

 

 イザナイとは真逆の方向。

 振り向きもせずに一心不乱に逃げ出した。

 

「逃げた、か? 怒り状態で?」

『アラガミ移動を開始! 餌場に向かうものと思われます!』

「チッ、追うぜェ! ってエイミー、周囲の敵対オラクル反応どうなっている」

 

 イザナイは逃げたヌァザを追おうと足を速め、数歩で止まった。

 視線は、ヌァザが逃げた方向の空へと向かっている。

 イザナイの視線の先。そこには黒い影が数個浮かんでいた。

 黒い卵型のシルエット。苦悶の叫びを上げるように磔にされた女神像。

 小型アラガミのザイゴートの姿だった。

 

『わ、あ! ごめんなさい! 先ほどの周辺崩壊の音を聞いて、エリア外のアラガミ集結しています。パニックになったせいで、完全に報告が遅れていました……』

「あいあい。次から気を付けてくれれば、いい……。なんだ、アレは?」

『コレは……、捕食攻撃のオラクルパターン!? 長距離攻撃注意してください!』

「いや、エイミー。……敵対アラガミの捕食機が空に伸びてる」

『へっ!?』

 

 飛んでこちらに向かってきていたザイゴートの群れ。

 その群れに対し、地上から一条の赤黒の線が走る。

 ソレはイザナイが散々避け続けたヌァザの触腕。

 

 ──アラガミのヌァザ種の中に、ヌァザ・アイルという個体がいる。

 そいつはヌァザの変異個体で灰煉種と呼ばれる個体。

 そのアラガミの特徴に『超高密度のオラクル細胞を自ら生み出し、捕食してバーストを行う』というゴッドイーターにとって非常に面倒な自給自足をする知能があるのだ。

 では。

 その前身である通常のヌァザにも、敵対しているゴッドイーター以外から捕食をしてバーストをする知能があってもあり得る話であった。

 

 地上から空へ伸びる黒線が蠢いた。亡者の手を模した触腕が飛んでいるザイゴード達を掴んでいく。数匹いたはずのザイゴード達は奪われるオラクル量に耐え切れず息絶え、天で虚空に散っていく。

 金色で天が染まる。

 蜘蛛の糸に手を伸ばす様な亡者達の手には莫大なオラクルエネルギーが握られ、余剰光を放ちながら地面へと引き寄せられる。

 

「ヒヒ、なるほどねェ」

『い、イザナイさん、対象アラガミバーストします!!』

 

 神機を肩に担いで、イザナイはやれやれと肩をすくめる。

 ズン、ズン。と地面が揺れ、先ほど逃げたはずのヌァザが悠然と巨体を揺らしながら戻ってくる。

 

 結合崩壊し、破損した部位から紫色のオラクルエネルギーを幽鬼のようにゆらりゆらりと漂わせ、破損したはずの背中の輪は妖しく紫光を纏っている。

 一番変貌しているのは、存在しなかった右腕。

 捕食攻撃に使われていた赤黒い触手が腕の形をとった義腕として、力強く握りこまれていく。

 

『全身から、ヴェノムのオラクル反応……。いえ、この規模、デッドリーヴェノム!』

「……ああ、思い出した。手に入れる義腕、一度抜かれれば致命を与えるモノ。銀の腕ではないが『ヌァザ』かコイツ」

 

 デッドリーヴェノム。

 ヴェノムよりはるかに致死性が高い物。ゴッドイーターと言えど、すぐにヴェノム状態を解除するデトックス錠などを服用しなければ死に至る状態異常。

 

 ──あのドロドロに触れると死にますわよ! 

 

 イザナイの頭の中で神機ちゃんが姦しい。

 

『たまに思いますけど、イザナイさんってとっても博識ですよね……』

「……ヒヒ、軽口上等。完全に立ち直ったみたいで結構だな」

『あ、アハハ。対象アラガミ命名。以後『ヌァザ』とします! イザナイさん……、愚問ですが、行けますよね?』

 

 くるくると神機を回し、ゼロスタンス。

 第3ラウンド。

 これで終いだ。そういう覚悟を決めて気炎を吐く。

 

「当然だ。退路はない(No way back)

なぜなら(Because)

「俺は神をも喰らう怪物(Im GOD EATER)だからなァッ!」

 

 灰域種ヌァザ、ソロ討伐。

 最後の戦いが幕を開けた。

 




おかしい、予定ではヌァザ君はもう……。

エイミーの下りも特にいらなかったかなと思ったけど原作で気になった部分だったので凸。
全体的に納得は言ってないけど立ち止まりそうなので凸。
本来12話で書き終わり予定のこの物語のはずだけど凸。

この戦いが終わったら結構巻きで話が進むので、幕間で話の中身を増えるわかめしたいところ。
なので、全部書きますがアンケ置いときます。時系列はクリサンセマム内でバラバラです。
本来すぐ終わる話だったのですが、こんなに多く読んでもらって本当にありがとうございます。

 追記。
 4行目のオリーネ取材は、オリーネのクリサンセマムのみんなに対する取材です。

幕間書き順決め

  • 男のカードバトル イザナイのタイプは?
  • リカルドと家事をする話
  • 行商人とイザナイの話
  • オリーネ取材 イザナイの事どう思ってる
  • フィムと寝子とイザナイお昼寝
  • 初恋大作戦 オリーネおしゃれの巻
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