あらすじ。
ペニーウォート脱出。
クリサンセマムでみんな優しいやったね。
後輩の女の子にバックドロップを食らう。
健康診断を受けてそのまま灰域種直行。
パニックエイミーを鎮め、灰域種討伐。
最近神機ちゃんがずっとざわざわしてる。
『やっと、完成した……。この子はどんな子になるかな?』
原初の記憶。まだ空気の震えを声と認識できない頃の記録。
女の声。
わたくしを神機に閉じ込めた者。
これはわたくしが神機として生まれ変わったころの記録。
彼にめぐり合わせた奇跡を生んだ者としてありがたみを感じる存在。
『レトロオラクル細胞は周辺環境の変化に高速で対処する『オラクル細胞』の単一特徴に特化しているからね。ここまで既存の神機に似た形で収めるのは本当に大変だったよぉ。この神機試作型は今まで以上のパワーを発揮するはず……!』
『さすがだな、リッカ博士』
わたくしの自我が芽生えなかったころの話。
続いて、男の声が聞こえる。
『まぁそれもこれもソーマ博士が色々と協力してくれたおかげだけどね!』
『元はといえばクレイドルの研究材料。手を貸すのは当然だ。……腕がいい技術者の力を借りられるのはこちらとしても僥倖だ』
『ヘヘヘ……。この子のコアを回収してきたブラッド隊長とクレイドル隊には頭が下がる思いだね!』
『ああレア物だからな』
『現行のアーティフィシャルCNSへの加工じゃ全然上手くいかなくて、ほんっとうに大変だったんだから! でも、それだけにいいものができたと思う!』
誰も彼も、わたくしが音を記録していたとは知りえないだろう。
『……ただ、あくまで試作型だからね。既存のアーティフィシャルCNSよりも厳重に拘束フレームの強化は行っているけど不安点がぬぐえないのは確かなんだ。だから、私のホームである極東支部で確実に安全であり実践投与できる正式制作品になるまで様子を見てあげたいんだけど……』
『フェンリル本部からの徴収か。……悪いな、俺のせいだ』
『ソーマ博士は悪くないよ! でもほんと、ありえない! 人類のためとか大きな建前は大事だけど、どう考えても技術盗用だし、せめて完成するまで待ってほしいよね! 試作段階の対アラガミ装備の危険性は本部だってわかってるはずなのにさ!』
『……そうだな。暴走神機兵の前例もある、フライアが極東で試験を行ってどうなったのか向こうも知らないわけじゃない』
二つの大きなため息。
『……知らないわけじゃない、か。だからこそ、手元で管理して暴走しないようにしたいのかもね』
『俺の関わる『ラグナロク計画』にもレトロオラクル細胞の技術が起用される。連中は極東随一の技術者が加工した特殊な神機を見て、計画の要であるメインフレーム『セントラルコア』に技術転用したいんだろう』
『はー……。やってられないよ。まだ現在の神機の規格にしか沿えていないのにぃ……。本部じゃブラストの新型が開発されてるって噂だし、神機適合者が旧ブラストしか使えねぇ!!! ってなったらどうしようー!! せっかく特殊なコアを使ってるんだからブラッドレイジみたいな神機本来の性能を引き出せるはずなのに! ああー、まだまだやりたいことがいっぱいあるのになぁ!』
カツカツと不満げな足音。
『もう!! ……本当に極東で実験したかったのにさー。最悪の場合が起こっても今ならクレイドル隊とブラッド隊の皆がいるでしょ? 隊長も二人とも珍しくそろってるし、最近じゃ一緒に戦闘もしてるし? ……クレイドル隊長のブラッドアーツ習得楽しみだなぁ』
『お前、それが本音か?』
『や、違う違う! そもそも事故を起こす気なんて一切ないもん! けど、いつだって起こっても対処できるようにしないとね。……もう世界の危機なんてこりごりだよ』
『実際のところ、この試作神機が本部の手に渡って何かが起こる可能性は?』
焦ったように始まり最後に疲れたような女の声。
その後に男の疑問。
『……ありえない、と思う。けど可能性は0じゃない。リンドウさんの神機やロミオ君の神機の件もある。私の想定していないナニカの発露で内側から神機拘束フレームを周辺環境の変化に高速で対処するレトロオラクル細胞の特化能力で強制パージしちゃうとか? ……そんな事まともに神機が整備されてれば本当にあり得ないけどね!』
『現場の環境、そして適合者の感情に左右されると?』
『ヘヘ、ちょっとロマンチストだね。サカキ博士のがうつっちゃったかな? ……良い人に出会えるといいんだけど』
『極東支部の一員だからな。奇跡を何度も見てるんだ、ロマンチストになってもおかしくはない』
『へー! 極東支部の一員だしさぁ、ソーマ博士もロマンチストなんだ?』
『フン……そのロマンを支えるのが技術者だろ。あまり気を抜くなよ』
『ヘヘヘ、本当に丸くなったよね。わかってますよ、っと!』
ガコン。とうるさい音。
わたくしを運ぶために保管する音。
『本部へは俺が持っていく。そのほうが安心だろう』
『うん、任せるよ。そっちも計画がんばってくださいね。成功すれば、人類の希望なんだから』
『ああ』
どんどん二人の話声が遠くなっていく。
ゴポゴポと水に沈められるような気泡の音が記録を揺らがせる。
最後に聞こえた声は不思議とはっきり聞こえて。
『君が良い相棒に出会えることを、祈っているよ』
──これからよろしく神機ちゃん。
──今日もお疲れ。助かったよ神機ちゃん。
──なにも、きこえねぇ。なにもみえねぇ……。ごめんな、神機ちゃん。
貴女の祈りはきっと……。
どこかの誰かに届いたのでしょうね。
コポリ。
一際大きな気泡がはじける音を最後にその記録は終わっている。
◇
Foooooooo↑↑!! うちの神機ちゃん調子良すぎですわ!
この通り灰域種もぼこぼこのぼこ! パーフェクトですわ!
「ヒヒヒ。お疲れ神機ちゃん、大活躍だったな」
『敵、反応消失! だ、大丈夫ですか?』
「特に大きな怪我なしだぜ。そっちも平気かァ?」
『あの、本当にご迷惑をおかけしました……』
シュンとしたエイミーちゃんの声音が伝わってくる。
まぁあれだけ灰域種にメンバーをガブガブされてちゃそりゃねぇ。捕食攻撃へのナビが揺らいでしまっても……いや、ダメでしょうね。ほかの子なら死んじゃうもんな。いや、ハウンドならワンチャン平気だと思うけど、あの子たちに危ない橋はわたってほしくないからなぁ。
ここはなんかいい感じにメンタルケアですわ!
「後半のナビは完璧だったぜ。つまり、エイミーなら捕食攻撃も冷静になっていれば捌けるってことだ」
『冷静さを保つことがオペレーターにとって大事なことなのに……』
「ヒヒヒ。だが、捕食攻撃を一度も受けずに俺たちは戦いに勝利した」
『結果論です。……本当に危険な状態で』
「ヒャハハ! じゃ、次はよろしく頼むぜェ!」
『次……』
吐息を飲む声が聞こえる。
ヨシッ! なんか最後にいい感じにまとめて適当なこと言って、オッケイですわ!
「そうだ。次は完璧なナビを頼むぜェ。未来のオペレーターさん?」
『……はい! 次こそ、お任せくださいね!』
次かぁ……。まぁ適当な発言だな。
いかんな、最近ブレブレ過ぎる。
「ン。じゃ帰還するわ」
『みんなで、帰りを待っていますからね。回収ポイントの確認もお忘れなく!』
「あいあい」
神機を担いで、トレーラーの方向へと歩き出す。
戦闘の余波で崩れた建物の中なんかを目ざとく観察し、物資として使えそうなものを確認する。こういうところにたまにいいものが落ちてたりするんだよなぁ。
看守もいないし、今ならエッチな本とかでも持って帰れるのでは? ……さ、探さなきゃ!
大概がアラガミに食われたりでガラクタになったり、すでに漁られた後だったりする。
周辺アラガミの警戒も当然怠らない。帰るまでがアラガミ討伐ですからね!
「ン。これは」
瓦礫の中、光る何かを見つけた。
砕けたショーケース。散らばる小物。
原形を保っていたのは一つだけ。
「これはッ!?」
『イザナイさん? 何か良いものが見つかりました?』
「え!? なにも!? 何も見つけてないけどォ!?」
『??? ええとぉ、間もなく灰域濃度が濃くなる傾向が見えるので、回収はそろそろ切り上げて、帰還をお願いしますね』
「お、おう」
ドッキーンッ! とエイミーの声に心臓が跳ねが上がる。
エロ本よりも今の俺に心臓を跳ね上げさせるものが見つかってしまったんですが!?
拾い上げるか数秒悩み……、周囲をフンフンと焦ったように首振り確認。誰もいないことをチェック。こっそりと見つけたソレを拾い上げ、誰にも見つからないように服の中にしまい込む。
「あ、あとで売ればいいからな。よし、売りもんだこれはァ!」
『……イザナイさん、やっぱり何か見つけました?』
「なんでもない! ハイ、帰るからナビよろしくゥ!」
もう帰る! 最近本当にブレブレでだめだ!
ほだされるなほだされるな!
くそぉ、ペニーウォート時代のほうが体はともかく心の平穏が保ててた気がしますわ……。
とにかく帰ろう。帰って神機ちゃんを整備しようっと。
それが一番の心の平穏を取り戻す方法ですわ。
「ハァ……。ン、そういえばコイツの石言葉は、なんだったかな」
◇
ちゃちなそれはきっと誰からも見向き去れずに放置されたもの。
人から見れば玩具のようなそれは、立て爪型で金色の指輪。
掠れたプレートに刻まれていた中石の名前はムーンストーン。
どこかの誰かの髪色を彷彿とさせる、銀色の宝石だった。
お仕事とかで時間とれてなくて申し訳ない。
今年中に完結させたいところ。
アンケの一部が競ってて閉められぬので、低いとこはまとめます。
ご協力ありがとうございました。
幕間書き順決め
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男のカードバトル イザナイのタイプは?
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リカルドと家事をする話
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行商人とイザナイの話
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オリーネ取材 イザナイの事どう思ってる
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フィムと寝子とイザナイお昼寝
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初恋大作戦 オリーネおしゃれの巻