【完結】ペニーウォートの怪物   作:唯のかえる

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第19話

 答え合わせをしよう。

 

 なぜ『バラン』なのか。

 

 イザナイの持っている原作の知識で時系列順に並べていこう。

 

 まず灰災以前の話。

『ラグナロク計画』の勃発。

 3人の代表する技術者が集まり、『セントラルコア』を作り起動。

 その際に、コアに意識があり起動実験はまだしてはいけないとソーマ・シックザール氏が提言。

 だが、その後ソーマ氏に内密で実験が開始。

 

 全ての始まり『灰災』が起こる。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これが意味することは『灰災』以前に灰域種が存在していた、という事。

 追加シナリオで判明した事実だ。

 

『ラグナロク計画』は各支部にナノマシン型の小型神機を散布、『セントラルコア』で指向、捕食するという類の計画だ。

 捕食後に捕食した物の性質を持つオラクル細胞とはいえ、あまりに灰域種の発生が早すぎるのだ。過去の例である星の意志、特異点の為の『感応種アラガミ』ですら赤い雨が降ったしばらく後に発生している、即日発生などは可能性があまりにも低すぎる。

 

 次にAGEに投与されるP73-c偏食因子の存在。

 

 これには、灰域下で発生したとされる人型アラガミの細胞が必要不可欠なのだ。

 灰域発生後、AGEがすぐに生まれるのが早すぎる。灰域異常の発生後、灰域で活動出来ない既存のGEの代替として生まれた事情は知っての通りだろう。

 

 この因子の前身であるP73偏食因子。

 二度しか投与履歴が確認されていないのにフェンリルにとってかなりの厄種である。

 一度、マーナガルム計画と呼ばれる始まりのゴッドイーターが生まれた実験では暴発捕食事故を起こす。結果としてP53偏食因子と呼ばれる生体用に調整された偏食因子が生まれるが、貴重であった偏食因子に対する研究者を失う。

 二度目、世界を喰い滅ぼしかける。

 文字通り、終末捕食の作為的な発生である。

 とある少女に投与されたそれは、アラガミの意志、星の意志を汲み取り入念な計画。二度三度阻もうが、それでも最終的に世界を食い尽くそうとしたほどだ。

 そんな厄種をフェンリルの軍部であった『グレイプニル』が作成するだろうか? 原作では『グレイプニル』は灰域異常後のために灰域に適応しないGEをメインで作り出している。

 

 そして、実を言うとAGEをグレイプニルが開発したなどという記述はどこにもないのだ。ターミナルの記述でグレイプニルがでてくるのは『AGEは非常に強大な力を持つゴッドイーターで安全性の確保の面から屋内においては腕輪を連結した状態での運用がグレイプニルにより推奨されている』だけだ。

 

 ミスリード誘発。

 敵側からのグレイプニルへのヘイト擦りつけ。

 

 グレイプニルが手錠型腕輪の連結を推奨はしたが、作成したところはおそらく他の技術者が大量にいるところではないかと予想を立てられる。

 

 つまり、ラグナロク計画に関わり、計画を悪用していたモノ。

 灰域種を事前に作り、人型アラガミ因子を手に入れ、灰災後にAGEで覇権を握る。

 そして、新技術でAGEを灰域を広げるだけの材料として燃やす事ができる。

 

 そんな技術者達が存在すると言うことが見えてくる。

 

 

 次だ。

 

 

 灰域発生後、一番権力を持ったのは『グレイプニル』だ。

 何故か? フェンリルの軍部だったから? 

 それもあるだろう、だが違う。

 

 多数の人間にとって必要なものを持っていて、その価値を保証できたからだ。

 

『金』である。

 

 人間らしい、欲望に塗れた選択。

 おそらくの灰域異常を仕込んだモノにとって一番の想定外。

 この世界はFCと呼ばれるフェンリルクレジットが流通していた。

 灰域発生後、価値が暴落。なぜか? 

 フェンリルがなくなり、価値が保証されなくなったからだ。

 だが、グレイプニルの活躍により価値を持ち直すことができた。

 だから人間の価値観を理解している『グレイプニル』が僅かな技術者を確保でき、ミナト間でトップを張れるようになったのだった。

 

 では、もし『金』という物がなくなった世界で次に重要とされるものを考えよう。

 

『技術』だ。

 

 ああ、そういえば灰域異常が直下で発生したフェンリル本部、支部ではほとんどの人間、技術者は蝕灰の前に倒れたそうだ。

 であれば、灰域の広がった世界にこれだけの技術者を抱え込んだ『バラン』と言うミナトは、一体どこから技術者達を連れてきたのだろう? 

 

 ちなみに、ラグナロク計画の起動実験はソーマ氏がフェンリル本部にいた時に発生している。

 

 つまり、フェンリル本部ではない場所に起動実験を敢行できるほどの技術者が大量に滞在していた場所があるのが見えてくる。

 

 出来上がったのがミナト『バラン』という、原作で灰域踏破船のみだけしか登場せず、唯一本拠地が判明しなかったミナト。

 

 

 ──『セントラルコア』は、そこにある。

 

 

 

 ◇

 

 

 旧フェンリル本部で、この世界で一番出力が高いであろう感応レーダーが作動していた。本来オーディンと呼ばれるAGEを薪にして灰域を駆逐する兵器のために割かれていたリソースが、全てこれに抽出された。

 

 比喩抜きで世界最大といえる大規模感応レーダー。

 

 そんな、大規模の感応レーダーを動かせる人間などいない、そう思われていた。だが、灰域踏破船サイズとは言え最新式の感応レーダーをフルスペックで稼働させる事ができ、余力を残せる人材が存在することを知っている。

 

 中央には『クリサンセマムの鬼神』と『人型アラガミ:フィム』が二人で座っている。

 

 真剣な表情で、託された頼みを果たす。

 二人を囲うようにハウンドのメンバーが真剣な表情でそれを見ていた。

 

 さらにそれの後方、たくさんのオペレーターが檄を飛ばしながら欧州全域を精査。その中にはクリサンセマムの優秀なスタッフの姿もある。

 

 全てが俯瞰できる場所に、グレイプニル総督とクリサンセマムのオーナー。

 

 そして…………遂に、見つける。

 

 

 全ての元凶。

 終末の黄昏を呼び込んだ『ラグナロク計画』の根幹。

 ──バランの本拠地。『セントラルコア』の所在を。

 

 

 同刻、限界灰域『朱の女王』本部。

 

 

 大型アラガミが居た。

 その横にはその腕輪をつけた男達が二人。

 戦っていない。

 封印するように自分をオラクルの鎖で縛った大型アラガミをただただ見ていた。

 

 見つめられていたアラガミは、自身で自身を縛っていた大量のオラクルを具現化させた鎖を引きちぎっていく。

 

 基本系はキュウビの姿。

 キツネのような四足歩行で、三叉に分かれる太い吸引尻尾を持った姿。

 

 明確にキュウビ種と違う部分があった。

 背中に、人型がキュウビの背から生えていた。

 

 人型は完全に異形であった。

 猫背の背から、異常発達した背骨が飛び出している。

 口は耳元まで裂け、ギザギザの乱杭歯が覗く。

 右腕は神機が融合、手首から胸にかけて真っ黒く侵食されている。ロングブレードシールドブラスト構成の神機だ。

 瞳は赤く爛々と輝く灼眼。

 目の下には刺青のようにクマがついて消えていなかった。

 

 鎖を引きちぎり終え、人間体を背に生やす狐が、くわぁと大きく欠伸をしながら全身をぶるぶると振るわせる。

 

 人間体が侵食した神機を捕食形態に変えて、用意されていた大量の『強制開放剤』をごりごりと捕食。

 

 キュウビは日に照らされたように、輝いた。

 体の周りに紅い円環が浮かび、上の人間体と下のキュウビ体と結び付く。

 

 最後に大きく伸びをして、後ろで立っていた人間を二人を一瞥し……駆け出した。

 

 それを人間。

 ヴェルナー・ガドリンとダスティミラーのオーナーであるアインは見送った。二人とも、いつまでも見送り続けた。全てが成功すると信じて、アラガミ(イザナイ)を見送るしかなかった。

 

 一歩、地を踏み。

 二歩、空を駆け。

 三歩、天を飛ぶ。

 

 ゲームのローディング画面を走る神喰らいの狼のように。

 一直線で敵の元へと。 

 

 灰域が蠢く。

 無作為だったものが生物のように、空へと舞い上がりながら一つの方向へと集まっていく。

 

 世界中から暗雲が押し寄せるように、蝕灰が欧州へと集結。

 欧州の空が灰域となる。敵の防衛機構だろう。

 大灰嵐。

 そんな言葉がちんけに思えるほどの大規模。

 

 ──『終末の黄昏』が来た。

 誰かがそう言った。

 

 

 月から見たその光景は、一種の終末捕食のようだった。

 それを見下ろしていた少女が一人、祈りを捧げるように手を組んだ。

 

 

 空が紅蓮に染まっていく。

 神話の終末再現、それでも顔を上げて今を生きるヒト達は見た。

 

 一条の流星が、紅蓮の暗雲を切り裂いていく。

 黄昏を蒼穹に誘う、天日のような狐の姿を。

 

 

 確かに、目撃した。

 

 




本日12:00次話投稿。最終話です。

後これはあくまで、この作品のラスボスと所在なのであしからず……。
早くGE3追加来てくれーっ!!
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