【完結】ペニーウォートの怪物   作:唯のかえる

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最終話

 ──紅蓮灰域の夜の話。

 

 運命の日。

 

 ズタボロのボロ雑巾のようなイザナイが廃墟じみた紅い粒子漂う場所を、体を引きずるように歩いていた。

 

 こんなところで、死ねるかと奮起しながら。

『約束』を果たすために、格好をつけた手前死んでたまるかと。

 

 目的のアラガミをぶっ殺しながら、通信不良という建前で帰還を拒否される。

 

 ちくしょうと、綺麗に整った歯をギリギリと噛み締める。薄いクマのある目をごしごしと擦って、顎が上がるくらいの疲労を感じる体に鞭をうつ。

 

 ジークにあそびをもっと教えてやりたい。

 キースにくだらないけど面白い発明を考えてやりたい。

 ユウゴにもう頑張らなくていいと、仲間が死ぬ姿を見せたくない。

 オリーネに綺麗な花畑を、ウエディングドレスを着せてやりたい。

 

 ──灰域種に食われて死んだチームの夢を、叶えるんだ。

 

 みんなが自由に、好きに夢を見て生きてほしい。そういうチームの誓い。

 

 現れるアラガミをなんとか倒して。

 神機にお礼を言いながら進んで。

 

 最後にくたばるように倒れて、神機を撫でる。

 

 何も見えない、何も聞こえない。

 荒い紙ヤスリで身体中を削られていく感覚も、少し経つと感じなくなってきた。

 

 抱き締めるように手放さなかった神機の感覚だけしかもう残っていなかった。

 

 こいつにも、初恋ジュースとか飲ませてやりたかった。

 最後に口からこぼれたのは、ごめんね神機ちゃん。

 

 と。

 その瞬間。

 

 カキン、ガキンと何かが神機の内側で弾ける。

 レトロオラクル細胞が全力で神機の拘束をパージする。

 

 イザナイを食べて、助けてあげるために。

 食べて苦しみを感じないようにしてあげるために。

 

 原作のソーマの中のアラガミのように。

 

 厳重な神機の拘束を打ち抜き、表層に現れた時。

 神機の感覚しかなかったイザナイは。

 

 無意識ですがるように、神機へエンゲージを敢行したのだった。

 紅光のエンゲージ。

 心の底から気を許した、一心同体の存在なればこそのコアエンゲージだった。

 

 暗転。

 

 イザナイは暗い場所に、座り込んでいた。

 目の前に巨大なアラガミの狐、キュウビの姿。

 

 俺の神機はどんな子だろうと妄想することもあった。

 脳内でお嬢様とかよくやっていた。

 まぁただの妄想だったようだが。

 

 コアエンゲージで、目の前のキュウビ。

 神機ちゃんの想いが伝わってくる。

 

 食べて救ってあげたいと、痛い程こちらを心配する気持ち。

 

 だから、イザナイはその空間で立ち上がって近づいてキュウビの鼻の上を撫でる。

 

 そして、自身の想いを強く胸に抱く。

 伝わってくれと。

 ……でも伝わらなくても、この子に食われて終わりならそれでもいいかなとも。

 

 相棒、約束を果たしたいんだ。

 それが終われば好きにしていい。

 だからもう少しだけ相棒を名乗らせてくれないか? と。

 お礼に食べること以外の素晴らしいものを教えてあげるから、と。

 

 想いを伝える。

 

 キュウビは伝わってきた事を全て理解しようとする。

 

 心の底から繋がってるからこそわかる。

 この人は食べられても構わないと思っているんだと。

 

 だからこそ、興味が湧いて続きが気になった。

 いつもただの武器として扱われているはずの神機に、意志があると知っているように毎度声をかけてくれる彼とは話をしてみたかったのだ。

 

 それは食べるより楽しいことなのか? 

 

 ああ、いろんな話を聞かせてやる。食べることも素敵だが、他にもいっぱい楽しいことがあるって教えてあげたい。

 いっぱいお喋りをしよう。

 寝る間も惜しんで、短い時間かもしれないけどたくさん話そう。

 人紡ぐ物語の美しさを、お前も一緒に紡ごう。

 

 まずは、そうだな。

 東の狐の話をしよう。

 それは空狐と呼ばれる存在で。

 善狐という人に寄り添う存在がいるんだ。

 

 神機を誘う。

 誓約を結ぶ。

 

 だから、最後に俺を食べていいから。

 心の底から、全部くれてやるから。

 もうちょっとだけ、付き合ってくれよ。

 話し相手なら名前がいるよな。

 名前は、そうだな──。

 

 

神機ちゃん(天日)

 

 

 暗転。

 

 ふらふらで立ち上がる。

 頭のなかで、誰かの声がする。

 

『繋がった』と、理解をした。

 

 そうして紅蓮灰域の夜。

 

『怪物』は産声をあげた。

 

 

 ◇

 

 

 灰域異常最後の闘いが、始まった。

 

 ──食い散らかせ、天日(てんぴ)ィイイイイイッ!! 

 脳内で相棒が叫ぶのを天日は感じる。

 

 『終末の黄昏』と比率すると豆粒ほどの天日だが恐れず突撃した。

 

「──────ァ!!!」

 

 神融種アラガミのような特徴を持つキュウビ種。

 背中に神機を持つ人型を乗せ、特異種キュウビの天日は吼える。

 上の人型の口からも下の狐の口からもオラクルを練り上げた咆哮が周囲に影響を及ぼす。

 

 蝕灰をレトロオラクル細胞の特性で偏食方向を高速で目まぐるしく変えて、不可能と言われた蝕灰の捕食を成功させていく。体から陽炎のようにオラクルを放出して自身にまとわりついて侵食しようとしてくる蝕灰を逆に捕食していく。

 

 奇しくもそれは、イザナイという男が使いこなしていた『朝凪の型』と呼ばれるバーストアーツに酷似していた。

 

 さらに、人型とキュウビを繋ぐ紅い円環が大きく膨張し、ある物を想起させるようになる。

 

 マガツキュウビの『殺生石』のように輝く。

 AGEの因子、感応能力の高さゆえの、相棒の記憶から模倣した特異種キュウビに許される御業。

 

『殺生石』が周囲の蝕灰からオラクルを奪い、天日に力を与える。

 

くぉん(リザーブ)!」

 

 背にある人型の部分に天日の吸引尻尾からオラクルがリザーブされる。

 人型と融合した神機のブラストが煌々と光を帯びる。

 

 

 ──まだ足りない。

 頭の相棒は囁く。

 

 再び風のように、天日は翔ける。

 足元にGEの技術である一瞬で消える薄いオラクルの床を生成しながら、天を縦横無尽に翔け抜ける。通常キュウビのように周囲へとオラクルの弾丸を放ちながら、蝕灰を貪り食っていく。

 だが『終末の黄昏』は世界中から集まってきた蝕灰だ。

 いくらなんでも蝕灰の量が莫大すぎる。

『朝凪の型』でも『殺生石』でも押し寄せる物量に対処できずに、天日が地上へと押し返されそうになってしまう。

 

 その時、地上から幾条もの光線が伸びてきた。

 

 天日は瞠目して、地上を見る。

 

 見えるのは、地上からGEとAGEが銃形態を使い、蝕灰を僅かでも削るように掃射する姿。

 全員の意思が一つになって、戦っている。

 AGEもGEの垣根もなく、力を合わせて戦う姿。

 

 天日は思う。

 これがわたくしの、相棒の起こしたかった奇跡の姿か、と。

 

くおぉぉぉぉぉぉおおんっ!!!(リザーブリザーブリザーブ)

 

 神機だけでなく、人型部分から炎が漏れるように余剰オラクルが溢れ出す。

 これ以上は限界だ、なのに。

 

 ──足りない。まだ足りないぞ、神機ちゃん! 

 

 天日の脳内で、相棒が声をあげる。

 息を飲んで、天日は歯を食いしばって再び翔け出した。

 

 

 ◇

 

 

 イザナイがヴェルナーに頼んでいた物があった。

 それはイザナイが信頼できた、この状況を打破できると信じた最強の弾丸の存在。

 

 その物はダスティミラーのアインと名乗る男と接触してもらい、初めて完成した。

 男の正体はソーマ・シックザール、始まりのゴッドイーター。

 

 ──現在の欧州で唯一ブラッドアーツが使えるその男との接触により、開発させたブラッドバレット。

 

 

 ゲーム内で、おそらく最強の弾丸の再現。

 

 さらにシステムのないこの世界での魔改造。

 

 

 その名も。

『メテオ』改め──。

『──ディカプルメテオ』

 

 

 通常のメテオバレットの10倍の火力を目指したそれは、普通の神機では肉体と神機に保管できるオラクルの量じゃ足りない。

 

 だが、完全にアラガミ化して身体がレトロオラクル細胞と化した彼は、身体の耐久限界が許すまで、敵から奪うオラクルを保有していく。

 自身をオラクル細胞のタンクに使うことを決めていたのだ。

 

 それでも──。

 

 

 ◇

 

 

 最大限強化したはずの砲身が煌々と赤く燃える。

 極東の技師『楠リッカ』の銘が打たれた神機。

 

 転生特典とも言えるその神機を最大限活用、限界突破させる。

 

 人型の顔面にばきりっ! と嫌な音がして亀裂が走る。

 渦巻くように火の粉が溢れる。

 内側に沸々と湧き立つオラクルが漏れ出さないように、必死に天日は相棒にオラクルの補充を繰り返す。

 

 既に人型だけでなく下のキュウビ体にまで波及影響して獣の口からもチロチロと体内に留めきれないオラクルが溢れ出す。

 

 ──まだだ! まだ足りてねぇ!! 

 なんて神機使いの荒い相棒なんだ、牙を食いしばって天日は喰らい続ける。

 

「──ぐぉん゛(り゛ざーぶ)!!」 

 

 キュウビの三叉に分かれた吸引尻尾がひび割れる様に光になる。オラクルが立ち上り、九つの光の尻尾が出来上がる。

 人型の体がバキバキとひび割れていく。

 

 ──足りろ!! 足りないか!? ……足りたッ!!! ぐ、がっ!? 

 

 脳内で相棒が歓喜の声を上げた時、人型の神機の侵食されていない方、左腕が弾け飛ぶ。

 顔面の左目が弾け飛び、灼眼からオラクルの炎が渦巻く。

 

 ──くそ、足りたけど、体が持たねぇ……! それでも、意地でも。

 ────ぶちかましてやるよ!! 

 

 脳内相棒が、意地を張って叫び続ける。

 本当にしょうがない相棒ですわね。そう考えながら天日は背中の人型を守るようにオラクルのバリアを張り、翔ける。

 

 バシュウ、と紅蓮の領域を天日が地上方向に一度抜け出る。

『終末の黄昏』の下で、一段と強力な足場を作って思いっきり踏ん張る。

 

 ──やるぞ、神機ちゃん! 

 やりますわよ、イザナイ! 

 

 

 目の前の『終末の黄昏』が堕ちてきたら、何も守れない。

 

 彼が美しいと思った世界も! 

 彼が好きになった女の子も!! 

 相棒の大切な叶えたい夢も!!! 

 

 後戻りなんてできませんわ(No way back)! 

 

 天日は吠えた。

 

 ──俺は。

 わたくしは。

 

 

 ──ゴッドイーターだ!! 

 

 

 その瞬間、天日に向かって地上からオラクルビームとは違う柔らかな金糸が伸びてくる。

 

 

  『エンゲージ(繋がる)

 

 

 各地から、天に向かって金の光が集まってくる。

 各地で光の柱が立ち上がり、空で吠える天日に届く。

 

 エンゲージ。

 繋がる力。

 たくさんの想いが伝わってくる。

 今を生きる人たちの想いが。

 

 生きたいという想いが! 

 勝てと、勝ってくれと!! 

 確かに流れ込んでくる!!! 

 

 

 

 

天日の中。

 イザナイは朦朧としていた。

 意地だけで魂を、意識を保っていた。

 

 魂に、金の糸が絡む。

 意識に直接語り掛けられた。

 

 クリサンセマムのメンバーの声が確かに聞こえた。

 

「「「「「「「「必ず帰ってきて! イザナイ!!」」」」」」」」

 

「おとうさん、フィムいい子にしてるから!」

 

「必ず迎えに行く──愛してる」

 

 人型が、ニヤリとギザギザの歯をむき出しにして笑った。

 灼眼が黒い渦巻き模様にこの瞬間だけ戻った。

 

 体が炉心になる。

 心で体を動かす。

 

 エンゲージのおかげで、限界だった体躯が持ち直す。

 

 人型が、イザナイが神機を天に向ける。

 歯抜けのようになった体のせいか、照準が定まらない。

 左手も使おうと思ったが、先程吹き飛んだ。

 

 そんなとき。

 

 誰かが黄金に染まる空の上なのに、

 イザナイの腕を支えた気がした。

 

 声。

 

 幻聴か? 

 いや確かに聞こえた。

 胸にしまった形見の本がオラクルの余波を受けている。

 燃えていた。

 イザナイの心臓で、燃え盛った! 

 

 聞こえた声の内容は。

 

『もう足引っ張らないからよ』

『俺たちチームだろ? 想いを届けにきたぜ』

『『ぶちかませ! 俺たちの英雄!!』』

 

 ああ、まかせろ。

 

「おれは──『ペニーウォートの英雄』だぜ」

 

 

 

 

さまざまな色合いのオラクル光。

 想いの金糸がくるくると絡む。

 

 美しいと、天日は思った。

 

 これが、彼が私に見せたかった世界の光景。

 悔しいけれど、食欲に勝るかもしれない。

 

 いいえ。

 

 

 ──勝る。

 

 

 ぱきん、と楔が砕けた。

 捕食衝動が揺らいでいく。

 

 天日は捕食衝動を。

 この瞬間、超越した。

 

 

 

 

 天日が顎を大きく開け、巨大なオラクルエネルギーの塊を生み出す。

 イザナイの全身から溢れていたオラクルが、侵食した神機の銃口に集まっていく。

 

 ギギギ!! 

 金属が限界にひしゃげる音が神機についていたロングブレードが融解したことを告げる。

 

 次にシールドがポトリと外れて、あっけなく重力に引かれて地上に流れていく。

 

 最後まで仕事をするアーティフィシャルCNSが黄金に煌めく。

 

 心臓で燃え盛っていた童話本がバラバラになって空へ舞った。 

 

 そうして真っ赤に染まった最後のブラスト砲が──。

 

 

 ──極光を天へと届けて、炸裂して消えた。

 

 

 天日の目から、一粒だけ雫が溢れた。

 抜け殻のように空を見ながら笑顔のように牙を剥く、動かぬ人型を背中に乗せて空を去る。

 

 繋がるモノがなくなったのか、地上からのエンゲージが切れていく。

 善良なヒトを受け入れた、太陽より輝かしい黄金の広間は消える。

 

 膨大なエネルギーは『終末の黄昏』を突き抜け天に昇り、極光を放ちながら地に向けてゆっくりと落ちていく。

 集まった蝕灰を食い散らかして、更に規模を増大させながら。

 

 ──極星が、堕ちる。

 

『バラン』本拠地で地下深く、中央に隠されていた『セントラルコア』は、あっけなく。

 本当に呆気なく極光に包まれ捕食され、地上から完全に消え去った。

 

 天ではメテオでも食い尽くせなかった漂う蝕解が、制御を失って溶けてゆく。

 

 空が黄昏から蒼穹へと変わった。

 

 ──『終末の黄昏』が、去っていった。

 

 

 ◇

 

 

 銀髪の少女とアラガミの少女は手を繋いで、ずっと空を見ていた。

 

 人を待っていた。

 

 地上から見えた空には。

 雲一つない、美しい空が広がっていて。

 

 それなのに、ざぁざぁと雨が降る。

 誰かが泣いているように雨が降り始める。

 

 虹がかかったその空を決して忘れないだろう。

 

 

『クリサンセマムの鬼神』と呼ばれた少女の始まりのミナト。

『ペニーウォート』には『怪物』と呼ばれた青年がいた。

 

 

 

 

 

 ──知る人は皆、彼を『英雄』と呼ぶそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数ヶ月が経った。

 

 

 晴れ渡る空の下、バラララとヘリが飛ぶ音がする。

 その中で、複数人の人間がはしゃぐように喋っていた。

 

「いやぁ、埃被ってたヘリがもう一度飛ばせるようになるなんてねぇ。おでんパンもうまい!」

「しっかし俺たちのことをまだこっちで覚えてる人がいるとはねぇ! ……みんな死んじゃったんだと思ってた」

 

 黒髪の女性がおでんパンという串ごとぶち込んだ謎パンを串ごと頬張る。それを横目にバッチをつけたニット帽を被る金髪の青年が頭の上で手を組みながら、感慨深く呟く。

 二人とも、黒い腕輪をしていた。

 いや、そのヘリ内にいる人物たちのほとんどが黒い腕輪をつけている。

 

「ロミオ、縁起でもないこと言ってんじゃねぇ」

「でもさぁギル、七年経ってたんだぞ? 極東にはオラクル不活性化の聖域があったからなんとかなったもののさぁ」

「それでもだ。絶対に向こうでそんなこと言うなよ、敵意を買うぞ」

「ロミオ先輩空気読めないからなぁ………」

「ロミオは空気読めないからな……」

「ちょナナとリヴィひどくない? 俺はみんなを元気付けるためにいつもわざと読んでないんです!」

 

 その後もワーワーと騒ぎながらヘリは進む。

 

「ジュリウス、みんな楽しそうですね」

「ああ、まるでピクニックだなシエル。隊長もそう思わないか?」

 

 ジュリウスと呼ばれた青年に隊長と呼ばれた青年は軽く笑いながら頷いた。

 そう、このヘリに乗っているメンバーはかの『ブラッド隊』である。

 なぜ彼らがヘリに乗っているかと言うと。

 

「今回の作戦は、欧州からの緊急依頼でしたね。ミーティングのおさらいをしておきましょうか」

「灰域異常を一人で突っ走ってなんとかした人を助けるためだと。どこかで聞き覚えがあるな、ジュリウス」

「……あの時はあれが最善だった。次はお前らを頼るさ」

「ゴッホン! と言うわけでぇ! 後輩を助けに行くんだよねー!」

 

 咳払いをしたナナが腕を勢いよく振り上げる。腕が顔の横をかすめていったロミオが非常にびっくりした顔をした。ブラッド隊隊長と目が合い驚きを共有しようとしている。

 

「えっとぉ………。で、結局どうするんだっけ? なんかアラガミ化がなんとかでぇ、新しいエンゲージがどう……とか?」

 

 腕を振り上げたナナが腕を振り上げたまま首を傾げた。

 

「実を言うと、我々も耳を疑う情報ばかりでしたからね」

「人型アラガミの存在と、アラガミ化した後に捕食衝動が無くなり主人を待ち望む神機か」

「確かに神機からその人の日常などが感応現象で伝わってくることは多々あった……が、よほどの信頼関係だったんだろう」

 

 ナナの疑問にシエルが頷き応える。その後にギルバートが帽子を深く被り直しながら、リヴィが腕輪を摩りながら呟いた。暗い雰囲気を感じ取ったロミオが気まずそうに声を出す。

 

「でー、あー。……うん! とにかく隊長の『血の力』がいるんだよね?」

「隊長の『喚起』で奥底に眠ってしまった意識を呼び覚まし、向こうの『コアエンゲージ』でアラガミの中に入って……入ってどうするんだ?」

 

 全員の頭の上にハテナが浮かぶ。

 

「……会いたい、のでしょう。私たちも、そうでしたから」

「そうだね。それに、キースって博士がなんか開発してるんだっけ? あと、ソーマ博士もいるんでしょ?」

「元は極東の論文だったらしいが、『コアエンゲージ』を開発するほどの博士だ。手立てはあるのだろう」

 

 ところでだ、とジュリウスが話を区切り、親指で積み込んできたものを指差す。

 

「これは……何に使うんだ?」

「なんかよく分かんないけどさ。──結婚式だって!」

「……正気なのか?」

 

 淡いピンク色の缶に入ったドリンク。

 極東の人間は知っている、その壮絶な味を。

 断水の果てに出来上がった、とある博士の究極。

 

 そう、その名は! 

『初恋ジュース』であった!! 

 

 ブラッド隊は全員味を思い出し、顔を酸っぱそうに窄める。

 当然、頭の上のハテナは消えないまま。

 そんなハテナを浮かべるメンバーに操縦席から声がかかる。

 

「おーい、おしゃべりもいいがそろそろつくぞー!」

「はーい! リンドウさんとクレイドル隊長さんもありがとうー!」

「あいよ、ちゃんとベルトするか捕まっとけよー?」

 

 ナナの言葉にリンドウが声を返し、クレイドル隊長は親指を上げた。

 そう、アラガミ化に関して詳しい人材も搭乗しているのだ。

 

 そうしてしばらく後、極東から遠い西の果て旧フェンリル本部に辿り着くのだった。

 

 

 ◇

 

 

 柔らかい風が頬を撫でた。

 眩しさを感じて顔を顰める。

 

 じわり。目を開けようとするが眩しくて目が眩む。

 

 ずいぶんと、長いこと寝ていた感覚があった。

 

 それでも、近くに誰かがいる気がして。

 

 好きになった子との約束を果たすために、頑張って目を開けようとする。

 すると、影がさす。

 眩しくなくなって、恐る恐る目を開けた。

 

 あの子が顔を覗き込んでいた。

 

「……ただいま」

「ん。おかえり」

 

 ぽたり、と雫がただいまと言って眠っていた方の顔に落ちる。

 晴れているのに、雨が降ってきたみたいだった。

 

 あの日の続き。

 

 青年は体に鞭打って頑張って起き上がって。

 涙をこぼす女性を抱きしめて。

 お互いに顔を近づけて。

 

 

 

 イザナイとオリーネは再会の喜びを交わしたのだった。

 

 

 




 完結です。

 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
 お気に入り、評価、ここ好き、感想。
 どれも創作の活力になり、励みになりました。
 あと誤字報告なども非常に助けになりました。

 GE3は他作に比べるとプレイ人口が少ない気がしますが、
 この作品が少しでもプレイした人や興味を持った方を増やせていたなら幸いです。

 それではまた次の機会でもあれば、
 その時はよろしくお願いします!
 

 唯のかえる
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