【完結】ペニーウォートの怪物   作:唯のかえる

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その名は、──童貞を殺す服。
誤字の指摘等ありがとうございます。


第3話

 クリサンセマムに乗船してから数日たった。

 

 俺はユウゴに、クリサンセマムでのリーダーをやるように指示。

 色々話し合って以来、アラガミ討伐に出ることなく実に平和的に過ごさせてもらっている。

 何故そんなことになっているかは、今読んでいるレポートが関係しているのだった。

 

 俺たちのいたミナト『ペニーウォート』の灰嵐後の状況調査報告書だ。

 ブリッジにあるターミナルを使って、内容を読みこんでいく。

 

『灰嵐被害によりペニーウォートは完全に機能を停止。

 再建には相当時間がかかると予測されている。

 灰嵐時、逃亡したミナト責任者及び幹部の捜索。

 後日、中破状態の灰域踏破船をグレイプニル派遣の捜索隊が発見。

 重傷者はいるものの死亡者はおらず、事実関係の調査の後に解放される』

 

 そう言った内容が、書かれていてため息。

 

「……想定通り保険を打っておいてよかったな。ハァ、バタフライエフェクト仕事しねぇなぁオイ」

 

 ……死んでほしかったというわけではない。せめて機能不全としてグレイプニルに吸収されてくれるのが理想だった。

 連中が生きているという事は、確実に俺たちペニーウォート産のAGEは引き戻されるだろう。原作だとユウゴ達はオーナーであるイルダに救われた。

 だが、この現実では少なくとも俺は確実に戻されるだろう。原作ではいくらでも代わりがいるAGEであること、灰嵐被害のせいで資金難に陥っていただろうから何とかなった問題だ。

 

「ヒヒヒ、名前が重いってのも厄介だなぁ」

 

 まぁ予定通りか。カリカリと、頭の後ろを掻く。首輪とそこから揺れる千切れた鎖がチャリと音を立てて揺れる。

 首輪も外そうとしたんだが、ミナト幹部の承認がないと首がぶっ飛ぶ感じになってるらしく、キースが大層怒っていた。まぁペニーウォートの連中ならやるだろうなぁと思ってたし、……まぁ首元が爆発した程度で今の俺の体が朽ちることもないんだろうけどな。俺の心に住み着いてるお嬢様も平気ですわ! って言ってる気もするし。

 後首輪って特徴のない俺的には、結構あり寄りのアクセサリ―なのでは? 好きな漫画のキャラも『自分を飼い馴らせるのは自分だけ』みたいな意味でチョーカーつけてたしな! いや、今まで飼われてた俺から出る台詞ではないか……。悩ましいですわね。

 

「ま、ユウゴ達は契約書で今審査状態だし、アイツらの実力なら自分の居場所位勝ち取れるだろ」

 

 どのみち、こうなった場合は戻る予定だった。

 初手でこのミナトの主人に吹っ掛けたのは、ペニーウォートに対し『怪物』を保護してやった事で利益を出し、アイツらを安く購入をさせるためだし。そもそもゲームが行き当たりばったり過ぎて、俺がここにいることで起きるバタフライエフェクトが怖すぎるんだよ。大体この世界、行動力のない人間に厳しいしな。行動力があって優しい人たちもアラガミに大体食われるし。

 ただ、イルダさんが俺ごと救おうとしてる感じするんだよな。

 ありがてぇけど、無理だし諦めてくれ。

 

『ペニーウォートの怪物』は、あのミナトの汚職まみれで管理不足の証明素材で、代わりがいるってのは俺たち以外があのミナトで暴力を受けるという事だから。ま、ペニーウォートが建て直せればの話だけどな。

 

「……ヒヒ、気が滅入るねぇ。初恋ジュース飲みたいなぁ」

「聞いたことない名前のジュースですね。お好きなんですか?」

「!?!?」

 

 ターミナルの電源を落として、ぼやく。

 気が付いたときには一回り身長の小さい女性が後ろに立っていて、キュウリを後ろに置かれた猫みたいに飛び上がった。

 

「わわっ!? そんなに驚かれなくても!」

「ヒッ、ヒヒ。し、心臓に悪い……ぜ!」

 

 危うくロールプレイの皮が剝げるところだった。危ない所だった。

 自分でも予想外なくらいこの船に乗ってからリラックスしてるみたいだ。ペニーウォートでいつも緊張感を持ってたから真後ろに人間が立つとかありえない現象すぎて驚いた。

 背中を見せる=暴力を受けると体が認識してるのがつらい。

 俺がビックリしたことに驚いた様子のその女性は、エイミー・クリサンセマムというこの船でオペレーター並びに他キャラバンとの交渉などを担っている人物だ。

 髪の毛ピンク色のピンクちゃんですわ! 

 

「あ、あはは。驚かせてしまってごめんなさい」

「い、いやいい。驚いてないから。全然驚いてないから」

「ぷ、ふふ」

「……」

 

 だ、大丈夫。全然アレだから。平気だから。

 好感度上げたらマジで主人公勢力のこのミナトの人たち、俺ごと買おうとする気がするしな。俺が別な組織に渡ったら、それこそペニーウォートは終わる。具体的には虚偽報告とAGEの管理状態で。いや、終わってくれるだけならいいんだけど報復とか普通に考えそうな場所だからなぁ。この人たちに迷惑かけるのもあれだし……。

 俺が押し黙ったことで、エイミーちゃんは慌てたように弁解する。

 

「あ、ごめんなさい。その、貴方も普通の人なんだなって」

「俺はどう見ても人だろ。アラガミにでも見えてたか? そう見えてたら困るんだが……」

「ごめんなさい! そうではなくて、えっと」

 

 ちょっと歯がギザギザしてますけどね! ちょっと……? 

 人相も結構悪いけどね!! 余計なお世話ですわ! 

 脳内漫才してると、両手を胸の前に当てて上目使いでもう一度謝られる。

 うっ、あざとい。可愛いなこの人。

 服装もGE世界にしては露出が少ない所もグッド。

 しかし、そのおかげかふんわりスカートがえっちだ。ぴっちりタイツも素晴らしい。

 ……おっぱいもでかくね? 

 

「噂を聞いて、怖い人なのかなって思ってたんです。でも、オーナーとユウゴさんたちが少し喋れば、分かるって言ってて……」

「……?」

 

 やべ、服装審査しててあんま聞いてなかった。

 なんか分かるとか分からないとか。

 会話の流れから『怪物』の噂が事実か判断してますわ! 

 俺の脳内お嬢様が完璧すぎる件。

 とりあえず、アメリカンスタイルで肩をすくめとこう。

 

「……いえ、あくまで私の所感なので何でもないです。えっと、ところで初恋ジュースってなんですか?」

「ヒヒヒお嬢ちゃん、独り言を立ち聞きするのはたちが悪いぜ?」

「えへへ、ちょうど声をかけようとしたらその単語が聞こえてきて」

「それ以前の独り言聞いてないよなァ?」 

「はい! 聞いちゃいけないようなこと、なにかありました?」

「……別に」

 

 聞いてないならいいか。

 契約書の件掘り下げられても面倒だし。ユウゴ達は絶対反対するし、ついてくる奴が現れたら原作ルート再現できずに詰んだなんだ。なので、離れる間際に暴露して『楽しかった友情ごっこ』みたいなことすればええやろ。(適当)

 話をそらすために肌身離さず持っている児童本を取り出す。ペニーウォートを脱出する際に持ってきた挿絵がちょっとえっちな奴だ。

 

「コイツに書かれていたジュースだ。断水と節電の末に作られた至高の一品らしい。何でも初恋の味がするらしい」

「初恋、の味ですか?」

「ヒヒヒ、せめてどんな味か知りたくてなァ」

「え?」

 

 めっちゃ衝撃的な味らしいけどな。GE1で『初恋の名に相応しく、ほろ苦さと甘酸っぱさが同居した全てを阿鼻叫喚の渦に叩き込む、まさに殺人ドリンク!』って言われているくらいだ。あと、具体的には伏せるが神機ちゃん的にこんな美味しいもの味わったことがないって言ってるくらいアラガミ的には美味いらしい。『任務に持って行くと、心なしかアラガミが寄ってくる気がする』とか何とかいうセリフもあったしな。ぜひ、飲んでみたいですわ! 

 

「……死ぬまでに味わってみたいだろそんなの、さ?」

「──っ!」

「む」

 

 エイミーちゃんがこの世の終わりみたいな顔で、両手で口を押えてどっかに走り去った。

 ドン引きのレベル高くない? ちょっとー! ねぇ! 

 ちょっと気取っただけじゃん……。

 次どんな顔して合えばいいんだ……。

 

「なんだよ、別にいいだろ。そのくらい……」

 

 その後、ちょっと不貞腐れて神機ちゃんをピカピカになるまで磨き上げに行くのだった。

 




特別に夕飯のおかず分けてくれるところ好き。
感想でやる気一杯もらえました。ありがとうございます。
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