【完結】ペニーウォートの怪物   作:唯のかえる

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第6話

 暗闇に、輝く円環がゆらゆらと揺れている。

 

 それは『エンゲージ』という、AGEに与えられた力。

 繋がる相手と理解しあう奇跡の力。

 

 金と()を混じらせたソレはゆらゆらと揺らめきながら俺だけに届く言葉を発する。正確には声を発してるのは円環に包まれた存在だ。

 

『起きてくださいまし。眠ってもいいんですの?』

 

 朦朧とする意識。起きなければ。

 意識を浮上させなくてはいけない。

 クスクスとその声は笑いを滲ませて言葉を続けた。

 

『ねぇ誓約をお忘れかしら? ……もう食べていいんですの?』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

『返事がないですわね。それじゃあ……』

 

 イタダキマ──。

 

 

 ◇

 

 

「すんはっ!?」

 

 いつもより活発な脳内お嬢様からの死刑宣告を目覚ましに咄嗟に意識を浮上させる。あぶねぇ、三途の川見えてた。過去一のヤバさだったんですわよ……。心の底から繋がっちゃうところだったんですわ!! 

 

「お早いお目覚めだな」

「死んでなかったか、イザナイ!」

「おはよう! あれ、今おめめ真っ赤だったよ?」

 

 フィムが顔を覗き込んでくる。君、人の顔覗き込むの好きねぇ。バクバクと鳴り続ける心臓を押さえつけながら、フィムの頭を撫でてやる。

 む、手錠がつながってる。なんでだ? あ、なんかノリと勢いでえいやっ! とカチッてやったかも……。アホですわ。後でキースに外してもらおう。

 

「フィム、本当かぁ? いつもみたいにどす黒いぐるぐる目ん玉だぞ? ……てかイザナイのクマすんごいなー。夜更かしもほどほどにしろよ?」

「あれー? おかしいなー? 赤色、黒色?」

「寝不足をジークに指摘されたらおしまいだぞ、イザナイ」

「どういう意味だ! けっ、これだから生真面目ユウゴは……」

 

 目の前にユウゴ、ジーク、フィムの三人がいる。フィムのお父さん呼びが辛いんです。ジーク許さねぇからな。いつも通りやんわりと諭すか。小さい子に強く否定できないんですわ! 

 

「……おとうさんじゃなくて、イザナイさんな?」

「うん。イザナイおとうさん!」

「はぁ……」

 

 あ、今回もだめっぽい。キラキラした目しすぎなんよこの子。

 周囲の確認を行うと、イルダの執務室のソファに寝ころがされていたようだ。

 頭と首がめっちゃ痛い。オラクル細胞が全力で癒しにかかってるのを感じる。看守とかにボコボコにされた後のあの感じだよ。……いや、ヴァジュラに猫パンチ食らったくらいのダメージ受けてるんだが。あれ、俺ちゃんと船の中にいたよね? 外でアラガミに襲われたのか? あれ? 俺この直前なにしてたっけ。確か、格好つけてペニーウォートに戻るぜ! って言って……。

 グッ、頭が割れそうな痛みが!? 

 痛みに呼応するタイミングで、イルダの執務机に詰め寄っていたオリーネが声を上げる。

 

「イルダ、説明して」

「いえ、あの。だからね、オリーネ? 私の口からは言えないというか、イザナイとの契約というか」

「むぅ。イザナイ、起きたなら説明して」

 

 イルダが心底困った顔で詰め寄るオリーネをいなしてる。ついでに俺にも謎の説明を求めてくる。なんだ? 何の説明だ? 全然分からないんですわ! 

 

「いや、待ってくれ。状況がつかめないんだが。……後凄く頭が痛い」

「あれは痛いだろうな……」

「ああ、ぜってー食らいたくねぇ……」

 

 なんだ? ユウゴとジークがひそひそと何かを話している。あいつら何か知ってるな? 後で聞くか。

 

「イザナイおとうさん、平気? 痛いの痛いの飛んでいけ!」

「む、んー。あーそうだな。フィム。ヒヒヒ、ありがとう痛くなくなったぜ! あと、イザナイさんな?」

 

 フィムが痛いの痛いの飛んでいけをしてくれた。くっ、流石に痛がり続けるとこの子が無力感にさいなまれたりしてアレだよな。痛いままだけど、ここは男のガマンだな。

 

「あー、ユウゴ。オリーネは何の説明を求めているんだ?」

「まぁ俺達からも聞きたいところではあった。イザナイ、ペニーウォートに戻るとはどういうことだ? 俺たちは灰域種の討伐実績も得た、アンタが俺に説明したイルダに見せる実績は十分達成してるはずだ」

「……ああ、それか」

 

 ユウゴが真剣な顔つきで俺を見てくる。オリーネのお嫁さんを断った事かと思ってちょっとドキマギしてましたわ……。

 ま、こいつらも俺よりすごい灰域種を討伐したし、イルダも価値が分かっただろう。ネタ晴らししてもいいかねぇ。……いや、確認だけはしておくか。

 

「ヒヒ、イルダ。契約は守ってるだろうなァ?」

「当然だわ」

「──買うか、買わないか」

「当然、買うわ。現状必要な力だもの」

 

 端的な会話。ユウゴ達が頭にハテナを浮かべている。

 

「ヒヒヒ、なら良いかァ」

「ねぇ、一つ聞かせてほしいわ」

「ん?」

「私は、貴方を信用させることが出来たかしら?」

 

 契約の時の話を思い出す。

 初対面の人は俺は信用できないと言った。

 ……そうだな。俺たち人間は言葉が使えるんだ。

 使わないと、伝わらないよな。

 

「なぁ、AGEを人扱いする。それがどれほど難しい事か分かるか?」

 

 俺は肩をすくめる。

 

「偏見、周囲との同調、力の差、他のGEとも違うアラガミに近いという隔離性」

「え?」

 

 イルダは急に何の話をしだしたんだと、目を瞬く。

 

「ヒヒヒ、クリサンセマムに来てから、久しぶりに自分が人間であるって思い出せた」

 

 自然と、いつものような作ったような笑みじゃないただの笑顔が浮かんでくる。

 ユウゴ達を見る。真面目な顔で、頷いてくれる。

 

「たかだかAGEとの契約を威圧的に詰め寄られても律儀に守ってくれて、ありがとな」

「私は、人として当然なことを……」

「そんな奴、このご時世に中々いねぇよ。手錠をかけて、必要以上の拘束をして、銃を突きつければAGEが作った契約書なんて本当に紙切れなんだよ」

 

 最初は少なくともそうやってこのミナトの程度を見るつもりだった。だが、ここは手錠を外して自由に歩き回ることが出来た。食事もみんなでそろって美味しく食べさせてくれた。

 何より、契約を守ってくれた。契約以上の扱いをしてくれた。

 

 この船に乗る間は、家族だと。

 貴方達は、人間だと言ってくれた。

 契約書には、AGEとしての商品価値を貶めるような暴力を振るわない程度の事しか書いてなかったのにな。

 

「『信用』なんかじゃない」

 

 少し溜めて。

 しっかりと目を見てイルダに答えを返す。

 

「アンタは、俺達を『信頼』させてくれたんだ」

 

 俺の言葉を聞いたユウゴ達も頷く。

 

「ん」

「……ああ。この時間は蕩けるように甘い時間だった」

「おう! こんなさ、俺たちを信じてくれて本当にありがとうな!」

 

 俺とイルダの会話に部屋にいる全員が神妙に聞いている。……? あれ、この感じ? 

 

「ヒヒヒ、フィム。ドアの向こうに誰かいねぇか?」

「うん! えっとね、ルルとクレアとエイミーとキースとリカルド!」

「大人組全員じゃねぇか!!」

 

 引き戸がシュッと開いて気まずそうな顔ぶれが見える。俺は学ぶんだぜ。さすがに聞き耳たてられてるのも気分悪いからな! 死ぬほど恥ずかしいもんよ! 

 

「ま、全員そろったならネタ晴らしするかねェ」

「いいのかい?」

 

 リカルドが俺を見る。俺はそれに対して頭を掻いた。言うしかないだろ、だってさぁ。嘘だって分かるような嘘でも信じそうな子がいるんですわよ? フィムを見つめると首をかしげてくる。まったく純真無垢だねぇ、君ィ。

 

「いやぁ、本当はギリギリまで黙っておいてさ、お前らなんか本当は嫌いだったぜ的な感じで出ていこうと思ったんだけどな」

「おとうさん、フィムの事、嫌い……?」

 

 ほらな? 俺が完全にこんないい子だってことを忘れてたのが悪いんだけどさぁ。小さい子に対しての友情ごっこしたら心壊れちゃーう! 絶対にダメでしょそれは……。

 

「そんなことないぞ? よしよしよーし、いい子だな。……ま、そういうわけだ。後、イザナイさんな?」

「うん! イザナイおとうさん!」

「ハァ……」

 

 幼い子の心に傷を残すようなことをしたくなかった。エゴだなぁ。結構ひどい事言うつもりで考えてたからなぁ。いやぁしかし、逆に言わなくて済んだしフィムに助けられたのかもな。

 大事な仲間たちにきつい言葉を吐くときって大体自分も傷つくしさ。

 童話本を取り出し、そこに隠すように挟み込んであった契約書を取り出す。それを簡単に読み上げた。

 

「1、ペニーウォート産AGEの商品価値を貶めることをしない事。2、PW-01371以外のAGEの能力を審査し、優秀と判断すればミナト間移籍の検討を行う事。3、契約書の内容をクリサンセマムの人間は決して口外せぬ事」

「……初めにやったのか、それを」

「ヒヒヒ、まァな! ユウゴ、外に出られたなら逃げる場所を作らなきゃ追いかけられ続けるだろ?」

「それは……、そうだな。ちょっと甘く見てたかもしれない」

「いい勉強になったな。今度は、お前が皆を守る番だ」

 

 ハッ、とした顔でユウゴが周囲のAGE達の顔を見る。……そして最後に、真っ青な顔で俺の顔を見てきた。あー、多分気が付いたな。大分濁したんだけどなぁ、ちょっと意味深すぎたかも……。

 

「PW-01371以外って……? アンタ、まさか」

「あら、そういえばそんなに項目の少ない契約書なんて珍しいわねー? ね、リカルド」

「……あー、そうですねぇオーナー!」

「ヒヒ、契約に律儀なのは良いが、白々しすぎないかアンタら。それじゃまるで続きがあるみたいじゃないか」

「……あるんだろ、続き。クソ、ジークお前の話に耳を傾けておけば!」

「え、なに? なんだよ、この重い雰囲気……? ユウゴ、イザナイはどうしたんだよ」

 

 む、契約書の内容は言わないっていうことは守ってるけど……くー、俺の契約書の詰め方が甘かったかな。てかこんなお節介な人たちと思ってなかったし! 次があれば生かしたいところですわ! 

 それと、ジークはいつもの野生の勘で気が付いてた感じかな? ……話にはついてこれてないが。無言のオリーネが怖い。なんだろう首と頭が痛む。

 まぁ、ユウゴがすげぇ目で俺を見てきてるしさすがに答えるしかないか。

 

「4、PW-01371。通称『ペニーウォートの怪物』の保護返還によるその他AGEの価格交渉および価値の偽装」

 

 呆然、だろうか? 契約書を知らなかった皆惚けた顔でこっちを見つめてくる。フィムだけ訳が分かってないのか、雰囲気が怖いのかで裾を掴んできた。

 雰囲気を壊すために、おちゃらけて話を続ける。 

 

「ヒャハハ! だってよぉ、俺は『ペニーウォートの怪物』だぜ? お前らとはぜんぜーん実力差があるわけ、分かるゥ?」

「でも俺達、ハウンドの力があれば! 実際に中型灰域種だって倒せて……! 順調なハズで!」

「ああ、何とかなった。ちゃーんと示せたな! よくやったユウゴ、えらいぞ!」

 

 ユウゴが冷や汗まみれで、イルダのほうを向く。ああくそ、こんな顔させたくなかったのになー。

 

「……イルダ! 無理言ってるのもわかる! でも、イザナイも大事な仲間なんだ!」

「『怪物』いえ、イザナイの購入の話はね。最大の権力を持っているグレイプニルから過去に出てたのよ。でも、未だ彼はペニーウォートの所属。それが、全てなの」

 

 まぁ、グレイプニルに買われたらペニーウォートは灰域に沈みますからね。ええ、汚職バレ的な意味でね。そりゃ売らないよねって。

 

「くそ、何か方法があるはずだ! ……そうだイザナイ。イザナイなら、何かあるだろ?」

「……」

 

 うおおお、こっちに来た!? えええ、何言えばいいの? 

 

「教えてくれよ! 何時もみたいに、アンタが大好きな極東の話をするときみたいにさ!!!」

「……すまんな。ま、気にすんな! ヒヒ、ペニーウォートもどうせAGEまた集めるだろうし、俺はそいつらを守るからよ!」

「ッ!! くそ! くそ! 俺は、俺はそんなことも思い至らなかった……!! 自分の事ばっかでクソッ!!!」

 

 う、うわああ! 火に油注いだ!! 助けてGEシリーズ名言集!!! 

 

「あー、ほら。この本にも書いてある。『ひとりが背負えるもんなんてたかが知れてる。大概、自分のことで両手が塞がってて、たまーに手が空いてるとき、大変そうにしてる奴にちょいと手を貸してやるくらいのことしか出来ないんだ』てな? あんま気にすんなよ」

「……ッ!」

 

 お、リンドウさん台詞効いた! 流石リンドウさんだぜ!! 

 あの生真面目のユウゴがめちゃくちゃ取り乱している。いや、こうなるのが目に見えてたから、終わり際に唖然としてるところで逃げ出そうと思ってたんだよね。どうしようかなぁ、まぁでももうすぐクリサンセマムに着くし、そしたらグレイプニルを通してペニーウォートからのAGE返還指示も来るだろしなぁ。

 色々考えたんだけど、ネームバリューがありすぎるのと、やっぱ俺の体の問題もあるからねぇ……。報復とか考えると、何にも思いつかないんですわ。罰が当たればいいとは思うけど、死んでしまえとは思えないんだよね。だってさ、こんな灰域が広がった世界で限界まで擦れ切ったストレスにさらされて、アラガミまで襲ってくんだぞ? よくアイツら自殺とか考えてないよなとかまであるんですわ!

 

「違う、クソ! 俺は! アンタも!! ちくしょう!!!」

 

 ──ユウゴが拳を机に叩きつけた!! 

 

 高そうな会議用の机がAGEの膂力で真ん中からへし折られる。

 うおおおお!? ご乱心、ご乱心ですわ!? 

 フィムがビックリしたのか腰に抱き着いてくる。と、とりあえず背中に隠しますわ! 

 

「……」

 

 肩で息をするユウゴが、下を向いたまま無言で肩で息をしている。部屋のみんなもお通夜みたいな感じになってて気まずい。いやでもマジでしょうがないんだって……! 俺にはもう何も思いつかないもんよ! でもそれ言ったらこの静寂の均衡が壊れそうだから黙っときますわ! 

 

 火に油注ぐよりここは、撤退あるのみ。

 

 そそくさと無言で部屋を脱出しようと思ったが、悲しそうなフィムに抱き着かれる。……振り払うとフィムがかわいそうだし、抱きかかえていくか。

 

 こういう時は、無心で神機磨きに決まりだぜ!! 

 いや、本当にこういう空気にしたいわけじゃなかったんだよ。

 悲しいよりさ、楽しいのほうがいいじゃんやっぱ。

 あーくそ、なんだかなぁ。

 

 そう思いながら、抱き着いてきたフィムを落とさないように抱えて、みんなが集まった執務室から退場するのだった。

 

 

 ◇

 

 

 オリーネは、肩で息をしてるユウゴの背中を叩いた。

 無力感を味わっているのは私も同じだから。

 

「……方法はなにも、ないのか?」 

 

 無言で、イザナイは部屋から出て行った。

 既に覚悟が決まっているのか、迷いのない足だった。

 

 私は私の意見を進呈すると決めた。

 あくまで思い付き程度の役に立たない意見だ。

 私は言葉足らずの直情型で、考えが足りないことが多い。

 

 だけど、ユウゴ達ならそんな意見からでも使える部分を拾ってくれると信じてる。

 

「私はイザナイがペニーウォートに戻るなら、足をへし折ってでもAGEとしての価値を一時的になくしてもいいと思う」

「「「「!?」」」」

「お、落ち着けよ。そんなことをしたらイザナイに嫌われるぞ」

 

 あんな場所、いるべきではない。

 ずっと傷つけられて、戦わされて。こんな優しい場所からあんな場所に戻ったら本当に心が砕け散ってしまう。そして、きっとぼろ雑巾の様に使い捨てられて死んでしまう。

 

 それを防ぐなら──。

 

「私は、イザナイに嫌われてもいい」

「……え?」

「イザナイのおよめさんになれなくても、良い。……それでも、好きな人にあんな場所に戻ってほしくない」

「……」

 

 さっき、咄嗟にイザナイに技をかけてしまったのは私の告白を断られたからじゃない。私の告白を受け入れたり拒んだりする権利は当然イザナイにもある。たとえ拒まれても、もっと好かれるような努力をするだけだ。……彼に好きな人が出来なければだけど。

 

 理由は彼が、あの地獄に戻ると簡単に選択したから。

 体が勝手に動いて、ふざけたことを言ってるんじゃないと隙だらけの背中を掴んで技を決めてしまった。……うん、もうちょっと優しくしても良かったかもしれない。

 ……でも、あそこに戻ったらあの人にはもう二度と会えない気がする。

 私達がいなくなった分まで使われるんだ。休む暇なんて、きっとない。

 いくら彼が強いからって、限界はある。 

 

彼が私たちを守って心と体を砕くなら、先に私は彼の体を砕いてもいい

「いやいやいや、その理屈はおかしい!! 冷静じゃない、絶対冷静じゃない!」

「イザナイ、お前死ぬのか……?」

「イザナイは、私が死なせない!」

「お、落ち着け」

「ね、ねぇ。いったん落ち着きましょう?」

 

 あれ、みんな反対なのかな? やっぱり、暴力はダメかぁ。まぁあくまでいい所だけ拾ってもらえればいいかなって意見だったし……。うーんもっといい意見あるかなぁ。

 でも、オラクル細胞の関係で、ある程度ボロボロの体でも戦場に出なければ幸せに生きていけるはず。……この考え、ペニーウォートの看守っぽくていやだな。

 イザナイも傷つかずに済む、たった一つでいい。

 冴えた方法があればいいのに。

 

 あれ、みんながひそひそと何かを話してる? 

 

「……やべー、あれやるぞ。ほかに方法なかったら多分やるぞ。オリーネ覚悟決まった顔してるもんマジで」

「ジーク、お前が止めろ……!」

「流石に無理だって! ユウゴ、お前の指示なら聞くんじゃないか!? ほら、幼馴染で仲いいじゃん!」

「あんな覚悟決まったオリーネ見た事ねーよバカジーク! というか、俺も結構精神的に来てたのにビックリしすぎて平常心まで戻っちまったよ!! ルル、止められるか!」

「無理だ」

「だよな! クレア、行ってくれ!」

「ええ、私ですか!? 精神安定剤の投与とかそんな感じですか!? 絶対無駄ですよあんなの、ノブレスオブリージュより覚悟決まってますもん! エイミー!」

「ええ!? ゆ、夕飯のおかず一品とかで、どうでしょうかぁ……? あ、ダメそうですぅ!」

 

 皆が一生懸命、話し合っている。やっぱりみんなで知恵を出し合えば、今まで出て無かった知恵が生まれてくる可能性がある。皆良く分かってる。

 私も気合を入れて拳を鳴らす。

 ふんす! と呼吸を整えてもっとたくさん思考する。

 

 ──みんなの空気がざわりと揺れ動いた! 

 

 何か進展があったに違いない。私も混ぜてもらおう! 

 そう思って近づくと。

 

 パンパン!! イルダが手を叩いた。

 なんだろう、非常に頭が痛そうな顔をしている。

 

「はいはい、そこまで……。一応、イザナイをペニーウォートから救う方法は考えてあるわ」

「なに!? 本当か!?」

「彼がいる場所で言うと、拒みそうな気がしたから黙ってたの。それに、あの野生動物みたいな人が『信頼』まで寄せてくれたのよ? やるしかないでしょう!」

「流石イルダだ。……イザナイ、本当に良かったな! 五体満足だぞ!」

 

 ユウゴが、泣き出しそうな顔で拳を天に突き上げた。

 皆も泣きそうな顔で真似をしている。

 わ、私もやる! むんっ!

 

 ズドンと風切り音が響いた。

 

 まるで、私たちを祝福してるみたいだ!

 ……あれ、みんななんでそんなに泣きそうな顔で私を見てくるんだろう?

 イルダがため息をつきながら私たちに語り掛ける。

 

「ただ、その方法だと彼はグレイプニル管轄のAGEになりそうなのよね」

「それでもいい。ペニーウォートに戻るより、絶対にいいだろ。いったいどんな方法なんだ?」

 

 ユウゴが聞くと、イルダは私たちにやるべきことを話し始めた。

 

 話を聞いた私たちは、イザナイを──。

 病院を嫌がる犬みたいに抵抗するイザナイを医務室で健康診断を受けさせるために、船員全員で彼に襲い掛かり始めるのだった。

 




ちょっと調べたいことがあるのでGE2RB部分まで行ってきます。
少しだけ更新が遅れると思います。
アンケートおいておきますので、ご協力していただけるとありがたいです。

アラガミが現れた! なお、灰域踏破船の目の前

  • アラガミ化か! 異常個体スサノオ
  • 捕食しすぎた! 神速種ハンニバル
  • こんな場所で! 全力感応マルドゥーク
  • 悪夢だ……! 絶体絶命マガツキュウビ
  • 親方空から! 進行妨害ツクヨミさん
  • えっちやん! 素敵に美人ヴィーナスちゃん
  • ぼいんぼいん ばるんばるんアマテラス様!
  • マスター 灰域種を一つ
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