【完結】ペニーウォートの怪物   作:唯のかえる

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アンケありがとうございました。
そしていうほど灰域踏破船目の前ではないなと思ったけど……今向かって行ってるからヨシ!


第9話

 まっくらな揺りかごで微睡んでいた。

 優しい声の、悲しい声で、嘆きの声が。

 暖かい声の、怒りの声で、叫びの声が。

 

 わたくしを微睡みから呼び覚ました。

 

 彼はまるでわたくしが本当にいると信じていた。知っていた。

 愛情をもって友情をもって、わたくしを唯一の相棒と定めた。

 

 彼に出会って一年目。

 戦い方を教えてくれた人が、アラガミに上から喰われる。

 彼に使われて二年目。

 夢見ぬ少女に夢を説く。自身は此処に夢を馳せないくせに。

 彼と喰らって三年目。

 二人、助けた仲間が死んだ。気が触れるほどの怒りを吠えた。

 彼と過ごして四年目。

 紅蓮灰域の夜。一か八かの試みを。金の円環で繋がって声を届ける。

 

 ──そうして彼とわたくしは誓約をする。

 アラガミの偏食方向を、会話と理解で定めようとする唯一の人類。

 

 あの紅蓮の夜から三年経って。

 今もなお、その誓約は守り続けられていて。

 毎夜、毎夜。

 寝る間を削って話をくれる。

 彼の目の下のクマは私との契約書のようだ。

 

千夜一夜の物語(アルフ・ライラ・ワ・ライラ)

 綺麗な話をくださいな。

 素敵な話をくださいな。

 貴方への食欲を忘れる位に、続きが気になる話を。

 

 ああ、でも。

 わたくしが一番気になる話は彼のお話。

 あの牢獄で、自身の延長時間(アディショナルタイム)だと決めつけて、うっとおしいコバエ共をわたくしと一緒に食べると既に決めていた彼が。

 たかだか数週間の優しい空間(クリサンセマム)で、顔見知り程度に留めていた少女と新顔に絆され揺らいでいるのが面白くてたまらない。

 

 ふふ。

 彼を例えるならそう。

 綺麗な飾りつけがされた、夢のような食べ物なのでしょうね。

 ああ、食べるのがもったいないですわ! 

 

 ……ところで、わたくしの口調がこんな風になってしまったのは一体全体どうしてなのでしょうか。

 

 

 ◇

 

 

「はっくし!」

『イザナイさん、大丈夫ですか? 風邪気味です?』

「ヒヒ、コンディション問題なしだぜ。頭ン中がざわざわしただけだ」

『頭の中が!?』

 

 インカムから今回の戦闘のオペレーターをするエイミーちゃんから心配するような声が飛んでくる。

 むむ、脳内お嬢様がざわざわしてる? 

 誰か俺にジャンクションしてるよこれ! 

 まぁお嬢様の仕業なら仕方ありませんわ! 

 ──これのせいですわ! 

 

「くしゅっ!」

『あのー、本当に大丈夫ですか?』

「んー? 誰かが噂してるんだろうな」

『は、はぁ。体調が悪ければハウンドと交代してもいいんですよ?』

「ヒヒヒ、それこそ無用の心配だぜ」

 

 運転していたトレーラーをうまい具合に隠せる場所が見つかり、そこへと停車する。

 適当なところに置いちゃうとかじられちゃうからね。

 

「周囲のアラガミは?」

『大型の灰域種以外、今のところ付近に反応はないです。数マイルほど離れた場所に小型アラガミが数匹ですかね』

「ヒヒヒ、……ところでメートル法に直してもらってもいいか? 全然分からねェ」

『あ、えーっと大体4キロから5キロです』

「なるほどなァ。正体までつかめるか?」

『この波長だと……ザイゴート系列だと思われます。音に敏感なので、注意してくださいね』

「オーケェ。十中八九途中参加あるだろうから、出現時報告よろしくゥ」

『はい! まかせてください!』

 

 腹についてる女神像はえちえちなんだが、頭からガブリはごめんだからねぇ。丸呑みされるのは趣味じゃないでございます。

 さて、気分を切り替えて、神機ちゃんをトレーラーから引っ張り出す。借りた双眼鏡も首から下げる。

 戦闘確認! 

 回復錠ヨシ! スタングレネード腰に下げて、トラップ類もその横に引っ掛けてヨシッ! 

 ロングブレード、レイガン(ブラスト)、シールドが今日も妖しく光ってますわね! やる気満々ですわ! 

 

 どうしてこの時代にブラストなんですか……? (現場猫)

 

 うるせぇですわ! 強いからコレでいいのですわッ! 与えられてからフルチューンしてるからゲーム的に言えば+50くらいなの! これはブラストだけど気持ちはレイガンなの!! 

 ……一人脳内芝居やめてさっさと行くか。

 たぶん忘れ物ないだろ。ヨシ、ですわ! 

 

「ヒヒヒ、一狩り始めますかァ。灰域潜行開始ィ」

『一つのミスが命取りになります。油断は絶対にダメですよ!』

 

 場所は崩れ落ちた市街地のような場所。店のようなものもチラホラ。

 かつては此処も人が一杯住んでいて、にぎやかな場所だったんだろうなぁ。今ではまるで壁をクッキーの様にかじられた痕跡が残る家々が連なってるだけだがな。

 少し背の高い家屋なども多い。

 2階建ての家に一足飛びで壁を蹴って屋上に登り、さらにその横の背の高い建物を同じように登っていく。こういう時、超人化してんなぁと思うのですよ。

 

「方向は」

『イザナイさんの立っている位置から9時方向です。データを送りますね』

「あいよォ」

 

 近隣で一番高い建物の屋上で屈みながら指示された方向を双眼鏡でのぞき込む。

 ずんぐりむっくりした二足歩行。移動する人型に近い巨大なアラガミを確認できた。

 例えるなら3階建てのお家が、車とかと同じくらいの速度で走りながら腕振り回してる感じだ。こわいこわい。

 

「目標確認した。案の定、灰域踏破船のほうに向かってるなァ……」

 

 理由はまぁフィムちゃんなんだろうがねぇ。灰域種が人型アラガミ狙う理由って覚えてないんだが……、まぁ偏食の方向性って考えたほうが無難か。どうやって把握してるのかも謎だしな。なんか良い匂いでも出てんのかねぇ。

 

「特徴。二足歩行、太めの人型。顔は……髑髏面。隻腕、右腕がねェな。後輪っか背負ってる。エイミー」

『しばしお待ちを。……ダメです、未確認の灰域種ですね。情報がありません』

「了解、少し観察するぜ」

『……なんというか、慎重ですね。あ、いえ! とても良いことだとは思うんですけど!』

「ヒヒヒ、初めて見るやつは観察しろって戦い方を教えてくれた先輩サマがいらっしゃってね」

『なるほど。いい先輩ですね!』

「そォーだな。話を戻すぜ」

 

 ま、今俺が先輩と呼ぶ人がいない時点でお察しだがな! つくづくブラックなくそったれな世界だぜ。エイミーが気が付くと凹みそうだからさっさと流すに限る。話題に出すんじゃなかった! 

 とにかくだ! 

 

 ──アラガミには基本的に無駄な部分はない! これがアラガミの真理だ! (イザナイ調べ)

 

 例えを上げるなら、コンゴウの背中のパイプは空気を操ったり、耳の役割を果たしていて少しの物音でも立ててしまえば拾ってくる。他にはヴァジュラのマントとかだな。あれは雷を操る器官って話だし。

 つまり! 

 サリエルのおっぱいにも何か意味があるんだよ!! 

 何だよ、空でひらひら舞いながらばるんばるんさせやがって、なんで硬いんだよォ……! 

 柔らかそうに見えるだろうが……! 

 

「……チッ」 

『イザナイさん、何かわかりましたか?』

 

 ……やべ! さりえるっぱいが何かの意味があるかどうかしか考えてなかった。

 違う違う。えーっと背中の輪っかは何かのエネルギー機関の可能性っと。

 目の前の敵に集中! 

 

「あーイヤ。そうだな。背中の輪っかからビームでも打たれたら厄介そうだと思ってな」 

『なるほど。オペレーターとしての私見ですが、片腕がない事も気になります』

「……バースト、したら生えるか? その辺はぶっつけ本番かねェ」

『ですが、この戦いに勝利すればイザナイさんの立場が確固たるものになります』

「ハイハイ、頑張りますよォッと!」

 

 一番高い所から、ぴょんぴょんと隻腕アラガミへと接近していく。

 なんだっけこいつ。ゲームにいた気がするけど、なんか印象薄いんだよなぁ……。

 名前、名前……。なーんかヌから始まったような。

 ぬ……ぬ、ぬらぬら? ぬめぬめですわ! (以後、記述ヌァザ)

 

「……まァいい。灰域種との闘いの基本は一つだけだ」

『?』

「相手をバーストさせずに喰い殺すッ!」

『……えーっと』

 

 うむ。冴えわたるただ一つに解答。

 エイミーちゃんも真理を突いた俺の台詞に言葉をなくしたようだな。

 

『う、うん。やっぱり、ハウンド……というかオリーネさんの先輩なんだなこの人』

 

 何故か、ドン引きされた気がするがまぁいいか。

 これが事務と現場の認識の違いって奴なんだな! 仕方ないね! 

 

 さて、接敵! いっちょAGE甲判定の実力を見せてやるぜ!

 建物の屋根を義経の八艘飛びの逸話の様に飛び走り抜き、そのままこちらに気が付いてないヌァザの上空へと飛び上がる!! 位置エネルギーはそのままエネルギーなんだよォ!! ダメだ、頭が悪い! とにかく強い、ヨシ! 

 手に持った神機を強く握る。そして心で叫ぶ。

 

 ──神機ちゃん行くぜぇーッ! 

 ──行きますわよー! 

 

 メリメリメリッ! と神機からロングソードを取り囲むようにドス黒いオラクル細胞が噴き出した。そのまま牙をむき出しにした狼の顔型を構築する!!

 これが神機の捕食形態(プレデターフォーム)ッ! 

 

「ヒャハハハハッ! 極東リザレクション流!!」

『え、ちょ、さっきと言ってることが!? いきなりそんな接近していいんですかーッ!?』

 

 その辺りでエイミーちゃんが何か言っていたが、後で聞く! 

 滑空するように、上空から斜めに黒い流星が対象に捕食形態を奔らせる。

 そこでようやくこちらの様子に気が付き、上空を見上げたヌァザ。

 威嚇するように構えたのを確認したが、遅いんだよ! 

 先制の捕食攻撃だ! 喰らいやがれ!

 

「穿顎だァオラアアアアアア!!!」

 

 背中の輪っかを一部バギバギッと凄まじい音で喰いちぎり、奪い取ったアラガミのオラクル細胞を神機ちゃんに叩きこむ! 

 開幕のバースト。

 突然襲われ攻撃されたせいでヌァザは口腔と思わしき場所から、怒りと共に再度咆哮。

 

 

 ──こうして『ペニーウォートの怪物』は灰域種『ヌァザ』と喰うか喰われるかの神狩りを開始した。

 

 




感想誤字報告ここすきいつもありがとうございます。
戦闘描写苦手なので、この話で本来であれば入る予定だったんですけどね……。
大体1行で済ますか、時間を飛ばしてた時点でお察しです。
ヌァザ君、中型な気がしないでもないけど、デカいってことでお願いします!
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