よわつよ! 作:やきごはん
「ノエル君!」
ガタンと椅子から飛び降りると、玄関に向かって走って行くノエル。
ドアを開けて外に出る、花が沢山の庭を走り抜け、門の前に辿り着いた所で、目の前にナスカが現れて、走るノエルの手を握る。
「待って!」
「確かに!あの2人の我儘、エゴだと思うの。でも、でもね。貴方がこの国で、1人で生きていける訳がないの!そもそも、無理矢理壁を突き抜けてきたから、貴方は不法入国。街に行けば、一瞬で捕まってしまう。そしたら、母親に会うなんて叶わなくなっちゃう!」
ナスカが何かを言っている。
内容はノエルには届いていない。
でも、握られた手の暖かさ。そして必死に繋ぎ止めようとしてくれる優しさ。
それは、どこかで。
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イリスが手を伸ばすも、エリスは無視してノエルを引っ張る。
「ぐぐ……どっちも……助けたいっ……!」
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自我が何かに乗り込まれて行く中で、あの暖かさを感じた。
それは、母に抱きしめられている時の安心感と似ていて。嘘偽りない優しさが染み込んで。
「戻ろっか」
ナスカは優しい口調でノエルに言う。
こくりと頷き、手を握りながら戻って行く。
玄関から、アーロンとアズランも飛び出してきていた。
「ノエル君!すまなかった!君に、私たちの理想を押し付けてしまった……」
頭を深く下げるアーロン。
「ごめんなさい。私が、アーロンにお願いをしたの。本当にごめんなさい。でもね。貴方を匿いたい気持ちは本当、貴方が私たちを嫌ってもどう思っても良い、これは私たちのエゴだから。ただ、ノエル君は、この家で暮らしていて欲しい。私たちが絶対貴方と母親を救う手立てを考えるから」
アズランは膝を突き、ノエルと視線を同じにしながら、訴えた。
「うん……まだ……親とか、わからないけど……でも……お世話になります……」
ノエルは、ペコリとお辞儀をした。
アーロンとアズランは涙を流しながら、ノエルの手を引き、家へと招き入れた。
1週間後
「ノエル君、君の母親アリアさんは、まだ生きている」
少し遅れたが、生存の知らせがノエルの耳に入る。
安心した顔で、頷くノエル。
「だがやはり、グランドの元に居る。取り戻すのは難しい」
ノエルは数日前にリッテン王国と聖都ヴェルファイアの関係性について聞いていた。
隣の国であるが、関門以外にはバリアウォールと呼ばれる、不法入国を防ぐ壁が貼られている。(ノエルはその壁を自分の暴走した魔力のせいで貫通したが)
交易は為されているが、リッテン王国は「自由」を重んじている。聖都ヴェルファイアは「平等」を重んじている。その方向性の違いが、決して仲良しにはなれない原因となっていた。
例えば、商業一つとっても。
リッテンは、どんな立場でも誰でも自由な物流がなされている。だから、裏側も多ければ、不利益を喰らおうと自分たちの責任となる。自由的な放任と言ったイメージ。
ヴェルファイアは、商人にも階級を分けている。そして、階級ごとに明確な機会が設けられている。その中でやり取りを行い、何かしらの不利益を被った場合、国がそれをある程度は補填してくれる。平等な機会があると言ったイメージだ。
国の方向性が違う。
だから、交易以外で国を往復するのは、冒険者くらいである。後は国間の会議であったりする場合か。
だから、ノエルは現在不法入国状態である。
そして、今日。アーロンによって、ノエルは養子縁組として聖都ヴェルファイアの戸籍となった。
どうやったかと言われれば、まぁヴェルファイア内でも、TOP5と呼ばれるほどの情報通のナスカにかかれば造作もない。それなりの金は積んだが、そこはアーロンパワーで。
そして、アーロンは以前中の上と表現していたが、ヴェルファイアには明確な階級分けがある。
下からC.B.A、その中でも3段階に分かれており、また特別級のSが存在する。
アーロンはその中でAの3、Aクラスの3番目である。
Aクラスの貴族は基本的に街の中心部に住むはずだが、アーロンは自ら辺境の山沿いに住んでいる。
ヴェルファイアの養子になったノエル。ただ、規則で同国で5年間は国外へ移動することが出来ない(貴族などに特例はあるが)。
つまり、12歳のノエルは、17歳になるまで、国外へ移動することが叶わない。
長いとは思うが、これが1番安全な方法である。早とちりをすれば、もし母親を運良く奪い返せても、王国か聖都か、どちらからか追われる身になるだろう。
17歳という若さ。そこで王国へ安全に行く為には、ただ一つ「冒険者」になる。
それだけだ。