よわつよ! 作:やきごはん
「おい、どうしたんだ?」
ノエルが声をかけられた方を見る。
そこには、藍色の短髪に赤いメッシュが入り、肩に大剣を背負った女性がこちらを見ていた。
「え……いや……その……」
「ん?迷ったのか?」
地図を持ち、キョロキョロしていた事から恐らく迷ったのだろうと推測した。
「私も今から行くところだし、一緒に行くか」
ふと。
その子が時計を見る。
8:25
「やべ!急ぐぞ!!」
腕を掴まれそのまま引きずられるように、学園へと向かって行った。
何とか遅刻せずに到着した2人。
「ふぅ……危なかったな。あ、私はレネ。よろしくな」
手を出される。
「ぼ、僕はノエル……です……」
その手を恐る恐る握ると、ガシッと掴まれブンブン振られる。
「それじゃ!」
振り終えると、レネはそのままノエルとは違う教室へと向かって行った。
ヴェルファイア学園。
今年の入学生、全500名。
全校生徒1460名。
1年生はCクラス、2年生はBクラス、3年生はAクラスに別れている。
その中で入学成績上位の10名は特別クラス(+クラス)に入ることが出来る。
先程助けてくれたレネは、C7位。
1年生の中で特別クラスを含めても、17番目に成績が良かった。
ちなみにノエルはC488位。
合格ラインギリギリを潜り抜けてきた。
クラスは一応50人ずつで分かれている。
しかし、このクラスは一応の集まりのためほとんど顔を合わせることはない。
基本的に、それぞれが取る授業に向かうからだ。
同じ授業内容でも週に何度もコマが存在しており、自分の好きな時間に必須科目を入れることができる。
クラスにて挨拶、入学式を終えると、まず寮に向かう。
予め送った荷物が既に届いているはず。
ノエルが2人部屋をノックすると、中からどうぞと、男性の声が聞こえた。
「し、失礼します」
恐る恐る部屋へ入ると、
片方のベッドの上で、届いた荷物を整理している男の姿が。
「君がノエル君か。俺はシン。よろしくね」
本日2度目の握手を交わす。
悪い人じゃなさそうなので、ホッと一安心したノエル。
シンはC+3位であることは知らずに。
1日目はそのまま終了した。
4/2
今日から授業が始まる。
座学や実践的な授業など様々なものがある。
ノエルは実践面で問題が多いため、自由に取れる授業はこちらを多めに取ることにした。
1時間目、一番最初は基礎体力を上げる授業。
先生が現れ、まず3人1組を作れと言う。
ノエルは、シンと共に寮から出て来ていた。
この授業はシンも一緒に受けるからだ。
もう1人をどうしようかと考えていると、後ろから声をかけられた。
「あ」
「よう」
そこには前日、迷いのノエルを助けてくれたレネの姿が。
「私の所のルームメイト、この授業取ってなくてさ。良かったら一緒に組まない?」
ノエルはシンを見る。
「僕はシン、君はレネだね」
シンはこの学年全員の顔と名前を覚えている。
ノエルはなんで知ってるの?と不思議な表情をすると同時に、レネは驚いていた。
「ノ、ノエル……!まさか、この人がルームメイト?」
こくりと頷く。
「凄いな!……てか、この人誰か知ってる?」
同学年であることしか分かっていない。
と、シンが笑う。
「はははっ。ノエル君はやっぱり知らなかったか」
何のことだろうと首を傾げるノエル。
それを見てレネが言う。
「この人は、この国の現宮廷魔法団長の次男だぞ!」
そう、シンはこの聖都ヴェルファイアにおける。最強の戦闘集団である、魔法団の団長を務めている、ネックスの次男であった。
つまり、長男を除けば2番目に団長の座に近い男で、その分実力も凄くて……
「一応言っておくけど、今C+3だから、強さにはそこそこの自信はあるよ」
そう言われたノエルは、ただただ凄いなとしか思わなかった。
「ノエル君らしさだね。でも、こうしてビクビクされない方が、無理に尊敬されない方が、僕は好きだな。本当に君たちと関わりたくないと思うなら、学園に入ってないだろうし。僕は、肩書きこそ凄いものなのかもしれないけど、普通の人間、普通の学生として生きていきたいんだ。今はね」
「そっか、んじゃ、私も普通に接するな」
「ああ、それで良いよ」
でもお前はもうちょっと驚け!とレネに背中を叩かれたノエル。
きっと、この国で生まれてたら、この国にもっと興味が湧いたら、驚いてたかもしれない。
ノエルの心はまだ、オルトリンデ村に、母アリアの元にあるのだろう。