よわつよ! 作:やきごはん
オルトリンデ村 南側山麓
辿り着いた時には、当たりは完全に暗くなっていた。
松明を掲げる村人達。それぞれが山へと入り、捜索を開始した。
ノエルも父ロランと共に山へと入る。ロランは軽装備な事もあり、他の村人よりも奥の方へと入っていく。
探す事数十分。
少しずつ、村人の発する声が遠ざかっていく。
不安になり、ロランの袖を掴むノエル。
ロランは離さないと言うかのように、手を握った。
_____________ __
何かが聞こえた気がした。
父の方を向けば、同じようにこちらを見た。
声の方へと駆け寄れば、そこにフェリスはいた。
そして、闇に紛れた5mはある、巨大な熊もいた。
「俺の後ろに隠れろ、ノエル」
父の声が聞こえる。
ノエルはその言葉を聞くよりも早く、後ろに隠れてはいたが。
その様子に気づかないほど、ロランは目の前の状況に集中していた。
いや、するしかなかった。
(あれ程の熊__見たことないぞ__)
山に入れば、確かに熊などの獣はいる。
魔力を帯びた魔獣もいる。
だが、この熊はそんな帯びたレベルではない。全身の毛が紺色に染まり、目は紫、熊というより魔物のような声ならざる声を発している。
ロランは思考する。
ロランと熊を挟んだ間にフェリスはいる。
フェリスは怯えて腰が抜け、声も出ない。
熊からのプレッシャーは凄まじく、一歩でも動けば向こうも襲いかかってくる。
それに、ノエルもいる。
俺が仮にフェリスの手を引き、こちらへ逃げても、その間にノエルに襲い掛かられたら対処出来る気がしない。
何とか、時間を稼げれば……
そうか。
「ノエル」
父の言葉に反応し、見上げるノエル。
「光球、使えるか」
目眩し。
これなら、少しの間時間を稼げる。
それに、ノエルは今自分の後ろ。熊にしか影響は出ない。
ノエルからの返事がない為、再びノエルの方を見るロラン。
手は震え、今にも崩れ落ちそうなほど膝は笑っていた。
「ノエル、お父さんは。フェリスを助けたい」
「…………っ!」
「怖いのは父さんも同じだ。だから、お前の光球で安心させてくれよ」
「!!」
「大丈夫、実態の見えないお化けよりは、相手がどこに居るか分かってる今の方が怖くないだろ?」
ノエルはふとフェリスを見る。
フェリスは、口をガタガタ震わせながら、必死に何かを伝えようとしている。
助けて______
フラッシュバックするのは、フェリスとの記憶。
何度も何度も、家に押しかけては庭に連れ出されて遊ばされた記憶。
一言も喋らなくても、何もしなくても、彼女は怒らなかった。
むしろ、彼女の方から進んで話をしてくれた。何かを与えてくれた。
そんな、思い出。
ノエルの目が変わった。
それは、ロランに伝わった。
「合図をしたら、光球を出してくれ。この暗さだ、いつもの大きさで構わない」
こくりと頷く。
「3……2……1……今……!」
ピィキィンとノエルが光球を発動する。
辺り一面が明るく照らされる。
それと同時に、ロランは駆け出し、フェリスを脇に抱える。
熊はあまりの眩しさに目を眩ませて____
いない。
それと同時に、熊も駆け出し、ロランへとのしかか___り______
「ノエル!!!!」
父の絶叫を聞いた瞬間、目の前から何か物体が飛んでくる。
抑えられることもなく、そのままその物体と共に後ろの木へとぶつかる。
そして、何かが踏み潰される音を聞いた。