よわつよ!   作:やきごはん

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逃走

 オルトリンデ村 南側山中

 

 

 木にぶつかったことで、一瞬気が飛びそうになったが、ドシン! という音で意識が覚醒する。

 

 目の前には巨大な熊。

 

 

 だけ? 

 

 

 

 

「お父さん…………?」

 

 

 

 

 

 

 熊の足元から赤い血が広がっていく。

 

 

 

 ______!! 

 

 

 

 

 

「お──ーい!! 大丈夫かー!!!」

 

 

 と、後ろの方から声が聞こえる。

 光球の光、そしてこの地響きに気づき、村人がこちらへ向かってきている。

 

 

 

「……ノエ……ル」

 

 下からも声が聞こえた。

 ぶつかってきた何かは、フェリスだった。

 まだ、恐怖に染まった顔で、でも、何故か僕の頬を触ろうとして。

 

 

「ノエル君!!」

 

 声の主はフェリスの父だ。

 

 ノエルがフェリスを抱えていることに気付く。

 

「フェリ…………っ!!」

 

 そして目の前にいる熊。そして、地面に広がる血に気付く。

 

 その血が誰のものなのかも。

 

 そして、今何をすべきなのかも。

 

 

「逃げるぞ!!!」

 

 

 フェリスを肩に担ぎ、ノエルの手を引く。

 

 

 _______ぅ____

 

 

 山を走る。走る。

 

 

 __ぉ_____ん__

 

 

 後ろからはドシンドシンと、恐ろしい敵意が迫る。

 

 

 ____と_______

 

 

 

「くっ……追いつかれる……」

 

 

 

 必死に逃げるフェリスの父。

 あと少し。

 

 この先にある崖は、高さが2mほどある。しかし、真下は田んぼで今は水が入り、多少の怪我で済むはずだ。

 

 

 

 ____________!!!!! 

 

 

 

 ノエルを握る左手に痛みが走り、その反動でノエルを離してしまう。

 

 

「ノエル君!!!」

 

 

 慌てて手を伸ばすが、殺意の風が彼らを吹き飛ばし、崖の下の田んぼへと落下させる。

 フェリスを抱き抱え、何とか自分の背中で着地する事に成功した父であった。が、田んぼからも見えた。巨大な熊が立ち上がり、ノエルが居るであろう場所へとのしかかろうとしているのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああァァァァアアアアアァァアァアアア!!!!!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 空気が震えた。

 目の前が真っ白になる。

 娘のフェリスを抱え目を瞑る。

 轟音と共に爆風が襲いかかるが、幸運な事に瓦礫などは飛んでこなかった。

 

 

 

 

 

 音が止んだ。

 

 

 暫く経って目を開けてみれば。

 

 

 

「…………へ?」

 

 

 

 崖はない。

 木もない。

 山もない。

 ただ、視線の向こうには、リッテン王国領域外の野原が広がっていた。

 

 

 そして、ただの凸凹とした土地となった山跡地の土が動き。

 中からノエルが這い出てきた。

 

 

「……ノ、ノエル君?」

 

 

 事態の把握が出来ない。

 ただ、目の前にいるノエル君は生きている。そして熊は消えている。その二つの事実から、フェリスの父はノエルの元へと駆け寄った。

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