よわつよ! 作:やきごはん
3日後
ロランの葬式は慎ましく行われた。
遺骨は無かったが、それを責めるものは誰もいなかった。
あの日、何が起きたかを村の人は知らない。
ただ、突然南側の山が全壊したこと。奇跡的にノエルが生還したことしか。
ただ、何が起きたかを知っている人がここにいる。
オルトリンデ村を統治する、貴族グランド家。
領主オーヴェン・グランドは、あの日の様子を秘書のガティから聞いている。
「つまり、あの山の崩壊はノエルとかいうガキが起こしたと?」
「ええ、アルファベアーが彼に襲いかかる寸前、彼の体から莫大な魔力が放出されたのを確認しています」
「なるほどな……ちっ。危険分子の居なさそうな村を選んだってのに」
「見る目が無かったですね」
「なっ……!?」
「冗談です」
「はぁ……まぁ良いさ。そのガキ、あいつのとこで使えそうだよな」
「そうですね。あれ程の魔力があれば、彼の研究はまた1段階先へと進むかと」
「よし、なら明日。あのガキを手に入れる」
「貴方様1人で大丈夫でしょうか、彼の魔力は相当なものですが」
「お前は?」
「私はこの屋敷のあれやこれやをやりますので、手が空いておりません」
「その割には毎日暇そうだが……分かった。レンブルを呼べ」
「かしこまりました」
一例をすると部屋からガティが出て行く。
1人になったオーヴェンは窓の外を見ながら呟く。
「あのガキも気になるが……その母親も……」
母は泣いていた。僕も泣いた。
優しく逞しく、大きな暖かさにもう触れられない。
村の人達はノエルとアリアを気遣うように、ロランが死ぬ前と何も変わらずに接してくれている。
悲しいのは誰もが同じ。だから、村の人達は2人に少しでもいつも通りを与えたかった。与えるしか無かった。
4月5日 オルトリンデ村 ロラン宅
朝早くにベルが鳴らされる。
アリアは隈を抱えた目を擦りながら、ドアを開ける。
「おはよう。ノエル君に会いたいのだが」
オーヴェンはアリアを一瞥しながらそう言い放つ。
後ろには鼻までネックウォーマーを付けた、男が同じくアリアを見ていた。
「ノエルは……今は寝ています。お帰り下さい」
母の目はオーヴェンを見ている。
オーヴェンはそのプレッシャーに後退りそうになるが、背後にいたレンブルに合図を送る。
「かはっ……!」
その瞬間、アリアの鳩尾にレンブルの拳が入る。
衝撃でヨタヨタと後ろへ下がり、置いてった花瓶にぶつかる。
パリン___
そして、尻餅をつくアリアを尻目に2人は家へと乗り込んだ。