台風の影響で、品川圏では列車の運休や商業施設の臨時休館、イベントの中止の発表が相次いでいる。このまま関東に接近する見込みのようだ。
JR東日本の発表によると、JR京浜東北線が12時ごろまで、山手線が13時ごろまでには計画運休を実施する。両線とも昼ごろまで運休する見込み。京浜急行本線や都営地下鉄線、東急線などは運行本数を減らし、運転を取り止める可能性があると発表している。
だというのに強行された実力テストのせいでいざ帰ろうとしたら降り頻る雨。台風の最中強行されたせいで品川駅で見事に僕らは足止めをくらった。運行本数が減らされた関係でど田舎並みの本数になった。まだ止まってないだけマシだろう。次を逃したらいよいよ寮か学校に電話して迎えを頼まないといけなくなる。
「雨だね」
「雨だな」
とにかく品川駅で足止めをくらった僕らは駅から出なかった。駅のなかをモノポリーのようにグルグルと回っているだけ。それでも僕らは退屈することがなかった。本屋にいってCDショップにいってカフェにいってそれに磯野上がずっとついてきていただけだった。
「いつもこんな感じなんだね、きみ。図書館にいるイメージしかなかったから、なんか新鮮」
「どこで本買うんだ、普通本屋だろ」
「Amazonで買わない?」
「寮だと手続きが面倒だから受け取りはコンビニにするんだ、楽だから。新刊なら本屋の方が早い時もあるから場合による」
「ふうん、そうなんだ。ほんとに本好きだね」
「それは知ってるだろ」
「うん、知ってた」
「僕の用事にばかりついてきてるけどいいのか、退屈だろ」
「いいの、だって雨の中帰る気しないし、ひとりでカフェでねばるのはちょっとね」
「でも暑いだろ」
「たしかに暑いね、10月だっていうのにこの暑さだよ。温帯低気圧に変わったらどれだけ暑くなるんだろう」
「30度超えるみたいだな」
「え、うそ、ほんとに?」
「ほら」
僕は天気アプリをみせてやった。
「うわあ......もうすぐ衣替えなのにね」
「体操服でもよくなるんじゃないか、たぶん」
「だといいのになー、さすがに冬服は暑すぎるよ」
「たしかにな」
広い窓から外が見えるがあいかわらず外は大雨が降っていた。外ではすごい音を立てて雨や風が荒れ狂っていて、階段を上ってくる足音も聞こえなかった。
「大丈夫かなあ......」
「女子寮は遠いのか?」
「そうなんだよね、やんなっちゃうよ」
「そうか」
「男子寮は?」
「近くはないかな」
「そっかあ......風邪ひかないようにしないといけないね」
「そうだな、今の時期はわりと洒落にならない」
「本、濡れないといいね」
「袋に入れたから大丈夫、たぶん」
「買わなきゃよかったのに」
「それはない」
「あはは」
「磯野上はなにか買わないのか?」
「うん、特に予定はないかな」
「そうか」
「うん」
僕らはしばし沈黙した。
「そろそろ時間だね、いかなきゃ」
「そうだな」
「混むかなあ」
「混むだろうな、最終便みたいなものだし」
「そうだよね......あーあ、ほんとなんで台風なのにテストやったんだろうね、おかしいよ」
「午前中で終わらせるからって帰る僕らはギリギリになるんだから勘弁してほしいよな。残ってるやつら、もう間に合わないだろ」
「下手したら避難所だよね。そこまでひどくならないといいけど」
「再接近は夜だな」
「明日休みになっちゃったら笑うしかないね」
「ならないだろ、品川線が再開したら最速でこいだきっと」
「だよね......ってことは寮で待機かあ......いつになるかわからないからゆっくりもできないし、ああ、もう、めんどくさいなあ」
ぼやきながら僕らはいつもの階段をかけあがる。駅員が次が最後だと叫んでいるのが聞こえた。最寄駅についても寮までの道のりを考えるとうんざりしてしまう。磯野上もそれは同じらしく、似たような顔をしていた。