世界が平和だったころ(真・女神転生Ⅴ)   作:アズマケイ

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あと7日で滅びる東京の話(真・女神転生Ⅴ ネタバレ注意)

かつて幾度もみた砂漠の夢が現実になってしまった。どうやらあれは予知夢の類だったらしい。初対面にもかかわらずアオガミのことを知っている僕にアオガミは驚いてこそいたが、特に問題なく僕は夢のようにナホビノになることができたのだった。そして、アオガミの頼みで、東京タワーに向かう道中、アオガミは色々と教えてくれた。

 

かつて法の神によって他の神々は《知恵》と《生命》をわけられ、《知恵》を奪われ、悪魔に貶められた。そして楽園で厳重に保管されていた《知恵》が蛇によって唆された人間によって食され、人間は《知恵》をえた。この瞬間から本来の姿を取り戻そうとする悪魔に人間は襲われるようになり、法の神は悪魔が本来の姿を取り戻さないように《生命》をもつ悪魔の棲む魔界と《知恵》をもつ人間のすむ世界をわけたという。

 

18年前、その秩序が破られた。カオス教団というカルト宗教の異端にして急進派の男が東京都品川区の新宿病院地下にて邪悪な儀式を行い、東京受胎という大事件を引き起こしたのだ。新宿区を中心に23区は球体になるという異常事態が発生し、全都民は死亡。ここが局所的な魔界となってしまったのである。内側に閉じられた世界でなにがあったのか、知るものは誰もいない。

 

その大事変はあらゆる魔界と人間世界をつなげてしまう綻びを生み、悪魔が人間世界に湧き出し、世界は大混乱に陥った。

 

男はその魔界で新たな世界の創生を目論んだが、なんらかの理由で頓挫、その新たなる魔界を支柱に治めたのは全ての人間がなにかの悪魔の《知恵》をもつに至った諸悪の根源、ルシファーだった。

 

やがて悪魔の人間争奪戦は、代理戦争の様相を呈するようになり、ルシファー率いる悪魔側と大天使率いる各国の神話的存在の主力派が傘下に入った連合軍の争いとなり、最終決戦ははじまりのち、東京で繰り広げられた。

 

そして、奇跡は起こった。ルシファーが突如姿を消し、人間世界と魔界が一体化していた世界がふたたび再生されたのだ。ただしくは18年前戦争となったかつての世界、人間世界と魔界が繋がってしまった世界とはまた別のまだ繋がっていなかったころの人間世界が出現したのである。

 

連合軍は神のもたらした奇跡、シャカイナグローリーであるとして勝利を宣言し、新しい世界に勢力を移動させ、かつての世界とつながる龍脈を支配下においた。

 

悪魔側はかつての世界を手中におさめて勝利宣言をした。

 

しかしながら、双方ともに棟梁となる者たちを失ったためにこう着状態に陥り、世界は18年ものあいだ仮初の平穏がもたらされることになったのだった。

 

「ナホビノは《知恵》を取り戻した悪魔が至れる本来の姿、神の姿だ」

 

「なら、18年前にたくさん現れたのか?」

 

「いや、ナホビノの禁を法の神は敷いている。破ったものは例外なくミマンとなる」

 

「なんで僕に死にたくなかったら手を取れっていったんだ、アオガミ。ミマンになるって知ってるなら」

 

「......」

 

アオガミは黙り込んでしまった。

 

「ナホビノになれたからよかったけど、わりと危なかったんじゃ」

 

「......そうだな」

 

「というか、なんでナホビノになれてるんだろう。おかしくないか」

 

「......」

 

「記憶の破損?」

 

「......そうだ、いわれて気づいた」

 

「今の今まで本気で僕を助けるためにナホビノになろうとしてた」

 

「......そうだ、そのはずだ」

 

「神造魔人ってそういうものだから?18年前僕は生まれてないから、僕じゃない誰かとナホビノになったことがあるとか?」

 

「いや、ないはずだ。連合軍の日本支部は主戦場になった関係で多くの神々が倒れ、慢性的な人材不足に陥っていた。ゆえに私は神々を模して日本に古来から伝わる秘術により量産されて作り出された神造魔人、悪魔ではなかった」

 

「でも僕が《知恵》だってわかってた」

 

「そうだ」

 

「模した日本の神の本来の《知恵》が僕だったから、アオガミにもそれは適応されたとか」

 

「なるほど、それはあるかもしれん」

 

「ちなみにその模した神は誰かわかったりするのか?」

 

「すまない、きみに答えられるだけの情報を私はもちえていないようだ」

 

「それは記憶の破損じゃなくて、初めからプログラムされてないって意味で?」

 

「おそらくは」

 

「秘術だっけ、それ関係かな」

 

「そうだと思われる」

 

「そうか......それにしたってアオガミの意識と記憶に明らかに異物が混入してるみたいだな、神が禁じたなら連合軍の指揮を天使が握ってる以上、配下の日本支部でもナホビノは禁忌じゃないか。それなのに今の今まで思い出さないどころか自分の説明に矛盾が生じてるのに違和感すら抱かないなんて。大丈夫か、アオガミ」

 

「......その指摘はもっともだ。日本支部に帰還したら直ちに検査してもらうとしよう」

 

「それがいいよ。18年前と同じで今でもナホビノが禁忌なら、生きて帰れる気がしないんだけど」

 

僕の言葉にいよいよアオガミは黙り込んでしまった。声が聞こえなくなってしまう。それは命に代えても守るべき僕を危機に晒してしまうことへの憂いか、それとも自分の中にある正体不明の介入者への危機感か。あったばかりの僕ではまだわからない。

 

とりあえず東京タワーに向かうとしよう。

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