世界が平和だったころ(真・女神転生Ⅴ)   作:アズマケイ

3 / 13
呪われた話

「今日も太宰は休みか」

 

朝のホームルームで点呼していた担任の先生が名簿にチェックをいれる。

 

「なにか聞いてないか?」 

 

「身体がだるいから休むっていってました」

 

「なんか、熱があるらしいです。土曜日から下がらないみたいで」

 

「そうか、なら病院いって診断書もらってこいって伝えてくれるか。そうじゃないと欠席になるからな」

 

「わかりました」

 

「プリントとか届けてくれるか」

 

「はい」

 

「じゃあ、敦田たちにあとは任せるぞ」

 

チャイムがなる。先生は教室をでていった。

 

「......なあ、太宰の体調不良ってまさか」  

 

「馬鹿は風邪をひかないを地でいく太宰が高熱ねえ......。そのまさかだと思うな、僕は」

 

「LINEみたか?」

 

「みたみた。結構やばいところに撮影にいったのかな」 

 

「どうだろうなあ。こればっかりは太宰に聞かないと」

 

我らが縄印学園は全寮制が売りの高校だ。太宰も僕らも男子寮から通っている。ルームメイトが隣のクラスにいるはずだから話を聞いてみようと昼休みにいってみたら、どうやら最後の夏の大会が全国大会まで伸びたらしく、今週はずっと休みらしい。つまり太宰は今部屋にひとりなのだ。

 

これはやばいかもしれない、と冷や汗がつたう。事故物件の情報提供をしたのは敦田だが、焚き付けたのは僕だ。LINEには土曜日にバイトの外出許可が出ていることをいいことに、撮影をするとあってから体調不良になっているようだから、嫌でも連想してしまう。

 

「どうしたの、2人とも」

 

びく、となってしまうのは仕方ないと思う。ふりかえると不思議そうに磯野上が首を傾げていた。

 

「磯野上か、太宰のルームメイト、今全国大会にいってて誰もいないらしいんだ。放課後にいっかいいってみる」

 

「太宰くんが?具合悪いの、そんなに?」

 

「熱が下がらないらしい。あの元気印が」

 

「そうなんだ、心配だね......」

 

女子生徒は男子寮に立ち入りが禁止なのだ。磯野上は心配そうにしている。

 

「お大事にって伝えてね」

 

「わかった」

 

「やっぱり、そういうところには行かない方がいいってことだよ」

 

「......聞こえてた?」

 

「うん、聞こえてた。盛り上がってたからいいだしにくかったんだけど」

 

「そっか......」

 

「うん、ごめんね。初めから止めたらよかった。だから、これ、太宰くんに」

 

差し出されたのはお守りだった。文字は読めないが旧字体なのはわかる。

 

「磯野上ってそういうの詳しいのか?」

 

「詳しいというか、責任感じちゃってね。なんにもないといいなあと思いながら買ってきたの。ご利益あるといいんだけど」

 

「病は気からっていうしな、太宰も喜ぶよ。ありがとう」

 

「うん」

 

磯野上から受け取ったお守りを鞄にしまい、職員会議があるために受験対策の講習がない月曜日の放課後、僕らは急いで敦田のところにむかったのだった。

 

売店でゼリーやポカリスエットをまとめ買いして現れた僕らに、思ったより顔色がよさそうな太宰がしっかりとした足取りで顔を出した。よかった、と僕らは息を吐いた。朝から既読もつかないし電話に出ないから。熱中症で倒れてるなんて最悪な想像をしていただけに最悪の事態は免れたらしい。

 

とりあえず水分補給しろ、とポカリスエットを渡しながら、僕らは部屋に入った。

 

「病院は?」

 

「担任から電話かかってきてさ、車出してやろうか言われたけど断った。そこまでやばくねーし」

 

薬はもらってきたらしい。

 

「診断書は?」

 

「そこに入ってねえ?」

 

「いや、ないな。薬と内容物の説明だけ」 

 

「まじか......」

 

「まだやってるみたいだから、はやく電話しとけ、太宰。発行には時間かかるだろうし、こういうの」

 

「わかったー」

 

どうやら薬が効いたらしい。内容物の説明書を見ると、かなりキツめの頓服薬と解熱剤が1週間分処方されていた。

 

「太宰、電話したらすぐ寝ろ。薬が切れたらまたぶり返すぞ」

 

「え、まじで?」

 

「ちゃんと先生の話聞いてたのか」

 

「うーん、頭がふわふわしててそこまで回ってなかったな」

 

「重症じゃないか、寝ろ。今すぐ寝ろ」

 

来てよかったのかもしれない。まだちゃんと頭が回っていない状態で余計なことして悪化する未来しかみえない。

 

僕らはとりあえず太宰に寝てろと念を押して、磯野上から預かったお守りをわからないところにおいてやった。病は気からというし、このお守りで呪われたとか祟られたとか思考がマイナス方向に振り切れたら、余計に体調が悪くなる予感しかしなかったのである。

 

また明日学校行く前に顔を出さなきゃいけないなと思いながら、僕らは寮にもどったのだった。一応、担任の先生には太宰の様子を伝えておいたら、寮長が気にかけてくれるらしい。よかった。

 

そして、翌日。

 

「はよーっす」

 

朝学校にくると太宰が普通に来てたものだから僕らは目を疑った。

 

「大丈夫なのか、太宰。昨日、あんなに体調悪そうだったのに」

 

「いやー、そうなんだけどさ。寝たら治った」

 

「治ったって......薬飲んだからだろ」

 

「いや?」

 

「え、まさか飲んでないのか?」

 

「いやー、憑き物がおちたみたいに治ってさー、よかったよかった」

 

僕らは顔を見合わせた。

 

「あ、おはよう、太宰くん。もう大丈夫なの?」

 

「おはよっす、磯野上。もう平気平気、心配かけてごめんな!」

 

「よかった、ただの風邪だったんだね」

 

「みてーだな!」

 

いやいやいや、昨日の今日でこれはさすがにおかしいだろと僕は思ったが、磯野上が不思議そうに見てくるので首をふった。まさかな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。